転生先は小説の‥…。

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第十二章 分水嶺

㉑・困惑ー2

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「お義祖父様、今のお話にレティの望みは反映されているのでしょうか。それにレティに責任を押し付けないで下さい。彼女は被害者ですよ? まぁ貴族ですからその言い分もわかりますが、それでもです」
「お義兄様!」

‥‥だよね? だよね? ちょっと俺の所為かもって錯覚しちゃったけど俺、悪くないよね?

シュンとしてた俺がパァーっと顔を綻ばせたのを、ザクワン爺ちゃんに「お嬢様にも責任はありますぞ」と見咎められた。トホホ。


「レティ、君はどうなの? ああ、お義祖父様や家のことは考えなくていいからね。本音を聞かせてくれるかな? 私も義父上も義母上もレティに無理強いさせる気はないよ。フフ、大丈夫。何も国は帝国や王国だけじゃないからね?」
「お義兄様!」

おお! 悪人面の義兄が天使に見えた! 
レティエルを道具扱いする奴等とは違う。心底心配して、慮ってくれてる。嬉しい! ちょっと不穏な発言も混じってるけど‥‥まっ、いっか。
軽いノリに聞こえても義兄は有言実行の人。やると言えばやるだろう。だから俺もここは素直にキメタイ。

「わたくし、そのような婚姻は嫌です。その、お祖父様の仰ることはわかりますが、わたくし十年も殿下の婚約者の立場でいました。その間、自由な時間は限られて趣味だって遊びだって、我慢を強いられました。それなのに当のお相手は好き放題。あんな馬鹿のお相手をしてきたのです。もう自由にさせて下さい。わたくしは…‥魔法術を学びたいのです!」

ごめんねーわがまま言っちゃって。でもねーちょっとは自由が欲しいの。
生い立ちがそれを許さないのはわかるけど、一度ぐらい自由を満喫させて欲しい。正面から「かなり自由になさっていたとお見受け致しますが」の圧が。うう、俺がそう思ってないのが問題なの。だから許して?

独白を聞いたお祖父ちゃんの、何とも言えないその表情‥‥。なに? 文句ある?

「…‥ティや、お主は好いた男でもおるのか?」
「は?」

物凄い勢いでぐりゅんと顔を向けてきた義兄。うん、ガン見止めて? うん、眼圧凄いことになってるよ? もう恐怖しか湧かない。お祖父ちゃん達よ、そこでニマニマしない。


これ以上お祖父ちゃんに主導権を握らせると不味い。非常に不味いと危機察知アンテナがビシビシ唸ってる。うん、もうホント止めて。お願いだから。この手の話題を避けてきた意味がなくなるからね? 聞き出そうとする三人の圧に屈せず乗せられず、そんな暇ないでしょと言い切った。
そうレティエルは魔女っ娘ライフを送る夢があるのだ、邪魔しないで下さい。お願いです。

突っ込んだ質問も困る俺は話を逸らす。

「お祖父様、皇帝陛下は我が家にも償わせようとお考えでいらっしゃるの? でも今の我が家は‥‥」

ピクリ。
お祖父ちゃんとザクワン爺に緊張が走った。

え? なに?

「先も言うたが儂らは駒じゃ。手足の如く動く駒じゃて知らぬことの方が多い。儂が知りたいぐらいじゃ」

皇帝の描く未来構想に参画していないので知らないと。誤魔化すでも言い訳するでもなく自分は蚊帳の外だと悔し気で、納得してないのがよくわかる。

でもこれ、言外に俺達に調べろと言ってない? 

当然義兄もその意図を察してる。

「では、これ以上知り得る情報はお持ちでないと仰るのですね?」

ニヤリ。
悪魔の微笑‥‥ってみたことないけど比喩するならそんな感じ? の義兄が。

「足の引っ張り合いを避けたいと情報を欲したのですが、仕方ありません。お義祖父様のお望みは両殿下の処分でしょうか? それとも防衛システムの情報を入手されることでしょうか? ‥‥皇帝陛下は王国を望まれてはいませんね? 帝国の庇護下に置いてしまえば有事の際、壁役どころか手を差し出さねばならなくなります。魔素の発生が著しく低下し、魔力持ちの出生率も減少した王国を、守って下さるとは思えませんが…‥」
「…‥ラムや言葉が過ぎるぞ。これ以上喋るな。儂は聞かんかったことにしてやる」
「そうですか…‥致し方ありません。私はレティを守りますのでお義祖父様は邪魔をなさらないで下さい」
「なんじゃと? 待て、ラム、何をする気じゃ?」
「特には? 邪魔なさらなければ‥‥ですが、ああそうですね義父上の契約魔法は近いうちに解きたいと思います。…‥あとはそうですね、帝国の出方次第? と申しておきます。お義祖父様、こちらで掴んだ情報はお知らせいたしますのでご安心を。それと私達を追う真似はしないで下さい。思い余って魔道具の技術を他国へ提供してしまうかもしれません。ああ、いえ、そんな勿体ないことはできませんね。そうですねえ、他国に潜らせた者を使って工作活動いたしましょうか? 煽動すれば乗ってくる国も少なくはないですし。帝国を狙う国は存在しますから。ふふ、平穏な世が遠のきますね」

さらっと隣接の国々を煽って戦争を吹っ掛けるぞと脅しだした義兄にドン引きだ。
ああ、そういえばレティエルの専属が少ない理由に公爵家の配下の者を他領に潜ませているって言ってたっけ。あれって他国にもいるんだ。はは。もう乾いた笑い声しかでないわ。

お祖父ちゃん達もそんな脅しをしてくるとは思わないよね、ショックだったのか一瞬怯んだのを、見逃さなかった義兄が隙を突いて二人を拘束。室内に仕掛けていた魔法陣を起動させたのだ。

はあ?! な、なにやってんの?!

予想の斜め上を行かれたのだ衝撃は大きい。

「ああ、大丈夫ですのでご安心下さい。その魔法陣の効果は一時です。私達が邸を出た後に解術となるのでどうかそのままでお過ごしください」


爽やかなイケメンぶりで頭を下げてお暇の挨拶をした義兄よ、サマになってる。あ、じゃなくて、俺達はお祖父ちゃん達を残して邸を去ることになった。


ええ?! この展開は読んでなかった!

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