マジックカースト 〜苦しい魔法世界〜

浅村 英字

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第弐章 才能

告白

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「おっはよう、永和。今日も良い天気だな」

 このいつもアニメの最初の第一声に出てきそうなことを言うのは、俺の記憶の中では一番の親友『相川 聡』。俺と違い、普通の高校一年生だ。

「だな。にしても毎日同じようなこと言ってて、飽きないのか?」

「飽きない?って、お前は水の味に飽きたことあるか?」

 いや、自分の言う台詞と日常生活必須のものには何の関係もない気がする。そういう何気ない時間が経つとき、時折自分の過去について振り返る。何も無いと理解していても、そうしないといけない気がしていた。

「なぁ、お前も部活しないの?」

 部活は、嫌いだ。体力や文学的センスがあるわけではない。その代わりにあるのが、人一倍ある魔力だ。こんなもの少なくとも俺は望んでいないのに・・・。

「部活って、何もやること無いじゃん」

「いや、何かやってみたら案外はまるかもよ?」

「そうだな・・・。でも、興味ないのをやる気にもなれないからな」

「でもさ、どっかの部活に入れば魔導部からの勧誘もなくなるんやない」

 この世界の中で王道と言われる部活が、『魔導部』と言われる魔法での模擬戦がメインの部活だ。俺はこの強力な魔力のおかげで、そこからよく勧誘を受けていた。部活の人と会えばいつも『才能はあるんだ』や『魔力がもったいないよ』と言われ続けていた。そんな生活が俺には嫌でしかなかった。

「まぁ、確かにそうだけど。早めに帰ってゆっくりした方が気が楽なんだよね」

「あぁ、それは否定できねぇな。俺も、部活が休みになったとき最高だったもんなぁ」

「普段から忙しいのか?魔導部って」

 強大な魔力を持ってても、俺の何を知っているのか分からないが、聡だけは俺の味方でいてくれる。俺の記憶が無い部分も、聡に助けてもらった。

「忙しいって言えばそうかな。毎日毎日、自分の魔力との真剣勝負をしなくちゃいけないし。とりあえずお前にも勝てるようになるのが今の目標で、それまでは頑張らなくちゃって思ってるけど?」

「俺に勝つって、今でも十分じゃん。今の聡は俺じゃ相手にならないでしょ」

「そりゃそうよ。だってお前、魔法使おうとしないじゃん」

 俺には強大な魔力があるが、それを使う勇気がない。暴発したり暴走する訳じゃない。魔法を使うと無意識に誰かから攻撃され続け、死ぬんじゃないかって感じてしまう。だから、俺は魔法を使うことが出来ない。

「魔法なんてなくても、この世界は暮らしていけるもん。電気エネルギー様最高!」

「だったらその魔力を私に譲って欲しいよ」

 俺たちの会話に割り込んできたのは『小川 日向』という俺よりも少し背の低い生意気な水魔法使いだった。高校入学してすぐに仲良くなった彼女とは、少し噂が立っているほどの仲だ。

「出来ることなら譲ってるよ・・・」

「そうそう。そんなことが出来るならこいつの魔力はもうとっくに俺がもらってるよ」

 日向も聡と同じ魔導部の部員だから、俺の魔力を欲しいと言うことが多い。いずれの技術で、他人に魔力を提供できるようにならないだろうか。そうなったら、俺のこの勧誘に困る生活が終わるのに。

「ふぅん。聡は今日何するの?」

「俺は・・・先輩に稽古つけもらおうかな」

 魔導部は主流の部活であるため、部員数は学校の半数近くを占めている。大人数の組織では、その組織をさらにグループ化し管理をしやすくしている。同じ部のメンバーと言っても違うグループの二人は、互いが日ごろ何をしているのか知らない。

「そっかぁ。私最近何したら良いのか分かんないのよね・・・」

「そういうことはいつも暇をもて余してる、こいつに聞いてみたら?」

「何で俺なんだよ・・・」

 聡に指され、面倒なことに巻き込まれるのは本当に嫌だ。

「それに、こいつの言ってるやることは、何も無い中の俺とは訳が違うだろ」

「そうそう、こんな廃人と一緒にしないでくれる?」

 『廃人』その言葉はさすがに言いすぎだろうと、怒りが湧いてくる。それを言葉にすると向こうも同じようなことを言ってきて、ちょっとした喧嘩が始まった。

「お前はいつもバカバカと無駄に魔力消費してんだ。やることなんざ魔力コントロール以外何があんだバカ!」

「うるさいわねぇ。魔法使うことも出来ないあんたには言われたくないわ!」

「あ?!俺は使んじゃねぇよ。使んだよ!」

「だったらただのビビリなだけじゃない」

 俺が魔法を使わない理由を日向は知っているから、ビビリと言う言葉が出てくるのだろう。俺にはそれを跳ね返す言葉を持っていない。彼女の言葉は事実で、現に俺は無意識に感じる恐怖感にビビッている。

