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第十四章 王が住まう場所
嫌な噂ー②
しおりを挟む結界魔道具の魔力を吸い取ったことを、怒られたくないから、義兄が心配だったからって瞳をウルウルしたら、破顔された。
疲れ切った義兄を見ると流石にちょっと…ごめんなさい。
兎に角、何か食べさせて休ませよう。ううっ、いたたまれないわ。
本音を言えば進捗が聞きたい。でもね、給仕中のジェフリーに半目で睨まれたらその気も失せたわ。お前、お嬢様にその視線どうよ? 覚えてろよ。
『軽食を用意させた気の利く妹』と、俺の株がグーンと上がったよ? そこはジェフリーが…。とは絶対に言わない。ふふん、悔しかろう。お前はそこで唇噛んでおきなさい。へへんだ。
食事も摂らずお腹空かないかって聞いたら、当たり前な顔で回復薬飲んで済ませてたから問題ないって切り返された。栄養ドリンク替わりに飲むなよ。処方違ってるでしょ。
これ、普段から常飲してるくちだわ。
ちょっと誰かマジで義兄に生活習慣の指導してあげて欲しい。無理がきくのは二十代までよ? 三十超えたら一気にガタがくるよ? 食事と睡眠は大事なんだからね。
手にしていた報告書をバサリと雑に置いて溜息を吐く義兄。疲労が増しても無駄に艶があるイケメンめ。徹夜明けなのにこの不条理さ。くぅぅ。
それにしても、一体いつの間に報告が届いたのだろう。不思議に思う俺に、そういう手段があるのだと教えてくれた。義兄監修の暗躍組がいるみたい。
…暗殺集団でないことを切に願うよ。
我が家の諜報員を他領にスパイさせてたのは聞いたから知ってたけど、確かその人達って、お家のゴタゴタで連絡取れてなかったんじゃないの?
あ、義兄の部下が繋ぎを取ったのね。そのせいで情報伝達が遅れたとか。それでも無いよりマシだよ。
そっかーごめんね。さぼってんじゃね? ってちょびっと疑ってたの。皆さんしっかりちゃんとお仕事してました。部下の働きぶり、ちゃんとパパンにご褒美貰えるよう報告するから! 社員の人事査定は雇用側の責任だからね!
「お嬢様~また変なこと考えてるでしょ~」
お前は下方修正ね。
それより。
「何が書いてあったの? お義兄様」
「他領に忍ばせていた部下からね、帝国が、『帝国貴族誘拐犯の引き渡しに応じなければ経済制裁を行う』だとか『軍が攻めてくる』だとか可笑しな噂が商人や平民の間で流れていると。噂だけなら放置でいいのだけれど、看過できない状況らしいね」
は?! え、今何て?!
「そんな都合のいい噂、もしかしなくても、もしかしてお祖父様関連で?」
義兄は「うーん」少し考えてから憶測を伝えてくれる。
「どうだろう…。帝国側が流すにしては少々変かな。実はこの噂、王都ではなく地方の、それも魔力持ちに悪感情を抱く地域を中心に流布されている。帝国は魔力の恩恵に浴した国だと認識されているでしょ? その国が自国の魔力保持者を攫われたからと騒ぎ立てて、しかも不用意な発言。下手に否定派を刺激したらしい。もともと燻っていた不満が更に高まって容認派と対立をしている。…明らかに誘導されているね」
え、誘拐された貴族が魔力保持者だと。そこまで伝わってる。情報が洩れてるよね。
「えぇ、誘拐事件と関係ないのに」
「そうだね。だけど、きっかけだよ。国民感情を煽る者がいるのは間違いない。誘拐犯の引き渡しが今や魔力のある者とない者の対立だからね。今、噂の出元を探らせているよ。暫くは様子を見るしかないかな」
「うそぉ…」
自領しか知らない俺は、領地によっては魔力の恩恵に大きく差があるとは思わず、魔道具はまだ金を積めば手に入るが、動力源の魔石…魔力の確保が、魔力持ちの存在に左右されるとは考えもつかなかった。
そう、魔石の魔力が空になれば新しく魔石を購入するか、魔力を注入させればいいと思っていた。だから領地によっては深刻な魔力不足が起こっているだなんて、気付きもしなかった。
「使節団の視察予定地に問題の地域が含まれていた。恐らく何らかの手は打つと思うが…。何事もなく済めばいいけれど、あの両殿下でしょ? 少々不安でね」
ひゃー、義兄よ、変なフラグ立てないでー。
「だから余計にあの魔道具を完成させないと。使節団の動きもだけれど、お義祖父様や軍の動きも気になるからね。……悔しいことにこちらは人手不足。補える方法は片っ端から試してみたい」
「お義兄様、無理なさらないでください」
うー、我が家の動きを封じた奴、恨むよ!
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