転生先は小説の‥…。

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第十一章 帝国(お祖父ちゃん)の逆襲

【別視点】ー①

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レティエルが契約書に魔力を流してから二日経った話。
義兄、ジェフリー、ギウの三人だけの報告会?です。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ご苦労だったね、ギウ」

ランバードの引き籠り先に、スッと音もなく現れた者が片膝を付き忠誠の意を示す。数日前から任務で主の側を離れていた。その彼が急遽帰還した。


あるじはランバードである。影の護衛として片時も離れず守ってきたと自負する。その男が主の『お前の力が必要です』‥‥甘言にまんまと乗せられ、ニンジンを鼻先にぶら提げられたギウは本来の役目以外の仕事に奔走した。

主の命令は絶対。
調査の途中で呼び戻された彼は、主に仕える不甲斐ない同僚たちが自分の足を引っ張ったのかと勘ぐった。無能も足手まといも実害だ。可及的速やかに処理をせねばと、危険思想による謎の責任感が彼を追い立てる。


「若君、急な呼び出しで、調査が不十分です」


主の側に控える無能な同僚ジェフリーが視界に入る。早速、謎の責任感が忍ばせた暗器へと手を向かわせた。『今殺るか、後で殺るか』の二択。本音を言えばスパッと斬りたい、サクッとしたい。同僚の誼みで一瞬で終わらす。俺にだって情けはある。と危険な責任感が昂らせる。

処罰対象認定を受けたジェフリーも、また同じ穴の狢を地でいく。
主に不遜な態度(見える)のギウに苛立っていた。『躾されてない野良犬は、調教が必要か』時短で洗脳してやると、ギウに負けず劣らず極端な危険思想を持つ。

「ギィ~ウゥ、若の前でその態度、何? ホント覚えの悪い犬っころだよね~」

お互い、癇に障わった。

「お前達が使えないから俺が代わりに諜報なんぞやってんだ。この駄犬が」

『無能な同僚が自分を邪魔する』とギウは憤る。不愛想な表情が無になった。『主の役に立たない=廃棄処分』…‥どこまでも危険思想の持主である。

「あ゛? 躾けのなってない犬っころのくせに生意気。悔しかったらお手の一つでも覚えたら?」
「クソが。お前こそ、若君の身代わりで殺されるしか役に立たないくせに。何でまだ生きてんだ? おい」
「はああ?! 若に選ばれた俺が早々死ぬわけないでしょ。そんな事もわからないからお前は犬っころなんだよ。バーカ」
「他人に化けるしか能のねえ駄犬がほざくな。殺るぞ」
「キルしか出来ない狂犬のくせに。ちょっとは、マテを覚えたら? 野犬」
「あ゛?!」
「あ゛?!」


見事に息の合った二人。駄犬と野犬の相性は意外と良いと、斜め上の解釈でじゃれ合う二人に温度の無い視線を向けるランバード。

『ああ、犬と言えば…‥』犬繋がり。先日の猟犬ガザとの遣り取りが脳内に浮かぶ。

質問はのらりくらりと躱し、帝国に赴くレティエルの立場の弱さは指摘した。義祖父の指示をゴリ押しせず、サラリと思考誘導で方向性を示す。

初対面で見せた人柄も、ころころと様変わり、飄々としたガザ。『趣味が情報収取、どんな些細な噂であっても、興味を惹かれると収集したくなる』‥‥裏を返せば暴かれたくない情報が、この男に罹れば嗅ぎ取られる。没個性で影が薄い彼は印象に残らない。潜り込んだとしても目立ない彼は記憶に残らない。だがそれとて作られた特徴である。対面で緊張した記憶が忘れられない。

そのガザが、ランバードに協力を申し出た。これが彼の杞憂を晴らす。人材不足に悩んだ時間が嘘のようだと、棚から牡丹餅に歓喜した。

(‥‥まさか、あの契約書に隠されていたモノが、ガザの気を惹くとは)

ガザを有能な諜報員と認めているだけに、思いがけない幸運に胸中でほくそ笑む。

(ガザは興味の対象の調査に赴きました。後は任せておけば良いでしょう)

義祖父の追跡に特化した部下の手腕に期待が高まった。








「さて、お前達、じゃれ合うのは後にしなさい」

主の冷たい声色に場が凍る。
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