26 / 31
花嫁
浄化の舞を終え、帰宅するが出迎えてくれたものは誰もいなかった。
屋敷に着くなり籠を乱暴に下ろされ、妖狐たちは何も言わずにさっさとその場から立ち去って行った。
(お疲れ様、の一言もないわけ)
あまりの態度に今すぐ殴ってやろうかと思うが、すぐに殴る価値もない連中だと思いなおし、自分の部屋へと戻る。
部屋の障子を開けると、花梨がいた。
風呂の用意ができているから入ってくれと言われ、言われた通りに入り、風呂から出ると豪華な食事が用意されていた。
頑張って用意してくれたのだろう。
私の立場を考えれば、こんな豪華な料理を使用人たちが用意するはずがない。
花梨がどんな手を使って用意してくれたのかはわからないが、少しだけ感動したが、すぐに当然のことだよなと思い直した。
寧ろ、最悪から普通にした自分が褒められるべきでは。
そんな余計なことを考えていると、いつの間にか料理を全て完食していた。
昼食を食べていなかったせいで、自分でも気づかないうちに、かなりお腹が空いていたみたいだ。
あったかい風呂に、あったかい食事、ふわふわのいい匂いの布団に寝る。
今日はよく頑張ったなと、自分を褒めて眠りについたが、一刻も経たなうちにたたき起こされた。
嫁いでから、こんな出来事は初めてだった。
なぜ、今日なのかと思うくらい殺意が湧いてくる。
疲れているのだから、気を利かせて明日にしてくれればいいのに、と。
「で?私を起こした理由は何ですか?歴代の花嫁さんたち」
いま私の部屋には、白装束を身に纏った幽霊が四人いる。
妖狐に嫁いだ歴代花嫁たちは私を含めて五人。
間違いなく、この四人は歴代の妖狐の花嫁で間違いないだろう。
顔は骨になっていて、確認できない。
そうだ、と返事をしてくれたら助かるが、彼女たちはぶつぶつと何かを言ったり、急に叫び出したりして会話をすることができない。
そもそも、なんで、彼女たちがここに縛られているのかわからない。
いくら力が弱いと言っても、西園寺家に生まれた女が呪縛霊になるなんて普通ならありえない。
本当に彼女たちは西園寺家の人間なのかと疑ってしまうが、白装束に西園寺家の紋が記されてあり間違いなく西園寺家の人間だ。
死んだら遺体は西園寺家に渡される。
よほどのことがない限り、魂はあの世へとむかう。
呪縛霊になるだけの理由があったのは間違いない。
それも、妖狐に嫁いだ花嫁全員がなるほどのものだ。
いくら虐められたからと言って、言葉も話せなくなるほどの呪縛霊になるとは考えられない。
この屋敷に来た時からの違和感は花嫁たちの呪縛霊と関係あるのは確かだろうが、それだけではない気がする。
もっと、大きな何かを隠されている気がしてならない。
だが、今はそれよりも気になることがある。
(だれも、彼女たちに気が付かなかったのだろうか?いや、そんなことはあり得ない)
私もここに来たときは違和感程度だったが、彼女たちの存在に気づくことができなかった。
神力を持っているのに。
わざと隠されていたから気づかなかったのか?
それとも、彼女たちの意思で隠れていたのか?
そう思い、彼女たちをみるがどう見ても、四人そろっても私の足元にも及びそうにない。
となる、考えられるのはただ一つだ。
わざと、彼女たちの存在を誰かが隠している。
妖力を持っているものが呪縛霊に気づかないなんてあり得ない。
この屋敷の主である人物が知らないなんてあり得ない。
花嫁たちは妖に嫁ぐと、妖力のせいで短命になると言われているが、もしかしたらそれは事実ではないかもしれないと思えてきた。
(殺されたのかもしれないわね)
そう思うと、急に花嫁たちが私の目の前で何かを訴えているようにみえた。
――ここから逃げろ。
そう言っているように聞こえた。
実際には何と言っているのかはわからない。
もしかしたら、助けてくれ、と言っているのかもしれない。
真実が何かなんてどうでもいい。
大切なのは、雅家の連中は西園寺家に何かを隠している。
そして、私を殺そうとしていることだ。
(ん?でも、それじゃあ……)
そこまで考えて、桔梗の矛盾している行動が気になった。
雅家の連中は私を殺そうとしているのは間違いない。
それがいつなのかはわからないが。
でも、そうすると桔梗が私を心配したりするのは矛盾しているとしか思えない。
私を懐柔して、殺しやすくするため?
