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或ル導入
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「國弘くんお風呂一緒に入ってえっちしよ」
「……嫌です一人で入ってください」
「…………むうぅ……」
行き倒れていた僕に居場所をくれた、白衣をだらりと着こなす美人は何故か僕にやたらとこういったことを要求してくる。別に明らかに嫌って訳ではないのだが、何故そんなにも性的関係を持ちたがるのかが分からない。
初めは行きずりでキスをした。流石に身体を合わせるのには抵抗があったため必死に拒絶した。彼自身を拒絶したいわけではなくて、そのような関係を持ち込むことを拒絶した、と僕は思い込むようにした。
僕はあくまで彼の助手としてこの家にいるわけだから、そういう目的のそういうサービスは助手の仕事に含まれないはずだ。
「……じゃあさ國弘くん、」
「何ですか?」
「チューしよ」
「……え、またですか」
「…………いや?」
「……別に、嫌とかではないんですけど」
「じゃあしていい?」
「……ご自由に、」
僕自身、自分から他人に触れようと思ったことがなかったから、あんな風に接されるとどうしたらいいのかが分からない。
見た目はだらしないし性にもだらしなさそうな男だが、薄情なわけではない。現に、こんな見た目でどこから来たのかも分からないような人間を、何の疑いもなく受け入れてくれた。きっと人一倍優しいのだろうが、こういった付き合いを要求してくるというのはどういった考え故なのだろうか。
「んんッ……」
「ッ、う……んん……」
彼の唇が僕の口を塞ぐ。中に舌を滑り込ませて、余すところなく堪能しているのだろう。口内を弄られ、犯される。
暫くして唇が離れた。すぐに酸素を求めて荒く呼吸を繰り返す。
「國弘くんちょっとは余韻に浸ったらどう?」
「は……?、やですよ……そんなの」
「……」
「あ……今、何時ですかね……」
僕はわざとらしく博士から目を逸らし、壁に掛かる時計に目をやった。大体8時。僕は博士の脇をすり抜けてキッチンに向かう。
「え、國弘くんどこ行くの!」
「ご飯作りますから……」
「……今日はすぐ食べに行けないかも……ごめん、」
「…………そうですか、研究です?」
「……まぁ、そんな感じかな」
「わかりました」
僕は食器を用意して冷蔵庫を開ける。冷めても食べられそうなものを主食にしようかな、そんなことを考えながら野菜を切り刻んだ。
†
昔から僕は人に甘えることのない子だと言われていた気がする。家族はとても温かかった、しかし家から一歩外に出たら好奇の目に晒されるのだ。そんなこと、自分を産んでくれた大切な両親に言えるはずもない。
僕は二人の前ではいつも笑顔だった、毎日僕が笑えば二人は笑ってくれた。それが、僕にとっての幸せだった。
しかし、そんな幸せというのはいつまでも続かないらしい。
「うっ……えぇ……ゲホッ、ゴホッ……」
僕はその頃を思い出す度に吐き気を催すようになってしまった。便器に頭を突っ込み、せり上がる胃液をただ絞り出すように吐き出すのだ。
一人になるといつもこうだ。何も考えることがないと過去を思い出してしまい、毎回吐いている。しかも最近じゃその頻度が前よりも多い。新しい環境に慣れないせいなのか。
「……、」
真夜中に突然こんなことになるなんて。
僕は高校をやめさせられた上、無理やり働かされていたため学校に行くことはない。早起きというものはしなくていいと博士に言われたから、深夜いつまでも起きていられるがさすがにもう吐くのは勘弁だ。
キッチンに行き、コップにスポーツドリンクを注ぐ。ちびちびと飲みながら、雇い主の彼について考えを巡らせる。
彼は何者なのか。職業は非常勤講師、もしくは研究者のようだがあまりにも謎が多すぎる。若くて美しい男ではあるが、瞳はいつも虚ろで熱っぽい。常に発情期のような男である。常に発情期ってウサギかよ。
ぼんやりと思考を巡らせていたところ、急に物音が聞こえる。振り向くとその張本人が立っていた。
「…………國弘くんおはよう、早いね」
「……いや、目が覚めただけなんですよ」
「大丈夫?また吐いてたんでしょ?」
「……えぇ、まぁ……」
