転生先は小説の‥…。

kei

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第九章 王国の異変

嘆き

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これって衝撃の事実?
ガザはクレアと接触して精神干渉されたと義兄は確信した。
証拠はないよ、ないけどね。義兄の研ぎ澄まされた判断力は馬鹿にできない。



‥‥どうでもいいけど、アクティブ過ぎるよクレア。


はぁ‥‥。
疑われたガザは何も喋らない。ここは説明する場面じゃない?
黙ったままでは黙認と受け取られちゃう。弁明の機会を自ら放棄しないでよ。


「あれれ~おっかしぃ~、もしかしてだんまり? 猟犬ちゃんって役立たずぅ」

馬鹿ジェフリー、煽るの止めれ。ガザじゃなくて義兄達が反応したじゃん!
義兄とハイデさんの冷酷な視線に気が付いてよ、怖っ!
二人の凍てつく視線に晒されてもジェフリーは平気だ。メンタル、強っ。

ギルガが堪らず発言の許可を求めた。義兄に意見する彼は根が真面目である。

「若君はガザがクレアから精神干渉を受けたと仰るのですか? 確かに若君の情報とは違いますが、それでも彼がそうだと立証出来ない今、判断を下すのは早計ではございませんか‥…後になって事実が判明した時に間違いだったでは済まされません。再考を、もう一度お考え直し下さい」

取り成しを試みたギルガ、事が事なだけに言わざるを得ないと判断したか。
出過ぎた発言と思われても口を挟んだ彼は、性根の良い人である。


二人の進退に影響する話になっちゃったから非常に雰囲気が悪い。
監視対象から精神干渉され任務に支障を来したと祖父ちゃんが知れば、ガザは間違いなく叱責を受け処罰される。
でも、それは義兄も同じで‥‥もしその指摘が間違いだったら?
迂闊にも口を滑らしたでは済まされず、故意に部下を陥れたのだと詰られれば義兄の評判は堕ちる。功を急いたか、浅慮の判断ミスか。能力を疑われたら致命傷だ。高位貴族の身分は甘くない。


俺達の視線は決定権を持つ義兄に向いている。判断を委ねた義兄の決定に従うしかないのだが、判定が下されたら何も言えない。

「ふぅ、ここで正否の判断を求めるのは時間の無駄です。ダルを召致して下さい。それが一番確実でしょう」

あ、判定はアウトか。
ダルさんでなければ干渉系の解術は出来ない。だから呼び出すのね。

でもダルさん、来てくれるかな。だって冤罪のジオルドを助けようと自ら正体を明かして、母さんに頭を下げた人だよ? 今頃王都で奔走してるでしょ。
それに罪状の元凶義兄が、ここで元気にピンピンしてる。
ダルさんの心情を察して知るべし? 

ここは王都から距離が近いから日帰りが可能。所要時間は半日程度で済む。
ダルさんに来て貰ったとして、解術に要する時間ってどれぐらいだろう。
早くて一日。時間が掛かったとしても二、三日?

‥‥それまでガザの身柄、どうするの?

それに、もし、ダルさんとコンタクトが取れなかったら? 断られたら?
ガザの疑惑が払拭されず‥‥これ、収拾がつかなくない?




しまった、クレアの話どころじゃないよね、今。
帝国貴族の彼女が王国で犯罪行為に手を染めた動機を窺い知れたらと淡い期待も実はあった。
だけど‥…真相は藪の中。ガザの記憶の信憑性が危ぶまれ、齎された報告は虚言扱い。まさかのハイデやミリア達の二の舞の心配をする羽目になるとは。

クレアの行動力が恐ろしい。


当のガザは、義兄の決定に至極ご立腹(に見えなくもない)。
怒りからか悔しさからか。言葉を失った彼は肩を震わせ己の心情を体で表現している。そうではなくて言葉で説明しないと伝わらないって判らないのか?
沈黙が追い詰めていると気が付いてよ。
多分、誰が言葉を掛けてもガザは悪印象を持つだろう。
‥‥困った。

義兄の持つ情報を俺は知らないから判断できないし、どちらかの肩も持てない。
徒に時間だけが過ぎるのって、地味にストレスになる。
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