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第一章 始まりの朝
しおりを挟む目が覚めると知らない場所にいた。
真っ白な壁、真っ白なカーテン…床以外は真っ白だった。
起き上がり、辺りを見渡す。
部屋の出入り口の横に洗面台、窓側に俺が今まで寝ていたベッド、枕の横には花瓶を置いたサイドテーブル、その壁には日めくりカレンダーが掛けてあった。
薬品特有の匂いで此処が何処かの診療所の一室だという事に気付く。
だが、物音すら聞こえない。
改めて辺りを見渡したが特に気になるような所もない。
この時初めて頭と左手首に包帯が巻かれている事に気付いた。
…俺……何もわからねぇ。
ふと、日めくりカレンダーの、日付が目に入った。
『……1922年9月5日…』
『うっ…』
何故か日付を見た瞬間、頭に激痛が走ったが、数秒程度で痛みがひいた。
…何なんだ一体。
あの日付と何か関係があるのか?
取り敢えず、誰か呼ぼう。
ギシ……ガラッ
ベッドから下り、裸足のまま部屋の戸を開けた。
廊下は静まり返っている。
人の気配すら感じられない。
『…誰も……いないのか?』
『!』
何で今まで気付かなかったんだろう。
喉元に手をあてる。
『…俺……声出ねぇ…。』
これじゃあ、誰かを呼ぼうにも呼べない。
静まり返った廊下を見つめるが、急に怖くなり戸を閉めた。
ベッドに向き直った時、ベッドの下に何か影が見えた。
一瞬驚いたが、ベッドに近付き、屈んでみると箱があった。
開けると、中には黒い軍服とブーツ、あと同じ軍服を着た4人の若い男達が笑顔で写ってる写真があった。
何気なく写真の裏を見て衝撃が走った。
1922年9月15日
水川春樹(みずかわはるき)、雨宮翔太(あまみやしょうた)、佐野純也(さのじゅんや)、小鳥遊悟(たかなしさとる)
佐野診療所前
日付が…違う
今日は9月5日じゃないのか?
…わからない
……わからない…
写真には確かに俺も写ってる…って事はこの軍服は俺の…か。
他の3人も見覚えはある…だが、それ以上の事はわからない。
取り敢えず、着替えてこの診療所の中を調べよう。
着替えて改めて部屋を見回した時、ベッドの脇にあった刀が目に入った。
…これは見覚えがある。
上着の内ポケットから写真を取り出す。
俺の刀だ。
写真の中の俺はその刀を背中に掛けていた。
写真をしまい、刀を手に取り、同じように背中に掛けた。
部屋から出ようと戸に手を掛けた時、遠くの方で何か話し声が聞こえた。
戸を静かに開け様子を窺うが、話し声の主はまだ入り口の方にいるみたいだ。
この部屋の近くからも人の気配はしなかった。
取り敢えず、此処から逃げないと…。
逃げる…?
何でそう思ったんだ?
…まぁ、それは後で考える。
そんなことより早くこの部屋から出よう。
何となく見つからない方がいいだろう。
丁度、階段が視界に入った。
なるべく足音を立てないよう2階へと急いだ。
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