そんな必要はないはずだ。
何かがおかしい。
桔梗は何も知らないのだろうか?
それとも知っていて私を心配しているのだろうか?
(よくわからない)
どれだけ、考えても答えが出ない。
花嫁たちもどうすることもできない。
離れる気がないのか、少し移動しただけなのについてくる。
考えるのにも疲れたので、とりあえず寝て、起きてからこれからどうするか考えることにした。
花嫁たちがうるさいので、耳を神力で纏い、音を遮断した。
屋敷に着くなり籠を乱暴に下ろされ、妖狐たちは何も言わずにさっさとその場から立ち去って行った。
(お疲れ様、の一言もないわけ)
あまりの態度に今すぐ殴ってやろうかと思うが、すぐに殴る価値もない連中だと思いなおし、自分の部屋へと戻る。
部屋の障子を開けると、花梨がいた。
風呂の用意ができているから入ってくれと言われ、言われた通りに入り、風呂から出ると豪華な食事が用意されていた。
頑張って用意してくれたのだろう。
私の立場を考えれば、こんな豪華な料理を使用人たちが用意するはずがない。
花梨がどんな手を使って用意してくれたのかはわからないが、少しだけ感動したが、すぐに当然のことだよなと思い直した。
寧ろ、最悪から普通にした自分が褒められるべきでは。
そんな余計なことを考えていると、いつの間にか料理を全て完食していた。
昼食を食べていなかったせいで、自分でも気づかないうちに、かなりお腹が空いていたみたいだ。
あったかい風呂に、あったかい食事、ふわふわのいい匂いの布団に寝る。
今日はよく頑張ったなと、自分を褒めて眠りについたが、一刻も経たなうちにたたき起こされた。
嫁いでから、こんな出来事は初めてだった。
なぜ、今日なのかと思うくらい殺意が湧いてくる。
疲れているのだから、気を利かせて明日にしてくれればいいのに、と。
「で?私を起こした理由は何ですか?歴代の花嫁さんたち」
いま私の部屋には、白装束を身に纏った幽霊が四人いる。
妖狐に嫁いだ歴代花嫁たちは私を含めて五人。
間違いなく、この四人は歴代の妖狐の花嫁で間違いないだろう。
顔は骨になっていて、確認できない。
そうだ、と返事をしてくれたら助かるが、彼女たちはぶつぶつと何かを言ったり、急に叫び出したりして会話をすることができない。
そもそも、なんで、彼女たちがここに縛られているのかわからない。
いくら力が弱いと言っても、西園寺家に生まれた女が呪縛霊になるなんて普通ならありえない。
本当に彼女たちは西園寺家の人間なのかと疑ってしまうが、白装束に西園寺家の紋が記されてあり間違いなく西園寺家の人間だ。
死んだら遺体は西園寺家に渡される。
よほどのことがない限り、魂はあの世へとむかう。
呪縛霊になるだけの理由があったのは間違いない。
それも、妖狐に嫁いだ花嫁全員がなるほどのものだ。
いくら虐められたからと言って、言葉も話せなくなるほどの呪縛霊になるとは考えられない。
この屋敷に来た時からの違和感は花嫁たちの呪縛霊と関係あるのは確かだろうが、それだけではない気がする。
もっと、大きな何かを隠されている気がしてならない。
だが、今はそれよりも気になることがある。
(だれも、彼女たちに気が付かなかったのだろうか?いや、そんなことはあり得ない)
私もここに来たときは違和感程度だったが、彼女たちの存在に気づくことができなかった。
神力を持っているのに。
わざと隠されていたから気づかなかったのか?
それとも、彼女たちの意思で隠れていたのか?
そう思い、彼女たちをみるがどう見ても、四人そろっても私の足元にも及びそうにない。
となる、考えられるのはただ一つだ。
わざと、彼女たちの存在を誰かが隠している。
妖力を持っているものが呪縛霊に気づかないなんてあり得ない。
この屋敷の主である人物が知らないなんてあり得ない。
花嫁たちは妖に嫁ぐと、妖力のせいで短命になると言われているが、もしかしたらそれは事実ではないかもしれないと思えてきた。
(殺されたのかもしれないわね)
そう思うと、急に花嫁たちが私の目の前で何かを訴えているようにみえた。
――ここから逃げろ。
そう言っているように聞こえた。
実際には何と言っているのかはわからない。
もしかしたら、助けてくれ、と言っているのかもしれない。
真実が何かなんてどうでもいい。
大切なのは、雅家の連中は西園寺家に何かを隠している。
そして、私を殺そうとしていることだ。
(ん?でも、それじゃあ……)
そこまで考えて、桔梗の矛盾している行動が気になった。
雅家の連中は私を殺そうとしているのは間違いない。
それがいつなのかはわからないが。
でも、そうすると桔梗が私を心配したりするのは矛盾しているとしか思えない。
私を懐柔して、殺しやすくするため?