「そうだ國弘くん、」
「?」
突然キッチンに現れた彼は、急に改まった表情で僕に問い掛けた。
「……國弘くんの好きなものって何?」
「え、」
「よければ教えてよ」
「……そうですね、甘いもの……お菓子が大好きです」
「ほう……なるほど、」
「あと、綺麗なものですね」
「へぇ……分かった」
「……?」
博士はそれだけ言って暗闇に消えていった。突然どうしたのだろう。
「…………、ふぁ……ねむ……」
僕は欠伸をひとつして、彼が消えていった方に向かう。先程のことをまた思い出す前に早く寝よう。
†
「おはよう國弘くん!」
「……おはようございます、ってもう12時……ごめんなさいご飯できなくて……」
「國弘くんお出掛け行こうよ!」
「え?突然どうしたんですか?」
「デートだよデート!ほら準備して!」
「……え?」
「まだ寝てるな國弘くん!起きないと抱き着くぞ!」
博士が突然、自室の扉を勢いよく開けて布団の中に入り込もうとしてきた。吃驚して目が覚めた。
「博士どうしたんです?本当に」
「僕國弘くんのこと全然知らないから知りたいなって」
「……」
「今日はさ、國弘くんの好きなところに行こうよ」
「……本当ですか?」
「うん」
「…………本当にその格好で行く気ですか?」
「え?」
布団に入り込む博士を追い出しつつ、改めて彼の服を見るといつも通りだらしない。こんなので外に出ようなんて何を考えてるんだこの人は。
「……ちゃんとした服はどこにあるんですか」
「うーん、多分クローゼットの中」
「僕も昨日てきとうに買ってきたぐらいのものしか持ってませんが一応白衣はやめましょう」
僕はやっと布団から出て、博士の部屋まで行く。相変わらず汚い彼の部屋に入り、物を踏まないようにクローゼットらしき扉まで向かう。中を開けると、綺麗に服が整理されているではないか。
「……ちゃんとした服あるじゃないですか」
「窮屈だからヤダァ、特にジーパン、アソコが締め付けられちゃう」
「それは知りませんが出掛けるときくらいちゃんとしましょう?」
「分かったよ、じゃあ國弘くんがコーディネートして」
「えっ僕ですか……」
「國弘くんだったらちゃんとした服着せてくれそう!」
「いやどういう意味ですかそれ」
とりあえず僕の独断と偏見で服を選ぶことにした。
彼自身窮屈な服が好きじゃないらしいから、少しゆったりした服をチョイスしてみる。今は冬先だから僕が買ってきたストールでも巻けば形になるんじゃないかなと思い、博士に服を渡す。
「とりあえず、これ着てみてください」
「分かったァ」
「僕も着替えてきますので、」
しかし博士のあの服は誰が買ってきたのだろう、真理亜さんだろうか。あらゆる系統の服が一通り揃っていたにも関わらず、彼はずっとワイシャツにくたびれたスラックス、やたらに白い白衣をだらしなく着ていた。実験や研究ばかりやっていると体裁を気にしなくなるのか。
とりあえず支度を終えたので博士の部屋に向かった。
「博士、着替え終えましたか……」
「んー……これでいいよね?」
「……えぇ、」
元々細身である彼に衿のゆるいTシャツ、ゆったりとしたズボンは少し大きめかと思ったが、あまりにも似合いすぎて一瞬目を奪われた。
こんな奴町に歩かせたら絶対女の子が放っておかないだろう。
「、あと寒いのでこれを巻いてください」
「何これマフラー?」
「マフラーというかストールですね」
「へぇ……巻いてよ」
「はいはい……」
博士はベッドに腰掛ける。僕はストールを持ち、ある程度緩く巻き付けていく。スカーフのように形を整えて、鏡を見せる。
「どうでしょう?」
「……おおお!格好いい!國弘くん僕どう?似合ってる?」
「えぇ、とても……」
「写真撮ろうよ写真!」
「えっ何で」
「恋人同士ってそういうのするでしょ?」
「こっ……こい……ッ!?」
「ほらスマホスマホ!」
「分かりましたよ……、じゃあスマホ貸し……」
博士は自らのスマホの画面を向け、内側のカメラで素早く写真を撮った。
何故か僕も入ってしまった。
「何で僕も……」
「國弘くんかわいい!待受にしよ!」
「女子か!」
「すっごくかわいいよ國弘くん!じゃあ出掛けよっか」
「……博士、僕お金が」
「え?いーよいーよこれあれば大丈夫でしょ?全部僕が出すからさ」
博士の手にはキラリと光る漆黒のカードが。
