本物の悪女とはどういうものか教えて差し上げます

アリス

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ジギタリス侯爵


「今頃、あの女が慌てていると思うと笑えてくるわね」

星空を見上げながら呟く。

マーガレットは今頃シルバーライス家がどうしているのか簡単に想像でき、つい口元が緩んでしまう。

「さてと、今日の情報をまとめて整理するか」

椅子に座り、前回まとめて紙に新たな情報を付け足していく。

今回のパーティーでマーガレットが手に入れた情報は、アネモネがルドベキアに好意を寄せているということ。

あのときのアネモネの顔を思い出す。

マーガレットがルドベキアに遠回しに恋人同士かと尋ねれば違うと言われた時と素敵な人だから結婚したいと遠回しに伝えていたのに軽くあしらわれ、酷く傷ついた顔をしていた。

それでマーガレットは気がついた。

二度目でアネモネがルドベキアと結婚したのは利益の為でもあったが、本気で好いていたからだと。

いつ、どのタイミングでアネモネがルドベキアを好きになったのかは今となっては確かめられないが一つだけ確信した。

アネモネは二度目の記憶がないのだと。

もし、二度目の記憶を持っているならもっと上手くルドベキアと接触し結婚話に持ち込んでいただろう。

だが、あの感じだと結婚話に持ち込もうとしたが上手くいかなかった。

自分があの場に現れたせいもあるだろうが。

それに記憶を持っていたらあんな表情で済むはずがない。

ルドベキアは誠実な男。

結婚したら大切にしたはず。

それがどんな人間でも誠実に接し救う男。

そんな男と過ごした記憶があればあの女があんな目をするはずがない。

その時のアネモネの瞳を思い出しつい手に力が入りペンを折ってしまう。

「あ……」

ーーいけない、いけない。今は冷静に考えないと。

自分を落ち着け情報を整理する。

「前回の記憶がないなら私にも勝機がある。まずはルドベキアを手に入れる。……いや、惚れさせよう」

好きな男が嫌いな女の手に堕ちるなど耐えられないだろう。

アネモネの歪んだ顔を見れると思うと笑いが出る。

自分でも性格が歪んでいくのがわかるが、止まらないし止める気もない。

このまま壊れていっても構わない。

それで復讐できるのならそれくらい安いものだ。



マーガレットがベットに入る少し前の王宮。

トントントン。

「誰だ」

扉を叩く音で書類から目を離し声をかける。

「アキレアでございます」

「入れ」

国王が部屋の中に入るのを許可すると失礼しますと言って扉を開けて中に入る。

「どうした」

アキレアがなんでここに来たか大体予想は付いているが念のため確認する。

「ジギタリス公爵がお会いしたいと申しております。どうされますか?」

アキレアの言葉にやはりな、と嫌な予感が当たる。

「会おう。私も用があったから丁度いい。通してくれ」

「わかりました。直ぐにお連れします」

国王の言葉を公爵に伝えるべくそこに向かう。

暫くするとまた扉が叩かれ「入れ」と声をかける。

「お久しぶりです。国王陛下」

国王陛下の言葉を嫌味ったらしく言う公爵に相変わらずあの頃から一切成長していないなと呆れて何も言えなくなる。

「用件は何だ」

公爵の挨拶を無視し早速本題にはいる。

「わざわざ聞かなくてもわかっているでしょう。決闘のことです」

言葉遣いは丁寧だが話し方に刺がある。

「知っているなら話すことはない」

どうせ愛人から助けてくれと泣き疲れここにきたのだろうと国王は公爵の目的を見抜いていた。

国王の推測は当たっていてあの後シレネはすぐ王宮を出て屋敷に戻った。

公爵が仕事で今回の王宮パーティーに参加しないことは知っていたので仕方なく子供達と参加したがそのせいで恥をかかされたと泣き付き助けを求めたのだ。

パーティーであったこと聞き公爵は流石に決闘はまずいと思い国王に撤回するよう求めに来たのだ。

「国王陛下、それはあんまりではありませんか。ブローディア家と決闘などしたらシルバーライス家は終わります。いえ、誰が相手でも終わりを迎えるでしょう。それなのに、そんなブローディア家との決闘を認めるのは何故ですか。侯爵夫人とその家族がどうなるかわかっているのですか」

「それがどうした?」

国王の突き放すような冷たい声と口調に公爵はそれが実の弟と話す時の態度かと怒りが湧いてくる。

「どうしただと?本気でそう言ったのか」

怒りで昔のような話し方をする。

「私はいつでも本気だ。誰かと違って人を騙したり陥れたりしない。私はこの国の国王だからな。人とは誠実に向き合うことにしている」

「国王なら助けを求めているものを助けるべきだろう。困っている人がいるなら手を差し伸べるべきだろう。国王ならこの決闘を無くすこともできる筈だ。頼む。兄上どうかこの決闘を無かったことにしてくれ」

シレネの為に出来る限りのことをするが、頭を下げることはプライドが許さずしなかった。

「何故、私がお前の頼みを聞かねばならない。私は困っている人がいるなら手を差し伸べ助けるが、自分勝手な獣を助けるつもりは毛頭ない。言っている意味がわかるか」

「けもの……、それは俺のことを言っているのか」

「他に誰がいる?自分の欲を優先し人を傷つける。反省するどころか自分は何をしてもいいと開き直っていたな。悪いが私がこの国の王である限りお前の悪行を許すつもりはない。お前のせいで傷ついた人は大勢いる。お前のせいで死んだ者さえいる。よくもまあ、図々しく王宮に足を踏み入れ私に頼み事などできたな」

国王の言葉に血が出るほど強く拳を握りしめる。

「馬鹿なお前にもわかるよう簡単に言ってやる。ブローディア家とシルバーライス家の決闘は何がなんでも必ず決行する。邪魔をするなら容赦はせん。わかっていると思うが念のために言っておく。シルバーライス家に手を貸してみろお前もお前の愛人も二度と社交界に足を踏み入れられると思うなよ」

まだ何か言おうとする公爵だったが国王が衛兵を呼び追い出した。

公爵は「兄上、どうか考え直しください」と叫んでいたが無視し書類仕事に戻る。

暫くするとアキレアが公爵が王宮から出ていったことを知らせに来た。

「そうか。悪いがミオソティスに公爵の動きを見張るよう伝えておいてくれ」

「かしこまりました」

アキレアは直ぐにミオソティスの元に行き国王の命を伝える。

「ミオソティス。国王からの命を伝えにきた。ジギタリス公爵の監視をするようにと。ブローディア家とシルバーライス家の決闘は知っているだろう。ジギタリス公爵がシルバーライス家に手を貸さないか見張るようにとのことだ。今すぐいけるな」

「はい。国王様のご命令とあらば喜んで」

ミオソティスはアキレアに頭を下げるとその場から姿を消しジギタリス公爵の元へと向かっていく。
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