マジックカースト 〜苦しい魔法世界〜

浅村 英字

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第弐章 才能

衝撃の乙女心

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「ただいまぁ・・・」

「お邪魔します・・・」

 リビングとつながっている扉を開けると、そこにはモデルのような綺麗な人が私を向かいいれてくれた。その容姿も、魔力も気迫も子どもの私とは違っていた。

「ようこそぉ・・・て、えっ!?友だちって女子なの!?ってか、永和って女子と絡むの?」

 そんなお姉さんの言葉を無視して、キッチンに向かう永和。一瞬その姿に気をとられそうになるが、それよりも、と綺麗なお姉さんに挨拶をする。

「初めまして、永和と同じクラスの『小川 日向』です」

「あっ、どうも。永和の姉の『ツムギ』です。にしても永和が女子と一緒に帰ってくる日が来るなんてね」

 紬さんは永和のことをどう思っているのだろう。学校じゃ普通に優しくて、誰とでも仲がいい人気者の特徴を全て持っている彼だ。他の人を連れてくることがないのかと、不思議に思う。

「姉貴。その辺にしないと姉貴の晩御飯にデスソース混ぜるよ?」

「ごめんごめん。だって、可愛い弟がこんな可愛い子を連れてくるなんて思っても見なかったんだもん」

「いえいえ。お姉さんの方がお綺麗ですよ」

 姉弟のイチャイチャに私を混ぜないで欲しい。それにモデルみたいな紬さんに言われても、上から言われていると自意識過剰になってしまう。

「姉貴さ、今日なんかあった?」

「なんで?」

「珍しく、ご飯を炊いてたから・・・」

 私も紬さんの同類なのだと意外に感じた。私も、家の手伝いなんて滅多にしない。だから永和は私と仲がいいのかとも思った。私と紬さんが、彼のどこかでかさなるのかも・・・。そう思うと、今日の私の行動がはずかしく思う。

「いや、これが普通・・・」

「彼氏でも出来たの?」

「違うよ!」

 違うの言い方と、その速さからして恐らく本当に彼氏ができた訳ではないのだろう。でも、そういう永和は私が告白した事を覚えているのだろうか?
 
「いつもは・・・」

「永和?いつものことでしょ?・・・」

 紬さんの言葉は、威圧と共に魔力を感じさせた。その魔力は、なんとなくだけど感じ取れた。でもその魔力がどんな物なのか、分からなかった。

「ハイハイ、分かった分かった」

 永和が料理を始めると、魔力が感じられなくなった。それと同時に紬さんが、私を後ろからソファに進める。

「ねぇねぇ、『ヒナタ』ちゃんだっけ?」

「はい。日向です」

「日向ちゃんって、永和のこと好きでしょ?」

 私は、自分の体が他人に操られたように自由が効かなくなった。顔が暑くなり、視線は紬さんを他所に永和を見ていた。

「はい・・・」

 そこからは晩御飯が準備されるまで、紬さんと二人で永和のこと話し合っていた。学校では誰とでも仲良くなれるような感じなのに、家ではツンデレ気質で可愛いらしい。学校ではクールなのに、そんな一面もあるのか・・・。

「やっぱり、才能が一番の決め手?」

 別の話をしていたのに、また紬さんが永和の話を切り出した。

「それはあまり関係ないですよ。私は、彼との時間が最高に幸せなんです」

「そっか、ならよかった。じゃあ、伝えたいことあるから私の部屋来て」

 私と紬さんは永和に言って二階に向かった。廊下の暗闇が、まるで紬さんの心の中のような雰囲気を漂わせた。

「永和の前ではあんまり話したくないの」

 電気がついて語り出したお姉さんの声は、とても低くてこれからの話に重みを加えられた。

「実は、永和の才能。生まれつきじゃないんだよ」

 何を言っているのか、私には分からなかった。でも、才能は突然現れるってこともあり得るよね。何を言ってるのか、分からない。

「あの子は無記むき示唆しそなんだよ。彼には八歳から十歳になってしばらくの間の記憶がないの」

 無記の示唆。その言葉に力が抜けた。
 示唆とは原因不明の行方不明だった人の中で、五年ほど前の十月二十二日に見つかった人たちのことを言う。さらにその中でも『有記うきの示唆』と呼ばれるその間の記憶があるもの、『無記の示唆』と呼ばれる記憶がないものに分けられる。無記の示唆は、その無い記憶のところに触れると、過呼吸や嘔吐などの異常反応が飽きるらしい、それでも意識があればマシな方と聞く。記憶がある人は常に気迫と言う文字がないらしい。

