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第三話 再会と人気
感覚が違う
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「東京の人ってそんな感じなの?」
女優の彼女がいる真鳳は、昨日からCAさんと連絡を取り始めたらしい。私の住んでいた街ではそういったことは基本的になかった。彼女彼氏がいたら、その人意外の異性と連絡を取るなんて考えられなかった。
「そりゃあ、浮気でもない限りはセーフじゃないの?」
「煌太の言う通りだと思うし、海華は他の俳優人とだって色々あるんだし、俺だって嫉妬させたいんよ」
真鳳の考え方は年下男子らしい考え方をしているようだった。そんな彼の考え方をしている年下男子は、私も彼氏に欲しいと思ってしまう。
「佐藤先輩!」
いきなり聞こえた私の名前は、以前一緒にパンケーキを食べに行った『波島 陽介』だった。
「陽介くん、この前はありがとね。パンケーキ美味しかったよ」
「いえ、先輩と一緒に食べられて僕も楽しかったです」
「へぇ・・・?」
気がついたら私と陽介くんと距離を取るように煌太と緋奈がいた。その空いた距離の中でも聞こえてくる、緋奈が私たちをいじるような声は私の顔を赤くした。
でも、後ろを見てみるとそこには真鳳だけがいた。
「真鳳先輩。お久しぶりです」
急に真鳳に挨拶し出した陽介くん。その関係性が私には理解できなくて首を傾げた。
「久しぶりか?そんな感じしないけど」
「いえ、二ヶ月くらいは会ってなかったですよ」
「そうか。そんなだったけ?」
二人の会話に私は置いていかれた。真鳳と陽介くんの関係性が思い当たらない時間が続いて頭の中が一杯一杯になって来た。
「陽介くん、真鳳と知り合いなんだ?」
「はい。真鳳先輩にはギターもらったり、教えてもらったりたくさんお世話になりました」
陽介くんと真鳳の共通点が分かったことで、改めて真鳳の良さが分かった気がする。
「最近使ってなかったからさ、誰かに使ってもらった方がギターも長持ちするから」
『ギターも喜ぶ』なんてちょっとはロマンチックなことを言うと思いきや、彼らしい一言。真鳳らしくて安心したと同時に、こんな間抜けのような感じの人がシンくんだとは思えなくなった。
「俺からすれば、お前たちが一緒にどこかに行ったってのが意外なんだけど」
「僕から声をかけたんですよ。煌太先輩と一緒に来たから、先輩とも仲がいいって思いましたよ」
自分は全て見抜いてましたよ。と言わんばかりの彼の発言に私と真鳳は何も言えなかった。
「とりあえず、邪魔なようだから俺は先に行くな」
そう言って距離を取る真鳳に私たちは手をふった。
「・・・先輩って頭いい方ですか?」
「何急に。別に普通じゃない?」
「よかったら放課後、僕に勉強教えてもらえませんか?」
彼が急に言い出したことに私は戸惑った。どうして違う学校から来たばかりの人に勉強を教わろうとするのか、理解し難い。
「私より良い人いないの?」
「いいんです。他の学校の勉強法とか気になるんですよ」
彼が何を狙っているのかよくわからない。私をそんなに誘うということを考えすぎた場合、私の感情がどうなるか何となく分かる。でもそうである可能性の方が明らかで、彼のことを理解できない。
「・・・ダメですか?」
「・・・いいよ」
年下という利点を活かした彼の上目遣いの問いかけに、私はつい了承を出してしまった。
「良かったです。では放課後。僕はちょっと用事があるので先に行きます」
そう言って颯爽と誰よりも早く、と走っていく。そんな姿を煌太や緋奈も見た後、私のところに駆け寄って来た。
「もう陽介と仲がいいなんてね。あいつも手が早いね」
「緋奈も知ってる人なんだ」
「そりゃ、知ってるよ。だって彼は一年生で一番かっこいいって噂されてるよ」
私はクラスメイトの男子みんながカッコ良すぎて陽介くんの容姿の良さに気がつかなかった。
「確かに今言われてみれば、かっこいいね。そういうところにまで考え追いつかなかったよ」
「まあ、俺もなかなかのイケメンだしな」
煌太が私の言葉を全く別のものに変換して言ったことに、私も緋奈も言葉を詰まらせる。
