あの雨のように

浅村 英字

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一時間目

気をつけ

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 優等生、そんな言葉は私、『犬駒 響空』には似合わないと思う。この学校は全国的にみてみれば偏差値は平均的な人たちが集まる学校。クラスの中で目立とうとしているかもしれない。しかしそれは勘違いです。クラスがまとまり次第私はクラスの中でも屈指の陰キャラになる!意思決定がおかしいけど。出席番号で周辺が女子しかいないのは好都合だけど、私の前だけは唯一の男子。彼の前三人と私を含めて、後ろにいた四人が女子。彼にとってみればこの環境は他の男子とは話しずらい環境だろうな。

 アカウント、作ったんだ・・・。あまり意味なかったなぁ、D.arrowかぁ、フォローされてるか気になって私は携帯で私のワボアカウントを開く。確かにフォローが来ていた。クラスのグループに招待しようとすると既にメンバーとして追加されていた。

「響空ちゃん?何かあった?」

 私の横から声をかけてきたのは、同じクラスで幼馴染の『申良もうら 幸』ちゃんだった。

「何もないよ。どうして?」

「何か失恋したみたいな顔してたよ」

「え?!そんな起きてないよ」

 驚いた。そんな顔してたのか、何もないのに・・・。

「ねぇ、響空ちゃんは最近彼氏とどうなん?」

「もう彼氏じゃないでしょ。浮気したわけだし・・・」

「でも、別れの言葉を言ったわけでも言われたわけでもないんでしょ?それに許すって言ったんじゃなかったの?」

「いや、まぁそうだけど・・・」

 私には中学生の頃に付き合っていた彼氏がいた。一年近く経とうと経とうとする頃、浮気をされた。私は中学の頃も前には長い間いるようなキャラじゃなかったからそう言った存在とは縁遠いところにいたから許しを請う彼に物言いすることは難しかった。

「新しい彼氏は・・・あの人?」

 そう言って幸は一番後ろの席で隣の人と話す稲垣君を指さす。

「そんなんじゃないよ。彼は出席番号の並びじゃ、なかなか話しずらそうだから、私から声をかけただけだよ」

 そう、それだけ。それ以下でもそれ以上でもない。本当に好きだとか恋だとかじゃない。

「ふ~ん、まあ、それならそうでいいけど・・・、とりあえず、次の昼休みどうする?」

「どうする?って?」

「何かやりたいこことかないの?」

「ないよ。幸ちゃんは?」

「そりゃ、もちろん・・・」

 あ、やばい、聞くんじゃなかった・・・。この流れは・・・、

「イケメン探し!」

 ガッツポーズをしている彼女が真顔で言ったセリフには呆れた笑いしか出てこなかった。

「ハイハイ、付き合ってあげますよ・・・」

 私の言葉の後にすぐに担任の『田杉先生』が教室に入ってくる。次の授業である役割決めが始まろうとしている。あと一時間、がんばろ。

 一時間、正確には五十分が経ち田杉先生が中心となり、クラスの役割決めが終わる私は中学の頃からやっていた図書委員に決めていた。そうしたら意外にも辰矢君と一緒だった。

「終わったぁ、眠い・・・」

 そう思い腕を枕に机に寝ようとするがすぐに私を起こす声がする。

「響空ちゃん!さぁ、行こ!」

 私が眠かろうが眠たくなかろうがそんな事御構い無し。幸ちゃんらしいけど・・・。
 立ち上がり二人で教室を後にする。

「まずはぁ、一年六組でしょ」

 そう言って鼻歌を歌いながら、学校の中央付近のクラスから順に男子の顔に目を配る。多分彼女の心の中は『イケメンッ、イケメンッ・・・』的な感じでウキウキしているんだろうな・・・。

「中々イケメンっていなさそうだね。なんか残念・・・」

 私たちは六組から順に私たちの三組までイケメン捜索をした後にそう言った。

「幸ちゃんに『イケメン』って言わせるにはモデルレベルの人が必要だと思うな」

 少し笑いながら言った私の言葉は彼女に少しショックを与えたようだった。笑いながら答えた彼女の答えが証拠に。

「えっ!そんなに私の見てるレベル高い!?」

「うん、私は中々かっこいい人いたと思うけど、その人たちには見向きもしなかったやん?」

 私の中では各クラスに一人か二人はいたのだが彼女はそんな人たちに目線を送ることはなかった。彼女の中で何かの基準に満たされなかったのだろう、ドンマイ男子・・・。

「そう?ってか、『あの人いいなぁ』って思ったら教えてよ!ようく見てみたのに・・・」

「ごめん、ごめん」

 互いに笑って過ごしていると彼女から、幸ちゃんから意外な提案をされた。

「ねぇ、確か、私から言っておいてなんなんだけど、そろそろ互いに呼び捨てで呼ばない?」

 確かに彼女の記憶は正しい。出会って、仲良くなるまでほんの数分だった。その流れだろうか、互いに『ちゃん』付けをして呼ぶような習慣が抜けなかった。

「いいよ、実は私も『サチ』って呼びたかったんだ」

「そう?!それなら良かった。私たちって本当に気があうね!ずっと仲がいい友達が『ヒイロ』で良かったよ」

 私が言った言葉には嘘や偽りはない。でも彼女に気があうと言われると妙に私が彼女の中で踊らされているような気がした。
 話が一段落した所で二組に向かうとおもうと、二組と三組の間の階段のことを気にしたのか、彼女は二組に向かう前に一組に向かうことを提案していた。もちろん、今は彼女の言った通り行動しているだけの私に拒否権など存在しないのだと思い、彼女の意見に反対せず一組に向かう。

