転生先は小説の‥…。

kei

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第十二章 分水嶺

⑥・神殿と言えばアレー1

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ちょっと怖い想像しちゃった。
ジオルドに関しては義兄に丸投げで。うん。それがいい。
俺に出来ることと言えばせめて情状酌量があればと祈るぐらいだ。日頃の行いが良ければ何とかなるって! 悪けりゃ自業自得でしょう。


ふぅ、やれやれと感情の起伏で大忙しのメンタルもちょっと落ち着きを取り戻したところで、さっきから頭の片隅でぷかぷか浮いてる引っ掛かりに意識を向ける。

何だかねぇ、スッキリしないんだよねぇ。
神殿、神殿‥‥何か忘れてる気がするんだけど‥‥あ?! そうだ! 神殿と言えばアレだよ、アレ。
守護神!!
忘れちゃ不味いよね。


「お祖父様、王国は根強い守護神信仰がございます。この国の統治者は神の代理人と信じられていますのよ? 神殿がそう易々と帝国の属国になることを許すとは思えませんわ」
「新総神殿長は最有力候補を抑えて伸上った野心家です。おまけに魔力保持者を嫌気する否定派の代表格ですよ。その彼がおいそれと魔力保持者優位の帝国に大人しく従うとは想像できません。協力者は神殿をどう攻略するのでしょうか? お義祖父様は何かご存じでいらっしゃいますか?」

ボソッと『穏健派に頭を挿げ替えればいけるか? 過激派を一掃すれば…』と耳に纏わる義兄の闇の声。うん、幻聴、幻聴に違いない。

トップが変わって今の神殿がヤバめなのはわかった。間違いなく壁になるよ? だけど、お祖父ちゃんは『極秘扱いの作戦に儂は参加しておらんからのう。知らんのじゃ』と何処吹く風だ。

‥‥ちっ。じいじ使えなーい。

うん、孫はじいじに容赦ないのだよ。

「の、の、なんじゃのう、その顔は、儂が知っておるわけなかろうて。一介のジジイじゃぞ?」

えー、その慌てぶりで? あっやしーな。


「お義祖父様。神殿は陛下を支持しています。新総神殿長は魔物の脅威から守られているのは陛下の統治が守護神の御心だと声高らかに人心を煽っているようですよ」

ホラ、義兄も既知だと判断して話始めたよ。



先代あたりから求心力を失くしていた王家はクリスフォードのやらかしでまたもや支持率を下げた。特に下級貴族の恨みを買ったようだ。詳しいことは知らないけど好い様に使い捨てたからだと予想がつく。それに王妃の不審死もジオルドの件も王族の不信を誘うに充分な出来事だ。貴族どころか国民も離れそう。今のとこ情報規制が役立ってるので騒ぎにはなっていない。

神殿の不祥事は隠蔽されているみたいだけど‥‥。

「それはそうじゃが、それぐらいは協力者が上手くやるじゃろうて」
「お祖父様、協力なさるお方は神殿を相手取って立ち回れるお立場なの?」
「む? 協力者が持ちかけた属するのでよろしく話じゃよって何か算段があるんじゃろ」

え、なにそれ。
帝国側のオファーじゃなくて? 売りに行ったの?! マジかよ。
やっぱタコ殴り、いや膝蹴り踵落としぐらいはいっときたい。くそ。ミリアに身体強化教えてもらおう! 
俺の心の不穏な願望を感じ取った‥‥のならちょっと怖い義兄が徐に話を変えた。 

「そう言えば皇子殿下はライムフォード殿下と交流を深めたいとご希望でしたね」
「う‥‥む、そうじゃが‥‥な、なんじゃラムよ? 唐突に」

あ、お祖父ちゃん警戒したね?
フッと軽く息を吐いた義兄がニコリと悪魔の微笑を浮かべてる。

「今回の皇子殿下の使節団が組まれた切っ掛けである第一王女のご婚約披露ですが、ご成婚後臣籍降下が決まっています。第三王子殿下は第二皇女殿下の婚約候補となられ今や留学生という名の人質に。王弟は、アレなので。肝心の陛下は公の場に姿を現さなくなられたとか。それに王妃の不審死。第一側妃が社交を精力的になさっているのに対し第二側妃は幼い第二王女と共に離宮に籠られていらっしゃるとか」

饒舌な語りは王家の現状を。そして一旦口を閉じて何かを思い浮かべたのか剣呑な雰囲気を醸し出す。

えっ? 今度は何? 肝が冷えるんだけど。

「ああ、そう言えば思い出すと悔しさの余り血涙が流れてしまいそうですが仕方ありません。阿呆の元第一王子と公爵家の至宝であるレティの婚約解消も次代の後継を狂わせましたね。アレも故意に仕組まれた黒幕不明の妨害ものだと判明しています。公爵家は黒幕に感謝していますので炙り出すのを止めましたが、お義祖父様もですよね? その代わりと言ってしまって宜しいのか判断の難しいところですが怒りの矛先を王家に絞りましたのでは? ‥‥ふふ、お義祖父様、ですのでご安心を」

黙って苦々しい表情で聞いていたお祖父ちゃんだが最後だけニタリと黒い笑みを浮かべる。双方気が合ってんじゃん。だから怖いって。

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