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第十四章 王が住まう場所
お城の噂話
しおりを挟む王宮内のアウェー感半端ないわー。
あの側妃、今まで猫被ってたわけかー。数十匹は被ってたよね?
話を聞く限り猫ちゃん被るの止めちゃったのかな? おーい、被ってた猫ちゃん、どこ行ったのー?
第一側妃って淑女の鏡とご婦人方から高評価を得ていた女性と聞いていた。ちょい忖度あったとしても評判の良さは嘘ではないはず。記憶にある彼女はいつだって控えめに王妃を立てていた。自分より下位の爵位であった王妃に対してもにこやかな笑顔で側妃の立場を弁えて仕えていたよね?
ふえー従順な女性だと思い込んでたわー。すっかり騙されたわー。はぁぁ、淑女って怖い。
城内で囁かれている噂を聞いて、何だかなーって溜息でちゃう。
うん、アンチ公爵派?がいそいそと噂流してんだよ。
噂は真実かどうかが焦点ではない。誰が何の目的で行うのかが大事。噂って手っ取り早くダメージ与えられるし、常套手段なんだよね。
我が家を貶めようと第一側妃側が王宮に勤める貴族を使って流布させていると匂わせたのだ。
そう、匂わせ。
でも、証拠なしに第一側妃の差し金って言っちゃったら、それこそ浮評だと非難の的。如何様にも言い訳できちゃうからね。下手をすれば名誉棄損と言い出しかねない。攻撃材料を作ってしまう。今あちらさんと反目するのはまずいでしょ?
言った言わない問題は、ものすごーくデリケートなの。
側妃側がマジで我が家に喧嘩吹っ掛けに来たのか。手を組ませないよう第三勢力?の横やりなのか。単なる嫌がらせか。まだまだ判断材料が乏しくて困る。
『姦計を用い王妃とクリスフォードを嵌めた』『裏の顔を持つ王弟と並ぶ悪の公爵』『公爵夫人は帝国に情報を売る間者』『娘と後継者を失くしたのは天罰』『天罰を恐れた公爵が自宅に引きこもった』『陛下から蟄居を沙汰された』などなど。で、新たに『帝国からの密入国者を利用している』『人身売買』が加わった。
あからさまに国賊の濡れ衣を被せに来たね。
「露骨ですわ」
盛るかー、盛ってきたかー、ジオルドの分も盛ってきたよー。
頭痛が痛いってやつだよ、これ。
・・・ん?
何だろ? 何か引っかかるんだけど・・・。
あ! そうだ、思い出した。お祖父ちゃんの話だ。
王国側の協力者はジオルドを帝国貴族誘拐犯に仕立て上げ、身柄を引き渡し交渉でゲットする。とか非人情な計画。立案者の精神状態を疑いたくなっちゃうやつだ。
そうなるとこの噂の出元は違う人だ。
・・・出元はジオルドを庇いたくて? 仲間?
ちろっとダルを見ても首を横に振って否と示す。
違うんだ。
それにしても・・・どうして我が家なの?
うーん、確実性を求めてきた感じ? もしかして帝国人と結婚したのもそれが目的とか、言い出さないよね? そんなの苦労して一緒になれた二人に失礼だよ。
両親の結婚にケチつけられた気分で胸糞悪い。ちっ。
「お、お嬢様・・・ご気分を害しました?」
不愉快さを前面に押し出したせいで、室内の空気が重く重くおもーく肩に圧し掛かった。二人のね。
胃をさすさすしながらトホホな顔のライオネルと顔色の悪いダルが視線を交わし頷いた。まだ言葉を紡ぐ気力はあったのか。ゴクリ。どちらかの嚥下の音が耳についた。
「・・・おっ王弟閣下の事件の裏に当主様の暗躍があったと・・・・かないとか。被害者面しながら実は加害者で仲間割れの結果、罠に嵌められたと。宮仕えの中には不心得な言動を犯す者もいると潜入の者の言です」
はああ?!
ダルも遠慮気味に。
「ジオルド様が裏ブローカーではと噂する貴族が現れました。噂はごく最近です。侍女や侍従ではなく元王妃派で、閑職に追いやられた中堅の文官が語っておりました。その男も二日前から無断欠勤をしています」
むう・・・ん? それって口封じ的な?
文官に意識を向けたので怒りはちょっと和らいだ。感情の変化を機微に察したのか、
「火のないところに煙は立たないと申しますが、火元は作れば宜しいのです」
うっわー、ダルさんや、こええよー。
「人を陥れる初手が噂ですから。ジオルド様も王妃様への横恋慕を噂されましたが敢えて利用し、王妃側を調べていたのですが・・・・噂の火消しをせずに放置していたのを逆手に取られましたね」
ダルさんやぽろぽろ零しとるよ。
話題と俺の意識はそっちに向いた。
ーーーーーー
「それでお義兄様、一体何があったのです?」
「これを見て」
コトリと置かれたのは親機一号くん。
ん? 魔力の痕跡は・・・?
「え? これ、消えてますよね」
気のせいではなかった。マップはそのまま反映されていたけど足跡が消えちゃってた。
「故障ですの?」
「実物を見てみないと判断がつかないかな。ジェフを回収に向かわせたよ」
二号くんは作動中なので故障の線は濃厚なんだけど、決めつけないのが技術者。
帰ってくるまで大人しく待つことに。
「王家の居住区といえば、お義兄様先ほどのお話お聞きになりまして? 居住区に足繫く通われる側妃の父親と年寄り公爵。ああ、青年を連れたヴァンダイグフ子爵もでしたね。・・・ねぇお義兄様、そのお付きの青年はもしかしてエリックではありませんか」
「恐らくね。まだ婚約は未発表だから知らないのも無理はない。それにしても年寄り公と侯爵が共に側妃の下にねぇ。・・・視察メンバーは息子夫婦が代理だったよね。当人は欠席なのかな」
「あの方、お年の割に矍鑠となさってて、いつもお元気でしたのに体調を崩されたのかしら?」
何か嫌な感じがする。ちょっとざわざわとざわつくんだけど・・・
「お義兄様、お母様ってお父様と別行動なさってるのは間違いないのね?」
「魔力を真似ることはできないからね。間違いないよ。それに義母上の代わりを務めているのは擬態能力を持つ部下だ。義父上の護衛に、武人でなくとも意外と役に立つよ」
肉壁として・・・ボソッと聞こえた義兄の声は、聞こえなかったことにしよう。ぞぞぞーときたわ。
「おおお義兄様、このままここでお父様がお戻りになるのを待ちますか? わたくし何だか嫌な予感がしますの。お母様が別行動で王家の居住区に向かわれたのも気になりますが、それよりお父様の契約魔法を早く解いた方が良いような気がしますの。どうしましょうか」
「レティは義父上の契約を解術を急ぎたいんだね。・・・わかった。ジェフが戻り次第でいいかな? ライオネルの話で聞いた通り影の護衛も義父上につけているし、第一騎士団もライムフォードの護衛も警備に就いているけれどそれでも義父上に? アレのせいで近づけないかもしれないよ? それでもいいの?」
再入城が難しくなってもいいのかと問われると、ぐへぇってなるけどね。
俺の気持ちが変わらないとみた義兄は、レティがそうしたいのならと了承してくれた。
「お義兄様は、反対なさらないの?」
「ふふ、私はいつだってレティの味方だよ。・・・君の望みを叶えるのが私の役目だからね。いつでも頼って欲しい」
珍しく神妙な雰囲気の義兄を前にして腰が引ける。
「えぇぇとお、ありがとうございます?」
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