この人ほんと何者なんだろう。
「じゃあ行こっか!」
「……分かりました、」
僕は博士に手を掴まれて研究所の外に出た。
「……嫌です一人で入ってください」
「…………むうぅ……」
行き倒れていた僕に居場所をくれた、白衣をだらりと着こなす美人は何故か僕にやたらとこういったことを要求してくる。別に明らかに嫌って訳ではないのだが、何故そんなにも性的関係を持ちたがるのかが分からない。
初めは行きずりでキスをした。流石に身体を合わせるのには抵抗があったため必死に拒絶した。彼自身を拒絶したいわけではなくて、そのような関係を持ち込むことを拒絶した、と僕は思い込むようにした。
僕はあくまで彼の助手としてこの家にいるわけだから、そういう目的のそういうサービスは助手の仕事に含まれないはずだ。
「……じゃあさ國弘くん、」
「何ですか?」
「チューしよ」
「……え、またですか」
「…………いや?」
「……別に、嫌とかではないんですけど」
「じゃあしていい?」
「……ご自由に、」
僕自身、自分から他人に触れようと思ったことがなかったから、あんな風に接されるとどうしたらいいのかが分からない。
見た目はだらしないし性にもだらしなさそうな男だが、薄情なわけではない。現に、こんな見た目でどこから来たのかも分からないような人間を、何の疑いもなく受け入れてくれた。きっと人一倍優しいのだろうが、こういった付き合いを要求してくるというのはどういった考え故なのだろうか。
「んんッ……」
「ッ、う……んん……」
彼の唇が僕の口を塞ぐ。中に舌を滑り込ませて、余すところなく堪能しているのだろう。口内を弄られ、犯される。
暫くして唇が離れた。すぐに酸素を求めて荒く呼吸を繰り返す。
「國弘くんちょっとは余韻に浸ったらどう?」
「は……?、やですよ……そんなの」
「……」
「あ……今、何時ですかね……」
僕はわざとらしく博士から目を逸らし、壁に掛かる時計に目をやった。大体8時。僕は博士の脇をすり抜けてキッチンに向かう。
「え、國弘くんどこ行くの!」
「ご飯作りますから……」
「……今日はすぐ食べに行けないかも……ごめん、」
「…………そうですか、研究です?」
「……まぁ、そんな感じかな」
「わかりました」
僕は食器を用意して冷蔵庫を開ける。冷めても食べられそうなものを主食にしようかな、そんなことを考えながら野菜を切り刻んだ。
†
昔から僕は人に甘えることのない子だと言われていた気がする。家族はとても温かかった、しかし家から一歩外に出たら好奇の目に晒されるのだ。そんなこと、自分を産んでくれた大切な両親に言えるはずもない。
僕は二人の前ではいつも笑顔だった、毎日僕が笑えば二人は笑ってくれた。それが、僕にとっての幸せだった。
しかし、そんな幸せというのはいつまでも続かないらしい。
「うっ……えぇ……ゲホッ、ゴホッ……」
僕はその頃を思い出す度に吐き気を催すようになってしまった。便器に頭を突っ込み、せり上がる胃液をただ絞り出すように吐き出すのだ。
一人になるといつもこうだ。何も考えることがないと過去を思い出してしまい、毎回吐いている。しかも最近じゃその頻度が前よりも多い。新しい環境に慣れないせいなのか。
「……、」
真夜中に突然こんなことになるなんて。
僕は高校をやめさせられた上、無理やり働かされていたため学校に行くことはない。早起きというものはしなくていいと博士に言われたから、深夜いつまでも起きていられるがさすがにもう吐くのは勘弁だ。
キッチンに行き、コップにスポーツドリンクを注ぐ。ちびちびと飲みながら、雇い主の彼について考えを巡らせる。
彼は何者なのか。職業は非常勤講師、もしくは研究者のようだがあまりにも謎が多すぎる。若くて美しい男ではあるが、瞳はいつも虚ろで熱っぽい。常に発情期のような男である。常に発情期ってウサギかよ。
ぼんやりと思考を巡らせていたところ、急に物音が聞こえる。振り向くとその張本人が立っていた。
「…………國弘くんおはよう、早いね」
「……いや、目が覚めただけなんですよ」
「大丈夫?また吐いてたんでしょ?」
「……えぇ、まぁ……」
「そうだ國弘くん、」
「?」
突然キッチンに現れた彼は、急に改まった表情で僕に問い掛けた。
「……國弘くんの好きなものって何?」
