告られました。

わこ

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可愛い女の子は限りある資源だと思うけど……。

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分かんなくなってきた。いよいよ頭がこんがらがってきた。ただでさえ、振れば音が鳴りだすようなアタマなのに。

こんな風に問題の打開策が見えない場合。そもそも論で、どこに問題があるのか見えていない可能性がある。
なら、大前提の解決策は一つだ。問題をまとめてみましょう。

まず一つ目。どうして俺と田岡が気まずくなったか。とりあえず、時系列で。

田岡は俺に告った。俺は一応、フッた感じになってる。でもカラダだけの関係は持っちゃった。しかも継続。
しかし。俺は冗談で面白おかしくやっているだけだと、田岡はそう思っている。昨日の物言いだと多分、弄ばれてるとか思ってる。俺の田岡に対するタカリ行為、その他数々の迷惑な言動を総合すれば完全に自業自得。
その結果。ふざけんじゃねえぞオラ、今日という今日はマジ思い知れ。って流れで田岡キレる。半ば強姦。罪悪感に苛まれる田岡。むしろ、ごめんなさい。

以上、一連の出来事。
 
そして二つ目。俺が訳分かんなくなっちゃってるのは何故か。
答え。これはもうズバリ、カナコちゃんだ。

カナコちゃんは田岡に告った。カナコちゃんに告られてから、田岡は俺に告った。
この時点でキマジメ田岡はカナコちゃんの告白を断ったと考えられるけど、瀬戸曰く、二人は付き合っている。けど田岡は俺とヤッてる。

田岡が二股……確実に有り得無い。でももしかしたら魔が射して、男抱きながら一方で女の子と付き合う。……やっぱ田岡には無理だ。

でもじゃあ。これは何。今俺の目の前で繰り広げられている、和やかな男女の光景はどういうこと。
問題点を辿る過程で一体どこを見誤ったのか、結局は振り出しに戻った。

 

「ほら見ろ、これが現実。いつもはズカズカ二人の間入ってって田岡の隣占領してるから、付き合いたてのベストカップルに気づくこともできねえんだよ。そりゃそうだよな?間入ってってる邪魔者はお前だもんな、山本」
「…………」

昼休みを挟んで瀬戸の攻撃も沈静化したかと思いきや、ゼミに使っている教室で俺はまたもや爆撃に晒されていた。
しかも実写付。ゼミが始まる十数分前。俺と瀬戸が座る席よりもドアに近い席で、田岡とカナコちゃんは何やら親しげに話している。
 
机の距離と、他の奴らの声が混じっていることから、二人が何を話しているかは分からない。でも確かに仲良さそう。カナコちゃん、すごく笑顔だ。フラれた相手にこんな接し方はできないだろう。
てことは。答えは一つ。

「ほんとに……付き合ってんの……?」

呆然としながら呟く。見るからに。紛れもなく。イイ雰囲気。

「だからそう言ってんだろ。今更気づくってどんだけだよ」
「だって……気付かなかった」
「奇跡的なバカだな。お前がいなきゃああやって二人の世界浸れんだよ。それ、ことごとくブチ壊してたんだぞ?気持ち分かんねえでもねえけど、もうやめてやれよ」

瀬戸の非難がぼんやりと頭に入ってくる。
二人の仲を引き裂いてやろうとか、そんな考えは毛頭なかった。それ以前に気付いてさえいなかった。

いつもの田岡ベッタリモードを休止して、いささか距離を置いて見てみてはじめて分かる。頼りになるゼミ長こと田岡と、頭が良くて可愛い人気者カナコちゃんの親密ぶり。

お似合いじゃないですか。なんですか、当て付けですか。人前で公然とイチャイチャしてんじゃねーよ。

……性格悪い。俺はこんな卑屈人間に成り下がってしまった。

「ちょっと……トイレ……」

逃げる。尻尾巻いて耳垂らして逃げる。ドアから出ていくには二人の近くを通らなきゃならないから、極力下を向いて早足で。
カナコちゃんの笑い声と、相槌を打って応える田岡の声も小さく聞こえた。

