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オルテル家 2
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伯爵は疲れて、とうとう自分の耳がおかしくなったと思った。
もしそうでなければ、目の前の女を殴ってしまいそうだった。
それほどまでに激しい怒りを覚えた。
卑しい身分の女にオルテル伯爵夫人の座まで与えてやったというのに、その座に相応しい人物にいつになったらなるというのか。
金を稼ぐことなどできない。
できるのは金を使うことだけ。
他人に自慢するためだけに、自分の虚栄心を満たすためだけに、宝石やドレスを山のように買う。
無駄遣いしかしない。
今までは金が大量にあったため問題なかったが、今はそうはいかない。
エニシダがいたときは金に困ることなどなかったのに、たった四ヶ月で死ぬまで使いきれないと心配していた金は一瞬で消えた。
まだ借金をしていないだけマシだと言える状況なのに、自分たちの見栄のためにまだ金を寄越せという。
伯爵の怒りが湧きあがるのは当然だった。
何も言わない伯爵に焦ったのか、妻は早口で理由を説明し始めた。
「あなた。もうすぐ社交界があるじゃないですか」
妻は甘える声でさらに胸を押し付ける。
胸さえ押しつけておけばいいみたいな考えをする妻に伯爵は馬鹿にされた気がして、さらに眉間に皺がよる。
「それも、皇太子殿下の妃候補を探す名目の」
アドリアナは恥ずかしそうにはにかむんだ。
まるで、自分がそのパーティーに出るのが当たり前のように振る舞うその姿に、伯爵は滑稽すぎて、怒りを通り越して呆れてしまう。
これが、自分の娘なのかと。
あまりにもエニシダと違いすぎて、本当に自分の子供かと疑ってしまう。
「それで?」
伯爵は冷たく言う。
いつもとは違う冷たい伯爵の態度に二人は困惑する。
「それでって……あなた、今日何か変よ。アドリアナが妃になるためにも新しい、高価なドレスを買うべきでしょう」
なかなかお金をくれないことに妻は苛立ち、つい棘のある言い方をしてしまう。
後悔したときには遅く、掴んでいた腕を振り払われた。
妻は無理矢理腕を振り払われたせいで、バランスが崩れ転けそうになる。
何するのよ、と、文句を言おうとしたが、あまりにも冷たい視線を向けられて言葉を飲み込んだ。
「お前はさっきから何を言ってるだ」
伯爵は目の前にいる妻が、今はただ綺麗なドレスを身に纏った物乞いにしか見えなくなっていた。
「アドリアナが皇太子の妃になるだと?冗談は夢の中だけにしてくれ」
伯爵が冷たい口調で吐き捨てるように言うと、ずっと黙っていたアドリアナは目を吊り上げ、顔を真っ赤にして叫んだ。
「お父様!いくなんでも、それは私に対して失礼よ!」
教養もあり、品のある令嬢だったら、大声で叫ぶような真似はしない。
そんなことをしても自分の価値を下げるだけとわかっているからだ。
完璧な淑女と言われたエニシダなら、こんな愚かな真似はしないのに、と伯爵は家出したもう一人の娘の顔が浮かんだ。
「失礼?どこがだ?私は事実を言っただけだ」
伯爵はエニシダが家出する前は愛おしいと思っていた娘が、今は金を食い尽くすだけのただの寄生虫にしか見えず鬱陶しかった。
「お前たち、まさか本気で皇太子の妃になれると思ってないよな」
「どういう意味ですか、それは」
アドリアナは本当にわからないという表情をするが、自分を馬鹿にする父親は許せず睨みつける。
伯爵は自分の娘がここまで馬鹿だったとは思わず、馬鹿にするように鼻で笑ってからこう言った。
「わからないのならはっきり言ってやろう。卑しい血が流れているお前が、この国で最も高貴な血が流れているお方の伴侶になることなど絶対にあり得ないことだ。例え、お前が殿下に気に入られたとしても、誰も認めない。よくて愛人留まりだ。妃になることは絶対にあり得ない。わかったか」
伯爵はお花畑の脳みそしか持ち得ていなかったアドリアナに残酷な現実を教えた。
アドリアナは自分の血のせいで妃になることができないという事実を知り、「そんなことない。私は貴族だもの。絶対に大丈夫よ」と必死に慰めることしかできない。
馬鹿みたいに慌てふためくアドリアナを冷めた目で見た後、伯爵は舌打ちをした。
(呪われたのがこっちだったらよかったのにな)
伯爵はエニシダの呪いが絶対に解けないことはわかっている。
連れて帰ることができたとしても、薬を作らせることができるのはほんの少しだけ。
もしかしたら、その可能性すらないかもしれない。
そうなったら、オルテル家は終わりだ。
