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一騎打ち
感じた違和感
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「あぁ、なんか面白いことねえかなぁ」
「ねえだろ」
そう言って笑いあって一緒に帰る。それが俺と真面目な『宮本 和樹』の日常である。だからか、今日も二人そろって、この真夏の太陽の下、最寄りの駅までつまらない時間を過ごす。
「あってもよくねえか?例えば、あのビルが爆発してあたりは大惨事とかさ」
「紡さ、毎日そういうこと言ってるけど、そういうの起きるわけないから。ドラマの見過ぎやけん?」
あと二週間で二十歳になる俺は、今現在こんなことをよく言ってるから彼女なんているはずもない。そんな人生を自分でも嫌になるからしょうもないことを言っては、ほとんど隣にいる和樹によって現実に呼び戻される。
目の前の信号が赤になり、俺たちは近くの日陰を探す。
「そもそも、お前勉強してんの?」
「やめろー、俺に現実をつきつけるなー」
「お前。それももう棒読みじゃねえかよ」
俺たちはループされている時間をあと何回繰り返されればいいのだろう。
「そりゃそうだろ。退屈なんだもん」
「なんか趣味とか見つけろよ」
「そういう和樹は趣味あんのかよ?」
俺の言葉に和樹は軽く笑いながら、俺の肩をたたく。
「ないけど、俺はお前ほど暇してないから大丈夫だぞ」
俺はそんなことを言ってきたこいつをどこかで殴ってやろうかとも思えた。しかし、そんなことをしても俺の利益になることなんてこれぽっちもないからな・・・。それよりも今日の赤信号はいつもよりも長く感じた。
「誰だ、あの子・・・」
何もないモノクロの世界。そんな日常が一年と三ヶ月続いていた。夢の大学生活、正確には専門学生生活だけど俺達には大学生活とほとんど変わらない。それはともかく、そんな夢の生活とは遠く離れたループされる暗い池にたった一輪だけ咲いている、小さくて赤いスイレンが見えた。
「え?どれ?」
俺が見つけたスイレンの花は和樹には見えていないらしい。次の瞬間、信号が変わったことを告げる音が鳴り全員が前に進む。俺と彼女の距離はだんだんとなくなっていき、もう目の鼻の先には彼女がいる・・・。
「・・・あの、すいません」
「ごめんなさい。先を急いでいるので」
俺の『夢の大学生活 夏の陣』は一瞬で消え去った。また会えることがないとは言い切れないが、一年以上ループした生活で始めて見たきれいな花との関係は作れずに終わった。たった一輪の花に手をかざすことすら、今の俺にはかなわないのか。
「大丈夫か?びっくりしたよ、急にナンパするんだもん」
確かに傍から見れば、俺が今した行動は街中で行われた、ただのナンパに過ぎないのだろう。実際そうじゃないと言い訳をするのが俺にできるかどうかわからない。
「だって、あの人可愛かったやろ?」
「確かに、可愛かった。でも横断歩道の真ん中でのナンパはちょっとやばいだろ」
彼女を見てからの俺は、いつもの自分じゃないような感覚があった。何かに突き動かされる様に行動をしていた、そんな気がする。
「あぁ、なんか・・・、数少ない珍しいことやったのにな」
その時、俺とすれ違った人の顔が自然と目に入った。その顔は何かを決め込んで自分の体を敵地に投げ込みそうだった。別にその顔が気になったわけではない。だが、その顔が妙に溶け込もうとしていることに違和感を感じたのだ。
「おい、お前今日やばいぞ。あの人そんなに良かったか?」
違和感が和樹にも伝わったのだろう。もしくは俺が変に意識して行動化していたのかもしれない。それがあの人のことを気になっていると勘違いさせてしまったのだろう。
「いや、なんか変な予感を感じてな・・・?」
後ろを見るとさっきすれ違ったはずの男性が見当たらなかった。
「おいって、急がな電車乗り遅れるって」
