転生先は小説の‥…。

kei

文字の大きさ
286 / 365
第十二章 分水嶺

しおりを挟む

公爵当主達の契約魔法は生死に関わるから当主は陛下を裏切れないと伝えるに留めた。実際それしか判らないし。『レティエルであれば解術可能』は臥せた。

‥‥球体みたいな変異魔力じゃなければ簡単に解けると思う。球体は時間を掛ければいけるはず。ヴォルグフ達で練習する前に回収されちゃったのは惜しかったなぁ。貴重な実験体だったのに。あ~あ。

思考がすっかり義兄に染まった自覚のない俺は手放した被検体を惜しんでいた。術を解いた後の影響が不明なため今回は手放したが、挑戦したい気持ちは捨ててない。
‥‥はぁ、貴重なサンプル、勿体なかったなぁ。

「道連れとは!」

忌々しいと吐き捨てられた言葉にハッとした。
あ、話の途中!

「レティ? 疲れたのかい?」

あ、やっべ、違うこと考えてた。
ぼへーと余計な事を考えてたせいで義兄に疲れたからと勘違いされた。

「もう眠いのなら続きは明日にしようか?」


本日終了と宣言されそうになって、慌てて「お父様のことを思っただけですの」およよよとハンカチで涙を拭うフリで俯いた。二人+爺様のしんみり感が、ちょっとだけ居た堪れない。およよよ。
後ろに立つジェフリーが、ハンッと鼻で笑ったのを聞き逃さない。よし、後で横腹を突こう。





お祖父ちゃんも公爵達が反対派に回ると協力者の計画は、破綻か良くて大きく後退、最悪は戦争になると気付いたのだろう。今更‥‥いや違う。今知れたからこそ計画を見直す時間が設けられたのだ。そうは言ってもお祖父ちゃんの複雑な心境は変わらないか。
公爵達が先頭に立ち一丸となれば貴族達は抗戦を強いられる。そうなれば国土は焦土と化す。嫌な予想が脳裏に過る。



はぁ、と幸せが走って逃げだしそうな溜息を吐くお祖父ちゃん。表情に浮かぶ疲労は予想される展開を憂いてか。

「儂の話を聞けばもう逃げることは許されんぞ? 良いのか?」

あ、違った。

対峙したお祖父ちゃんの顔からは疲労は消え勇ましい。まさに武人の顔だ。強い視線に晒された俺は自然と背筋が伸びた。

あ、これマジなやつ。おふざけはダメなやつだ。

お尻を引き締め姿勢を正した俺に、もう一度、静かだが重みのある言葉で、

「儂は密命を受けておる。軍部の作戦とは別もんじゃ。お主らがそれを知るともう逃げ出すことは叶わん。儂の手下として動いてもらわんとお主らを処罰せんといかぬのじゃ。どうだ、手を引くなら今じゃぞ?」

どこまでも優しさを含んだ言葉。孫を危険な目に合わせたくない切なさが伝わってくる。

「…お祖父様‥‥」
「‥‥お義祖父様、もう夜が更けてきたことですし、続きは明日にしませんか?」

能面みたいに表情を失くした義兄が就寝を促してきた。そりゃもうあからさまに。
あ、これ俺をハブる気だな。勘が良いからね、ピンときたわ。

「おお、そうじゃのう。夜更かしはお肌に悪いと、ばあばがよう言うておったわい。ティよ、今宵はゆっくりと休むが良いぞ」

白々しい。このままお休みなさいに持って行く気だ。
ムム、そうはさせない。恐らく今夜を逃すと密命の話はしないよね。間違いなく。



無理強いしないのは、きっと試してるのだと思う。
強いられるのと自発的とではパフォーマンスが違ってくる。精神論云々以前にやる気はないよりあった方がいい。自己満足って大事だよ? それに言われたからやるのと率先してやるのとでは受ける印象が全く違う。

本当に本気で属国に動くのであれば、わざわざ俺達に明かしたりしない。内緒にしたまま俺達を帝国に連れて行き、その後計画を実行するでしょ? こんなメンドウクサイ手を使う必要はないもの。

なのに面倒でも手を回して。
それを思えば、何らかの意図があると考えた方がいい。
やってることは遠回しだけど。
何かをさせたいんだよね? 
まさかこんな夜更けにうんうんと頭を捻る羽目になるとは。

‥‥あー、お祖父ちゃんは受け身姿勢って嫌いだったわ。

実力誇示派が占めるファーレン家。あの家と養子を組むのなら避けて通れないイニシエーションを侮ってたかも。
うん、わかるよニブチンの俺でもね、今が国盗りの好機だってことぐらい。
率先して、結果を示せってことでしょ? 
義兄は知ってたから話を中断させようとしたの?

