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学生時代の、ほんの気まぐれで、たまたま休講になったその時間、普段は小説など手に取ることはまずないはずが、暇潰しに立ち寄った図書館で適当な列をウロついていたところ、偶然にも目の前にそれがあった。
名の知れたディストピア小説のひとつ。タイトルだけは俺でも聞いた事があった。どうせ暇だし読み始めたそれを、なんとなくそのまま借りて帰った。読み終えたその感想は、胸糞悪い。その一言に尽きる。
時代を先読みしていたと、評価されるディストピア小説がこの世にはいくつかある。
先読みしていた。けれども、それは。今が後だから言える事にすぎない。
人間は社会の犠牲だ。子供は大人の都合の犠牲だ。
ガキの奇声に毎日イラついていた。あのガキは奇声どころか、一言も喋らなかった。
なぜ俺にあの山を教えた。なぜ発掘を俺に頼った。母親と自分を殴った男だぞ。父親と同じことをしたクソ野郎だ。そんなクズにどうしてわざわざ、自分たちを見つけさせた。
平和ボケだなんだとバカにされるようなこの国で、なんだって子供が死ぬんだろうな。ああ。そうか。俺みてえのがいるからか。
ガキがうるせえ。親は黙らせろ。思う事すら許されない。
子供が元気なのは素晴らしい事です。あなたも子供だった時代があったはず。誰かが言った美しい言葉は他の誰かもすぐ使いたがる。美しい言葉を吐き出し自分を美しく偽装する、そんな薄っぺらい連中はそこら中に腐るほどいる。
キレイゴト言うだけ言って気持ちよくなってるキモイ奴らは、善人のふりしてねえでさっさと俺を殺しに来いよ。
テメエらはガキを守りてえんだろ。ガキの成長を見守りてえんだろ。くだらねえ正論ごときで脆い命を守りきれるなら、大人に殴り殺されるガキはいねえよ。
俺はこの先もガキが嫌いだろう。ガキの大声は騒音に感じるだろう。この感情を我慢しろと上から押さえつけられるくらいならいっそ生きるのをやめて死にたい。ガキがうるせえと発言することすら許されない社会になるならこんな世界こっちから願い下げだ。
そっちが善である。ならば俺はどうしたって害悪ということになる。悪者は黙ってろと石投げられるよりも殺してくれた方がまだ人道的だ。耐えられる物事とその範囲は人によって必ず、違う。
ここは親切でいい国だ。多くは優しくて善良だ。だからこそ人間は善意で人を嬲り殺せる。常に極端な方へと動きたがるのが人間の社会だ。だからこの世は悪意で満たされている。
矛盾を矛盾とも思わない。思いもしなければ気づかずにいられる。自分は正しい事をしていると大勢が信じれば信じる程それだけ、その中身は悪一色になる。
善行はいくらでも悪となり得る。本人が善のつもりの悪ほど人をエグれるものはない。信念など持たない人間が自分は善であると信じながら無自覚に行う誠実の偽装だ。
そんな上辺だけの善良な行為でこっちを迫害するからには責任を持って俺を殺せ。誰かを犠牲にしなければ決して成り立たないこの世の中で、自分は関係ないとでもいうような顔をするのを俺は許さない。
テメエらにだけのうのうと生きる権利があるとは思うなよ。大層ご立派な口を叩くからには他人事のフリなどするな。テメエらの大義を貫きてえなら邪魔な俺をテメエで始末しろ。テメエらがその時だけ満たされるために、他人を殺していると自覚しろ。
キツネが食うためにはウサギが噛み殺される。ウサギが逃げ延びればキツネは飢えて死ぬ。これは強いか弱いかの問題ではない。誰かを殺し続けない限り生き物は生きていけない。
「…………」
ふと、よぎる。タコの墨のような。見るからに悪意があっても、俺はあの靄にだけは触れなかった。
俺はきっとあの暗い靄と同じだ。行方をくらましたあのガキの親父は、果たしてどうなったのだろう。
なぜ自分の子供まで殺した。うるさかったのか。あのガキが喚いたのか。それが気に食わなかったのだろうか。
子供は大人の都合の犠牲だ。あいつは俺の前ではいつも無口だったのに。何も喋らず何かを待つように、ただいつも、俺の前にいた。
母親と自分を埋めた親父への恨みはさぞかし深かっただろう。そうでなければあのガキは、この空間に残っていない。あのガキが追い払った真っ暗な霞は、やはりきっと、俺だった。
幽霊にコミュニティがあるのかどうかは知らないが、幽霊同士にもおそらく何かしらはある。
あのガキは確かにあの黒い靄を追い払った。意識を持って靄の前に立ちはだかった。フヨフヨしている奴らとは異なり、あのガキには、最初から自我があった。
自分が自分であるとは何か。自分を形作るものは何か。
ここにあったのはあの子供の意志だ。だから存在する空間が、重なった。重なり、だから、殴った。殴れた。すでに生きていない子供に、ここから、干渉できてしまった。
「っ、……」
キン、と。その時、耳の奥が。突如として詰まるような。
酷い耳鳴り。それを急激に感じ、耳を押さえ、そこでツツ、と。伝う。生温かく。ドロリと。濁って。咄嗟に耳に当てた右手を見てみれば、血だ。
「…………」
だよな。
キレイゴト言って気持ちよくなってるだけのキモイ大人とはお前は違う。お前にはずっと明確な意志がある。目的があった。お前は、戦っていた。
実の親父に殴り殺された。四十年も土に埋まってた。
一瞬でも同情してしまった俺の心はまず間違いなく、あのガキに強く向いている。しかしもう、人のカタチをしたあの子供を、今さらもう。嬲り殺す事などできない。
かの有名なディストピア小説は時代を先読みしていた。そうだろうか。
物語が予言をしていたのではなく、人間がどんな時代でも同じような過ちを犯し続けているだけではないのか。
人類は学習しない。教訓を胸に刻むのは悲劇が起こった直後の限られた期間のみ。時間の経過とともに忘れ去られ、世代がかわればなかったことになる。社会の全てを罪に巻き込むのは、どういう人間か。一握りの権力者か。暴君か。独裁者か。どれも違う。
俺の中にはクズの血が流れている。女子供を殴るクソ野郎だ。気味悪い女の頭で疲れるまでバッティングして、ヨボヨボのジジイの腕を平気でぶった切る怪物だ。
あのガキにとって俺みたいな男は、どいつもこいつも同じに見えるだろう。
キツネが生きていくためにはウサギを噛み殺さなければならない。ウサギが生を全うするにはキツネに飢えを強いなければならない。
キツネは悪だろうか。ウサギは悪だろうか。自分の命を守るために、相手を殺すのは間違いだろうか。
答えはノーだ。俺はそう思う。寛容だの不寛容だのご都合のよろしい話とも違う。寛容か不寛容かを意識した時点で寛容はもはやは成り立たない。寛容とは常に、善ではない。世の中の善悪は、誰が決める。
ウサギもキツネも間違ってはいない。どちらもただ生きているだけ。ただ、一致しないだけ。生き方が。生き方の、向きが。性質が。
どちらともが満足する道はない。だからと言ってキツネを責めるのは生きる事を全否定することだ。だからと言ってウサギを責めるのは生きる事を全否定することだ。
抑圧とは何か。侵略とは何か。全ての人間に同じ考えを求め、強いる事はなぜ傲慢とみなされない。俺には違うものを排除するために大虐殺を法的にやってのけた過去の独裁者と同じに見える。
他人の生きる権利を踏みにじることでしか、生き物は生き続けられない。
社会の営みのための犠牲はおそらく、輪のように延々と連なっている。誰かが誰かのために働く。それによってこの世界の均衡は絶妙に保たれる。しかしこの犠牲の輪は、輪でありながらきっと歪だ。輪であるはずなのに、一握りの上層がある。上層があるのだから、大きな下層も広がっている。
俺はきっと、生まれてから今までずっと、誰かを踏みつけながら生きてきた。そんな事は気づきもしなかった。そんな事は思いもよらなかった。なぜなら俺は概ね満たされていたから。歪な輪の存在になど、気にも留めなかった。その必要がなかった。
何不自由なく、不満も疑問も感じる事もなく、ただ平和に生きてきた。自分が平和に暮らせるという事は、その裏に泣いている誰かが必ず一人以上はいるという事だ。
無力で無能な世界をつくったのは全ての人でありつまりは俺だ。不幸にも俺は全てのうちの一部。大元の大元を辿ればここには最初、一つしかなかった。その一つから俺達はできた。
これが正しいとは言わないが間違っているとも思わない。だが俺は紛れもなく、適切な現代社会の邪魔者だ。なぜなら俺は不寛容だから。数の力に負けたから。
人を指さして不寛容だと得意げに言うことしかできない勘違い甚だしい連中を、地獄に行っても俺は恨み続ける。
俺の前に意識を持って現れた白黒のあいつらは、かつて踏みにじられた奴らだろうか。そうでもなければいくら死人とはいえ、ああも恨みのこもった顔はできない。俺が殴り続けたあいつらは、犠牲だ。社会の。人間が存続するための。
白黒なのに青白いガキは口が利けなかったんじゃない。死人に口なし。嘘つけよ。あるだろ。
ずっと耳鳴りが止まらない。奥でどんどんと大きくなっていく。腕が上がらない。足が動かない。体に力が入らない。世界が、揺れる。
これもまたインチキじゃなかった。寒い。頭が割れるように痛く、肩はズシリと石のようにだるい。
俺は暗い靄には触れなかった。同じだったからだ。向きが。重さが。同一だった。何もかも。
空間が低くなった気のする背後を感じつつ、振り返る。
ふ、と。笑った声が落ちた。
「……だからガキは嫌いだよ」
名の知れたディストピア小説のひとつ。タイトルだけは俺でも聞いた事があった。どうせ暇だし読み始めたそれを、なんとなくそのまま借りて帰った。読み終えたその感想は、胸糞悪い。その一言に尽きる。
時代を先読みしていたと、評価されるディストピア小説がこの世にはいくつかある。
先読みしていた。けれども、それは。今が後だから言える事にすぎない。
人間は社会の犠牲だ。子供は大人の都合の犠牲だ。
ガキの奇声に毎日イラついていた。あのガキは奇声どころか、一言も喋らなかった。
なぜ俺にあの山を教えた。なぜ発掘を俺に頼った。母親と自分を殴った男だぞ。父親と同じことをしたクソ野郎だ。そんなクズにどうしてわざわざ、自分たちを見つけさせた。
平和ボケだなんだとバカにされるようなこの国で、なんだって子供が死ぬんだろうな。ああ。そうか。俺みてえのがいるからか。
ガキがうるせえ。親は黙らせろ。思う事すら許されない。
子供が元気なのは素晴らしい事です。あなたも子供だった時代があったはず。誰かが言った美しい言葉は他の誰かもすぐ使いたがる。美しい言葉を吐き出し自分を美しく偽装する、そんな薄っぺらい連中はそこら中に腐るほどいる。
キレイゴト言うだけ言って気持ちよくなってるキモイ奴らは、善人のふりしてねえでさっさと俺を殺しに来いよ。
テメエらはガキを守りてえんだろ。ガキの成長を見守りてえんだろ。くだらねえ正論ごときで脆い命を守りきれるなら、大人に殴り殺されるガキはいねえよ。
俺はこの先もガキが嫌いだろう。ガキの大声は騒音に感じるだろう。この感情を我慢しろと上から押さえつけられるくらいならいっそ生きるのをやめて死にたい。ガキがうるせえと発言することすら許されない社会になるならこんな世界こっちから願い下げだ。
