水魔法しか使えない最強の魔法使い

アリス

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魔法テスト

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校舎裏にある、アキレアの秘密基地は貴族が絶対に歩かない場所を抜けたところにある。

秘密基地にたどり着くまでに、草が167センチあるアキレアの肩にかかるまでの伸びきった無法地帯を抜け、濁った池に周りを飛ぶ虫たちのたまり場を抜け、木で陰になった少し涼しい森林浴を抜けるとたどり着ける。

大きな木の枝にちょこんと作られた「ツリーハウス」。

誰が作ったかは知らないが、アキレアが見つけたときには中は何もなかった。

あったのは大量のほこりだけ。

見るからに誰も使っていない。

こんな立派なツリーハウスを使わないのはもったいない。

そう思い、作ってくれた人に感謝し、掃除してからは勝手に使わしてもらっている。

今では大量のアキレアの私物が置かれている。

アキレアは窓を開け、家の換気をよくしてから、こないだ作ったハンモックに寝転がる。

高い枝と枝にひもを繋いでいるので、空を飛んでいるような感覚と近い体験ができる。

気持ちの良い風に、温かい気温、木の匂い、どれも眠気を誘うには最高で、つい大あくびをしてしまう。

それと同時に、午後の授業の始まりを知らせるチャイムが鳴った。

(えっと、確か今からの授業は……)

アキレアは目を閉じ記憶を辿る。

(あ、魔法の実技だ。まぁ、いっか。私、水魔法以外使えないし。それに、あのババア。私にだけあたり強いし)

サボると決めた瞬間、アキレアはそのまま眠りにつき、授業の終わりのチャイムが鳴るまで起きなかった。



次の授業は、魔法薬学となっているが、基本薬学とたいして変わらない。

ただ、魔法を使うか使わないかの違いだけ。

この授業は、聞いていて損はなし、何かあったときに役に立つ知識なので必ず出ると決めている。

少し、面倒なこともあるが、それ以外は問題ないので教室へ戻っていると、途中で先ほどサボった授業の担当教師、アイリーンに話しかけられた。

「あら、私の授業にいなかったから、とうとうやめたと思っていたのに、まだいたのね」

(あー。うるさいのに話しかけられた)

「はい。まだいますね」

アキレアは苛立ちを押さえながら、愛らしい笑みを向ける。

傍から見れば、可愛らしい少女に見えるだろうが、真正面からみていたアイリーンには喧嘩を売られたと受け取った。

そっちがその気なら、とアイリーンも人当たりのよい笑みを浮かべながら「そう。それは残念ね。自らの才能の無さをりかいできないなんてね」と冷たい口調で言う。

「本当にその通りですね。できないから、未だにその地位にしがみつくんですよね。才能もないのに。しがみつくのは男だけにすればいいのでは?」

年相応の格好もできず若作り、男に媚び、女はいびる最低な教師。

無能と呼ばれ、友達も誰もいないアキレアですら知っているほど、彼女の男好きは有名だ。

生徒の父親にも手を出したことがある、と女子生徒たちの中で彼女にむかつくたび上がってくる話題だ。

なぜ、友達もいないアキレアが知っているかというと、偶然トイレにいるときに聞いたからだ。

「あんたね!」

アイリーンはアキレアの言葉に一瞬で頭に血が上り、頬を叩こうとしたが、そのとき生徒たちの笑い声が聞こえてきて我に返った。

叩こうとした手で自身の前髪を掴み苛立ちを表現する。

今にも殺しそうな勢いでアキレアを睨みつける。

「私、受けた恩は倍にして返しますけど、やられたことは相手が謝罪しようが、後悔しようが、絶対に許さない、ぶっ潰すって、決めてるんです」

アキレアは拳を顔の横までもってくる。

「だから……覚悟しててくださいね」

ニコッと笑いかけ、放心しているアイリーンを置き去りにして教室へと向かう。




※※※




三日後。

「いきなり、魔法テストって言われたときは焦ったけど、俺たちの学年はまじでラッキーだよな」

「ほんと、それな。ビリだった奴は誰であろうと退学なんて、ふざけてるけど、俺達だけは関係ねーよな。ビリは決まってるからな」

男たちはアキレアをみて笑う。

そのやり取りを聞いていた他学年たちは……


「いいよな。三年生たちは。魔法使えないやつがいるから」

「え?魔法は使えるって聞いたよ」

「そうのなのか?でも、無能って……」


「ふざけんなよ。あと半年で卒業なのに退学なんてふざけんなよ!」

「せっかくここまで頑張ってきたのに。誰だよ!こんなふざけたテスト考えたのは!」



三年生以外のどの学年からも不満の声が上がっている。

唯一、上がっていない三年生たちはアキレアがいるから安心していた。

テストの内容の発表はまだだが、ビリにならないと信じ切っていたので、他学年とは違い、優雅に談笑しながら、開始時間まで過ごしていた。



「これより、テスト内容を発表するが、その前に最下位になった生徒はどんな理由であれ、誰であろうと退学になります……」

イーリス学園の2番目に偉い先生、副校長が壇上に立ち、生徒たちの恨みの視線を向けられながら宣言をする。

冷や汗が流れ、なんどもハンカチで汗を拭きながら話を続ける。

「……どんな魔法を使っても構いません。今から各学年に配るルートを使って必ずゴールをしてください。地上を走ろうが、空を飛ぼうが、海を泳ごうが、決まったルートでしたら問題ありません。最高学年の5年生からテストを始めます」

どんな魔法を使っても構いません。

この言葉を聞いた瞬間、多くの生徒の目の色が変わった。

元々、上位にいたものは自分が最下位になるとは思っておらず、余裕の態度をしていたが、状況が変わった。

どんな魔法を使ってもいい、は何をしてもいい、ということになる。

攻撃魔法を使って相手を妨害しても、決められたルートを使ってゴールをすれば問題ない、と暗に伝えているのだ。

下位たちが勝手に足の引っ張り合いをするのなら問題はないが、上位たちはそうならないとわかっているので、焦っている。

魔法はいかなる競争の中でも、最も強者と弱者の差がはっきりと表れるものである。

この国の7賢人と呼ばれる者たちに、1000人の魔法使いが一斉に攻撃しても成すすべなく負ける。

7賢人の更に上の世界各国の魔法使いの頂点に立つ神に選ばれた12使徒は、その7賢人ですら成すすべなく負けると言われる強者たちだ。

だが、この学校の生徒たちは違う。

学校という箱の中では強者と弱者の順位がつけられるが、国を基準とすれば同じくらいの実力だ。

大勢で挑まれたら負ける。

3年生以外の学年のテストがどうなるかなんて、先生たちは目に見えてわかっていたが止めることはできなかった。
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