27 / 28
臣下
しおりを挟む『そんなの決まってるだろ。あいつに死なれたら困るからだ。あのクズに裏切られてから新たな候補者が現れるのに3年もかかった。わかってるだろ。俺達にはもう時間が残ってないことを。これが最後かもしれないだ。あいつの何がお前をそこまでさせたのか気になっただけだ。ただそれだけだ。大した理由はない』
キキョウの返しを聞いてナズナは今のは答えになってないと思ったが、そういえばこんな性格だったと思い出し今回は自分が折れることで話しを終わらせた。
'相変わらず素直ではないな。素直に心配したと言えばいいのに。自分では気づいてないんだろうな。実のことを認めていることに'
本当にしょうがない奴だと思いながら、同情する眼差しを向ける。
『なんだ。その目は』
「いや、別に、気にするな」
ナズナは首を横に振る。
「話は終わった。俺は帰る」
ナズナはそう言うとキキョウの返事を待たず姿を消す。
「帰る、か。まだ出会って半日も経ってないのに……お前の帰る場所はそこなのか。ククッ。これは思ってた以上にあの人間はすごいのかもな」
実に対しての認識を改める。
ただ優しいのではなく、惹きつける力もあると。
※※※
「ふぁあ~、よく寝た。ん?俺いつの間に家に帰ってきたんだ?それにどうやってベットまできたんだ?ナーガを倒したあとの記憶がない……」
実は記憶がないので混乱する。
絶対に声の主がベットの上に転移魔法を発動させるわけないとわかっている。
あいつにそんな優しさはない。
だからこそ、どうやってここまできたのか謎だった。
自力できたのかもしれないが、それはそれで怖すぎる。
実はこれ以上考えても答えは出ないとわかっているので考えるのをやめる。
グゥ~。
お腹が鳴る。
「……朝ご飯なに食べようかな。面倒だし簡単なのにするか」
ベットから降り台所へと向かう。
実は扉を開けてリビングへと入ろうとしたが、すぐに扉を閉める。
「……寝ぼけているのかな?知らない男がいるんだけど?」
実はきっと疲れて幻覚を見てるのだと思い、目をマッサージしてからもう一度扉を開けて開ける。
「……やっぱいる。夢じゃない……」
実は頭が痛くなる。
何かを物色している様子もないし、敵意も感じないから悪い人ではないと思う。
というか、どこかで会った気がする。
後ろ姿しか見えないから、顔を見ないことにはなんとも言えないが。
そう思っていると男が振り返り目が合う。
男が近づいてきて実は身構える。
'なんだ。やるのか'
男は実の目の前までくると跪く。
「え……?」
実は男の予想外の行動に驚いて間抜けな声を出す。
「あの……一体何をしてるんですか?」
「王。俺は貴方に忠誠を誓います。いついかなるときもお守りします。これからよろしくお願いします」
実は男の急な誓いに戸惑い何を言ってるんだと困惑するが、クエストクリア報酬が「臣下を手に入れられる」だったのを思い出し、この人がその臣下だと気づいた。
「あ、こちらこそよろしくお願いします。俺は花王実と言います。えっと、その……お兄さんは?」
「俺はナズナと申します」
「薺さん。いい名前ですね」
カッコいい名前に漢字だと思い褒める。
「ありがとうございます。王」
王。
その言葉を聞いた瞬間、恥ずかしくなる。
そう言えばさっきも呼ばれたことを思い出す。
「薺さん。その呼び方はやめてください」
実は顔を真っ赤にする。
「……わかりました。では……マスターとお呼びしてもよろしいでしょうか?」
「はい。それなら……」
王よりはマシだと思い承諾する。
「それと、敬語やめてください。俺の方が年下ですし」
自分よりも年上で明らかに強い人に敬語を使われると妙な気分になる。
「ですが……」
ナズナは悩む。
初めて王と認めた相手に無礼な言葉遣いを使うのは嫌だった。
今までの候補者達にはタメ口を使っていたが、実相手にはそれができなかった。
「あ、その、難しければ大丈夫です」
ナズナの顔がだんだん険しくなっていき、実は慌てて大丈夫だと伝える。
「……よければ、今から一緒に朝ご飯を食べませんか?」
重くなった空気に耐えられず実はそう言うが、すぐに言ったことを後悔する。
'俺の馬鹿馬鹿。また断られたらどうするんだ'
更に空気が思うなるかもしれないと思うと頭が痛くなる。
だが、実の心配は杞憂だった。
「では、お手伝いいたします」
そこから実はナズナと一緒に朝ご飯を作った。
ナズナがいるから適当なものを出すわけにはいかないと気合いを入れて料理をしたが、彼の作る料理が凄すぎて実が作ったものは霞んでしまいそうだった。
味も完璧でとても美味しかったのに、ナズナは何故か自分の作ったものを食べようとはせず実の作ったものだけを食べた。
その様子を見ていたキキョウは画面に映るナズナに向かって文句を叫んでいた。
『あ!あのヤロー!俺がどんなに頼んでも作ってくれなかったのにふざけやがって!あの人間の為には作るのか!今度あったらぶん殴ってやる!』
ナズナの作る料理は美味しいと臣下達の間では有名だ。
だが、これまでナズナが他の候補者達に料理を振る舞ったことは一度もない。
そのことを知っているキキョウは最初こそ驚いたが、ナズナの料理を食べている実が羨ましくてそれどころではなかった。
「あの、とても美味しかったです」
食事終え、片付けも済ますと実はナズナに感想を言う。
食べているときにも何度も言ったが、本当に美味しくてもう一度「美味しかった」と言いたかった。
「ありがとうございます。気に入ってもらえてよかったです」
ナズナは優しく微笑む。
「はい。とても気に入りました」
実も笑い返す。
「話が変わるんですけど、薺さんに聞きたいことがあります」
実はずっと気になっていたことを聞くことにした。
勘違いかもしれないが、なんとなく当たっている気がしている。
「なんでしょう」
「薺さんが昨日、ダンジョンで俺を助けてくれたんですか?」
ナーガは突然何かに恐れだした。