「・・・何で何も言わないんだよ。ってか、真鳳は何でまだ遠くにいるんだよ」
私たちの困惑から逃げるように彼は真鳳を呼ぶが、彼は彼で携帯をずっといじりながら進んでいた。
「真鳳ってなんか予めないね」
彼を見ながら思うことは三人ともに同じようだった。声を揃えて思うことに私も一緒であることが、どこからか嬉しくなっていた。
「でも、そんな謎めいたところも何となくかっこいいところでもあるんだろうね」
「え?・・・なら俺も真鳳みたいに少し黙って、隠し事しようかな」
緋奈の言葉から勘違いした煌太の言葉に私たちは同時に呆れた。
「「やめときな」」
「何だよ二人揃って。真鳳にはそれでかっこいいって言われて、何で俺はダメなんだよ」
不貞腐れる煌太の言葉が、私たちには何となく可愛く見えた。それに私たちの会話の間に時折聞こえる他の人の声は、私たち三人と真鳳との距離がかなり離れている、そう思い込ませる。
私たちと真鳳との距離が教室に近づけば近づけるほど、聞こえてくる周りの雑音は無くなって来た。かわりに聞こえるのは、一歩一歩確実に進んでいく私たちの足音が聞こえる。
「あ、えぇと」
聞こえて来た男子の声が、私たちの足を止めた。
「確か、『佐藤 鈴乃』さんですよね?」
見たことない男子が二人、私たちの前に立って私のことを聞き出して来た。先日、駅でも似たようなことがあって彼らに対する驚きのようなものは感じられなかった。あの時は真鳳がいてくれて助かった。そう思い横を見て、真鳳を探してもその姿は見えない。
「鈴乃に何か用ですか?」
先日の真鳳のように緋奈が、男子に対して圧をかけた。
「いや、ちょっと話してみたいなって思って、声をかけました」
あの時よりも簡単な受け答えをする男子生徒は、あの時の人に比べてまだ青いと思いながら、やはり子供なのだと、恐怖感を感じることはなかった。
「何ですか?」
「いや、僕もつい先日ここに転入して来たばかりなので、転入生同士仲良くなれないかなって」
私は、珍しい時期に転入して来たから私には仲間が少ないと思っていた。でも、そんなことないのかもそう思った瞬間だった。
「声かけるならもっとまともな言い訳を考えろよ・・・」
不意に聞こえて来たのは、電話を終えて私をまた助けようとした真鳳の声だった。彼の言葉は意外にも、彼らのことを全て見透かしているようなものだった。過去の記憶を失っていて、私たちより記憶している期間が少ないにも関わらず、記憶量は長けているのだろうか。
「お前、転入して来たなんてそんな嘘よくつけたもんだな」
「は?何の話ですか?僕は確かに転入して来たんですけど」
またしても、真鳳が喧嘩を始めた。私が見る限り、毎日こんなことに首を突っ込んでいるのだろうか。
「確かに、転入生らしいけど、去年の四月までいたのは俺は知ってんだけど」
「・・・・・・」
男子生徒が声を固めたところで、彼の言葉が正しいことが分かった。人より覚えていることが少ない分、新しいことに対する記憶は長けているのかもしれない。
「何を言ってるのか、僕には分からないな」
挑発気味に言葉を選ぶ男子生徒に対して、真鳳の顔は少し険しくなる。
「確か、あの時は教室の隅っこでよく一人で携帯見てたよな。あの時やってたゲームも覚えてる、その名前も覚えてっけど、言う?・・・その名前言ったらお前のこと思い出す人出てくると思うけど」
私が分からないのは当然として、煌太や緋奈も分からず、首を傾げている。そんな様子を見て周りが少し騒めき出した。
「いや、それは・・・」
周りの人に遅れて、男子生徒にも動揺を感じ出した。私に対して、特別な感情を抱いているかも分からないのに、他の生徒からの圧力に負けそうでどこかかわいそうだった。
「もういいじゃない。私と話すくらい、どうってことないんだから三人は先行ってて」
私の言葉の通り、先に教室に入る三人。私は男子生徒と話し始める。
「私に話があったんだよね?」
「うん、なんかごめんね」
私は何だか申し訳なく感じた。
「いや、大丈夫だよ。俺も少しは・・・ね?」
彼は本当に何かを隠しているようで、少しの続きを言わないみたいだ。私たちは場所を変えて話そうと、緋奈の時と同じ様に屋上の扉の前に移動した。
「で、話って何か用があったの?」
「あぁ、やっぱり覚えてないんだね・・・」