何もできないアドリアナよりエニシダの方が生きていた方が嬉しい。
伯爵はエニシダが家出して、ようやく彼女の有り難さを感じ、妻とアドリアナの無能さを知った。
もしそうでなければ、目の前の女を殴ってしまいそうだった。
それほどまでに激しい怒りを覚えた。
卑しい身分の女にオルテル伯爵夫人の座まで与えてやったというのに、その座に相応しい人物にいつになったらなるというのか。
金を稼ぐことなどできない。
できるのは金を使うことだけ。
他人に自慢するためだけに、自分の虚栄心を満たすためだけに、宝石やドレスを山のように買う。
無駄遣いしかしない。
今までは金が大量にあったため問題なかったが、今はそうはいかない。
エニシダがいたときは金に困ることなどなかったのに、たった四ヶ月で死ぬまで使いきれないと心配していた金は一瞬で消えた。
まだ借金をしていないだけマシだと言える状況なのに、自分たちの見栄のためにまだ金を寄越せという。
伯爵の怒りが湧きあがるのは当然だった。
何も言わない伯爵に焦ったのか、妻は早口で理由を説明し始めた。
「あなた。もうすぐ社交界があるじゃないですか」
妻は甘える声でさらに胸を押し付ける。
胸さえ押しつけておけばいいみたいな考えをする妻に伯爵は馬鹿にされた気がして、さらに眉間に皺がよる。
「それも、皇太子殿下の妃候補を探す名目の」
アドリアナは恥ずかしそうにはにかむんだ。
まるで、自分がそのパーティーに出るのが当たり前のように振る舞うその姿に、伯爵は滑稽すぎて、怒りを通り越して呆れてしまう。
これが、自分の娘なのかと。
あまりにもエニシダと違いすぎて、本当に自分の子供かと疑ってしまう。
「それで?」
伯爵は冷たく言う。
いつもとは違う冷たい伯爵の態度に二人は困惑する。
「それでって……あなた、今日何か変よ。アドリアナが妃になるためにも新しい、高価なドレスを買うべきでしょう」
なかなかお金をくれないことに妻は苛立ち、つい棘のある言い方をしてしまう。
後悔したときには遅く、掴んでいた腕を振り払われた。
妻は無理矢理腕を振り払われたせいで、バランスが崩れ転けそうになる。
何するのよ、と、文句を言おうとしたが、あまりにも冷たい視線を向けられて言葉を飲み込んだ。
「お前はさっきから何を言ってるだ」
伯爵は目の前にいる妻が、今はただ綺麗なドレスを身に纏った物乞いにしか見えなくなっていた。
「アドリアナが皇太子の妃になるだと?冗談は夢の中だけにしてくれ」
伯爵が冷たい口調で吐き捨てるように言うと、ずっと黙っていたアドリアナは目を吊り上げ、顔を真っ赤にして叫んだ。
「お父様!いくなんでも、それは私に対して失礼よ!」
教養もあり、品のある令嬢だったら、大声で叫ぶような真似はしない。
そんなことをしても自分の価値を下げるだけとわかっているからだ。
完璧な淑女と言われたエニシダなら、こんな愚かな真似はしないのに、と伯爵は家出したもう一人の娘の顔が浮かんだ。
「失礼?どこがだ?私は事実を言っただけだ」
伯爵はエニシダが家出する前は愛おしいと思っていた娘が、今は金を食い尽くすだけのただの寄生虫にしか見えず鬱陶しかった。
「お前たち、まさか本気で皇太子の妃になれると思ってないよな」
「どういう意味ですか、それは」
アドリアナは本当にわからないという表情をするが、自分を馬鹿にする父親は許せず睨みつける。
伯爵は自分の娘がここまで馬鹿だったとは思わず、馬鹿にするように鼻で笑ってからこう言った。
「わからないのならはっきり言ってやろう。卑しい血が流れているお前が、この国で最も高貴な血が流れているお方の伴侶になることなど絶対にあり得ないことだ。例え、お前が殿下に気に入られたとしても、誰も認めない。よくて愛人留まりだ。妃になることは絶対にあり得ない。わかったか」
伯爵はお花畑の脳みそしか持ち得ていなかったアドリアナに残酷な現実を教えた。
アドリアナは自分の血のせいで妃になることができないという事実を知り、「そんなことない。私は貴族だもの。絶対に大丈夫よ」と必死に慰めることしかできない。
馬鹿みたいに慌てふためくアドリアナを冷めた目で見た後、伯爵は舌打ちをした。
(呪われたのがこっちだったらよかったのにな)
伯爵はエニシダの呪いが絶対に解けないことはわかっている。
連れて帰ることができたとしても、薬を作らせることができるのはほんの少しだけ。
もしかしたら、その可能性すらないかもしれない。
そうなったら、オルテル家は終わりだ。
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