もし、その何かがなければ実は今ここにはいない。
間違いなく死んでいた。
「はい。そうです」
ナズナは一瞬否定しようとしたが、実には嘘をつきたくないと思い、本当のことを言う。
「やっぱり!そうだったんですね!ありがとうございます!」
「いえ、お礼を言うのは俺の方です」
ナズナのその発言に実は首を傾げる。
お礼を言われるようなことをした記憶がない。
「先に俺を助けてくれたのはマスターです」
ナズナはそう言うと魔物?の姿になる。
「え……?えぇぇーっ!」
驚きすぎてこれでもかというくらい目を見開く。
どうりで会ったことがある気がするわけだと、この姿を見て納得する。
姿は全然違うけど、晒しだす雰囲気は似ていた。
「マスター。あのとき俺を見捨てず助けてくれてありがとうございます。本当に感謝しています」
あれは試験でわざと捕まっているふりをしていただけだった。
助けようと助けまいとクエストクリアには関係ない。
ただ人間を信じられるか試すだけのもの。
どうせ、人間は力さえ与えられればそれ以外はどうでもいいのだと思っていた。
強くなればなるほど人は変わる。
その力に溺れ、弱者を虐げる。
今までの候補者達は皆そうだったから、実のこともそうだと決めつけていた。
だが実は違った。
力を与えられ今までと比べられないほど強くなったのに慢心せずにいる。
そんな実だからこそナズナはこの身の全てを捧げて盾となり剣となることを誓ったのだ。
30
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
現代ダンジョン奮闘記
だっち
ファンタジー
15年前に突如としてダンジョンが登場した現代の地球。
誰が何のために。
未だに解明されていないが、モンスターが落とす魔石はすべてのエネルギー源を代替できる物質だった。
しかも、ダンジョンでは痛みがあるが死なない。
金も稼げる危険な遊び場。それが一般市民が持っているダンジョンの認識だ。
そんな世界でバイトの代わりに何となくダンジョンに潜る一人の少年。
探索者人口4億人と言われているこの時代で、何を成していくのか。
少年の物語が始まる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします
ランド犬
ファンタジー
異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは
――〈ホームセンター〉
壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。
気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。
拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?
【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜
KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。
~あらすじ~
世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。
そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。
しかし、その恩恵は平等ではなかった。
富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。
そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。
彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。
あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。
妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。
希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。
英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。
これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。
彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。
テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。
SF味が増してくるのは結構先の予定です。
スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。
良かったら読んでください!
おっさん冒険者のおいしいダンジョン攻略
神崎あら
ファンタジー
冒険者歴20年以上のおっさんは、若い冒険者達のように地位や権威を得るためにダンジョンには行かない。
そう、おっさんは生活のためにダンジョンに行く。
これはそんなおっさんの冒険者ライフを描いた生活記である。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
冷遇された聖女の結末
菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。
本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。
カクヨムにも同じ作品を投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる