マジックカースト 〜苦しい魔法世界〜

浅村 英字

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第弐章 才能

話題性

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「俺もとうとう、魔導部か・・・。魔法も使わないのに魔導部員なんて、笑っちゃうぜ」

 入部届を提出した後、軽い試合を数戦してから、帰路に立つ。その帰路には幸平との買い物も一緒だった。

「確かに、『魔法が使えない魔導部』なんて聞いたことないな。次の『魔武祭』で活躍したら、たちまち話題になるんじゃね?」

 昨日会ったのに、今では旧友のように話すことができている。
 そして、幸平の言葉から出てきた『魔武祭』とは、全国の魔導学校が参加して一位を決める大会のことである。確かに、そこで俺みたいな魔法を使わない俺が活躍できるところがあれば、全国各地で話題になるだろうな。

「そうかもだけど、魔武祭に出られる一年生はたった二人だろ?」

 魔武祭の参加者は、学年によって違う。一年生が二人、二年生が三人、三年生が五人、そこに男女関係はない。対戦するのは基本的に学年ごとだが、少しづつ人数を増やして、十人一チームのチーム戦がメインであるのが魔武祭だ。
 俺たち『曇天第四魔法学校』の一年生代表は、おそらく幸平と日向だろう。幸平が実力者であることは、今日の一戦で全員が理解できた。日向に関しては、今後の成長次第だろうけど。もし、彼女が今の魔力量で、ちゃんと魔力コントロールをすることができれば、君主魔法も使うことが出来るかもしれない。

「俺と、お前。それ以外の選択肢は俺には浮かばない」

 今日の部活に日向の姿はなかった。おそらく、姉貴のところに行ったのだろう。あの場所を知ってからというもの、姉貴にちょっとでも時間ができれば、あそこで修行をしているらしいからな。だから、幸平は日向のことを知らないし、日向も幸平が君主魔法を使えることを知らない。

「そうかな?いずれ面白いやつが出てくるよ」

 俺も幸平も、その時の彼女の実力が想像以上であることを祈った。

「やあ、昨日ぶりだね」

 俺たちの前に突如現れたのは、昨日俺と会った謎の青年だった。魔力を多く感じるわけではないが、オーラに圧倒される感じがする。

「誰?」

 昨日彼と会った時、幸平は一緒じゃなかったから彼のことを知らないのだろう。謎のオーラに幸平も何らかの違和感とともに、緊張感を持ち始めているように見えた。

「やあ、君は初めましてだね。僕は『天導 夜宵』、自由な旅人だよ」

 あの時と同じ自己紹介をする青年。幸平の反応は、昨日の俺と同じように見えた。

「テンドウ、ヤヨイ・・・」

「まあ、前回は色々あってろくに話出来なかったけど」

 確かに前回は、俺の質問にろくな答えを出さずにどこかへ姿を消した。前回の答えを最初に聞き出すべきか、それともあの移動手段を記すべきか。

「悪いけど、今日もそれほど時間を取れない。単刀直入に聞こう、覚悟はできたか?自分を知る」

 その質問にうまく答えが出せない。彼の言葉に俺は、何もできないのが悔しく、手に力が入る。何も言えない俺の横で、何かを考え込んでいる幸平の姿が見えて、別の選択肢を思いついた。

「まだできてないです。それに、いつできるかも分からない」

 俺の言葉に腹を抱えて笑い出し、俺にさらなる質問をしてきた。

「そうか。ならまたいつかどこかで会った時にでも聞くよ」

 彼の言っていることがよく分からなかった。昨日と今日みたいに、またどこかでこんな風にいきなり出会うのだろうか。彼は軽く手を挙げて、俺たちの死角に入る。昨日は、すれ違った途端に姿を消されて行方が分からなくなった。今日も同じように逃すわけにはいかない。彼が何を使って移動しているのか気になる。

「ちょっと・・・」

 やはり、死角だった場所に彼の姿は、残っていなかった。せっかく走ったのに、その努力は無駄になって幸平との距離に虚しさを感じる。それに対して、幸平はずっと何かを考え込んでいるように見えた。

「どうした?なんか名前聞いてから様子が変だけど」

「なんか、聞き覚えがあるんだよな・・・」

 そう言って、頭の中にあるであろう『天導 夜宵』の名前について必死に思い出す。
 その直後、近くのどこかからか、何かに見られている気がした。そう思ってあたりを一見してみるが、俺を見ている人はいない。

