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第十四章 王が住まう場所
異世界の車窓からー③
しおりを挟むライオネルはせっせとメッセージ魔道具に指示と魔力を込めどこかへと飛ばし続けている。
王城では魔道具や魔法術の使用は制限があって使えなかったからね。今がチャンスとばかりにバンバン飛ばして、どんどんお返事がやって来てる。お便りが掌に飛んでくるのって便利だよね。
・・・うん、それはいいんだけどさぁ。数、多いよね?
飛伝はちょびっとな魔力でお届けしてくれる便利アイテム。でもね、でもね。魔力残滓がキラッキラッと慎ましい光を残す中。蛍火の如く幻想的・・・だったのは最初の二、三通。それが幾つも飛び交うとね、 LED装飾ライトの中でお座りしてる気分なの。光の暴挙!
ねぇねぇ、眩しいの俺だけ? 君らは何で平気なの?! おめめも強化されてんの?! くぅぅー眩し!
うう、地味なライオネルが電飾人間になっとる。
「レティ?」
刺激的な情景をギュッと目を瞑ることでやり過ごしてたのに。声を掛けられては無視できない。飛んで来たお返事を一斉に聞くだなんて馬鹿な真似をしない限り、飛伝は消えない。まさに車内はイルミネーション! こんな中で俺だけ細目、いや糸目なの。とほほ。
「なあにぃお義兄さまぁ」
目がしょぼしょぼ。これには流石の義兄も引いたな。
「うーん、視覚が過剰に反応しているのかな? ・・・それにしても、目の前の魔力を吸収していないね。いつもなら軽くでも魔力を吸い取るでしょ?」
無意識に魔力を欲しがるのに、調子悪いのかなって聞いてきた。
え? 何その節操なし。
そんなことしな・・・くはないな、やってたね。偶に目についた魔力、吸ってたわ。わはは。
でも、これ吸うのまずいでしょ?
「うっ、お言葉ですが、大事な魔道具の魔力を吸い取ったり致しませんわ」
「ふふ、成程レティは気を遣っていたのだね。良い子だ。・・・ところでレティは城でお茶とお菓子を食べていたけれど、もうお腹が空いたのかな? 流石に馬車の中では無理だけれど、ほら、これを食べるといいよ」
「はっ?! な、なにをーーー」
いきなりの話題転換。しかも食いしん坊扱い。うううー、デリカシーないね! このやろー。
差し出された手には、キャンディーが・・・包装紙の両サイドをネジって包んだあの形・・・まさにそのキャンディーが美味しそうな匂いを放って目の前に。
は? オバチャンかよ。
じゃなくてー。
これ、見て分かる、美味しいやつだ。間違いない。
俺はいま猛烈に瞳を輝かせているだろう・・・糸目だけど。
ちょっと食いしん坊キャラにされたけど、まあ、キャンディーくれたから許してあげる。ぬはは。
電飾マンは大人しい。
包み紙の上からでも美味しいのが分かる。むふふ、さっそく。
あ、電飾マンの分は無いからね? わかってる? ならよろしい。
コホン。
公爵家のご令嬢らしからぬ行いだが、お口にポイっと放り込むとふぉわぁと独特な甘さに蹂躙された。
ふぉごふぉご、おいちぃ・・・ん?
うむうむ・・・何となくだけど、目の刺激が減った気がする?
それにこの味。これ、間違いなく魔力だわ。何というか渇きが満たされ?た的な感じ? 味覚を刺激されたんじゃなくて、本能がそう言ってる。
まさかと思い義兄の顔を見ると、したり顔で、それはそれは大変ご満悦なご様子でした。
「ふふ、美味しい? レティの大好きなお菓子よりも濃厚でしょ? 新作だよ」
スイーツ男子義兄(作る人)お薦めの新作か。因みにレティエルは食べる専門。
成程、美味しいわけだ。
コクコク。
成程、俺は察した。
義兄がいつもくれるお菓子の味は格別。濃厚で腹持ちが良くて、食べるとこの上ない幸せに包まれるスイーツ。あれって、濃厚なのは味じゃなくて、魔力だったのか。どうしてお菓子に魔力の味がするのかはわかんないけど、めちゃくちゃ美味しかった。それにこのキャンディー。お口いっぱい魔力が満ち溢れてる感じはジューシー。はああ~とてつもなくクセになるね、この刺激。ヤバいわ、はまるぅ~、
口の中で転がしていると、様子を伺っていた義兄が確信した声で。
「レティ、目の刺激は減ったね」
ひょえー、耳元で甘いボイスで囁かないでー! ゾワッとしたわ。ゾワッて!
不思議と電飾マンを直視しても平気になった。どういうこと? 訳を知りたくても、睨んでも、にっこりされるだけ。答える気ないな。このやろう。
ライオネルの手前、説明しないね? 内緒なんだね?
彼の悟りきった顔。知らぬ存ぜぬを貫く気なのがよくわかる。うん、長生きの秘訣だな。多分、製法的に知られちゃうと不味いモノを作り出したね、この人。
「ふふ、レティの口に合って良かったよ」
俺の不満は甘露魔力とともに呑み込んだ。義兄のモノ作りに対する熱量を侮っていたわ。マジで。
電飾マンが元の地味男に戻った頃。王都を抜けた。
後はひたすら馬車を走らせるだけだとダルは速度を上げ、俺達は気を引き締め今後の計画を練る。
ハイデさんから追加報告は何度かあり、親父達ご一行様の足取りは容易に知れた。途中、休憩を取ってくれたお陰で、俺達との距離が縮んだのは僥倖か。あのままだと鉢合わせの可能性が高かったからね。向こうは視察にどれほどの時間を予定しているかわかんないけど、夜会イベントが控えている以上帰路は早い。そうなるとこの長閑な・・・周囲に人家も畑も見当たらない、何故かぽつんと神殿がある・・・だけの道中、隠れる場所がない。エンカウントだけは避けたい。
「神殿に立ち寄ってのは偶然でしょうか」
何か引っかかったのかライオネルが疑問を口に。義兄も・・・悪い顔になっとる。まあ、気持ちは分かる。ここでまた神殿だもん。何かあると考えるぐらい用心しとけばいいっか。
今にも思考の沼に堕ちそうな義兄は、サッと車内の仕切り窓を開けダルに神殿に立ち寄れと指示を出した。え? 寄り道すんの? 何しに?
「え? 立ち寄るの?」
「ああ、馬も休ませないと可哀そうでしょ? 一度、休憩を挟もうか」
「若君・・・連絡は如何致しましょう」
義兄なら回復薬飲ませて突っ走るかと思ったのに。意外とお馬ちゃんに優しい。
「ふふ、この先の神殿ならダル一人で制圧できますね」
まったくもって義兄らしかったわ。
こらこら、ダルっちに何させる気なの?
「若様、一行は殿下の別荘に到着。侵入を試みるので許可を求めてきましたが、以下が致しましょう」
「え? もう着いちゃったの?」
「・・・侵入経路の確保と周辺の索敵を。緊急に限り戦闘は許可しますが不殺を徹底させなさい」
「はっ!」
わお! ちょっドキドキしてきた!
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