「…………」

廊下に避難しても、嫌な感情だけは残った。田岡は基本的に誰にでも親切だから、どんな相手と話していようが大抵は物腰柔らか。
でも、あれはなくないか。あんな見せつけるみたいに。

昨日は俺のことがまだ好きっぽい事を言っておいて、今日はカナコちゃんと仲良く喋っている。カナコちゃんのニコヤカな笑顔を目の前に、何か言われると照れた感じに困った顔をして。
田岡が何を言われて、どう答えているかまでは聞こえてこなかったけど。それでもイヤなものだった。

カナコちゃんの一言一言に照れまくってる田岡の様子とか。ぼおっと眺めている俺と時折目が合うと、バッと逸らしてカナコちゃんの発言を慌てて止めようとする様子とか。
周りに聞かれたくない二人の会話なら、二人でいる時に話せばいいのに。

なんとなく、田岡は止めさせたがっているように見えなくもなかった。でもカナコちゃんの声には全て耳を傾けていたし、たじたじになった様子は照れている証拠だろう。
それになにより、俺と目が合えばひどく気まずそう。もう一つ言うなら、カナコちゃんまで俺を見てはニッコリと楽しそうに笑顔を向けてきた。そしてそれを横からやめさせる田岡。

何それ。俺、笑われてんの?
ようやく二人の邪魔してたことに気付いたのかって、馬鹿にされてたのかな。

考えれば考えるほど卑屈になっていく。



ゼミの間の田岡とカナコちゃんは、さすがに二人の世界って事にはならなかった。それでも俺は二人の方は見ないようにしていたし、不貞腐れるくらい傷ついていたりする自分に落ち込んだ。
ゼミが終われば、俺は四限に取っている授業に向かう。田岡はと言うと今日はこの後入っている授業はないから、駅前にあるカフェでのバイトに励むことになる。

にしても、狙ったみたいに小洒落た所で働きやがって。これまた似合っちゃうんだよ、爽やかにカフェの店員やってる姿が。上から下まで嫌味な奴め。

やっかみも頂点に達した中、教室を出ていく田岡の後ろ姿を目で追った。机に突っ伏したままウダウダしていれば、同じ教室に向かう瀬戸が襟首を掴んで俺を立たせてくる。

「ったく、めんどくせーなお前は」

と、言った直後に尻を蹴られた。
ヤメテ。マジやめて。今日はソレ厳禁。痛いんだって。

「瀬戸、おまえ……恨む。呪い殺してやる」
「イミ分かんなくてキモい。ほら、さっさと歩けよ。行くぞ」

人の気も知らないで……!

忌々しさを胸にズルズルと連行されていく。反抗しても怒られるだけだから俺は手も足も出ない。
ところがそうして教室を出て行こうとする直前、女の子の友達と話していたカナコちゃんが俺に気付いて呼び止めてきた。

「山本君。ごめん、ちょっと」

意外な人物からの急な呼びかけ。瀬戸と俺は即座に足を止めた。

目を向ければ、にっこり微笑まれる。同じゼミだから、俺もカナコちゃんとは普通に話す。意外だと思うのは俺の心境がそうさせているだけだけど、こうして近くで笑顔を見れば、やっぱカワイイなーなんてうっかり思っちゃうのは男たるもの仕方がない。
けどカナコちゃんはそんな内心を知ってか知らずか、瀬戸に引っ掴まれているのとは反対側の俺の腕に手を伸ばして言った。

「少しいい? 話したいことがあるの。二人で」

にっこり。ちょー可愛いー。
待った。違う。違うから。

「次授業なんだよね? ごめん、すぐ終わるから。……ダメ?」

ダメなもんですか。

「あ、へーきへーき。いいよ、行こ?」
「おい、やまもと・・・…」

女の子の上目使いにやられて瞬時にデレっとし出す俺に、瀬戸が横から呆れた声を発した。
そんな瀬戸には、自分の荷物を押し付ける。

「俺の分、席取っといてー」

ちょっと前まであれだけ落ちていたのに、我ながらゲンキン。
瀬戸のいやーな顔も気にせず、俺はカナコちゃんと教室を出た。


までは良かったんだけど。カナコちゃんに従ってサニーテラスに来た辺りでふと思う。
笑顔に騙されて思わず愛想よくしちゃったものの、カナコちゃんからしてみれば、俺は彼氏との間をぶち壊す邪魔者だ。いい話、聞ける訳ない。

