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葛藤
しおりを挟むルルシオの後もたくさんの街を訪れた。
エニシダの呪いは、もしかしたら本当はかかっていなかったのではないかと勘違いしてしまうほど、元気でいろんな街を訪れることができた。
この先もずっと一緒にいられるかもしれないと期待したときもあった。
でも、エニシダの顔が悪いかなり、次第に元気もなくなっていくと「ああ。やっぱり呪いはかかっていたんだな」と絶望した。
いったい誰が彼女に呪いをかけたのか。
彼女は犯人探しに興味がないのか、もうすぐ死ぬとわかっていても、そのことについては一言も話さなかった。
恨み言の一つでも言えばいいのに、と何度思ったか。
それでも、彼女が話さないことを自分から聞くことなどできず、ただ話してくれるのを待つことしかできなかった。
そうしているうちに、エニシダの容体はさらに悪くなり、次の街が自分たちの最後の旅になると何となくわかっていた。
何事にも終わりはあるとわかっていたのに、この度だけはずっと終わらないでいて欲しかった。
自分たちの最後の旅に選んだ街はメモリアだった。
ここはエニシダの好きな小説の舞台となった街だった。
小説に出てきた食べ物を食べたりや場所に行ったりして楽しんだが、周囲は恋人たちばかりで自分たちもそう見られているのかと思うと、嬉しさよりも申し訳なさの方が勝った。
自分のような人間が恋人と間違われるなど、エニシダに申し訳なかった。
地位も名誉も権力も圧倒的な力もない。
あるのは'悪魔の子'という烙印だけ。
きっと、エニシダは気にしない。
「あなたはあなたでしょう」
そう言って、知った後も知らなかったときと変わらない態度で接してくれる。
それでも自分が許せない。
本当なら隣に立つことも許されない関係。
隣にいられるだけで満足しないといけない。
そう思い、恋人同時に見られないよう一歩引いて歩いていたが、シオンが隣にいないことに気づいたエニシダは一歩下がって隣に立った。
エニシダはまるで全てを見透かしたような目をしていた。
そんなはずはないとわかっているのに、彼女が笑顔を向けると、どうしようもなく泣きたくなった。
本当に最後のとき、隣にいるのは自分でいいのかと思った。
最後は好きな人に見送られたいのでは?
イフェイオンに教えるべきなのか?
シオンはメモリアについてからずっと葛藤した。
教えたところでイフェイオンが来てくれる確証はないし、例え来てくれたとしても間に合わない可能性の方が高い。
いや、そもそもエニシダが本当に望んでいるかわからない。
どうしれば幸せにあの世に逝けるか考えたが、どれだけ考えても正解はわからなかった。
そうしているうちに時間だけは過ぎていった。
エニシダの最期の時をどうするべきか考えながら、秘密の花園を探した。
名前に'秘密'とついているだけあってなかなか見つからなかった。
諦めるな、と自分に喝を入れたが、エニシダが死ぬ前に見つけられるか心配だった。
秘密の花園の代わりに山小屋を見つけた時は、何か手がかりがあるかもと期待したが何もなかった。
だが、最後まで諦めなかったおかげで秘密の花園を見つけることができた。
この場所を見つけ、美しい花たちを見た瞬間、最後の場所に相応しいと思った。
この場所こそ、エニシダのためにあると本気でそう思った。
小説の内容に池に足を入れるシーンがあったとエニシダが言っていたことを思い出し、同じように池に足を入れた。
少しだけ冷たくて、エニシダは大丈夫かと見たが見たことを後悔した。
もう何も感じていないだと気づいてしまった。
きっと今日が最期だと気付かされた。
シオンはそれを誤魔化すようにいろんなことを話した。
エニシダはもう話せない。
沈黙が怖くて、ずっと話し続けた。
どれだけ時間が過ぎたかわからなかったが、そろそろ池から出て、他のところにも行くことにした。
靴を履こうにもタオルを持ってきてないことに気づき、山小屋からとってくることにした。
エニシダはもう歩くのも難しく、ここで体力を使わせるわけにはいかないと待っててもらうことにした。
ほんの少しの間なら大丈夫だろうと思いそばを離れたが、この選択を後悔することになるとはシオンは今の時点では思っても見なかった。
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