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16.カニバリズム
しおりを挟む最近ひどく腹が減る。
「っ……痛い」
「我慢しろ」
「いッ……もうやめ、」
「まだだ」
ガリッと、皮膚に歯が食い込む音がした。後ろから腕の中に閉じ込めているこいつが声にならない悲鳴を漏らす。痛みに身を縮こませる様子が楽しくて、さらに首筋の同じ場所に噛み込むと逃げ出すようにもがいた。
「逃げんな」
「っぅ……痛ぇ、ん……だよ」
「あと少し」
「ムリ……ッ」
「慣れろ」
無理だと喚かれるが放す気はない。ガリガリ噛みつき肌を傷つけ、くっきりと残した歯形に沿って僅かに血が滲んでいた。そこにゆっくり、ペロリと舌を這わせていく。瞬間とりはだを立たせたこいつをきつく抱きしめ、後ろからうつ伏せに押し倒した。
ボスッとシーツに沈み込むその体。上から覆い被さり、腹とシーツとの間に手を忍び込ませる。服の中に差し入れた手でごそごそと無遠慮に動かし素肌に触れた。
「ン、……」
腹を鳩尾にかけて摩りながら、転々と歯形の残る首やら肩やらに唇で触れた。さっき付けたばかりのものもあるし、三日前のものもある。だいぶ薄くなっているのはそれ以前に付けた痕跡だ。
いっそのことなら血塗れになるまで噛み切って跡を残したいと思う。こいつの肌は噛めば噛むほど味が出て、痛いと言って泣けばそれだけ色が増す。
今夜もまた腹が減った。こいつを見ていると異常な空腹感に襲われる。皮膚を噛み切り肉を引き裂き、体中の血液を啜りながら食らってみたらどれだけ美味いだろうか。
そうすればこいつはきっと、俺のこの食欲を存分に満たすに違いない。
「なあ」
「っ……ん……なに」
「腹が減るんだ」
「……知らねえし。飯食えよ」
「食ってる」
食っている。普通の食事を、普通の人間と同じように食っている。それでもなぜか満たされない。こいつを見ると、頭からバリバリと食らい尽くしたくなってくる。
シーツに手を付いて体を支え、うつ伏せにさせていたこいつの体を反転させた。無理矢理掴んだ肩に食い込む自分の指先が、今にもこいつを切り裂きたいと訴えている。だけどそれを無視して顔を伏せた。まだ噛み切った事はない、柔らかな唇に食らいつくために。
「ん……」
噛めば痛いと泣くクセに、こいつが俺を拒んだことはない。少なくとも捕食行動ではない口付けを落とせば、必ずと言っていい程この首には細い腕が回される。
抱きしめられ、髪に触れた指先がゆっくりと動かされ。それに合わせて重なる唇を深めれば縋るような手に求められる。食欲だか性欲だかそれさえもはっきりしない自分の異常性には気づいているが、こいつだってなかなか頭のイカレた男だろう。噛まれるのも痛めつけられるのも、こいつはおそらく、そんなにイヤじゃない。
「食いたい」
「っ、ぁ……なに……?」
「食いてえ」
「…………うん」
俺に腕を回したままコクリと頷く。お互い少しだけ体を離し、俺はこいつの服を乱雑に剥ぎ取った。晒させた白い肌は極上の料理にしか見えなくて、堪らず生唾を飲みこみ無意識に自分の唇を舐めていた。見下ろす先の、期待と怯えとを半々に含んだこの眼が俺を煽り立てる。
「ぃ、った……」
肩に噛みつき、プツリと薄い肉が裂けるまで歯を立てた。滲んだ血は余すことなく舐め取っていく。その場所に吸い付いて紫に変色するまで鬱血させ、この食い物は俺の物だとしっかり肌に刻み付けた。
「泣けよ」
「ッあ、……ぅ……」
「もっとだ」
まだまだ満ちるには遠い。
今夜もまた、俺は腹が減っている。
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