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第十章 クリスフォード・ラックスファル侯爵領

ドーンって魔力を・・・ぶつけてはいけません

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‥‥新たな手を手に入れるためだ。


被害者被検体の男の術を解くべく部屋を訪れたのだが、静かに寝かされた姿を見てふと、下手すればこの男、二次被害に遭うんじゃないかと本末転倒な未来を垣間見た気がして、そっと心を閉じる。

‥‥大いなる発見のため、犠牲はつきものだよね?

そんな意味を込めてじっと義兄を見つめれば、全てを見通した菩薩のような微笑で俺を見ていらっしゃる。おおおありがたや。

‥‥うん、今や保護者は義兄だ。何かあれば泥を被ってくれるよね? ねっ?



ふぅぅ‥‥よし!



気合を入れ直し手順を脳内で反芻する。魔力操作はイメージが大事だ、集中集中。


被害者被検体の男の魔力も栄養素も分捕る勢いで魔力を叩き込んで吸い取れば。きっといける。いけるよね? 但し、身の安全は保障しないけど。


「レティ、あの男は眠らせているから安心して?」

えっ?! どういう意味? もしかして『寝たまま逝けるから苦しまないよ』って暗に示してるの? それって優しさ? えっ、何なの?

よくわからない労い?を受けて俺達は男が寝ている部屋で最終確認を始める。

ハイデさん達は扉の外で護衛だ。碌に休ませず突き合わせて、ごめんね。
男が終われば引き続き女性だろうか? この後のことは未定だが一応隣室で寝かされている。睡眠薬の投薬管理もハイデさんのお仕事らしいけど。ちょっと仕事の偏りが気になるとこだ。他のメンバーは何やってんだろう?

‥‥あぁそう言えば、邸の調査してたっけ。

この二人の事情聴取は術の影響で殆ど話せないと聞いたのを思い出した。当主であるクリスフォードも然り。契約魔法が聴取の邪魔をしているのだと。

自白の強要ができないとハイデさんが嘆いていた。強要‥‥させる気だったのか。あれだよね尋問と言う名の拷も‥‥怖っ!
見た目が綺麗な出来るお姉さん風だから忘れがちだけど、この人元軍人。容赦なしだった‥‥

それにしても、がっつり首を突っ込んでるよね義兄。 
邸にいた人達、どんどん事情聴取してるでしょ? ダルさん扱き使って。可哀想に回復薬片手に歩く姿が‥‥二日酔いのリーマンに見えたわ。

ここまでするのはレティエル‥‥公爵家が関係するからでしょ?
証拠掴みが目的だよね? 絶対、人助けじゃないでしょ。

‥‥一体、何を考えてんだか。




はぁ‥…よし! 集中集中。


「…‥レティ、始める前にもう一度確認しようか」
「あ~お嬢様~、おさらいしましょう~、俺、嫌な予感するんですよ~」

煩いよ、そこ。


「レティ、先ずは少量で様子を見て始めようか。障壁である膜に触れたら魔法陣の状態を教えてね? わかる範囲で構わないよ。それから魔力量の匙加減は任すけれど、いきなり大量を流すのだけは控えてくれる? それは最終手段に取っておこうか」

「お嬢様~魔力ぶっ放しちゃいけませんよ? 魔法陣の防御が誤作動起こせば自爆‥‥あっこの場合、術を掛けられた人限定で。人死にしちゃいますよ?」

「…‥オ、オホホ、わかってますわ‥‥オホホ」

あっ、やっべ。ドーンってぶつけて終わらす気まんまんでした。
最後の手段であっても許可があったから、手っ取り早く段階すっ飛ばして最終手段からやる気でした。ごめんなさい。
俺がやらかすだろうと予想したジェフリーの視線がバスバス刺さって痛い。



コホン



義兄のレクチャーを思い出そう。

脳裏に描く魔力の流れ方は主に二つ。

『末端の両手の指先から毛細血管を通って心臓に向かう』流れと『胸に刻まれた術紋から心臓に向かう』流れ。心臓部を目指すのは同じだけど、内と外側から攻めるイメージかな。攻略ポイントは障壁の結合箇所だって。

…‥えっ、なにそれって言いたくなるよね? 俺だけじゃないよね?



不審な魔法陣に不必要に魔力を流すのは、本来、危険行為。
今更感がすごい。
既にやっちゃったからね。前回、義兄が止めたのも念のためだそうだ。
レティエルは魔力吸収の能力があるから大丈夫なんだけどね。
義兄だって本気で危ないと思えばそもそもさせないだろう。やっぱレティエルの能力を知ってるね。間違いない。



ジェフリーは俺の能力を知らないからか、魔法陣に魔力で触れて平気だと聞いた時は流石に驚嘆していたか。『流石、お嬢様って変わり種ですね~』と褒めていない言葉に引き攣った笑みで応えた。

いけると判断をしたのは俺だ、確信があったのだ。心配させて申し訳ないけど、俺は反省しないよ? 自分の直感を否定したくないからね。

でもね、何故か義兄が不注意だったと反省してたわ。何かごめん。



『危険を顧みないお嬢様のために、お教えします』と棘のある前置きをするのは義兄の項垂れた姿を見たジェフリーだ。目を細めて口角を上げた笑顔風の顔が怖い。


常識的に不審な魔法陣に触らない。魔力も流さない。不必要に魔力を流せば不測の事態を招く危険性があるからだ。まぁそうだよね。なまじ魔力を吸い取れるだけに危険性を軽視しちゃったのは悪かったよ。

『迂闊なお嬢様、お気を付けください』

グサグサ言葉の大釘が刺さるんだけど‥‥睨まれた。はい、ごめんなさい。


ちぇ、再現能力があればなぁ‥‥義兄に安全性を思う存分調べてもらえたのに。残念。‥‥まぁ、ないものはないのだ、諦めが肝心である。うむ。



触れた感触から、俺の魔力を弾いた原因は魔力量の差だと思っている。常に魔力供給していたとは知らず、僅かな魔力しか流していなかったのだ。単に量負け。


単純な考えの俺に義兄は『魔力の供給を止めて見る』ことを提案してきた。
障壁となった膜と魔力回路器官を繋ぐ結合部分を、どうにかしろと? 導入箇所を二つに分けたのはそういうことか。

‥‥これって魔力操作がキモだよね?


「ふふ、レティなら出来るよ。大丈夫」

‥‥義兄のその確信はどこからくるの?

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