「それ、本当なんですか?」

「私は姉よ?それに、才能に惚れた人じゃないからこの話をしても意味がないじゃん。迷惑かもしれないけど、あなたに支えて欲しいの」

 そこから少しだけ話を続けた。

「二人とも。出来たよ」

 私たちと扉を挟んだところから、聞こえた永和の声に私たちは揃ってリビングに戻る。そこに並べられたお皿を見ると、そこには大皿に盛られた鶏肉と白菜で炒められたものと、キノコがとても良い色をしているものが並べられていた。

「美味しそう、本当に永和って料理出来るんだね」

「悪かったな。意外で」

 どうしてか、私の言葉が皮肉に聞こえたらしい。でもその返しとして、相応しい言葉が浮かばなかった。

「そりゃ、出会ってまだ三ヶ月程度でしょ?男子が料理出来るだけで意外だよ」

 私の詰まる姿を見て、紬さんが言ってくれたことが私の全てだった。

「そんなもんか?」

「そうだよ」

「そうそう」

 姉の存在は、私にはとても大切なのだ。彼の隣に居たい私には、今の時間も宝物だった。でも、永和のことを思うとうまく笑えない自分がいた。

「口に合わなかったなら、無理しなくてもいいんだぞ?」

 そんなに私は、思い詰めた顔をしているのだろうか。自分の顔が見える場所がなく、確認できないこの状況を脱するためには紬さんの力が必要なのに。

「いや美味しすぎて、ちょっと引いちゃった」

「何だよそれ」

 彼には、魔力以外に料理の才能も持っているとは・・・、私と比べて人間の価値が段違いだと、身に染みて感じた。
 その後も、美味しく永和の作ってくれた晩御飯を食べ続け、私の両親が家に帰ってくる時間になりそうだった。

「姉貴、後片付け任せてもいい?」

「うん、分かった。永和はなるべく早く日向ちゃんを送ってあげて」

 私がリラックスしていると、永和が紬さんと変わっていた。

「分かってる。日向、駅まで送るから行くぞ」

 私の荷物を勝手に取って、扉を開ける永和の姿が目に入る。その姿に惚れなおして、私は彼の腕の向こうにせっせと歩いていく。
 そして真っ暗な道路を二人で歩いていく時間が、私にとってはドラマのワンシーンのようだった。

「姉貴に聞いたんだろ?俺のこと」

 そりゃ、急にリビングから離れればおおよそ話の内容も分かるよね・・・。

「分かったからって、何も変わらないだろ。いつも通りでいろよ、お前らしくない」

 私も私なりに、気を使っていることを彼は理解しているのだろうか。

「分かってはいるけど・・・」

「お前が俺に気を使う理由なんてないだろ。だから今まで通りな」

 笑いながら言う永和が、姉の紬さんが言っていたツンデレみたいで可愛くみた。それにちょっとした無理やり感が、私的な好みだった。

「そういや今週末、なんか予定ある?」

「えっ、ないけど?何、急に」

「なら日曜日予定空けて、ちょっと付き合え」

 これって、デートなのだろうか。一体何着てこうか、今から考え込んでしまう。

「何すんの?」

「いいから。俺とじゃ、嫌?」

 永和の言葉が、私の脳内で何度も何度も繰り返された。私には頷く以外のことができず、その後の道中も喋れなかった。そして、電車が来るまでの間も同じだった。

「じゃ、気をつけて帰れよ」

 彼に言われたことが、ずっと頭の中に繰り返されていた。家に着いてからも、お風呂の中で顔半分をお湯につけて考える。
 ずっと頭の中に流れる同じ光景。それに今週末デートの予定って、どんだけあの人って強引なの・・・。でも、なんか意外過ぎて頭の中が彼でいっぱいになる。

「明日からどうしよう・・・」
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