死神の銃声に喝采を。その御手から撲滅を

キャラメル太郎

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第1章

第6話  大群の頭

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 街の外で激戦が繰り広げられている。街を護る為、金の為、大切な者の為、家族の為……理由は多岐に渡れど、多くの狩人がモンスター狩猟に命を賭けていることは同じだ。彼等が負ければ、街は終わり。単純なことだ。だがそんなことは過去に一度も無い。

 だからこそ、今回は……と考えてしまう者も居るし、逆にいつも通りモンスター達が引き下がって終わりだろうと楽観視する者達も居る。街の人々は狩人によって護られている。戦うところを実際に見た者は少なかろう。何せ、見れるとしたら、そこは戦場なのだから。

 兵士は毎度、非常事態警報が鳴った際の狩人とモンスターの戦闘を見るのが苦痛だった。もし……という時に備えて壁上に待機して武器を構えていなければならない。となると必然的に、眼下の戦場を見ることになる。それが堪らなく嫌で、苦痛で、耐え難い。

 モンスターの手により、足により、牙により、棘により、同じ人間の狩人が瞬く間に死んでいく。上から見れば黒い塊に見えるくらい居た狩人が散り散りとなり、目を移せば移すほど死んでいった。自分達は高みの見物だ。サポートとは名前だけで、バリスタや大砲を使えば狩人にも当たる危険性がある。

 故に兵士達に出来るのは、武器を構えて事に備えることと、戦場を記録に残すためにカメラを回すことだけだ。吐き気がする。兵士なのに、護ってもらうばかりで戦いもしない。全て狩人任せ。だから街中でも、彼等に会うとすかさず敬礼をするのだ。欠かせないのだ。兵士にとって、狩人は常に命の恩人であり、罪悪感を抱く相手だから。



「……歯痒すぎる。何で私は何もできねーンだよ。クソッ」



 戦場を眼下に見ることしかできない兵士達。その背後の地上。街の正面出入口の脇に、巌斎が膝を抱えて座っていた。服装は天切の店のものではない。既に着替えて自分の服を着ていた。彼女は背中から伝わる壁の震動を感じて、拳を強く握った。

 狩人の戦闘音とモンスターの踏み込みで、街を囲う分厚い壁が震動する。それだけ激しい戦いだということだ。いや、そんなことを感じなくても、壁の向こうから聞こえてくる声を聴けば嫌でも解るだろう。怒り、悲しみ、憎み、そして痛みによる絶叫。気合いを入れる為の雄叫び。壁を1つ挟んだ向こうでは、モンスターと戦って人が死んでいた。

 狩人になるのは、強くなる為でもあるが、モンスターを狩る為でもある。そのためにこの街へやって来た。なのに今の自分はどうだろうか。街に辿り着く前に死にかけ、助けられ、拾われて働かせてもらい、無力に打ち拉がれながら座り込んでいる。情け無いったらありゃしない。これではつい、乾いた笑みも溢れるものだ。



『〇〇ぅ……〇〇ゥ……っ!!……クソがァっ!よくも〇〇をォっ!ぶち殺してやるクソモンスター共がァッ!!』

『脚が……俺の脚がァ……ッ!!』

『何で……前が真っ暗だ……誰か、俺の眼を知らねーかぁ?』

『麻痺……毒……っ!近づく……んじゃ……ねえ』

『来るな……来るなァ──────ッ!!!!』



「……これが……モンスターと人間の戦い。狩人の……生涯」



 声を聴けば、嫌でもその状況を思い起こさせる。目を抉られ、足を飛ばされ、仲間が死ぬ。なのに戦場は終わらず、戦いが続く。自分達が居るから、自分達に壁上からの援護射撃が来ない。増援も、街の狩人全員が出たから望めない。モンスターは人の言葉なんぞ知らないから温情も情けも無い。それどころか、死んでしまった仲間を喰い漁るのだ。

