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無能
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この世界、この時代では魔法は奇跡の代物と言われている。
それは神に愛された者たちだけが使えるものとして崇められていた。
黒竜が二百年ぶりに現れ、討伐されてから半年がたった。
世界中ですぐに救世主探しが始まった。
誰も成しえなかった、歴史に名を遺した大魔法使いでもできなかったことを成し遂げた奇跡の存在。
その者を知りたいと思うのは当然だった。
多くの者が「我こそが救世主だ」と名乗り出たが、すぐに嘘だとばれ罰せられた。
お金、名誉、権力欲しさに愚かなことをした者たちの罪は重く、最悪死刑にもなったとか。
なかなか救世主が見つからないため、水の精霊王と契約している別のものが、あれは誰なのかと尋ねると「私が今契約しているのは其方だけだ」と言った。
水色の光の魔法陣は水の精霊王とその契約者だけが使える。
その2人が違うとなれば、いったい……
――誰が黒竜を倒したのか?
時間だけが過ぎ去り、これ以上はと救世主探しを諦め、忘れ去られようとしていた。
※※※
黒竜討伐から半年後。
「おい。無能。お前。今度はどんなズルをして学園に残るつもりだ」
オズワルド国、エカルト伯爵家の次男、ネイサンは小馬鹿にするように笑いながら教室にいる全員に聞こえる声量で話しかける。
ここオズワルド国はその名の由来は「神の力」「神の支配」である。
その由来の通り、神の力として崇められている魔法使いたちは、貴族と同様の扱いをされる。
力が強ければ強いほどに。
逆に弱ければ、例え神の力を使えたとしても、虫けら以下の扱いを受ける。
神の力を冒涜した罪で。
そのせいで、どれだけの魔法使いが心を壊したことか。
オズワルド国は他国と比べ魔法使いのレベルは高いが、傲慢で自分勝手な人間が多いと有名だ。
現にクラスメイト達はネイサンの言葉を聞いてクスクスと馬鹿にした笑みを浮かべながら、事の成り行きを見守っている。
ただ、話しかけられた当の本人、アキレアはネイサンを一瞥すと、何も言わず本の続きを読み始めた。
今の行動は貴族であり、魔法使いとして優秀な人物を無視する平民の図になってしまい、ネイサンはとんだ赤っ恥をかいてしまった。
反対なら問題はないが、今のはさすがにまずかった。
ネイサンの神経を逆なでした。
「おまっ、よくもこの僕を馬鹿にしたな!」
(してないけど)
言いがかりをつけられ、うんざりするが、見る限り放っておいてくれる気配ではない。
顔を真っ赤に染め、目を吊り上げながら、ネイサンは拳を握り、そのまま殴りかかる。
だが、その拳はアキレアには当たらなかった。
避けられると思っていなかったのか、ネイサンは驚いた顔をするも、すぐに派手にこけてしまう。
無防備になっていた、わき腹を蹴り飛ばされたからだ。
もちろん蹴り飛ばしたのは、殴られそうになったアキレアだ。
「文句があるなら、私じゃなく校長先生に言えば?決めたのは校長先生なんだからさ。まぁ、そんな度胸がないから私に喧嘩を売ったんだろうけど」
アキレアは先ほど小馬鹿にされたように、ネイサンに同じような口調で言い放つ。
彼は悔しそうに歯を食いしばり、せめてもの抵抗で睨みつける。
「まぁ、あんたの言い分もわからなくはないよ。空も飛べない、物を動かせない、火も出せない。簡単な魔法は何一つできない。使える魔法は水魔法だけ」
うん、うん、わかる、むかつくよねー、と他人事のようにアキレアは言う。
その姿を見たクラスメイト達は馬鹿にされていると気づくが、彼女の態度が一変したため何も言えず黙り込んだ。
「でもさ、文句言うなら……私に一度でも勝ってから言ってくれる?自称、神の力を使える魔法使いさん」
アキレアはオズワルド国の初代皇帝、魔法使い全員を敵に回すような宣戦布告をクラスメイト全員に向かって言う。
「……!」
ギリッと音が出るほどネイサンは歯を食いしばり、血走った目でアキレアを睨みつける。
「次の試験が楽しみね」
そう言うと、アキレアはこの話は終わりね、文句があるならかかってこい、という風に教室から出ていった。
出てすぐ、ネイサンの暴言が聞こえてきたが、無視をして誰も来ない、一人になりたい時に訪れる秘密基地に向かった。
それは神に愛された者たちだけが使えるものとして崇められていた。
黒竜が二百年ぶりに現れ、討伐されてから半年がたった。
世界中ですぐに救世主探しが始まった。
誰も成しえなかった、歴史に名を遺した大魔法使いでもできなかったことを成し遂げた奇跡の存在。
その者を知りたいと思うのは当然だった。
多くの者が「我こそが救世主だ」と名乗り出たが、すぐに嘘だとばれ罰せられた。
お金、名誉、権力欲しさに愚かなことをした者たちの罪は重く、最悪死刑にもなったとか。
なかなか救世主が見つからないため、水の精霊王と契約している別のものが、あれは誰なのかと尋ねると「私が今契約しているのは其方だけだ」と言った。
水色の光の魔法陣は水の精霊王とその契約者だけが使える。
その2人が違うとなれば、いったい……
――誰が黒竜を倒したのか?