そっちが善である。ならば俺はどうしたって害悪ということになる。悪者は黙ってろと石投げられるよりも殺してくれた方がまだ人道的だ。耐えられる物事とその範囲は人によって必ず、違う。
ここは親切でいい国だ。多くは優しくて善良だ。だからこそ人間は善意で人を嬲り殺せる。常に極端な方へと動きたがるのが人間の社会だ。だからこの世は悪意で満たされている。
矛盾を矛盾とも思わない。思いもしなければ気づかずにいられる。自分は正しい事をしていると大勢が信じれば信じる程それだけ、その中身は悪一色になる。
善行はいくらでも悪となり得る。本人が善のつもりの悪ほど人をエグれるものはない。信念など持たない人間が自分は善であると信じながら無自覚に行う誠実の偽装だ。
そんな上辺だけの善良な行為でこっちを迫害するからには責任を持って俺を殺せ。誰かを犠牲にしなければ決して成り立たないこの世の中で、自分は関係ないとでもいうような顔をするのを俺は許さない。
テメエらにだけのうのうと生きる権利があるとは思うなよ。大層ご立派な口を叩くからには他人事のフリなどするな。テメエらの大義を貫きてえなら邪魔な俺をテメエで始末しろ。テメエらがその時だけ満たされるために、他人を殺していると自覚しろ。
キツネが食うためにはウサギが噛み殺される。ウサギが逃げ延びればキツネは飢えて死ぬ。これは強いか弱いかの問題ではない。誰かを殺し続けない限り生き物は生きていけない。
「…………」
ふと、よぎる。タコの墨のような。見るからに悪意があっても、俺はあの靄にだけは触れなかった。
俺はきっとあの暗い靄と同じだ。行方をくらましたあのガキの親父は、果たしてどうなったのだろう。
なぜ自分の子供まで殺した。うるさかったのか。あのガキが喚いたのか。それが気に食わなかったのだろうか。
子供は大人の都合の犠牲だ。あいつは俺の前ではいつも無口だったのに。何も喋らず何かを待つように、ただいつも、俺の前にいた。
母親と自分を埋めた親父への恨みはさぞかし深かっただろう。そうでなければあのガキは、この空間に残っていない。あのガキが追い払った真っ暗な霞は、やはりきっと、俺だった。
幽霊にコミュニティがあるのかどうかは知らないが、幽霊同士にもおそらく何かしらはある。
あのガキは確かにあの黒い靄を追い払った。意識を持って靄の前に立ちはだかった。フヨフヨしている奴らとは異なり、あのガキには、最初から自我があった。
自分が自分であるとは何か。自分を形作るものは何か。
ここにあったのはあの子供の意志だ。だから存在する空間が、重なった。重なり、だから、殴った。殴れた。すでに生きていない子供に、ここから、干渉できてしまった。
「っ、……」
キン、と。その時、耳の奥が。突如として詰まるような。
酷い耳鳴り。それを急激に感じ、耳を押さえ、そこでツツ、と。伝う。生温かく。ドロリと。濁って。咄嗟に耳に当てた右手を見てみれば、血だ。
「…………」
だよな。
キレイゴト言って気持ちよくなってるだけのキモイ大人とはお前は違う。お前にはずっと明確な意志がある。目的があった。お前は、戦っていた。
実の親父に殴り殺された。四十年も土に埋まってた。
一瞬でも同情してしまった俺の心はまず間違いなく、あのガキに強く向いている。しかしもう、人のカタチをしたあの子供を、今さらもう。嬲り殺す事などできない。
かの有名なディストピア小説は時代を先読みしていた。そうだろうか。
物語が予言をしていたのではなく、人間がどんな時代でも同じような過ちを犯し続けているだけではないのか。
人類は学習しない。教訓を胸に刻むのは悲劇が起こった直後の限られた期間のみ。時間の経過とともに忘れ去られ、世代がかわればなかったことになる。社会の全てを罪に巻き込むのは、どういう人間か。一握りの権力者か。暴君か。独裁者か。どれも違う。