 狩人の人生は厳しいものくらい知っている。いや、それには語弊がある。厳しいものだと。ここまで凄惨という言葉が似合う叫び声を聴く羽目になるとは思わなかった。思い出すのは、目の前で食われた人の良いオジさん。乗せ合いをしてくれたのに、次の瞬間には無惨にもモンスターに食い千切られた同じ人間。

 あの光景が、外では当然のように広がって、それよりももっと酷いものがあるのだと考えると気分が悪い。天切に作ってもらった賄いを食べていた自分が、罪深い存在にすら思えてしまう。外で命を賭けているのに、自分は壁の中で悠々と温かい飯にありついているのだから。

 巌斎は抱え込む膝に顔を押し付けて小さくなる。天切の家兼店で洗濯してもらった服からは、ふんわりとしたフローラルな香りがする。外の狩人からはきっと汗と血と、硝煙の臭いがするのだろう。そう考えると、この服の匂いも良い匂いとは思えなくなってきた。はぁ……と、溜め息を吐く巌斎の耳に、爆音の銃声が聞こえる。

 のそりと顔を上げた巌斎は、壁から伝わる震動がその銃声の時だけ矢鱈と大きく震えることを感じ取る。聞き間違えることはない。彼の扱う大口径狙撃銃の銃声だ。彼も当然に戦っているのだ。街の外で。あのモンスター達を相手に。



「……こんな弱腰じゃあダメだ。シャキッとしろッ!私ッ!クヨクヨしてンのは私の性分じゃねーだろッ!!」



 あの時助けてくれた黒い死神。あの強さ、勇ましさ。それらを思い起こせば、小さく座り込んでいる自身が恥ずかしく思う。こんなのは私じゃない。私に弱気は似合わない。己の心を鼓舞し、死んでしまっただろう狩人に負い目を感じるのではなく、今もなお戦い続けている狩人達に応援を贈った。





「──────やれ狩人ォッ!!向かってくるモンスターなんざ、片っ端からぶっ飛ばしてやれェッ!!」























 ──────今回は数が多いな。前回は現状の半分程度だったことは録画された映像で確認している。その前の前々回よりも今回は多い。狩人は既に40は死んだ。士気も既に落ちている。マズい傾向だな。



 壁の外、戦場まっただ中に居る黒い死神は、内心で今の戦いがマズい傾向にあることを察する。観測されていたモンスターよりも数が圧倒的に多いのだ。次から次へと街目指してやって来る。斃しても斃してもキリが無い。鳥類モンスターが少ないというのは僥倖だろう。数体程度なら黒い死神の対応で事足りる。

 しかし、そちらに手を割いていれば、地上の方の援護射撃が疎かになる。死に瀕した狩人を、彼は既に何度も狙撃によって救っている。素早い動きを得意とする2メートル程度のモンスターならば、頭を撃ち抜けば爆散して終わりだ。だが図体が大きいとそうもいかない。

 狙撃するにも弾は必要だ。有限故に弾切れもある。持ってこれる限界というのもあり、小型爆弾が内蔵された特殊弾はもう既に使い切っている。鳥類モンスターを一撃で仕留めるのと、体の大きいモンスターを仕留めるのに使ってしまった。今はスタンダードな大口径の弾丸を使用している。マガジンの弾が無くなればリロードをする。その瞬間に、モンスターにやられる者達も居た。

 全ての狩人の面倒は見きれない。そもそも、黒い死神とてモンスターと戦っているのに、援護射撃まで行っているのだ。普通ならばそんな高度なことはできない。やっているだけありがたく、そして心強いのだ。



「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!」

「なんだコイツ……ぁ……マジかよ……ッ!?」

焰狼狐えんろうこ『ウルキラム』だッ!!」

「お、俺じゃ無理だッ!」

「ンでこんなところにウルキラムが居るんだよォッ!?」

「まさか、このモンスターの大群引っ張ってきたのコイツかァッ!?」



 戦況が一変しようとしている。狼の遠吠えが聞こえ、瞬間的にゾッとしたものを感じ取る戦場の狩人達。急いで狩猟するなり距離を取るなりして目の前の相手から隙を作ると、遠吠えのした方を見上げた。