 一組は残念ながら彼女が気にいるようなイケメン男子はいないらしい。続いて二組・・・と言ったように彼女は足軽に進んで行く。

「ねぇ、幸、あの人かっこよくない?」

 私は二組の教室内にいる人の顔ぶれを見た時、とっさに見えた人を指した。

「あのぉ、真ん中辺りで机に座っている人?」

「そうそう・・・、って!幸!?」

 彼女は突然私が指した彼にどんどん歩いて行く。

「ねぇ!私、『申良 幸』です。あなた、名前は?」

 あっという間に彼女は私が指した彼に向かって歩き出していた。彼も突然話しかけられて驚いているみたいだった。

「えっ・・・『卯佐美うさみ アスカ』だけど・・・」

「俺は・・・」

「『アスカ』ってどう書くの?」

 話かけた彼と元々話していた男子の自己紹介をなかったようにスルーして男子を怒らせた。っていうか、多分その男子は彼女の視野に入っていないだろうな・・・。ごめんなさい。

「『明日』に難しい方の『薫』だけど・・・。いきなりきたけど、君・・・何者?」

 彼が言いたい言葉も言いたい気持ちも十分分かる。

「私は三組。ついでに彼女も」

 彼女はドアからの一歩が踏み出せずソワソワしている私を指差す。指された、そう思った直後には再びアスカ君に視線を戻し、言葉を続ける。

「ねぇ、今日の放課後、何か予定ある?」

 彼女は、自他共に認める絶世の美女である。自分も言っているのは流石におかしいけど、某アニメの『おっふ』とかそんな感じの言葉はないが、少し似ている。あんな感じの雰囲気だ。

「ないけど、なんで?」

 へ・・・?

「おい、マジで言ってんの?」

「うるさい、マコト」

 アスカ君に跳ね除けられたマコト君と同じく、ええぇぇ・・・とあの二人に置いていかれたような顔をする。友だちをあっという間に取られて、あの人も可哀想・・・。

「君名前は?」

「っえ?」

 私はアスカ君でも幸でもない、黒板かどこかを見ていた、黄昏ていた。そんな私に声をかけたのはさっきまではアスカ君と幸の横で二人の間に入ろうとしていた、可哀想な彼だった。

「私は、『犬駒 響空』です・・・」

「『ヒイロ』ちゃんか、俺は『已山みやま 真』あの幸って子のおかげで放課後暇なんだけど、予定ある?」

 私に飛んできたぁ・・・。幸ぃ、行動するタイミングとか、言うセリフとかは考えてよ・・・。

「今日、というか、放課後はちょっと・・・」

 私、こういう気軽く女子に声をかけてくる男子って苦手なんだけど。幸ぃ助けてよ・・・。

「部活決めたの?何部?」

「・・・太鼓部です・・・」

「へぇ、もう決めたんだ。早いね。確かに太鼓部かっこよかったもんね!」

 私、こういうガツガツと来る人、もっと無理なんだけど!

「響空、そろそろ、教室戻ろ」

 私のSOSをどこからか感じたかのように、突然、私の手をとって別の場所へと移動を始めた。そのおかげで真君との会話は打ち切られた。もしかしたら、明日薫君に何か言われたりしたのかな。

「ねぇ、響空・・・」

「ん?どうかした?」

 珍しく、彼女がムズムズとした感じで口が止まった。

明日薫あすか君?」

「何でわかるの!?」

 彼女は何が起きたのかわからず、目を大きく広げ、驚きながらもまたキョトンとした顔をする。

「だって、幸があんな風に生き生きとしたの『ヒロト』以来じゃん?」

「そうだっけ?」

 私たちは何も気にする事なく坦々と話す。

「でも、そんな私を乗り替えて彼を奪った人にそれを言われるのか・・・」

 互いに冗談なのは分かっている。でも、彼女も知らない彼とのこと。本当は辛くて、話したくもない。女の子って本当に大変だな・・・。

「ごめんって、本当に悪いと思ってるよ?」

「まあ、でもあいつは確かにクソだからね」

 そう言って私のことを慰める彼女に、私は何も言えないのがなんだか辛い。

「それにしても、今回はまた急だね。今までは、おとそうかって遊んでたような感じだったのに」

「何それ?」

 彼女は笑った後、口を動かし始めた。

「彼はもう覚えてないみたいなんだけどね、私たちかなりの昔に会ったことあるの・・・」
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