「え、」
「よければ教えてよ」
「……そうですね、甘いもの……お菓子が大好きです」
「ほう……なるほど、」
「あと、綺麗なものですね」
「へぇ……分かった」
「……?」
博士はそれだけ言って暗闇に消えていった。突然どうしたのだろう。
「…………、ふぁ……ねむ……」
僕は欠伸をひとつして、彼が消えていった方に向かう。先程のことをまた思い出す前に早く寝よう。
†
「おはよう國弘くん!」
「……おはようございます、ってもう12時……ごめんなさいご飯できなくて……」
「國弘くんお出掛け行こうよ!」
「え?突然どうしたんですか?」
「デートだよデート!ほら準備して!」
「……え?」
「まだ寝てるな國弘くん!起きないと抱き着くぞ!」
博士が突然、自室の扉を勢いよく開けて布団の中に入り込もうとしてきた。吃驚して目が覚めた。
「博士どうしたんです?本当に」
「僕國弘くんのこと全然知らないから知りたいなって」
「……」
「今日はさ、國弘くんの好きなところに行こうよ」
「……本当ですか?」
「うん」
「…………本当にその格好で行く気ですか?」
「え?」
布団に入り込む博士を追い出しつつ、改めて彼の服を見るといつも通りだらしない。こんなので外に出ようなんて何を考えてるんだこの人は。
「……ちゃんとした服はどこにあるんですか」
「うーん、多分クローゼットの中」
「僕も昨日てきとうに買ってきたぐらいのものしか持ってませんが一応白衣はやめましょう」
僕はやっと布団から出て、博士の部屋まで行く。相変わらず汚い彼の部屋に入り、物を踏まないようにクローゼットらしき扉まで向かう。中を開けると、綺麗に服が整理されているではないか。
「……ちゃんとした服あるじゃないですか」
「窮屈だからヤダァ、特にジーパン、アソコが締め付けられちゃう」
「それは知りませんが出掛けるときくらいちゃんとしましょう?」
「分かったよ、じゃあ國弘くんがコーディネートして」
「えっ僕ですか……」
「國弘くんだったらちゃんとした服着せてくれそう!」
「いやどういう意味ですかそれ」
とりあえず僕の独断と偏見で服を選ぶことにした。
彼自身窮屈な服が好きじゃないらしいから、少しゆったりした服をチョイスしてみる。今は冬先だから僕が買ってきたストールでも巻けば形になるんじゃないかなと思い、博士に服を渡す。
「とりあえず、これ着てみてください」
「分かったァ」
「僕も着替えてきますので、」
しかし博士のあの服は誰が買ってきたのだろう、真理亜さんだろうか。あらゆる系統の服が一通り揃っていたにも関わらず、彼はずっとワイシャツにくたびれたスラックス、やたらに白い白衣をだらしなく着ていた。実験や研究ばかりやっていると体裁を気にしなくなるのか。
とりあえず支度を終えたので博士の部屋に向かった。
「博士、着替え終えましたか……」
「んー……これでいいよね?」
「……えぇ、」
元々細身である彼に衿のゆるいTシャツ、ゆったりとしたズボンは少し大きめかと思ったが、あまりにも似合いすぎて一瞬目を奪われた。
こんな奴町に歩かせたら絶対女の子が放っておかないだろう。
「、あと寒いのでこれを巻いてください」
「何これマフラー?」
「マフラーというかストールですね」
「へぇ……巻いてよ」
「はいはい……」
博士はベッドに腰掛ける。僕はストールを持ち、ある程度緩く巻き付けていく。スカーフのように形を整えて、鏡を見せる。
「どうでしょう?」
「……おおお!格好いい!國弘くん僕どう?似合ってる?」
「えぇ、とても……」
「写真撮ろうよ写真!」
「えっ何で」
「恋人同士ってそういうのするでしょ?」
「こっ……こい……ッ!?」
「ほらスマホスマホ!」
「分かりましたよ……、じゃあスマホ貸し……」
博士は自らのスマホの画面を向け、内側のカメラで素早く写真を撮った。
何故か僕も入ってしまった。
「何で僕も……」
「國弘くんかわいい!待受にしよ!」
「女子か!」
「すっごくかわいいよ國弘くん!じゃあ出掛けよっか」
「……博士、僕お金が」
「え?いーよいーよこれあれば大丈夫でしょ?全部僕が出すからさ」
博士の手にはキラリと光る漆黒のカードが。
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