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私とママ。
金なし、家なし、何も無し。
しおりを挟む幾ら歩いても景色は一向に変わらなかった。実際、大した距離は無いのかも知れないけれど、泣き過ぎてかなり長い時間歩いてた気がする。
前を歩くハニエルが立ち止まった事で、ここが終点である事がわかった。
私は、これから異世界で新生活を始める。
前世は社畜になってしまったけれど、もう同じ悲劇は繰り返さない。そう胸の中で強く決意した。
「ユーリお姉さん、着いたよ。」
前を見ると、大きな扉があった。
白い空間には不釣り合いな木製の扉。不思議な模様と、読めない文字が描かれている。
「、、綺麗。」
思わず、その一言が溢れた。
「そう、良い感性だね。
まぁ、僕はこの扉好きじゃないんだけど、、、。
これから先、ちょっと怖いこともあるかも知れない。だけど、きっと大丈夫だから。僕の事信じて。ユーリお姉さんだったら乗り越えられるから。」
扉はゆっくりと開かれた。
眩しい光に目が眩む。目が慣れて来ると、扉の先には空が広がっていた。全てを無に帰しそうな怖い青色に、怖気づく。
「立ちすくんじゃうよね、わかる。だけど、、」
ハニエルは、私の後ろに回り込みそっと頬にキスを落とした。あぁ、美男子のほっぺちゅーを体験できる日が来るなんて、日頃の行いが良かったおかげだろうか。
天使は、私の肩をそっと抱き、扉に近付いた。
ん??違和感を感じる。
「大丈夫、大丈夫。」
これは、、まさか、、、。
「怖いのは最初だけだからっ☆」
そう言うと、ハニエルは私の身体を扉の中へと押し込んだ。天使の微笑みが視界に入る。
足が宙に浮くというか、落ちていく感覚で心がいっぱいになる。
やばい、これは今度こそ死ぬ。ハニエルの嘘つき!!人殺し!!
「ぎゃぁああああああああっ」
絶望の悲鳴が、落ちてく世界の何処までも響き渡ればいいと思いながら、私の意識は途絶えた。
-----------------------------------------------
「ねぇ、、、アナタ。大丈夫??」
暗闇の意識の中、私を呼ぶ誰かの声が聞こえる。
低い男の人の声。その声はとても温かくて、まだ寝ていたいと思ってしまう。
「起きないわね、困った子だわ。こんなところで爆睡してたら、食べられちゃうわよ??」
起きないんじゃなくて、起きたくないんですって言ったらドン引きされるだろうなぁ。
だって、貴方の声がすごく心地いいんですよ。イケボってずっと聞いてたいじゃないですか。お願い、あと30分ぐらい私のために独り言言ってて下さい。
、、、ところで、食べられちゃうって何にでしょうか。私は、異世界転生したばっかりなのに、名も知らぬお兄さんに食べられてしまうのでしょうか。
「置いて帰ってしまってもいいのだけど、、やっぱり心配よね。私ってお人好し過ぎるかしら。連れて帰って誘拐されただなんて騒がれるのも嫌だし。」
なんて優しい人なんだろう!!きっと見た目も美しい人に違いない。この目を見開いて、そのお姿を拝みたい。
誘拐だなんてっ、こんなイケボにされたら嬉しいに決まってる。むしろ感謝します!!
あぁ、やばい。鼻息が荒くなる。起きてるのバレちゃう。
そういえば、、イケボなお兄さん、私って言ってた???しかもちょっと口調も、女性っぽいような??
え、まさかの低音ボイスのイケメン女性!?
どうしよう、お姉さんに迷惑かけてるの!?お兄さんだからいいって事じゃ無いけど、お姉さんは衝撃的だ!!
目を開ける決意をして、ゴクリと唾を飲み込んだ瞬間、入ってはいけないゾーンに入った気がした。
、、これは咽せてしまいますね。
「っ、、、ごふっごほっ」
慌てて起き上がって、咳をする。
女性らしからぬ、お下品ですみません。でも、気管に入ったらこんな感じになりません??
「えっ!?大丈夫!?!?、、、咽せちゃったのね。」
優しい人は、そっと私の背中を撫でた。
あぁ、言動も女神であれば、行動も女神だなんてっ。私は、異世界転生して早速いい人に出会えたじゃないかっ。
そんな事を思いながら、気管の違和感がなくなるまで咽せていた。
-------------
「治ったみたいね。よかったわ。」
「はぁっ、、、すみません。ご迷惑をお掛けして、、、」
声のする方を見て、お辞儀をする。
あぁ、こんなイケボの持ち主はどんな方なのだろうと、そっと淡い期待を持ちながら、目を開けると、、、
微笑むこの世の方とは思えないとんでもないイケメンお兄さんと、でかいドラゴンがいた。
、、、異世界転生の話はどうやら本当だったらしい。正直信じられなかったけれど、目の前の光景が現実だと言っている。
「起きたわね、具合とか悪くないかしら??」
イケボな上に、超絶イケメンだなんて!!!この異世界は神がかってるかもしれない。また鼻息が、荒くなりそうだったので、一度冷静を装う事にした。
「は、はい」
これが、私の中の最大限の冷静な返事だ。
「そう。良かったわ。買い出しに行こうと思ってたら、こんなところでアナタが寝てたから心配したのよ。大丈夫そうなら、私はそろそろ行くわね?」
そう言って、イケメンお兄さんは、私に背を向けドラゴンの元に歩み始めた。あぁ、その様もかっこいいですね。
ところで、ここは何処なのでしょうか。視界には見渡す限りの森林。これって、ここに置いてかれたら、、、。モンスターが居たら、絶対死ぬ。だって、前世は普通の人間。目覚めたばっかりで状況把握も出来てないし。今レベル1もない状態なのですよ!?
その上、今の私は金なし、家無し、何も無しではないか
これは、大ピンチ!!
イケメンさん、置いてかないで!!
「あのっ!!!」
私、えらい!!よくこの状況で声が出た!!
「ん??何かしら。」
イケメンとドラゴンはすでに飛び立とうとしていた。あぁあ、すみません。妄想を繰り広げる間にそんなに時間が経ってたなんてっ!!
「わ、私。全然何も思い出せなくて。ここが何処なのかも。何をしていたのかも、、。」
「記憶無くしちゃったのかしら??」
渾身の嘘だった。
記憶喪失じゃ無くて、この世界に来たばっかりで何もわからないんですけど。
お願い!!置いてかないで!!
「そう、、、可哀想ね。」
イケボイケメンお兄さんは、ドラゴンから降りて私のもとに近づいてきた。そして、私の前に立ち、、
「じゃあ、とりあえず一緒に来る??」
私に手を差し伸べてくれた。
御光が眩し過ぎる。言うならば、女神降臨の瞬間だった。
私は折れんばかりに首を縦に振った。
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