「ビビッてて何が悪いんだよ。お前は知らないから言えるだけで、無意識に感じる恐怖感ってめっちゃ怖いんだぞ!」

「はっ、知らないけど?それに立ち向かう気が無いなら、私に言い返すの無理じゃない?」

 俺たちの怒りがどうにかなりそうだったのをそこにいた第三者が止めに入る。

「まあまあ。夫婦喧嘩もそこまでにしましょうよ」

「「夫婦ちゃうわ!」」

 この世界でも小説や漫画のように、仲の良いもの同士が同じ意思を言うときに声は揃う。でも、それが俺たち二人を『夫婦』と言われる所以なのだろう。

「まあでも、俺も永和の言い分のほうが正しいと思うぞ?」

 どうやら聡は、さっき状況を楽しんでいるように思えた。その言葉に日向は下を向く。夫婦と呼ばれることは好きじゃないが、そう言われても同じくらい俺には彼女の考えが読み取れる。入学して三ヵ月、夏休み目前で向かえるこれまでの期間ですでにそこまで知れたのは、もしかしたらそういった感情を持っているからだろう。

「えぇ、何で急に永和の味方すんの?」

「味方も何も、本当のことだろ?お前は人より少しセンスがあるからって、ドカドカと魔力を使うんだから」

「そうそう、くどい味付けしか出来ないお前らしい魔力コントロールだよ」

 俺の言葉をきっかけに、再び喧嘩が始まる。いや、喧嘩と言うよりも鬼ごっこに近い形で逃げ続ける。

「お前たち、朝からいい加減にしろよ・・・」

 聡の言葉は、この遊びを一瞬でやめさせた。俺たちはその場で脚を止めて振り返り、彼のこぶしに集められた魔力に視線がいく。

「悪かったって・・・」

「何ちょっとイラついてんの。いつものことじゃん」

 今日も平和に一日が過ぎようとしている。今朝聡や日向と会ってから八時間近く経って、学生のほとんどが教室から部活に向かっていた。そんななか廊下ですれ違った日向は、殺伐と俺を睨んでいた。

「何?そんなに睨まれる筋合い無いんだけど」

「ちょっと、今日暇?」

 珍しい怒りが混じっていた日向の言葉は、俺に懐かしい警戒心を持たせた。

「暇っちゃ暇だけど?嫌だよ。お前の練習に付き添うとか嫌だからな?」

「大丈夫。『』とは言わないから。その代わり、『』」

「は?!」

 俺には彼女の言ったことだ理解できなかった。俺の言ったことと何が違うのか、相違点としてあげるなら言い方くらいだろう。何が違うと言いたいのか分からなかった。

「何が違う?」

「言い方・・・」

 やっぱりか・・・。俺はこいつのことを知っていて理解できるほうだと思っていたが、その考え方は直したほうがよさそうだな。

「マジか・・・。分かった、話だけは聞いてやる。それ以外はその話を聞いてから決めるよ」

「あんた、私の魔力コントロールに文句言ったよね?」

 話の内容はまさかの今朝のことだった。俺は首を立てに振りながら、昇降口に向かう。

「私に魔力コントロールのやり方、教えてよ」

 やはり考え直す以外の選択肢が思いつかなかった。それに、この先の彼女の話を聞く必要も無いだろう。

「なんで、魔法を使わない俺に言うんだ?そんなの魔法が上手な先輩に頼めよ・・・」

「いや、永和がいい」

 その台詞には少しにやけそうになったが、夕日を見てそれを誤魔化した。にしても、魔法を使わない人に魔力コントロールを習うのかは、一向に理解が出来そうにない。そもそも俺に魔力コントロールのセンスなんてものは無いのかもしれないのに。

「断る」

「何で!」

 強く反抗してくる日向に、俺は脚を止めて正面から彼女のことを跳ね返そうとする。

「あのな。俺はお前の先生でもなければ、先輩でも彼氏でもないんだ。そんな俺がわざわざ自分の時間を犠牲にしてまで、お前の成長を手伝うとか、意味が分からない」

「だったら。あんたが私の彼氏になってよ・・・」

 俺は俺なりの正論で彼女、いや日向の誘いを断ったつもりだった。でも、理由が無いからと言う俺に対抗するように、理由になるから付き合ってと、日向の口から聞いたのは正直腰が抜けるかと思った。その言葉を聴き付けた他の人たちが寄って集って、俺たち二人を煽りだす。

「お前なぁ、そういうことはちゃんと好きだと思える人に言え。俺なんかじゃなくてな」

「ちゃんと本心から好きだよ?」

 俺は日向のことを何一つ、理解できていなかったのだろう。日向は俺を仲のいい男友達としか思っていないのだろうって、信じてた。

「マジ?」

「マジ・・・」

「分かった。お前の修行には付き合ってやる。彼氏になるとかはまた別で考えさせろ」

 そう言って俺と日向は、階段を降りて部活で使われる大きめの広場に向かう。
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