私はいつかどこかで、この男子生徒と会ったことがあるのか。私の記憶には彼といた記憶がない。何を話したのか、どんな出会いだったのか、その何一つも思い出せない。
「ごめん、思い出せないや。どこかで会ったっけ?」
「そっか、やっぱり覚えてなよな。俺、『遠藤 慎之介』って言うんだけど・・・」
彼の名前を聞いて、薄らと故郷の風景が見えた。
「『シンくん』って言ったらピンとくる?」
意外だった。私は真鳳がシンくんじゃないかとずっと疑って来た。例えこれが小説でも、その流れが一番ピンとくる結末だった。だからあの日も教室で、彼は私との思い出の曲を歌っているのだと思っていた。でも、それは私考えだから、あくまでも予想としか言いようがなかった。
「・・・本当なの?」
「うん。この写真、見覚えない?」
彼から出された写真は、私の机の上にあるものと同じだった。シンくんと写っているもので残っている最後の写真。シンくんと証明される最後の証拠。
「あ!あるある。私も持ってる」
「良かった。何とか思い出してくれて助かったよ」
私たちは残り少ない早朝の自由時間で、互いの知らない過去のことを話し合った。
「ねぇ、慎くん良かったら・・・」
「悪いけど、その慎くんって呼び方だけど、やめてくれない?俺たちもういい年頃なんだし、これからは『慎之介』って呼んでよ」
私は話している間もずっと慎之介くんのことを慎くんと呼んでいて、彼はその呼び名が今となっては恥ずかしいようだ。そして彼は私のことを呼ぶことはなかった。あの時みたいに『リンちゃん』と呼ぶことはなかった。もしかしてたら彼にとっては私のことは隠しておきたいようなものなのかもしれない。
「分かったよ。慎之介くん。良かったらさ今日お昼一緒に食べない?・・・もっといろんなことを話してみたいなって」
私は、残りわずかな時間でお昼の約束をしようと彼に聞いてみる。
「あぁ、いいよ。なら、中休みに食堂でどう?」
転入してからは、緋奈と教室でご飯を食べていたから、食堂の存在をあまり知らず、行ったことなんてなかった。それを懐かしい人と行けるのは何となく嬉しく思う。
「うん。分かった、なら食堂集合ね」
そう確認して、私は教室に戻った。彼と話していると、懐かしいと思えることは何となく少なかった気がする。彼は多分違うけど。
女優の彼女がいる真鳳は、昨日からCAさんと連絡を取り始めたらしい。私の住んでいた街ではそういったことは基本的になかった。彼女彼氏がいたら、その人意外の異性と連絡を取るなんて考えられなかった。
「そりゃあ、浮気でもない限りはセーフじゃないの?」
「煌太の言う通りだと思うし、海華は他の俳優人とだって色々あるんだし、俺だって嫉妬させたいんよ」
真鳳の考え方は年下男子らしい考え方をしているようだった。そんな彼の考え方をしている年下男子は、私も彼氏に欲しいと思ってしまう。
「佐藤先輩!」
いきなり聞こえた私の名前は、以前一緒にパンケーキを食べに行った『波島 陽介』だった。
「陽介くん、この前はありがとね。パンケーキ美味しかったよ」
「いえ、先輩と一緒に食べられて僕も楽しかったです」
「へぇ・・・?」
気がついたら私と陽介くんと距離を取るように煌太と緋奈がいた。その空いた距離の中でも聞こえてくる、緋奈が私たちをいじるような声は私の顔を赤くした。
でも、後ろを見てみるとそこには真鳳だけがいた。
「真鳳先輩。お久しぶりです」
急に真鳳に挨拶し出した陽介くん。その関係性が私には理解できなくて首を傾げた。
「久しぶりか?そんな感じしないけど」
「いえ、二ヶ月くらいは会ってなかったですよ」
「そうか。そんなだったけ?」
二人の会話に私は置いていかれた。真鳳と陽介くんの関係性が思い当たらない時間が続いて頭の中が一杯一杯になって来た。
「陽介くん、真鳳と知り合いなんだ?」
「はい。真鳳先輩にはギターもらったり、教えてもらったりたくさんお世話になりました」
陽介くんと真鳳の共通点が分かったことで、改めて真鳳の良さが分かった気がする。
「最近使ってなかったからさ、誰かに使ってもらった方がギターも長持ちするから」
『ギターも喜ぶ』なんてちょっとはロマンチックなことを言うと思いきや、彼らしい一言。真鳳らしくて安心したと同時に、こんな間抜けのような感じの人がシンくんだとは思えなくなった。
