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11 叶わぬ願い
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清潔な匂いのするシーツに身を横たえながら、ベッドの中で微睡んでいた。
久しぶりに感じる誰かの気配に安堵する。
重い瞼をゆっくり開けると、心配顔をしたアンリ陛下の顔が視界に飛び込んできた。
「レティシア。大丈夫か?」
「陛下、わたし……」
「クロードから聞いた。側妃の話に、ショックを受けたんじゃないかと思ってね」
「それは……」
「側妃を娶った場合の、王家の慣習についても、母から聞いたんだね?」
「は……い」
「大丈夫だ。この慣習は、私の代で廃止にする。レティシアは何も心配しなくていい」
「でもっ! ……クロード様は1か月後に側妃を娶ります。だから――」
「レティシアが成人するまで夫婦の契りを交わさないと決めたのはクロードなんだ。レティシアが焦る必要はない。第二妃を迎えるのも、完全な政略だ。離宮へ通うことはないだろうからね」
「それをいうなら、私とクロード様も完全な政略結婚です」
「始まりはそうだとしても、2人には時間をかけて築いてきた信頼関係があるだろう?」
「……どうでしょうか」
「?」
「側妃を迎えた最初の数日は、離宮へ渡ることを許してくれと言われました」
「あいつはっ!」
クロードは実直な人だ。
けれど、彼にはまだ青臭さが残っていて、真実を相手に伝えることが正義だと思っている節がある。正直に伝えることが却って相手を苦しめることになる、ということにまでは考えが及ばないみたいだ。
それもそうか。まだ20歳そこそこだもの。
「私は……わたしは、クロード様に異性として特別な感情は抱いていません。ですが、それでも――他の女性を抱いた夫に抱かれるのを嫌だと思うのは、我儘なのでしょうか?」
「レティシアは若いからそう思うのも理解はできる。だが、たいていの男は妻が初めて抱く女性ではないんだ。過去に深い意味なんて、ないんだよ?」
「私の場合はっ、過去の話なんかじゃない! 自分と並行して他の女性と閨を共にする夫と、どうやって未来に向けて信頼関係を築けとおっしゃるんですか!?」
「レティシア……辛いことを強いているという自覚はある。本当に、すまない」
「嫌なんです。夫に義務で抱かれるのは。私だけを見てほしいと願うのも。子がほしいと強請るのも」
もう、疲れたの。
「クロードは、レティシアを大事にしているだろう?」
「……クロード様には、学園時代から想い続けている女性がいます。私との間に子を持つことなんて、彼は望んでいないんです」
「きちんと話をしたのかい? 誤解だという可能性も――」
「誤解なら、どれほど良かったか(以前のレティシアが、このことでどれほど苦しんだかことか……)」
「レティシアは、どうしたい?」
「願いを口にしたら、叶えてくれますか?」
「私に出来ることなら、叶えると約束する」
「陛下が、私を抱いてください」
「レティシア? それはどういう――」
「クロード様だって側妃を抱くんです。私が陛下に抱かれても、文句はないはずです」
「それは、できない」
「どうしてですか!?」
「レティシアはクロードの妻だ。そして2人はまだ若い。これから信頼関係を築いていって、子を授かる可能性だって大いにある」
「私じゃ、お子様すぎて抱く気にはなれないですか?」
「そんなことは言っていないだろう?」
「叶えてくれないのなら、言うんじゃなかった……」
「レティシア」
「一人にしてください。……お願いです」
陛下はずっと手を握ってくれていたけれど、私が懇願するようにそう言うと、「分かった。本当にすまない」そう言って、部屋を出て行った。
「どうして陛下がそんな苦しそうな顔をするのよ。一番辛いのは、私なのに……」
久しぶりに感じる誰かの気配に安堵する。
重い瞼をゆっくり開けると、心配顔をしたアンリ陛下の顔が視界に飛び込んできた。
「レティシア。大丈夫か?」
「陛下、わたし……」
「クロードから聞いた。側妃の話に、ショックを受けたんじゃないかと思ってね」
「それは……」
「側妃を娶った場合の、王家の慣習についても、母から聞いたんだね?」
「は……い」
「大丈夫だ。この慣習は、私の代で廃止にする。レティシアは何も心配しなくていい」
「でもっ! ……クロード様は1か月後に側妃を娶ります。だから――」
「レティシアが成人するまで夫婦の契りを交わさないと決めたのはクロードなんだ。レティシアが焦る必要はない。第二妃を迎えるのも、完全な政略だ。離宮へ通うことはないだろうからね」
「それをいうなら、私とクロード様も完全な政略結婚です」
「始まりはそうだとしても、2人には時間をかけて築いてきた信頼関係があるだろう?」
「……どうでしょうか」
「?」
「側妃を迎えた最初の数日は、離宮へ渡ることを許してくれと言われました」
「あいつはっ!」
クロードは実直な人だ。
けれど、彼にはまだ青臭さが残っていて、真実を相手に伝えることが正義だと思っている節がある。正直に伝えることが却って相手を苦しめることになる、ということにまでは考えが及ばないみたいだ。
それもそうか。まだ20歳そこそこだもの。
「私は……わたしは、クロード様に異性として特別な感情は抱いていません。ですが、それでも――他の女性を抱いた夫に抱かれるのを嫌だと思うのは、我儘なのでしょうか?」
「レティシアは若いからそう思うのも理解はできる。だが、たいていの男は妻が初めて抱く女性ではないんだ。過去に深い意味なんて、ないんだよ?」
「私の場合はっ、過去の話なんかじゃない! 自分と並行して他の女性と閨を共にする夫と、どうやって未来に向けて信頼関係を築けとおっしゃるんですか!?」
「レティシア……辛いことを強いているという自覚はある。本当に、すまない」
「嫌なんです。夫に義務で抱かれるのは。私だけを見てほしいと願うのも。子がほしいと強請るのも」
もう、疲れたの。
「クロードは、レティシアを大事にしているだろう?」
「……クロード様には、学園時代から想い続けている女性がいます。私との間に子を持つことなんて、彼は望んでいないんです」
「きちんと話をしたのかい? 誤解だという可能性も――」
「誤解なら、どれほど良かったか(以前のレティシアが、このことでどれほど苦しんだかことか……)」
「レティシアは、どうしたい?」
「願いを口にしたら、叶えてくれますか?」
「私に出来ることなら、叶えると約束する」
「陛下が、私を抱いてください」
「レティシア? それはどういう――」
「クロード様だって側妃を抱くんです。私が陛下に抱かれても、文句はないはずです」
「それは、できない」
「どうしてですか!?」
「レティシアはクロードの妻だ。そして2人はまだ若い。これから信頼関係を築いていって、子を授かる可能性だって大いにある」
「私じゃ、お子様すぎて抱く気にはなれないですか?」
「そんなことは言っていないだろう?」
「叶えてくれないのなら、言うんじゃなかった……」
「レティシア」
「一人にしてください。……お願いです」
陛下はずっと手を握ってくれていたけれど、私が懇願するようにそう言うと、「分かった。本当にすまない」そう言って、部屋を出て行った。
「どうして陛下がそんな苦しそうな顔をするのよ。一番辛いのは、私なのに……」
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