「どうした、俺には何か忘れ物か?」

「何かに見られている気しない?」

 幸平は俺の感じた何かについて、何も知らないようだった。俺だけが感じた違和感に、俺は何となく心当たりがあった。最近は聞かないが、幽霊のようなものなのか・・・。

「そういえば、幸平は一人暮らしなの?」

「うん。一人暮らしだよ」

「今日晩御飯どうすんの?」

 この歳での一人暮らしは、魔戝である幸平からすれば、とても不便な生活化なのだろう。ご飯なんて魔戝ともあろうものが作れるのだろうか。

「ううん、まぁ。インスタント麺かな。いろんな味があるから飽きないし」

 『飽きない』ってことは、昨日もインスタント麺だったのか。ちょっとため息が出てくる。

「何だよ。悪いかよ」

「今晩うちで食う?親も遅いし、姉ちゃんも夜勤だって聞いているからだもいないけど」

 いつも帰りが遅い両親、その存在は俺の生活で特に気にすることはほとんどない。だから姉のことを気にするだけでいいから、なんだかんだ楽だ。

「え?お前料理できんの?」

「まあ、それなりには出来るよ。毎日のように晩御飯作ってるからね」

「マジかよっ」

 俺みたいな一高校生が、料理することなんて別に変わったことじゃないと思うんだけど。幸平の反応が異常であることを信じて、スーパーで晩御飯の買い出しを済ませる。今日の晩御飯は『鮭のホイル焼き』にしようと鮭と玉ねぎ、それと味噌汁の具として豆腐とえのきを持ってレジに向かう。

「お前、絶対モテるだろ・・・」

「だったら今頃は、彼女と一緒に土国家に行ってるだろうな」

 俺は半笑いで自分の妄想を話す。その妄想に何かを感じたのか、幸平は下ではなく上を向いて、何かを思い出したような気がした。

「何か思い出した?・・・もしかして、さっきの人に関してか?」

「まぁ、そんなところかな。似たような名前を聞いた気がしてな」

 おそらく、彼の頭の中で誰かに『夜宵って変人が急に現れて・・・』そんな話をしたのだろう。そんなことを考えながらも、別のことを話しているとあっという間に俺の家についた。

「ここか、なんていうか・・・」

「実家にしては小さいってか?」

 俺の家は、この辺では大きい方なのだが。それでも、幸平からすれば犬小屋みたいなものなのだろう。それが魔戝というものだ。

「そんなこと、思っちゃいねえよ」

「嘘つけぇ、そこは正直に言ってもいいんだぞ?」

 戸惑いのせいか、幸平の言葉はうまく並べられていない。俺はそんな彼の姿に、うっかり笑ってしまった。日向の時とはちょっと違うが、扉を開けて靴を脱ぎひょっこりと顔を出す。

「早く入れよ。小さいけど」

 自虐話をすると、どうしても幸平は気まずい感じが伝わってくる。それが面白くて仕方がない。自分で言うのもあれだが、その込み上げてくる感覚が癖になりつつある。
 俺はキッチンに立って、幸平がこっちにくる前のことを聞き出す。なんだかんだ、俺たちはここでの話しかしていない。魔戝でありながらも、魔戝らしい雰囲気を持っていない彼の生い立ちが気になった。

「だって気になるじゃん。お前、魔戝らしくないし」

「俺っていうか、血筋なんじゃない?両親も親戚もみんな人懐っこいし・・・」

 俺は魔戝の親戚事情をよく知らない。何か決まりがあるのか優先すべきものがあるのか、一般人は何一つ知らないのが普通だ。

「親戚って、他の魔戝の人もってこと?」

「いや、それはないな。親戚って言ってもそれは魔戝じゃないし、魔戝同士の結婚ってのも滅多にない。それに同じ魔戝と言っても交流はほとんどないからな、詳しくは分からないけど」

 魔戝という存在は俺たち一般人からすれば、雲の上のような存在でその実態はちゃんとは分かってない。

「ふーん。なんか、そっちはそっちで大変なんだな」

「まぁ、こっちはそれなりに力があるからな」

 話しながら調理していた料理も全て完成しきって、テーブルに二人分の晩御飯を並べる。

「めっちゃうまそうじゃん。やっぱお前、モテるだろ」

「だからそんなことないって・・・」

 晩御飯を食べて、『美味いじゃん』と言い続ける幸平に使っていたレシピ本を渡して、その日を終えた。
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