「俺からすれば、お前たちが一緒にどこかに行ったってのが意外なんだけど」
「僕から声をかけたんですよ。煌太先輩と一緒に来たから、先輩とも仲がいいって思いましたよ」
自分は全て見抜いてましたよ。と言わんばかりの彼の発言に私と真鳳は何も言えなかった。
「とりあえず、邪魔なようだから俺は先に行くな」
そう言って距離を取る真鳳に私たちは手をふった。
「・・・先輩って頭いい方ですか?」
「何急に。別に普通じゃない?」
「よかったら放課後、僕に勉強教えてもらえませんか?」
彼が急に言い出したことに私は戸惑った。どうして違う学校から来たばかりの人に勉強を教わろうとするのか、理解し難い。
「私より良い人いないの?」
「いいんです。他の学校の勉強法とか気になるんですよ」
彼が何を狙っているのかよくわからない。私をそんなに誘うということを考えすぎた場合、私の感情がどうなるか何となく分かる。でもそうである可能性の方が明らかで、彼のことを理解できない。
「・・・ダメですか?」
「・・・いいよ」
年下という利点を活かした彼の上目遣いの問いかけに、私はつい了承を出してしまった。
「良かったです。では放課後。僕はちょっと用事があるので先に行きます」
そう言って颯爽と誰よりも早く、と走っていく。そんな姿を煌太や緋奈も見た後、私のところに駆け寄って来た。
「もう陽介と仲がいいなんてね。あいつも手が早いね」
「緋奈も知ってる人なんだ」
「そりゃ、知ってるよ。だって彼は一年生で一番かっこいいって噂されてるよ」
私はクラスメイトの男子みんながカッコ良すぎて陽介くんの容姿の良さに気がつかなかった。
「確かに今言われてみれば、かっこいいね。そういうところにまで考え追いつかなかったよ」
「まあ、俺もなかなかのイケメンだしな」
煌太が私の言葉を全く別のものに変換して言ったことに、私も緋奈も言葉を詰まらせる。
「・・・何で何も言わないんだよ。ってか、真鳳は何でまだ遠くにいるんだよ」
私たちの困惑から逃げるように彼は真鳳を呼ぶが、彼は彼で携帯をずっといじりながら進んでいた。
「真鳳ってなんか予めないね」
彼を見ながら思うことは三人ともに同じようだった。声を揃えて思うことに私も一緒であることが、どこからか嬉しくなっていた。
「でも、そんな謎めいたところも何となくかっこいいところでもあるんだろうね」
「え?・・・なら俺も真鳳みたいに少し黙って、隠し事しようかな」
緋奈の言葉から勘違いした煌太の言葉に私たちは同時に呆れた。
「「やめときな」」
「何だよ二人揃って。真鳳にはそれでかっこいいって言われて、何で俺はダメなんだよ」
不貞腐れる煌太の言葉が、私たちには何となく可愛く見えた。それに私たちの会話の間に時折聞こえる他の人の声は、私たち三人と真鳳との距離がかなり離れている、そう思い込ませる。
私たちと真鳳との距離が教室に近づけば近づけるほど、聞こえてくる周りの雑音は無くなって来た。かわりに聞こえるのは、一歩一歩確実に進んでいく私たちの足音が聞こえる。
「あ、えぇと」
聞こえて来た男子の声が、私たちの足を止めた。
「確か、『佐藤 鈴乃』さんですよね?」
見たことない男子が二人、私たちの前に立って私のことを聞き出して来た。先日、駅でも似たようなことがあって彼らに対する驚きのようなものは感じられなかった。あの時は真鳳がいてくれて助かった。そう思い横を見て、真鳳を探してもその姿は見えない。
「鈴乃に何か用ですか?」
先日の真鳳のように緋奈が、男子に対して圧をかけた。
「いや、ちょっと話してみたいなって思って、声をかけました」
あの時よりも簡単な受け答えをする男子生徒は、あの時の人に比べてまだ青いと思いながら、やはり子供なのだと、恐怖感を感じることはなかった。
「何ですか?」
「いや、僕もつい先日ここに転入して来たばかりなので、転入生同士仲良くなれないかなって」
私は、珍しい時期に転入して来たから私には仲間が少ないと思っていた。でも、そんなことないのかもそう思った瞬間だった。
「声かけるならもっとまともな言い訳を考えろよ・・・」