時間だけが過ぎ去り、これ以上はと救世主探しを諦め、忘れ去られようとしていた。
※※※
黒竜討伐から半年後。
「おい。無能。お前。今度はどんなズルをして学園に残るつもりだ」
オズワルド国、エカルト伯爵家の次男、ネイサンは小馬鹿にするように笑いながら教室にいる全員に聞こえる声量で話しかける。
ここオズワルド国はその名の由来は「神の力」「神の支配」である。
その由来の通り、神の力として崇められている魔法使いたちは、貴族と同様の扱いをされる。
力が強ければ強いほどに。
逆に弱ければ、例え神の力を使えたとしても、虫けら以下の扱いを受ける。
神の力を冒涜した罪で。
そのせいで、どれだけの魔法使いが心を壊したことか。
オズワルド国は他国と比べ魔法使いのレベルは高いが、傲慢で自分勝手な人間が多いと有名だ。
現にクラスメイト達はネイサンの言葉を聞いてクスクスと馬鹿にした笑みを浮かべながら、事の成り行きを見守っている。
ただ、話しかけられた当の本人、アキレアはネイサンを一瞥すと、何も言わず本の続きを読み始めた。
今の行動は貴族であり、魔法使いとして優秀な人物を無視する平民の図になってしまい、ネイサンはとんだ赤っ恥をかいてしまった。
反対なら問題はないが、今のはさすがにまずかった。
ネイサンの神経を逆なでした。
「おまっ、よくもこの僕を馬鹿にしたな!」
(してないけど)
言いがかりをつけられ、うんざりするが、見る限り放っておいてくれる気配ではない。
顔を真っ赤に染め、目を吊り上げながら、ネイサンは拳を握り、そのまま殴りかかる。
だが、その拳はアキレアには当たらなかった。
避けられると思っていなかったのか、ネイサンは驚いた顔をするも、すぐに派手にこけてしまう。
無防備になっていた、わき腹を蹴り飛ばされたからだ。
もちろん蹴り飛ばしたのは、殴られそうになったアキレアだ。
「文句があるなら、私じゃなく校長先生に言えば?決めたのは校長先生なんだからさ。まぁ、そんな度胸がないから私に喧嘩を売ったんだろうけど」
アキレアは先ほど小馬鹿にされたように、ネイサンに同じような口調で言い放つ。
彼は悔しそうに歯を食いしばり、せめてもの抵抗で睨みつける。
「まぁ、あんたの言い分もわからなくはないよ。空も飛べない、物を動かせない、火も出せない。簡単な魔法は何一つできない。使える魔法は水魔法だけ」
うん、うん、わかる、むかつくよねー、と他人事のようにアキレアは言う。
その姿を見たクラスメイト達は馬鹿にされていると気づくが、彼女の態度が一変したため何も言えず黙り込んだ。
「でもさ、文句言うなら……私に一度でも勝ってから言ってくれる?自称、神の力を使える魔法使いさん」
アキレアはオズワルド国の初代皇帝、魔法使い全員を敵に回すような宣戦布告をクラスメイト全員に向かって言う。
「……!」
ギリッと音が出るほどネイサンは歯を食いしばり、血走った目でアキレアを睨みつける。
「次の試験が楽しみね」
そう言うと、アキレアはこの話は終わりね、文句があるならかかってこい、という風に教室から出ていった。
出てすぐ、ネイサンの暴言が聞こえてきたが、無視をして誰も来ない、一人になりたい時に訪れる秘密基地に向かった。
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