マジックカースト 〜苦しい魔法世界〜

浅村 英字

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第弐章 才能

最強の転校生

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 昨日、スーパーからの帰りに魔戝の一人、井魔 幸平と出会った。そして、今日は彼に学校を案内させたり、家周辺の案内をしなきゃいけないらしい。そして、よりにもよって幸平は俺と同じクラスに転入してきた。

「初めまして。俺は『井魔 幸平』です」

 彼のことを昨日知ったから、特にそこまで驚かない。しかし、突然現れた人が魔戝だと言われれば、気がひけるのは当然だ。教室中の人たちが、少しどよめく。

「名前から分かる人もいるかもしれないけど、俺は魔戝の一人です。でも良かったら、俺に対しては普通に接してほしいです。魔戝とは考えなくて、みんなと特に変わらない感じだと思ってください」

 あの時の俺が、増えたかのように昨日と同じ空気が流れる。そりゃ、偉い人からそんなこと言われれば、返す言葉に詰まるものだ。教室での自己紹介が終わり、幸平が俺の後ろである転入生にありがちな席に座る。

「おっ、永和が前なら安心するわぁ」

「ありがとっ」

 幸平とは、メールでずっと話していたから、他の人よりも彼とは親しい感じで話せる。
 そして、放課後。俺たちは魔導部に顔を出しに、昨日来たところとは別の体育館に足を運ぶ。

「ここが魔導部ね・・・。第四って名前の割には、かなり立派な施設だね」

 第一から第四までの格差は、今現在ほとんどない。ただし、その名前の肩書きを大事にしているのは、魔戝や魔法信者の貴族ばかりだ。実際のところは、そういった格差は存在しない。

「最近は、こんなもんですよ。じゃあ俺は帰りますね」

「え?いや、お前は魔導部員じゃないの?」

「えぇ、俺は魔導部とは特に関係ないですが?」

 そう言えば、俺はまだ幸平に話していなかった。

「そんなシンプルな才能を持ってるのに?」

 俺の持つ、一般人とは比べ物にはならない巨爆な魔力量、それは単純な才能な分、彼は俺のことをよく理解できないのだろう。

「ちょっと色々あってね」

 俺の後ろから魔導部員たちがやってくる。部員は、俺と隣の魔戝に気づくや否や、大きな声で叫ぶ。

「幸平くんだろ?やっぱり魔導部に入るんだ。ついでに永和も一緒にどう?」

 来た魔導部の生徒は、幼馴染の聡だった。

「そうだよ。俺もお前がいると安心するんだけど」

 俺には、魔法を使わなくてもそれなりの実力がある。そう聡にはバレて、聡の話と、栗原先輩が自ら負けたことを言いふらしていたせいで、学校中に噂というか事実が広まった。

「いや、俺は・・・」

 今まで俺が、魔導部の勧誘を断り続けてこられたのは、魔法を使えないからが大きい。そのせいで、聡の後ろの女子に、今日はずっと問い詰められている。

「そうだよ。永和はもう十分戦えるって証明されたんでしょう?入りなよ」

 俺は久しぶりに入ったあの訓練場の空気が、今の俺を生み出した。その時一緒にいたこいつがいたから、俺は自分を磨く手を止められなかった。

「そう言われたら、断る理由がなくなるじゃん」

「あっ、俺も聞いたんだけど。永和ってそんなに強いの?」

 昨日来た彼には、昨日あった俺たちの出来事を知らない。そして、彼が言いそうなことが、俺に恐怖心を与える。それが叶わないようにただ祈る俺の願い、それは無意味になるのだが。

「なら俺と一戦勝、負しようぜ。俺が勝ったら、俺と一緒に魔導部にはいる」

「なら、俺が勝ったら?俺が勝って何もなしなら、やる意味ないからな」

 彼の笑顔が、更なる恐怖心を植えつかた。

「俺に魔力コントロールを教える」

「俺に得がねえじゃねえか。やる意味がないだろ」

 俺の腹の中では、笑顔が止まらない。昨日初めて会った人と、今日こんな話をするなんて思っても見なかった。

「それじゃあ、お前が勝ったらいつでもいいよ。俺にできることなら何でもやってやるよ」

 彼の言った言葉は、普段なら契約をして補償を残しておくが、魔戝である幸平がこういうのに契約を結ぶのは申し訳ない。そして、彼の目の真っ直ぐさは疑いようがない。

「分かったよ・・・」

 いつの間にか、俺たちのところに聡と日向が来ていた。

「勝負はもう少し待っててよ。顧問の先生に『ここ使う』って言ってないから準備されてないと思う」

 前回は、先生に言っておいたところを俺と栗原先輩が、横取りして使っていたからな。そう思うと、聡とも一戦勝負するって約束していたのに、未だにやってなかったな。
 続々と魔導部員が集まる中、俺たちの一戦の話が広がり、観戦客が増えてきていた。昨日は突然の試合だったから観戦客がいなかった。どちらにしろ、今日の噂のまわり具合から、観客がいようがいまいがあまり変わらなさそうだが。
 人が大勢集まり、転入生の実力とともに俺に関する噂の検証が行われるということで、先生が正式に審判をすることになった。大きな戦闘場の周りで、今にも始まりそうな試合に興味津々の様子だった。