 廃墟の瓦礫の上。その一番上の部分に奴は居た。冷たく鋭い目で見下ろすモンスターの名は『ウルキラム』。焰狼狐えんろうこと呼ばれている。その名の通り、狼の体躯に狐の尻尾を持つ。ただし、その尻尾は9本もあり、それぞれが炎を纏うのだ。攻撃にも使える、炎を纏う長い9本の尻尾が特徴のモンスター。それを確認した狩人達は、その場で仲間の多数の死を覚悟した。

 本来こんな街の近くには居ない、山の近くであったり、気温が高いところに生息しているウルキラム。間違っても廃墟の瓦礫があるこんなところには住んでいない……筈だった。ウルキラムはもう一度遠吠えをする。すると突然、相手をしているモンスター達の攻撃がより苛烈になった。まるで命令されているようだ。

 事実、ウルキラムの強さに負けを本能的に理解し、従っているのだ。これだけの数のモンスターが、たった1匹のモンスターにだ。つまりは、それだけの強さを持っていることになる。だから狩人達が死を覚悟したのだ。狩人間の情報交換でも、ウルキラムに殺される狩人というのは多いということを知っているから。しかし、1番驚くべきことは──────



「ウルキラムのか」



「くッ……モンスター共が暴れ出しやがった……ッ!」

「さっきと比べて攻撃がキツい……ッ!!」

「腕が……ッ………俺の腕がァッ!!」

「ウルキラムが炎飛ばしてくるぞッ!避けろォッ!!」

「アイツ動きが速──────」

「疲弊して、他のモンスターも居て……あんな奴に勝てるかよォッ!?」



 そう、子供だ。ウルキラムの子供なのだ。生まれてからそんなに年月を重ねた訳でもない子供のモンスターに、モンスターの大群が従っているという事実。そこに加え、尻尾に纏わせた炎を凝縮して炎を玉として投げ付けてきた。数は9つ。9ヵ所で起きる炎の爆発に、狩人とモンスターが捲き込まれて絶命した。

 そして瓦礫の上から跳躍して降りてきたかと思うと、鋭い爪を使って狩人をたった一薙ぎで3人切り裂いて殺した。その後は軽い身のこなしと、振り下ろした武器を掻い潜る驚異的な速度で戦場を走り回り、尻尾の炎で狩人を焼き殺した。包み込んで殺し、叩き付けて殺し、炎玉で殺し……生き残っていた狩人が次々と死んでいく。

 折角モンスターの圧倒的数と拮抗していたのに、ウルキラムが来てから押され始めた。狩人の中には最早、奴に対して及び腰で怯えている者さえ居る。それだけの恐怖と死を与えていた。ウルキラムは何の目的かは知らないが、人間を殺すだけで捕食しない。ただ殺すのみ。脅威的な戦闘力で。

 これから戦場に居る全狩人を殺すのではという怒濤の勢いで次々と殺していった。だがそんな時だった。ウルキラムは急停止した。足でブレーキを掛けて動きを止めると、傍の岩が粉々に砕け散る。ウルキラムがぶつかったからではない。何かによって砕かれたのだ。粉々の岩を見てから、顔を動かしてある方向を見る。そこには、大口径狙撃銃を構える死神が居た。



「群れを退かせるには、その群れの頭を潰すに限る」



「■■■■■………■■■■■■■■■■ッ!!!!」



「──────死して悔い改めろ」



 焰狼狐えんろうこと黒い死神による一騎討ちが始まり、その戦いは壁上の兵士の息を呑ませ、戦いに終止符を打ち付けた。
































 正面の出入口が開かれたのは、非常事態警報が鳴ってから3時間経ってからの事だった。モンスターが完全に撤退し、再び襲ってくる様子が無い事を確認するまでは、外に疲弊している狩人が居ようと開けられない事になっている。現に今回も、戦いが終わってから1時間は外に放置されていた。