遅いよ。気づくのここでも遅い。

喫煙スペースにもなっているこのテラスには、金属のベンチに人が一人いるだけだった。俺達はそこから一番遠い一角に行き、カナコちゃんは持っていたバッグをベンチに置いた。

「ごめんね、急に」
「え? あ、いや、全然……」

どうしよう。何言われんだろう。
目障りだから田岡君の近くチョロチョロすんな、みたいな事を言うコじゃないとは思う。未だに笑顔だし。

「でね、田岡君のことなんだけど」

いきなり?!やっぱソコっ?
ちょっとまだ心の準備が!

とは言え、付いて来てしまったものはしょうがない。

「……あー……何?」
「うん。あたしがこんなこと言うの、お節介かとも思ったんだけどね……」

……お節介?

「何かあった? 田岡君と」
「……え?」
「今日の二人、様子変だったから。田岡君は聞いてもちゃんと答えてくれないし」

それは、どういう……?
邪魔するなどころか、なんで俺は田岡とのことを心配されているんだ。

半ば混乱してカナコちゃんを見ていると、カナコちゃんはクスッと笑った。

「ごめんね? あたし知ってるの。二人のこと」
「……え」
「告白されたんでしょ? 田岡君に」
「ぇ……え!?」
「あははっ」

あははって。
なに笑顔でさらっととんでもない事言ってるの。

目を見開いて口をパクパクさせる俺を前にしても、カナコちゃんは平然としていた。

「ま……待って……カナコちゃん、何言って……」
「いいよ、慌てないで。大丈夫。他の人になんか言わないから」
「ちょっと待ってよ……え?」

パニック。無様なまでにパニック。ヤキ入れされる方が、少しはマシだったかもしれない。
だって意味が分からない。カナコちゃんはどういうつもりで言っているんだろう。

この子は田岡に告って、その田岡とイイ感じで、でも俺に田岡が告ったこと知ってて、俺達が気まずい状態だと察知したのか心配までしてくれる。

何。何が起きてんの。第一、カナコちゃんは……

「田岡と……付き合ってるんじゃないの?」

どうにかやっとで絞り出して、田岡に訊けなかったことをカナコちゃんに訊いた。するとカナコちゃんはキョトンとして、

「あたしが? まさか。田岡君が好きなのは山本君でしょ?」

と。何を今更、みたいな顔で。

「…………カナコちゃん?」
「なあに?」
「……俺達、男同士だよ……?」
「うん。いいんじゃない?」

良くないよ。このコ軽いよ。ていうか俺も言うこと間違ってるな。

「カナコちゃんは……田岡に告ったんじゃないの?」

デリカシーのデの字もない。俺はこれだから、最低!とか言ってひっぱたかれて女の子にフラれるんだ。

でも、この情報は確かなはず。瀬戸から聞いたことだけど、瀬戸は田岡本人から聞いた話だ。
さすがにこの短いルートでは伝言ゲームにはならなかったようで、俺の問い掛けを受けたカナコちゃんは頬っぺたを押さえた。

