おまえの死体(ちゃば)でお紅茶を淹れてやりますわぁぁっっ!!

腎臓の猫

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「――はー、なるほどぉ。
 そういう流れがあって、あの結果になったということなんですね。
 ではひとつ伺いたいんですけれども……今回の大会、言うまでもなく途中から参戦したあの選手がとくに目立っていたかと思います。
 そちらについてはどんなご感想をおもちでしょうか?」
「うっ!」
「ふむふむ」
「うぅっ!」
「あーっはっはっはっはっ! なるほどなるほど!」

「すみませんレポーターさん、彼はなんと……?」
「いやわからん」
「新○劇すんなやなぐり殺してセイウチ人間の皮にすんぞ」
「失礼いたしました。
 たぶん〝体調が心配です〟と言っています。
 そうです。確実にそうに違いありません」

重病じゅうびょおおう! メディーーーック!』
「こちらは当時のライブ映像です。
 やはり人間の体は、過剰な服薬に耐えられるようにできてはいません。
 京選手を倒してすぐ、嬢選手は意識を失ってしまいました。
 さいわい、セバスチャン選手がすぐに胃洗浄いせじょんGOしたため、
 大事だいじにいたらずに済みました」

(字幕)※胃洗浄《いせじょん》:近場の胃洗浄ができる場所を表示してくれるアプリ

「酒とクスリは百害あって一利なし! タバコもです!
 みなさん、いまこそが人工的なものを忘れ自然本来の姿へと回帰するときなのです! 現場からは以上です」
「ありがとうございました。
 優勝者インタビュー、うつ病のウッちゃん選手でした」


      ■ ■ ■


「改めて、お疲れさまでした」
 病室のテレビを消して、ベッドに話しかける。

「もぅ限界。。。なにがラッパ食ぃオーバードースですの。。。」
「はは。そのおかげでヤツに勝てたんだからいいじゃないですか」

 でも優勝できなかった、とでも言いたげにお嬢さまはそっぽを向く。
「落ちこむ必要ないですよ。
 僕ら、優勝したチームよりも話題になってるんですから」

 それに優勝できなかったのは、僕の落ち度でもある。
 三部隊残っていたと知っていたにもかかわらず、
 それをたいしたことないと思ってしまった。
 だから京を倒した時点でお嬢さまの気力がなくなってしまい、
 最後は物陰から出てきたウッちゃんにやられてしまったのだ。

優勝けっかがすべてではないですよ。
 けっかがすべてです」
「なに言ってゃがりますの。。。クスリキメてるんですの。。。?」
「お嬢さまには言われたくないですね」

 なにはともあれ、これでしばらくは食いぶちに困らなさそうだ。
 そんな安心感もあってか、おかしくなってひとりで笑う。

 ただ、気がかりな要素は残っている。
 京だ。
 ヤツはこつ然と姿を消し、最近建ったアンチスレは二日でpart500を超えた。
 にもかかわらず、そのゆくえは誰も知らない。
 ヤツには償わせなければならないことが残っている。

 病院代、
 デ○ス代、
 ウソの映像を流したこと、
 ゼロイチや僕を洗脳したこと、
 あと屋敷……
 は、僕が燃やしたけれど最初にハイヤーで突っこんで穴開けたのは京だし、
 アネさん――
『そっかぁ。だったら、ついでにFPSができなくなるようにしといてくれない?
 あたしもさ、才能の差見せつけられてムカついてたんだよね~』
 は、どうでもいいか。

 アネさんのことを考えていたら、
 ひとつ肝心な約束を思いだした。
「そうだお嬢さま、戦いが終わったら話すっていう約束――」

「おスヤスヤァ……あの京都女ァ……地味にキツいバチ当たれですわぁ……
 大会決勝の1v1で敵と対面した場面で左上に緑矢印の小窓表示されろですの……
 Ctrl+Iでカタカナ変換するとアプリごと落ちるようになれですの……
 ある日突然身の回りのPC全部がバニラのArch Linuxになれですの……ozzz……」
 ベッドを見ると、お嬢さまは穏やかな寝息をたてていた。

 いまはそっと寝かせておいてあげようか。
 どうせ向こう三日は回復しないだろうし。
「おやすみなさい」
 言葉をかけて、丸椅子に座る。
 一月にしては暖かな日差しが差しこんで、お嬢さまの顔を照らしていた。

 ……。

「ん?」
 ふと、ベッドサイドの台に封筒と缶コーヒーが置かれているのが目に入った。
 一億円(+振込手数料二七五円)の請求書だった。

 ああ、マホからのヤツだ。
 僕がケースにみっちみちの一億円を見せたからだね、はいはい。

 なあんだ、とビリビリに破いた。
 僕、一億円あげるとは言ってないし、書面の契約もしてないもんね。
 ビリビリにした手紙をゴミ箱につっこもうとしたら、
 その中に別の封筒が捨てられていた。

 学校からだった。
〝ご連絡がつかないのでお手紙で――このままですと出席日数が――〟
「あ。あーー……」

 一月の冷たい風が、窓のすき間から入って僕の身体を冷やした。

 …………。
 ……。
 一方。

「いよいよじゃ。やっと、ついに力が溜まりおった。
 それもこれも、あの小娘のおかげじゃな。
 これでわらわが……世界を……!」
「……★★★暗黒微笑

 暗く、息苦しい〝底〟のような場所で覚醒した強大な悪。
 そして、それを目ざめさせてしまった原因を、このときの僕らはまだ知らない。
 想像すらしていなかったのだ。 
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