 傷薬などは、壁上から地上の狩人達に渡される。食料や水もだ。だがそれだけだ。傷の手当ては自分達で応急処置程度。戦い疲れて食料は食べる気にもなれない。せめて、汗などで脱水症状を起こさないように水を飲むくらいだ。そもそも、仲間が死んでいるのにモンスターを退かせたからと言って、手放しに喜べる精神状態にない。

 出入口の門が重厚感溢れる音を出しながら開門され、外から狩人達が帰ってくる。道の端に兵士達が居り、狩人達を迎えながら敬礼をする。しかし兵士達の顔は強張っている。何故なら、敬礼に反応すらできないくらい疲れ果て、各々仲間の肩を借りながら歩いたり、無くなった脚をそこらに落ちていた棒で体を支えて進んだり、片眼を潰されて包帯を巻き、食い千切られた腕を押さえて激痛に堪えようとしている者達を目にしているからだ。

 彼等が歩いた後の舗装された道には、血が滴り落ちている。苦しそうな呻き声、痛みを我慢する声にならない悲鳴などが聞こえて、兵士達は敬礼する腕を小刻みに震えさせ、視界を涙で歪ませた。誰1人として、何も出来なかった兵士達を責めなかった。罵倒しなかった。お前らの所為で……と言ってくれた方がまだマシだった。



「く、黒い死神様っ!お疲れさまでしたっ!!」

「……………………。」

「今回モンスターの大群を退けたのは、黒い死神様の多大なお力添えによるものだと、我々兵士一同及び街の住人の多くが理解していますっ!」

「……………………。」

「つ、つきましてはっ!街の領主様より、黒い死神様へ是非感謝の言葉や報酬を直接贈りたいと仰られていま──────」

「必要か」

「すので……はい?」

「──────その話は必要かと言っている」

「ぁ……えっと……そ、その……」



 最後に入ってきたのは黒い死神だった。肩に大口径狙撃銃を担いでいる彼の元に、兵士の1人が近づいて敬礼をし、大きな声で用件を伝えた。しかしその言葉を、黙していた黒い死神が遮り、問い掛ける。そんな話は今、こんな状態で聞かなくてはならないのかと。

 黒い死神が見ているだろう方向を見れば、大なり小なり傷を負って疲弊した狩人達が、各々支え合って自分の家であったり、診療所であったり向かっている最中。疲弊して動きが遅く、今にも倒れそうになっていた。今、たった今大規模な戦いが終わったところなのだ。つまり、お前は休ませるつもりも無いのかと言っている。

 人も大勢死んだ。この街に狩人が多く在住し、また多くの狩人が集まるからと言っても無限ではないし、狩人も人間だ。人間が先程まで死んでいたのだ。当然、死体は今もなお街の外に転がっている。今の疲弊した狩人達では回収する力や精神力さえ残されていないのだ。

 狼狽える兵士。こんな話をする前に、もっと他にやることがあるだろうと言外に言われてしまった。兵士として伝えなければならないものもある。責務を全うするのも兵士の務め。しかしそんなこと、黒い死神からしてみれば知ったことではない。



「──────失せろ」

「……ッ!!し、失礼しましたっ!!!!」



 底冷えする声で言われた兵士は、顔を真っ青にして走って行ってしまった。相手が領主であろうと王であろうと、黒い死神は従わないときは従わない。時と場所を選べという話なのだ。それすらも気を遣うことができない相手に、何故話を聞いてやらねばならないのか。

 街の外に放置された狩人達の遺体を回収する為に、街の外へ出て行った他の兵士達に混じるために走って行った兵士を眺め、フードの中ではぁ……と、溜め息を溢した。気を取り直して大口径狙撃銃を担ぎ直して位置を調整すると、歩き出す。