俺たちは、あと五分しかない電車の出発時間のためにそこから全力で駅に向かう。そこからはその日一日、いつもと何一つ変わらなかった。退屈な日々に引き戻された気がした。
「ねえだろ」
そう言って笑いあって一緒に帰る。それが俺と真面目な『宮本 和樹』の日常である。だからか、今日も二人そろって、この真夏の太陽の下、最寄りの駅までつまらない時間を過ごす。
「あってもよくねえか?例えば、あのビルが爆発してあたりは大惨事とかさ」
「紡さ、毎日そういうこと言ってるけど、そういうの起きるわけないから。ドラマの見過ぎやけん?」
あと二週間で二十歳になる俺は、今現在こんなことをよく言ってるから彼女なんているはずもない。そんな人生を自分でも嫌になるからしょうもないことを言っては、ほとんど隣にいる和樹によって現実に呼び戻される。
目の前の信号が赤になり、俺たちは近くの日陰を探す。
「そもそも、お前勉強してんの?」
「やめろー、俺に現実をつきつけるなー」
「お前。それももう棒読みじゃねえかよ」
俺たちはループされている時間をあと何回繰り返されればいいのだろう。
「そりゃそうだろ。退屈なんだもん」
「なんか趣味とか見つけろよ」
「そういう和樹は趣味あんのかよ?」
俺の言葉に和樹は軽く笑いながら、俺の肩をたたく。
「ないけど、俺はお前ほど暇してないから大丈夫だぞ」
俺はそんなことを言ってきたこいつをどこかで殴ってやろうかとも思えた。しかし、そんなことをしても俺の利益になることなんてこれぽっちもないからな・・・。それよりも今日の赤信号はいつもよりも長く感じた。
「誰だ、あの子・・・」
何もないモノクロの世界。そんな日常が一年と三ヶ月続いていた。夢の大学生活、正確には専門学生生活だけど俺達には大学生活とほとんど変わらない。それはともかく、そんな夢の生活とは遠く離れたループされる暗い池にたった一輪だけ咲いている、小さくて赤いスイレンが見えた。
「え?どれ?」
俺が見つけたスイレンの花は和樹には見えていないらしい。次の瞬間、信号が変わったことを告げる音が鳴り全員が前に進む。俺と彼女の距離はだんだんとなくなっていき、もう目の鼻の先には彼女がいる・・・。
「・・・あの、すいません」
「ごめんなさい。先を急いでいるので」
俺の『夢の大学生活 夏の陣』は一瞬で消え去った。また会えることがないとは言い切れないが、一年以上ループした生活で始めて見たきれいな花との関係は作れずに終わった。たった一輪の花に手をかざすことすら、今の俺にはかなわないのか。
「大丈夫か?びっくりしたよ、急にナンパするんだもん」
確かに傍から見れば、俺が今した行動は街中で行われた、ただのナンパに過ぎないのだろう。実際そうじゃないと言い訳をするのが俺にできるかどうかわからない。
「だって、あの人可愛かったやろ?」
「確かに、可愛かった。でも横断歩道の真ん中でのナンパはちょっとやばいだろ」
彼女を見てからの俺は、いつもの自分じゃないような感覚があった。何かに突き動かされる様に行動をしていた、そんな気がする。
「あぁ、なんか・・・、数少ない珍しいことやったのにな」
その時、俺とすれ違った人の顔が自然と目に入った。その顔は何かを決め込んで自分の体を敵地に投げ込みそうだった。別にその顔が気になったわけではない。だが、その顔が妙に溶け込もうとしていることに違和感を感じたのだ。
「おい、お前今日やばいぞ。あの人そんなに良かったか?」
違和感が和樹にも伝わったのだろう。もしくは俺が変に意識して行動化していたのかもしれない。それがあの人のことを気になっていると勘違いさせてしまったのだろう。
「いや、なんか変な予感を感じてな・・・?」
後ろを見るとさっきすれ違ったはずの男性が見当たらなかった。
「おいって、急がな電車乗り遅れるって」
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