「なんで知ってるの? 恥ずかしいなあ、あたし玉砕だから。カッコ悪いよねー?」

しまった、カワイイ。じゃなくて。玉砕?
カナコちゃんの口から出てきた真実は、瀬戸が言っていたこととは様子が異なった。

それはつまり、カナコちゃんは田岡に告白して、田岡は断ったということか。
それにしては、明るすぎじゃない? さっきも凄く仲良さ気に話してたじゃん。

訝しく不躾に窺っていると、カナコちゃんは俺の心内を感じ取ったようだった。

「まあ、分かってたんだけどね。田岡君はあたしなんか興味ないだろうなって」

晴れやかな笑顔には未練も後悔もなさそう。口を挟めず訳も分からず押し黙っている俺を見て、にこっと可愛らしく笑った。

「田岡君って山本君のことしか見てないって感じだったから」
「…………は?」
「気付いてなかった?」

オシトヤカに小さく微笑んでいるのに、言ってることは滅茶苦茶だ。
俺はポカンと立ち尽くし、ただただ黙っていることしかできない。カナコちゃんは唖然とする俺が面白いらしく、構うことなく話を続けた。

「三年になってこのゼミ入って、田岡君いいなあって思ったのが好きになったキッカケ。最初はね? 単純にそれだけだったの」

そりゃそうでしょうとも。稀に見るイイ男だ、田岡は。

「でもやっぱり、好きな人のことは見てれば分かっちゃう。山本君といるときの田岡君、ホントいつも楽しそうで、仲いいの羨ましいって初めはそれくらいにしか思ってなかったけど…でもそれだけじゃないのかもって、なんとなく気付いたの。好きなんだろうなって」

辿るように話していたカナコちゃんは、最後の一言だけ俺と目を合わせて言った。一方、言われている俺は殊更にアゼン。

好きなんだろうなって、好きなんだろうなって、好きなんだろうなって……(エンドレス)

マジで何言ってんのこのコ。俺はすでに白旗を振りまくっているのに、カナコちゃんによる空襲は無情にも終わらない。

「田岡君っていつも冷静で思ってることとか表に出さない感じあるけど、山本君にはそうでもないよね?素っていうか…なんだろう…?でも、それ見てたらあたしに勝ち目ないって事くらい分かったし、その時はすごくショックだった」
「……ごめんね?」

必要ないかもしれないけど、田岡の代わりになんでか俺が謝罪。
好きな男が男を好きでいたなんて、将来に渡ってのトラウマになる。ところがカナコちゃんは明るく笑っただけ。

「山本君、それヒドイよ? 負けた相手に謝られるのはちょっと惨めかなあ」
「え、あ、ごめん、そんなつもりじゃ……っ」
「あははっ。ウソだよ、大丈夫。なんかカワイイねー、山本君」
「…………」

慌てて訂正しようとすれば、カラカラ笑って微妙な切り返しを受けた。これは多分、からかわれている部類。
だけどそう言えば、カナコちゃんはなんで知っていたんだろう。田岡が俺に告ったって。

女の子特有の洞察力、もしくは勘で、田岡が好きだと思っている相手を百歩譲って見抜けたとしてもだ。いつのまにやら告白に踏み切っていたなんて、当人である俺達以外が知ることは不可能だろう。
俺は誰かに言った覚えなんてないし、田岡が言うのはもっと考えにくい。

もしやエスパー?エスパーか?
俺の知らない間に、女の子達はそんな恐ろしい技を身につけていたのか。

「あの、さ……」
「ん?」

特技が超能力とかだったら嫌だな。
途方もなく思いながら、俺はカナコちゃんから目線を外して言った。

「……なんで知ってるの? その……田岡が俺に告ったって」

バカだー。言ってて超ハズい。
対するカナコちゃんは、やっぱりここでも笑顔。

「ああ、聞いたの。田岡君に」
「……田岡に?」
「うん。田岡君って、山本君のことになると冷静じゃいられなくなるんだね」

余計に意味が分からなくなった。笑顔が黒いと思うのは気のせいだろうか。

「山本君のことが好きって話を聞いたのは、あたしが告白した日。ごめんって言ってフラれて、田岡君はそれしか言わなかったんだけど…なんて言うのかなー、意地? ダメな理由くらいほしいと思うでしょ? 知ってたんだけどね」

気のせいじゃないかも。この先あんまり聞きたくない。

「他に好きな人いるの?って訊いてみたら、ちょっと困った顔してた。そうだって言って答えるまで、十分近くかかったんだよ? スゴイと思わない? 本人いないのに本気で悩んじゃって。それくらい真剣に好きって事なんだよねー」
「…………」