不意に聞こえて来たのは、電話を終えて私をまた助けようとした真鳳の声だった。彼の言葉は意外にも、彼らのことを全て見透かしているようなものだった。過去の記憶を失っていて、私たちより記憶している期間が少ないにも関わらず、記憶量は長けているのだろうか。
「お前、転入して来たなんてそんな嘘よくつけたもんだな」
「は?何の話ですか?僕は確かに転入して来たんですけど」
またしても、真鳳が喧嘩を始めた。私が見る限り、毎日こんなことに首を突っ込んでいるのだろうか。
「確かに、転入生らしいけど、去年の四月までいたのは俺は知ってんだけど」
「・・・・・・」
男子生徒が声を固めたところで、彼の言葉が正しいことが分かった。人より覚えていることが少ない分、新しいことに対する記憶は長けているのかもしれない。
「何を言ってるのか、僕には分からないな」
挑発気味に言葉を選ぶ男子生徒に対して、真鳳の顔は少し険しくなる。
「確か、あの時は教室の隅っこでよく一人で携帯見てたよな。あの時やってたゲームも覚えてる、その名前も覚えてっけど、言う?・・・その名前言ったらお前のこと思い出す人出てくると思うけど」
私が分からないのは当然として、煌太や緋奈も分からず、首を傾げている。そんな様子を見て周りが少し騒めき出した。
「いや、それは・・・」
周りの人に遅れて、男子生徒にも動揺を感じ出した。私に対して、特別な感情を抱いているかも分からないのに、他の生徒からの圧力に負けそうでどこかかわいそうだった。
「もういいじゃない。私と話すくらい、どうってことないんだから三人は先行ってて」
私の言葉の通り、先に教室に入る三人。私は男子生徒と話し始める。
「私に話があったんだよね?」
「うん、なんかごめんね」
私は何だか申し訳なく感じた。
「いや、大丈夫だよ。俺も少しは・・・ね?」
彼は本当に何かを隠しているようで、少しの続きを言わないみたいだ。私たちは場所を変えて話そうと、緋奈の時と同じ様に屋上の扉の前に移動した。
「で、話って何か用があったの?」
「あぁ、やっぱり覚えてないんだね・・・」
私はいつかどこかで、この男子生徒と会ったことがあるのか。私の記憶には彼といた記憶がない。何を話したのか、どんな出会いだったのか、その何一つも思い出せない。
「ごめん、思い出せないや。どこかで会ったっけ?」
「そっか、やっぱり覚えてなよな。俺、『遠藤 慎之介』って言うんだけど・・・」
彼の名前を聞いて、薄らと故郷の風景が見えた。
「『シンくん』って言ったらピンとくる?」
意外だった。私は真鳳がシンくんじゃないかとずっと疑って来た。例えこれが小説でも、その流れが一番ピンとくる結末だった。だからあの日も教室で、彼は私との思い出の曲を歌っているのだと思っていた。でも、それは私考えだから、あくまでも予想としか言いようがなかった。
「・・・本当なの?」
「うん。この写真、見覚えない?」
彼から出された写真は、私の机の上にあるものと同じだった。シンくんと写っているもので残っている最後の写真。シンくんと証明される最後の証拠。
「あ!あるある。私も持ってる」
「良かった。何とか思い出してくれて助かったよ」
私たちは残り少ない早朝の自由時間で、互いの知らない過去のことを話し合った。
「ねぇ、慎くん良かったら・・・」
「悪いけど、その慎くんって呼び方だけど、やめてくれない?俺たちもういい年頃なんだし、これからは『慎之介』って呼んでよ」
私は話している間もずっと慎之介くんのことを慎くんと呼んでいて、彼はその呼び名が今となっては恥ずかしいようだ。そして彼は私のことを呼ぶことはなかった。あの時みたいに『リンちゃん』と呼ぶことはなかった。もしかしてたら彼にとっては私のことは隠しておきたいようなものなのかもしれない。
「分かったよ。慎之介くん。良かったらさ今日お昼一緒に食べない?・・・もっといろんなことを話してみたいなって」
私は、残りわずかな時間でお昼の約束をしようと彼に聞いてみる。
「あぁ、いいよ。なら、中休みに食堂でどう?」
転入してからは、緋奈と教室でご飯を食べていたから、食堂の存在をあまり知らず、行ったことなんてなかった。それを懐かしい人と行けるのは何となく嬉しく思う。
「うん。分かった、なら食堂集合ね」
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