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第十四章 王が住まう場所
選択ー③
しおりを挟む『暗号文の内容は正しい』を前提に謎を詳らかにしよう。
ちょこっとミステリー風味にしました。はい、ごめんなさい。
遊んでないよ? 至って真面目だし。ゆっくりする時間がないのは重々理解してる。でも二人のうちどちらを優先していいのかまだ悩んでんの。
いろいろ考えちゃう。
取り合えず暗号に注目した。
内容もさることながら証拠を掩蔽してまで残したのをね。意味深でしょ?
しかしどうして掩蔽まで・・・そこまで慎重だなんて。やっぱり母さんは自分が戻れないとわかっていた? いや、まだそうとは限らないって。単に保険のつもりで置いただけかも。すっきりしない頭で考えてもでてくるのはネガティブさ。これじゃあ判断が鈍っちゃう。不安の面持ちのままだと義兄を心配させるよね。それだと過保護になっちゃう。
気持ちを切り替えようと頭を振ると視界に得意満面なジェフリーが映った。
そういえば、こいつ『俺だから見つけられましたよ~。俺でないと~無理でしたね~、凄いでしょ~。』とウザ絡みしやがったな。
『この暗号は誰に宛たものか』
『クレアの名を記したのは』
『血文字と魔道具を掩蔽してまで残したのは』
「仮定の話をしようか。義母上の身に何かが起こったと想定してあの暗号が残されたとしたら? 一見すれば単なる汚れたハンカチ。いや悪戯書きか。勿論、私達の行動を知らない前提でね」
最悪を想定したメッセージの可能性を示唆された。
知るぞ知る人でなければ理解できない謎ハンカチ。それが残されていたらって? まさに、ダイイング・メッセージ。しかも血痕つき。暗号文は義兄を誘き寄せるエサだと見立てた俺に、これは物騒すぎ。やだな血。
このメッセージはお祖父ちゃん向きだと、はっきり言われた。うん、まあ、そう取れなくはないか。でもね、俺にしてみれば義兄も同じ穴の狢だよ。
「義母上がいないとなれば、城を隈なく探すしかない。そこに血文字のハンカチと義母上の魔力を帯びた魔道具が見つかれば? 事件性を疑うよね」
おおー、サスペンスちっくに仕上げたよ、この人。
よく思いつくねー、感心しちゃう。それにしても魔道具って・・・あっ、一号! でも、母さんの魔力を帯びたって、わかるものなの? え? 調べる方法があるんだ。へー。
「人の血で書かれた記号は、ファーレン領主一族が使う暗号と証言するのが」
「あ、王宮には使節団とお祖父様がいらっしゃるわ。お祖父様ならあの暗号を解けるものね」
「そうだよ。口実をまんまと得たお義祖父様は容赦しないだろうね。おまけに義母上は皇帝の姪。必ず真相を解明し犯人を検挙しなければならない。ふふ、それこそ国運を賭けて、ね」
うわあ・・・追い詰める気だ。怖っ。
対応をミスれば戦争に発展しない? 王国大丈夫?
あ、いや戦争にならなくても王国はかなり帝国に責められるんじゃない?
多分、ごり押しで合同捜査とか、お祖父ちゃんが暴れん坊な将軍さまさまな立ち回りをしそう。
「でも、いくらお祖父様が暗号と言い張ってもそれを真に受けるとは思えませんわ。反論されて両国の関係が悪くなるだけよ。何より間に立たされたお父様の立場が悪くなるだけだわ」
親父の板挟み的な?
「そう、だからこそクレアの名が功を奏する」
「クレア? ああ、暗号にクレアの目撃情報とありましたね。それが?」
まったくわからん。
「思い出して。クレアは帝国を出奔して軍に指名手配されているよね。公爵家の犯行だけでも万死に値するほどの悪行だけれど、王国貴族と手を組み暗躍しているのを見逃すわけにはいかないからね。ふふ、名目上の罪状は如何様にもなるよ。要は、彼女の存在を口実に王国を揺さぶればいい」
うわお、非道。
「え・・・クレアが王国貴族と結託して悪事を行ったとしても、帝国は干渉できませんわ。精々事実の解明か犯人引き渡しの交渉ではありません?」
いや、無理でしょ?
「彼女はエリックと共にレティの誘拐とグレインの死に関与した。それにライラを洗脳し王弟に売りつけた過去もある。王国人と結託して帝国貴族に害したとあれば、誘拐事件と併せても・・・」
あ・・・成程?
にしてもジオルド、ホントに人買いだよね。知ってたけど。
それにしても。
「お母様はクレアを探しに王家の居住区に向かわれたのね。呪いの手がみ・・じゃなくて、暗号にはそう書かれていたのでしょ?」
「義母上の目的がクレアであろうとなかろうと目的は果たされるかな」
合理的な義兄らしいわ。
お祖父ちゃんに、帝国に、口実を与えるためとはいえ何とも厭らしい。
それに、と義兄はエリックの仲間であったライラが母さんに化けて親父の横にいるのも、クレアに洗脳された彼女を救ったのがジオルドとダルであるのも、利用できるとほくそ笑んでた。
うげぇ、どんな悪企み想像したの? ぞわ~としたわ。
・・・ん?
「そのお話では、お父様はお母様の身に危険が生じるとご承知でお許しになられたのでしょうか。お母様を見捨てたと見なされればファーレン家との仲がこじれてしまいますわ」
ううむ、ここで嫌な予感に繋がるか。
俺が不快感露わにしたので義兄は仮定の話だからと念を押してくる。その上で他の可能性もまだあると話を続けた。
クレアの目撃情報をゲットした母さんが偶然出会った無精者のマリア。ペンを持ち歩かない彼女は指を切ることで血をペンの代わりにした。
うん、呪いの血文字、ここに爆誕。
誰でもいい。マリアに情緒面を教育してあげて。
「ライムフォードが取り仕切る視察に義母上が参加なさらないのは。クレアを理由にしたとしてもらしくないかな。それを義父上がお許しになられたとは。些か不自然だね」
穏やかな顔をしてるがライムフォードは油断のならない相手だそうだ。
「それでもとなれば、断り難い相手からの招待と考えられるね。義母上は王家の居住区を目指していらした。となると招待主は王族。居住区内に立ち入ろうと思えば招待状か許可証が必要だからね。不所持では衛兵に捕まってしまう」
「まさか王族の方が? 今日みたいな日に使節団の接待役を仰せつかったお母様をお呼びになるだなんて。おかしいわ。・・・あ、身代わりの存在をご存じだから今日なの?」
母さんを誘き寄せた人物が王族の線、濃厚。
マジか?!
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