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亀裂2

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僕はあまり妻ペギーとは口喧嘩しない。でも以前はよく子供の教育のことなどなどで喧嘩した。明らかに僕が悪い時もあったし どう見たって妻が悪い時もあったけど、最後に謝るのは 絶対に僕だった。そういうこともあって僕はだんだん自分の意見を言わなくなった。でも それでも僕は特には気にしていなかった。自分の意見をつらぬくよりも 平穏で静かな日常を送りたいと思ったからだ。

結婚後 妻は少し太った。顔は以前と同じでキレイな顔だったが 性格は強くなった。それでも僕は僕なりに妻を愛していた。

ある日 妻の友達の結婚式に参加した。台湾の結婚式は日本の結婚式とは違ってかなりラフだ。日本は出席する人もスーツでビシっと決めるが台湾はハーフパンツにサンダルで来る人もざらにいる。招待状に12時開始と書いてあったら日本人なら11時30分には到着すると思うが台湾人は12時くらいに家を出る。その日もそんな感じだった。僕たちは少し早く着いて 他の出席者達が到着するのをずっと待っていた。妻はずっとスマホをいじっていた。そしてスマホを置いてお手洗いに行った。

しばらくしてLINEのメッセージが妻のスマホに来た。僕は盗み見るつもりなんて これっぽっちもなかったんだが、妻の仕事に関するメッセージかもしれないと思って 親切心で 妻のスマホを手に取った。

「今夜君に会いたい」「私も」こんな内容が僕の目に映った。

あまりにも衝撃的で 思考が停止した。そんなの今の時代当たり前で驚くことはないと言う人もいるだろうが、自分の妻に限ってそれはない ペギーに限ってそれはないと安心し切っていた僕にとっては あまりにも強烈な衝撃だった。

でも、僕は何も言わなかった。自分の意見を押し殺した。自分の気持ちを 自分を見事に押し殺した。

僕は正直言うと 面倒臭いと思ったんだ。国際結婚だから結婚の手続きも日本と台湾両方でやらなければならなかったから きっと離婚も相当ややこしい手続きがあるんだろうとも思ったし ましてや今は子供が3人もいるから それに親権問題も絡んでくるだろう。それに僕には現金がほとんどと言っていいほどなかった。給料は毎月全て妻に渡していたし へそくりなんてしていなかった。それに妻の家族も僕に良くしてくれていたから離婚を切り出すことはできなかった。

そう言うわけで 浮気のことは見て見ぬふりをして平穏で静かな毎日を送ることにした。

でも やはり僕も人間で男で それなりに苦しんでいた。何年間も我慢した。我慢し続けた。
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