そんな必要はないはずだ。
何かがおかしい。
桔梗は何も知らないのだろうか?
それとも知っていて私を心配しているのだろうか?
(よくわからない)
どれだけ、考えても答えが出ない。
花嫁たちもどうすることもできない。
離れる気がないのか、少し移動しただけなのについてくる。
考えるのにも疲れたので、とりあえず寝て、起きてからこれからどうするか考えることにした。
花嫁たちがうるさいので、耳を神力で纏い、音を遮断した。
あなたにおすすめの小説
三度裏切られた私が、四度目で「離婚」を選ぶまで
狛犬
恋愛
三度、夫に裏切られた。
一度目は信じた。
二度目は耐えた。
三度目は――すべてを失った。
そして私は、屋上から身を投げた。
……はずだった。
目を覚ますと、そこは過去。
すべてが壊れる前の、まだ何も起きていない時間。
――四度目の人生。
これまでの三度、私は同じ選択を繰り返し、
同じように裏切られ、すべてを失ってきた。
だから今度は、もう決めている。
「もう、陸翔はいらない」
愛していた。
けれど、もう疲れた。
今度こそ――
自分を守るために、家族を守るために、
私は、自分から手を放す。
これは、三度裏切られた女が、
四度目の人生で「選び直す」物語。
🥕おしどり夫婦として12年間の結婚生活を過ごしてきたが一波乱あり、妻は夫を誰かに譲りたくなるのだった。
設楽理沙
ライト文芸
2026.1.4 73話見直した際、瑛士の台詞《本音/懺悔》を加筆しました。😇
☘ 累計ポイント/ 200万pt 超えました。ありがとうございます。
―― 備忘録 ――
第8回ライト文芸大賞では大賞2位ではじまり2位で終了。 最高 57,392 pt
〃 24h/pt-1位ではじまり2位で終了。 最高 89,034 pt
◇ ◇ ◇ ◇
紳士的でいつだって私や私の両親にやさしくしてくれる
素敵な旦那さま・・だと思ってきたのに。
隠された夫の一面を知った日から、眞奈の苦悩が
始まる。
苦しくて、悲しくてもののすごく惨めで・・
消えてしまいたいと思う眞奈は小さな子供のように
大きな声で泣いた。
泣きながらも、よろけながらも、気がつけば
大地をしっかりと踏みしめていた。
そう、立ち止まってなんていられない。
☆-★-☆-★+☆-★-☆-★+☆-★-☆-★
2025.4.19☑~
裏切りの代償
中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。
尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。
取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。
自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。
【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
「声に出せなかった五年分の気持ちを、離婚届と一緒に置いていきます」
まさき
恋愛
「ねえ、今日も遅いの?」
返信は、既読だけだった。
陽菜は笑顔が得意な女だった。嬉しいときは声に出して笑って、悲しいときは素直に泣いた。そういう自分が好きだった。
でも蓮の前では、いつからか言葉が出なくなった。
仕事一辺倒の夫を責めたかった。待ちくたびれたと泣きたかった。それでも言えなかった。言ったら、壊れる気がした。
五年間、声を飲み込み続けた。
笑顔で送り出して、一人で夕食を食べて、眠れない夜をやり過ごした。蓮は悪い人じゃない。ただ、私を見ていなかった。
それだけのことが、五年分積み重なった。
離婚届をテーブルに置いて、陽菜は家を出た。声に出せなかった五年分の気持ちを、一緒に置いて。
ドアが閉まった音を聞いて、蓮は初めて立ち上がった。
15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
深冬 芽以
恋愛
交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。
2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。
愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。
「その時計、気に入ってるのね」
「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」
『お揃いで』ね?
夫は知らない。
私が知っていることを。
結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?
私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?
今も私を好きですか?
後悔していませんか?
私は今もあなたが好きです。
だから、ずっと、後悔しているの……。
妻になり、強くなった。
母になり、逞しくなった。
だけど、傷つかないわけじゃない。