黙って俺の様子を見守るお祖父ちゃん達の視線。
その視線、問題を解く子供に向けるソレだよ?

えっ? まさかの俺待ち?!



じぃ~と、そりゃもう、恨みがましく、じぃ~と。
話を切り上げようとした義兄をじいーと見つめれば、軽く髪を掻き『はぁ~』と艶のある溜息を吐く。一々仕草に色気を魅せないで欲しい。目に毒だ。


「レティ、本当に話を続けるの? 無理してない? 眠いの我慢してない?」



オカンかよ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

婚約破棄されて森に捨てられた悪役令嬢を救ったら〜〜名もなき平民の世直し戦記〜〜

naturalsoft
ファンタジー
アヴァロン王国は現国王が病に倒れて、第一王子が摂政に就いてから変わってしまった。度重なる重税と徴収に国民は我慢の限界にきていた。国を守るはずの騎士達が民衆から略奪するような徴収に、とある街の若者が立ち上がった。さらに森で捨てられた悪役令嬢を拾ったことで物語は進展する。 ※一部有料のイラスト素材を利用しています。【無断転載禁止】です。 素材利用 ・森の奥の隠里様 ・みにくる様

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

【完結】私が誰だか、分かってますか?

美麗
恋愛
アスターテ皇国 時の皇太子は、皇太子妃とその侍女を妾妃とし他の妃を娶ることはなかった 出産時の出血により一時病床にあったもののゆっくり回復した。 皇太子は皇帝となり、皇太子妃は皇后となった。 そして、皇后との間に産まれた男児を皇太子とした。 以降の子は妾妃との娘のみであった。 表向きは皇帝と皇后の仲は睦まじく、皇后は妾妃を受け入れていた。 ただ、皇帝と皇后より、皇后と妾妃の仲はより睦まじくあったとの話もあるようだ。 残念ながら、この妾妃は産まれも育ちも定かではなかった。 また、後ろ盾も何もないために何故皇后の侍女となったかも不明であった。 そして、この妾妃の娘マリアーナははたしてどのような娘なのか… 17話完結予定です。 完結まで書き終わっております。 よろしくお願いいたします。

悪役令息(冤罪)が婿に来た

花車莉咲
恋愛
前世の記憶を持つイヴァ・クレマー 結婚等そっちのけで仕事に明け暮れていると久しぶりに参加した王家主催のパーティーで王女が婚約破棄!? 王女が婚約破棄した相手は公爵令息? 王女と親しくしていた神の祝福を受けた平民に嫌がらせをした? あれ?もしかして恋愛ゲームの悪役令嬢じゃなくて悪役令息って事!?しかも公爵家の元嫡男って…。 その時改めて婚約破棄されたヒューゴ・ガンダー令息を見た。 彼の顔を見た瞬間強い既視感を感じて前世の記憶を掘り起こし彼の事を思い出す。 そうオタク友達が話していた恋愛小説のキャラクターだった事を。 彼が嫌がらせしたなんて事実はないという事を。 その数日後王家から正式な手紙がくる。 ヒューゴ・ガンダー令息と婚約するようにと「こうなったらヒューゴ様は私が幸せする!!」 イヴァは彼を幸せにする為に奮闘する。 「君は…どうしてそこまでしてくれるんだ?」「貴方に幸せになってほしいからですわ!」 心に傷を負い悪役令息にされた男とそんな彼を幸せにしたい元オタク令嬢によるラブコメディ! ※ざまぁ要素はあると思います。 ※何もかもファンタジーな世界観なのでふわっとしております。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

処理中です...