「お前は魔導具何使うの?」

 前回、先輩との勝負の時は、薙刀のような長いものを使って戦った。しかし、今回は相手がよく使う戦略も分からなければ、魔法の属性すらも分からない。先輩の使う魔法も戦法も渡っていたらか、薙刀を選んだものの、今回はそうはいかない。

「へぇ、シンプルな片手剣ね。それじゃ、俺はこの短刀にしようかな」

 試合会場の出入り口には、木刀でできた魔導具がある。俺の手には柄の長い片手剣、幸平の手にはここの魔導具の中で一番短い短刀がある。
 互いの視線がバチバチと衝突し、試合開始の合図を待つ。

「それでは・・・用意、はじめ」

「雷装」

 先生の声が聞こえたと思えば、すぐ目の前に幸平が雷を纏い、短剣を構えた姿が現れる。

「まっ、じか」

 目の前に現れた幸平から腰をそって交わし、距離を取る。

「いきなり、飛ばし過ぎだろ」

「俺の闘い方は『電光石火』そのものなんだよ」

 俺との会話のラリーが、一往復した直後、また幸平が突進してくる。しかし、俺に二度も同じ手は通じない。会話をして時間を稼いだんだから、余計に対策する時間が出来る。そんな中でも、俺が出来る対策と言えば魔力の壁を作ることくらいだ。

「はっ?」

 その魔力の壁を知らない幸平や、昨日の一戦を知らない観客は、壁にぶつかった幸平の姿に驚きを隠せない。この瞬間が絶好の機会だと、俺は逃すわけにはいかない。彼の短剣を落とすため右手の甲を叩く。

「何がどうなってんだよ」

 短剣を落として、近距離戦闘は魔導具を持っている俺の方が圧倒的有利。なのに距離を取られ、俺の有利性が欠けた今、遠距離攻撃魔法を使える彼が有利になった。まさしく、万事休すとも言えるところだった。

「雷魔法 雷砲乱れ打ち」

 空中に現れる十発程度の雷の球。俺に向かってくるも、魔力の壁を前に消え去っていく。

「なんで、魔法も使ってないのに俺の魔法が消えるんだよ・・・」

 俺の魔力の壁はかなり便利だ。物理攻撃も魔法攻撃も無力化できる。その代償に大量の魔力を消費することになる。魔力が残る限り俺に攻撃が当たることはないが、魔力を使い切れるのはかなり早い。

「さあ?攻撃を当て続ければ、何かわかるんじゃないの」

「なるほど、ならこうしようか」

 幸平は、大きく構えて魔力を込め始めた。魔力を込めるには、集中力を大きく使う。この時間に動ける人はとても少ない。そんな絶好の機会を逃すわけにはいかない、そして幸平の奥の手の魔法が放たれる前に、けりをつけたい。俺は、幸平の袈裟の部分に魔導具を叩き込むために、走り出す。

「雷魔法 雷君の天雅孔砲てんがこほう

 俺が走り切るよりも、先に完成した幸平の『君主魔法』。俺と幸平の距離はざっと三・五メートル。魔法が放たれるこの状況からして、俺の負けは確定しているようなものだ。
 さらには彼が放とうとしている魔法は普通の魔法よりも、強力な魔法としてランク付けされるもの『君主魔法』だ。普通の魔法の次の階級とされている『君主魔法』は高校三年生の一部は使える程度の難易度。そんな簡単なものに分類されるとしても、俺と同い年くらいの子が使えるものじゃないだろ・・・。

「マジかよ・・・。こんの・・・」

 俺は、彼の放った君主魔法の前で、魔力の壁を作るも無意味に終わる。気がついたら、俺は壁に身を預けて力が抜け切っていた。

「大丈夫か?悪かった、ちょっと魔力込めすぎた」

 脱力し切っている俺に、手を差し伸べる幸平のセリフは、なぜか棒読みだ。
 そして、周りの人はその光景に拍手喝采で答える。

「本当かよ・・・」

「マジだよ」

 手を取って起き上がり、俺は観念して先生の元に足を運ぶ。契約を結んでいたわけではないが、軽い約束を結んだんだからと、入部届をもらう。
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