 そのつもりの1歩を出そうとして、黒い死神は顔を横に向けた。自身に向かってくる1つの気配を感じたからだ。視線の先には巌斎の姿があった。気まずそうに目を泳がせている彼女を見て、黒い死神は一応立ち止まった。見覚えがある相手だからだ。



「その……よ、今はちっとタイミングとかそういうの……悪いと思うし、疲れてるだろうからさ。……悪いっ!!本気で反省してるっ!!けど、3日後の夜、アンタがよく来るって店の『BLACK  LUCK』に来てくれっ!頼むっ!アンタと少しだけ話がしたいんだっ!」

「……………………。」



 巌斎は今伝えるのは、先程の兵士と同じ行為だと理解している。しかしこれを逃すと今度はいつ会えるか解らないのも理解している。なので彼女は、精一杯誠意が伝わるように、その場で深く頭を下げた。黒い死神はその後頭部を眺め、数秒黙り込んだ。

 やっぱりダメだったか?と巌斎が諦めの気持ちを抱いていると、黒い死神からはぁ……と、溜め息を溢すのが聞こえた。呆れられた。ふざけた奴だと思われた。色々と頭の中に言葉が思い浮かぶが、黒い死神からの言葉は意外なものだった。



「──────3日後の22時に行く。店主にもそう伝えろ」

「……っ!?お、おうっ!分かったっ!」



 意外も意外。まさかの承諾だった。やっぱりこんな時に頼むのは場違いだろうけど、頭を下げるのが良かったのか?と1人残されながら思案する巌斎。実のところ、タイミングが悪いことを自覚していて、それならそれ相応の謝罪をした事が決め手になっていた。それが無ければ立ち去っていただろう。

 取り敢えずOKを貰うことが出来たと、ホッとした気分になっている巌斎が振り返って天切の店に戻ろうとした時、目に入ったものを見て息を呑み、瞠目した。






 巌斎の視線の先には、9本の尻尾は千切られ、下顎を毟り取られ、牙を全て砕き折られて両眼を潰されながら、体が穴だらけになっている無惨なウルキラムの死体が、街の外に転がっていた。






 ──────────────────


 焰狼狐えんろうこウルキラム(子)

 体高4メートル程度のモンスター。姿は狼の体躯に9本の長い狐の尻尾を持つ。動きが素早く身軽。頭が良いので他のモンスターを盾に使って攻撃を凌ぐこともある。尻尾に炎を纏わせ、炎玉を投げてくる他、その尻尾で打撃をしたり包み込んで焼き殺しにくる。

 今回現れたウルキラムはまだ子供。しかしその子供でも、今回起きたモンスターの大群を向かわせるだけの力を持つ。体が大きいものにも恐れず立ち向かうことから、怯えさせて退かせることが出来ない。

 成体になると、体の大きさの他に尻尾に纏う炎の熱量も上がり、純粋な強さが跳ね上がる。毛皮も強靱となり、普通の武器では毛を切ることすら難しい硬さになる。一部の地域では、神の使いであるとして崇められていたりする。




 黒い死神

 今回のモンスターの大群を退けさせた功労者。群れを退かせるには頭を潰すことに限ると言って、本当に頭を殺してモンスター達を退かせた。戦いで負った傷は無し。唯一の無傷。

 今回のウルキラムが子供だと判ったのは、成体のウルキラムを過去に狩猟した事があるから。その時のウルキラムは、子供とは比較にならない強さを持っていた。けど最後は殺した。




 巌斎妃伽

 狩人という者達が、どれだけ大変な毎日を送っているのか軽く考えていたことを自覚した。門が開いて帰ってくる怪我をした狩人達を見て息を吸うのを忘れそうになり、集会所に言った時に話した狩人が死んでしまっていて、何とも言えない気持ちになる。

 だがその中で、無傷で帰ってきた黒い死神に、恐れとは違う何か、ゾッとするものを感じた。それに、今回対面して細胞が悲鳴を上げているのではと思えるくらい、人間離れした気配を感じた。



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