マジックカースト 〜苦しい魔法世界〜

浅村 英字

文字の大きさ
31 / 32
第肆章 本番

最強になるために

しおりを挟む
 俺は魔法を使えない。

「魔法を使えないくせに、陰陽魔法を使いたい。と?」

「俺が魔法を使えない理由はちゃんと理解したわけじゃない。でも、式神魔法は俺が使える数少ない魔法だから」

 玄武、中国の空想上の生物。そして、式神の中で最強とされる十二天将の一体。

「確かに、式神魔法は属性に縛られない魔法ではある。だが、誰でも使えるわけじゃない」

 俺は頭の上に三つの?が浮かんだ。カメにも聞いたが、イマイチ理解できていない。式神魔導師『土御門 晴信』に話してもらえば、きっと変わるだろう。

「そもそも、式神魔法を使うには幽魔と契約をして、自身の式神を準備する必要がある」

 そこまでは、理解している。でも、玄武の話ではそれ以上理解できなかった。

「式神魔法は、正確に言うと式神の魔法なんだ。俺たちが使うのは魔力だけ、それが式神魔法の特徴だ」

 同じことを玄武に言われた。でも、それで理解できるわけがない。俺が魔力を使ってどうやって他人の魔法を使うというんだ。

「それは何となく聞いたことあるんです。でも、それで理解できるわけないじゃないですか」

「魔法は二つの過程において発動している。一つは魔法陣を書く、そしてその魔法陣に魔力を流す」

 同じようなこと、姉貴に言われたような気がする。俺が魔法を使わなくなって長い年月が経ったから忘れていた。日向に教えたときは何となくだったから、俺は日向に魔法を教えるのがうまくできなかったのか。

「つまりだ、魔法を発動する過程を魔法使いと式神で分担するんだよ。で、そもそも君に見えてるの?こいつらが」

 晴信の横には一体のかなり弱い幽魔がいる。丸い卵に翼としっぽが生えている。

「こいつの名前は『タイジュ』、この神社の杉の木に宿っていた精霊だ。階級は曹位」

 精霊も幽魔なんだ。ってか、階級って何?

「階級ってのは、幽魔のみを対象に四段階に分けたもの。下から曹位そうい尉位いい佐位さい将位しょうい

 階級を覚えるのだけでも面倒臭そうだな。晴信の話を聞いていると、耳元でこっそりとヘビが話しかけてきたのが聞こえた。

『正確には、十段階だ。各位の劣等、優等があり、曹位劣等の下に下曹げそ、将位優等の上に俺たち天将がある』

 確かに、晴信の説明の中に十二天将という言葉は存在しなかった。所詮御曹司、与えられた力をある程度発揮するだけで満足しているだけのやつだな。もちろん、俺が思っているわけじゃない。玄武から洗脳されたものだ。

「一応言っておくが、俺はすでに将位まで確認できる」

 一応って。それに、将位と言ってもおそらく将位劣等とかだろう。じゃないとこんなに大きな態度取れないだろうし、玄武の気配に何か違和感を持ってもいいと思うのだが。

『将位優等まで見れたとしても、俺たちのことは認識できないと思うぞ。天将と将位優等にはそれだけの差があるということだ』

『それにこの簡易形態スピリットフォームじゃ、俺たちが許可した奴じゃないと認識しづらいだろうな』

 自然な感じで横を見ると、リアルな感じだった玄武の姿がなかった。代わりにあったのは、どこかで見たことありそうな亀のぬいぐるみにかわいい蛇が生えている、ふわふわしているやつだった。そいつが玄武であるかどうか確認するためにも、あとで確認しよう。

「まあとにかく最初は、どれくらいの幽魔が見えるか確認してみるか。ここじゃなんだから、上に行こう」

 今いる神社は、土御門一族が代々受け継がれてきた由緒正しき神社だ。いろんな人が晴信を求めるからすんなりとここまで来れたけど。ここより上があるのか。

「それじゃあ、早速行こうか。ここで待ってて、俺はちょっと他の人に話してくるから」

「はい。わかりました」

 立ち上がり、俺のいる部屋をあとにする。タイジュも、晴信と一緒に部屋から出て行った。

「なぁ、玄武のその姿何?」

「これか?さっきも言ったろ、簡易形態スピリットフォームだ。魔法の発動にかなりの制限がかかるが他人に認知されるっていうすごい形態フォームなんだよ」

 カメの説明で俺は不思議なことが一つできた。こいつらみたいな十二天将は、元を正せば中国で語りつだれた幻想の生物だろ、英語とか使うんだ。

「お待たせ。それじゃ、修行始めようか」

 次は俺も一緒に部屋を後にして、長い廊下を進む。時折感じる幽魔の気配が俺とすれ違うたびに玄武がどの階級か説明をされていく。

『いいか、感じる魔力からある程度の階級は分かる。正確ではないが基準として判断出来て損はないから覚えとけ』

 この修業期間、疲れて死ぬかもしれないな。師匠として学ぶ相手が同時に二人か。
 神社を後にし、木陰で日中と感じさせない不思議な場所から不意に扉が見えた。開くのかと思えば、その手から魔力を流し、仕掛けられていた魔法を発動させた。