俺の中にはクズの血が流れている。女子供を殴るクソ野郎だ。気味悪い女の頭で疲れるまでバッティングして、ヨボヨボのジジイの腕を平気でぶった切る怪物だ。
あのガキにとって俺みたいな男は、どいつもこいつも同じに見えるだろう。
キツネが生きていくためにはウサギを噛み殺さなければならない。ウサギが生を全うするにはキツネに飢えを強いなければならない。
キツネは悪だろうか。ウサギは悪だろうか。自分の命を守るために、相手を殺すのは間違いだろうか。
答えはノーだ。俺はそう思う。寛容だの不寛容だのご都合のよろしい話とも違う。寛容か不寛容かを意識した時点で寛容はもはやは成り立たない。寛容とは常に、善ではない。世の中の善悪は、誰が決める。
ウサギもキツネも間違ってはいない。どちらもただ生きているだけ。ただ、一致しないだけ。生き方が。生き方の、向きが。性質が。
どちらともが満足する道はない。だからと言ってキツネを責めるのは生きる事を全否定することだ。だからと言ってウサギを責めるのは生きる事を全否定することだ。
抑圧とは何か。侵略とは何か。全ての人間に同じ考えを求め、強いる事はなぜ傲慢とみなされない。俺には違うものを排除するために大虐殺を法的にやってのけた過去の独裁者と同じに見える。
他人の生きる権利を踏みにじることでしか、生き物は生き続けられない。
社会の営みのための犠牲はおそらく、輪のように延々と連なっている。誰かが誰かのために働く。それによってこの世界の均衡は絶妙に保たれる。しかしこの犠牲の輪は、輪でありながらきっと歪だ。輪であるはずなのに、一握りの上層がある。上層があるのだから、大きな下層も広がっている。
俺はきっと、生まれてから今までずっと、誰かを踏みつけながら生きてきた。そんな事は気づきもしなかった。そんな事は思いもよらなかった。なぜなら俺は概ね満たされていたから。歪な輪の存在になど、気にも留めなかった。その必要がなかった。
何不自由なく、不満も疑問も感じる事もなく、ただ平和に生きてきた。自分が平和に暮らせるという事は、その裏に泣いている誰かが必ず一人以上はいるという事だ。
無力で無能な世界をつくったのは全ての人でありつまりは俺だ。不幸にも俺は全てのうちの一部。大元の大元を辿ればここには最初、一つしかなかった。その一つから俺達はできた。
これが正しいとは言わないが間違っているとも思わない。だが俺は紛れもなく、適切な現代社会の邪魔者だ。なぜなら俺は不寛容だから。数の力に負けたから。
人を指さして不寛容だと得意げに言うことしかできない勘違い甚だしい連中を、地獄に行っても俺は恨み続ける。
俺の前に意識を持って現れた白黒のあいつらは、かつて踏みにじられた奴らだろうか。そうでもなければいくら死人とはいえ、ああも恨みのこもった顔はできない。俺が殴り続けたあいつらは、犠牲だ。社会の。人間が存続するための。
白黒なのに青白いガキは口が利けなかったんじゃない。死人に口なし。嘘つけよ。あるだろ。
ずっと耳鳴りが止まらない。奥でどんどんと大きくなっていく。腕が上がらない。足が動かない。体に力が入らない。世界が、揺れる。
これもまたインチキじゃなかった。寒い。頭が割れるように痛く、肩はズシリと石のようにだるい。
俺は暗い靄には触れなかった。同じだったからだ。向きが。重さが。同一だった。何もかも。
空間が低くなった気のする背後を感じつつ、振り返る。
ふ、と。笑った声が落ちた。
「……だからガキは嫌いだよ」
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