……田岡。何やってんのお前。

「面白いからついでに山本君?って名前出して訊いてみて」
「は……?」
「そしたらビックリしてた。驚いてホントに固まる人って初めて見たなあ。その後はもう、可哀そうなくらいオロオロしちゃって、否定しようとするんだけど言うこと全部裏目に出てて。意外と天然だよね、田岡君」

ニコニコと淀みない物言いに、俺は真後ろへと倒れそうだった。
突っ込みどころが多すぎる。田岡は知らない所でアホだし、カナコちゃんはなんか強いし。ついでで俺の名前出すって何。

好きな男が男に恋してたなんていう、哀れな悲劇的少女じゃなかったのか。カナコちゃんは田岡から教えてもらったとでも言いたげに話しているけど、これはどちらかと言えば誘導尋問だろう。
まんまと掌の上で転がされた田岡も田岡だけど、このコはどこまで強かなんだ。

俺も驚いて固まる人の仲間入りになりかけていると、カナコちゃんは無邪気な笑みを向けてきた。

「あれだけ言われちゃうとねー、さすがに諦めつくよねー? あたしが入り込む隙間なんてないんだもん」

何言ったんだろう、あいつ……。

「でも田岡君は絶対に自分の気持ち打ち明ける気なんてなかったみたいだったから、お節介だとは思ったんだけどどうしても気になっちゃって。この前あった飲み会の次の日だったかな? 田岡君、ちょっと元気ない感じの時あったでしょ?」
「あー……」

確か、酔った勢いで過ちを犯した次の日。
色々あったなー。風呂場で初の事後処理体験。

「大体想像はつくんだけど」
「え、つくの?」

マジで?!

「田岡君、山本君絡みの話に弱いし、落ち込んでたから余計にボロ出しやすくなってたみたいね。告白したって聞いたのはその時」

終にはボロとか言い出した。駄目だ俺、人間不信になりそう。可愛い女の子はそう簡単に信じちゃいけない。

人生の教訓を、胸にぶっ刺された。瀕死状態の中で項垂れた俺に、カナコちゃんはもう一つ付け足す。

「あたしと田岡君の事誤解してたみたいだけど、ほんとにそういうんじゃないから気にしないで? さっき話してたのは全部山本君のこと。田岡君も本人目の前にして言われちゃ困るからずっと焦ってた。これからバイトだったよね? 疲れてるだろうなー」

故意による犯行ですか。田岡もすごいコに捕まったな。

どうやら俺の卑屈精神はとんだ被害妄想だったようだ。
田岡もカナコちゃんも俺を笑っていた訳じゃなくて、田岡はカナコちゃんに俺の話題を持ち出されて慌て、カナコちゃんは俺の話題をネタに田岡をからかって遊んでいた。

……どんなだよ。
間違ってるよ、あらゆる面で。

「変な誤解させちゃってごめんね? でも大丈夫だよ。田岡君は山本君しか好きじゃない」
「なんでそんな事……」
「だって辛かったんでしょ? さっきそういう顔してた」
「…………」

カナコちゃんから断言されて、それでも俺は言い返せなかった。

所詮男は女の子に口で勝つなんて事はできない。特にカナコちゃんみたいな女の子は、笑顔で男を誘導しつつ、自分のいいように持って行って最大限楽しむタイプだ。
女の子は強いとか、かわいい子には要注意とか、思うものは結構あったけど俺には他に考えないとならないことがある。

さっきの続き。前提として解決すべき問題。今ここで二つ目の問題は解決した。
田岡はカナコちゃんに告られた。告られたけど断って、俺との事を吐かされる羽目になった。

そして新たに増える三つ目の問題。俺は田岡をどう思っているか。

「…………」

結論。
好き。だと思う。多分。でもこれはダチだからってのとは別モノ。

なぜなら。カナコちゃんから本当のことを聞かされて、体から力が抜けちゃいそうなくらい、ホッとしている俺がいるから。

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