「式神魔法 陰陽道の隠し扉」

 蒼く発光した扉が開き、隠されていた階段が地下へ続いていた。

「さっ、始めるよ」

 彼に続いて会談に足をかけると、急に吐き気がした。

『式神魔法の真髄は俺たち幽魔の恨みつらみを受け止めるってことだ。それと似てるな』

 甘く見ていた、魔法は簡単だと。種類は違えど誰でも幼いころから使えるから、自分にもできるのだと思っていた。

「やっぱりやめておくかい?」

「冗談。俺は進まなきゃいけないんだ」

 俺には、超えなきゃいけないやつらがいる。このままじゃ駄目だ。まだ、俺には強くなる必要がある。

「そう言うと思った」

 これが他人の呪い。もとはと言えば、幽魔は魔法を使えるものが死んだあとの生き物だ。重い感覚が俺にのしかかる。

「とりあえず、いくつかの幽魔と契約してもらう。とりあえず、索敵と前衛のこの子でいいかな」

 彼の背後から現れた一体の幽魔、いや、式神か?緩い火の玉の様な姿で浮かんでいる。

「名前は『ユタス』水の式神だよ」

 彼を見ると、どこか怯えているようにも思えた。水の式神ってことは、そういうことか同じ属性の玄武に怯えているのか。ん?ユタスには玄武が見えてるのか。

「どうしたユタス。こいつは嫌か?」

 ユタスが晴信に隠れていると、俺は後ろにいる別の幽魔が気になった。黒い火の玉みたいだが、他のやつとはちょっと違う気がする。

「俺はそっちの方が気になりますね」

「え?こいつかい?こいつは・・・、俺も契約できていない名前も知らない幽魔だぞ」

 名前何てどうでもいい、俺の直感がこいつを呼んでいる。俺がこいつを選ぶにはそれくらいの理由で十分だ。

「まぁ、君がそう言うならやってみるといい『契約の儀』」

 俺は首を縦に振り、黒い球の正面を向く。

「まず、霊符これを使いなさい」

 渡されたお札には、墨で何か書かれてある。魔法陣とはまた違った何か。

「それに魔力を込めて、唱えるんだ、『我、汝との契約を望むもの』と。そこからは幽魔によって違うから自分で掴め」

 魔力を札に込めると、足元から魔法陣が現れ黒い球が変化し小さい悪魔のような姿になった。さっきのは、簡易形態スピリットフォーム

「我、汝との契約を望むもの」

 呪文を唱えた途端、俺と黒い球だけを別空間ような部屋に閉じ込められた。真っ黒で、球体で、玄武の気配が聞こえない。

「俺の名はそうだな・・・、『カゲ』としておこう。俺の魔法は影空間魔法、一応索敵能力もある。俺はお前と契約をしよう。これからよろしく」

「お、おう。あっさりだな。俺は江神 永和、これからよろしく」

 部屋が解けて、元の空間に戻される。

「もう終わったの?!早いね。その子も君と契約したがっていたのか、珍しいね」

 珍しいのか疑問だった。晴信に見えていないにしても、俺には玄武がいる。玄武とは契約の儀をしてなくても、つながっている気がする。これを難しいと才能のあるものが言うのなら、俺はそれを超える天才なのだろう。

「そうなんですかね」

「ところで、その子はどんな魔法を使うんだい?」

「影魔法、らしいですよ」

「そっか。なら、これからその子の魔法の使い方と基本的な式神魔法の使い方とさっきの霊符を教える。もう少し奥に行こうか」

 さらに奥に行くと、そこからは陰陽魔導師の基礎的なことの勉強が始まった。式神魔法の基礎、応用に霊符に魔力を込める方法、幽魔の対策や階級付けの方法など、二週間で基礎を叩き込まれた結果、頭の容量を超えた。
 その後、いくつか簡単な式神魔法士としての仕事をこなし、休学期間もあと一週間になった。そして、その期間に式神にした幽魔は、二体。光魔法を使うグアン。火の魔法を使うホワ。

「あとは、あいつだけだな」

 俺は玄武から知らされたもう一体の十二天将、こうもあっさり二体目を見つけるのはどうなのかと思うが、試してみる価値はある気がする。

『だな。ってか、その前に俺との契約やってないの忘れていないか?』

「あ、確かに。今からやるか、ちょうどいいだろ」

 周りに人はおらず、日も落ち切って十分な環境もそろっている。霊符の携帯ケースから契約符を出す。魔力を込めて、魔法陣を発動させる。

「我、汝との契約を望むもの」

 閉鎖された空間に現れた久しぶりの玄武。リアルすぎてちょっと恐怖が芽生える。

「お前に一つ聞きたいことがある」

「なんだ、改まって。何が聞きたい?」

「お前は、何の為に俺たちの力を使いたい」

「俺は、みんなのためになんてきれい事を言うつもりはない。少なくとも、今のところは過去のことを知るためだ」

 過去のことを知るため、それ以降はその時考えるので十分だ。

「そうか。まぁ、俺がお前に言っておきたいのはただ一つ。つまらない時間を過ごさせたら契約破棄だ」

 つまらない時間か、自信はないが努力はしよう。

「分かった。努力する」

 閉鎖空間が解け、外の世界と同化した。すると、玄武の姿は簡易形態スピリットフォームに戻っていた。そして、次の目的地を玄武から言われた。

『これで全部終わったな。早く次を済ませよう』

「あぁ、そうだな。確か、水流宮殿だっけ」

『そうだ。初めていくんだろ、魔乱の秘境カオスエリア

 魔乱の秘境カオスエリアとは、大量の魔力によって自然の荒れた環境がさらに悪化し、人の立ち入りが困難になった場所。その中で、水流宮殿はその中でも、入所難易度が最低ランクつまり、魔乱の秘境カオスエリアの中で入りやすい場所に位置する。

「あぁ、初めてだ。明日が満月か、何とか間に合ったな」

『なんだ。元々行くつもりだったのか?』

「そりゃそうだろ。見つけたからには、行かないわけがない」

 見つけた新しい目標。十二天将を見られるのはほんの一握り。その一握りになったからにはこの目標はほぼ確実に持つことになるだろう。

『夢に見るのはいいが、簡単じゃないぞのは』

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。

みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。 勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。  辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。  だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

処理中です...