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Cadenza 私の、私達の…皆の歩んできた道 12

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返事と共に厨房の奥へおばちゃんが移動したので、後は出来るのを待つだけ。
何時もの流れなら私達は席取、っていっても、誰も居ないので、カウンターから近い場所の椅子に手をかけて座ろうと・・・したんだけど
服を引っ張られてメイドちゃんが首を横に振る?
どうしてだろうかと悩んでいると
「ここでは斯様な心配なぞ杞憂であろうが」
不機嫌そうな声が聞こえてくるので、どうしたのかと様子を見ると
王様に付いてきた人達全員が頭を下げている?
何事だろうかと様子を見ていると
「遅かったです」
状況を理解しているメイドちゃんが困った顔をしている。

遅かった?何が?
どういう意味だろうかと首を傾げる間も無く
「王族として相応しい席っというのがありまして、えっと、団長が椅子に手をかけたのを王様が見て、団長の近くというか真向かいに座ろうとしたのをお付きの人達が止めちゃったんです」
状況を説明してくれる、のは、良いんだけど、今一つ、何がいけないのかわからない。
えーっとつまるところ、私が何時も通りに座ろうとしたのがダメだったってこと?
「そんなの気にするものなの?」
「はいです」
気怠そうな表情で頷いてどうしましょうっと困った顔を向けてこられても、私じゃ正解なんてわからないよ?
わからないから、何時も通りでいい、メンドクサイ。
座る場所なんてどこでもいいんじゃないの?立っているのも馬鹿らしいし!
「ほら、皆すわって、場所は好きな場所でいいから」
直ぐ近くにある椅子を引いてメイドちゃんはそこね、キミはそこ、貴女はそこっと一人一人指を刺しては、椅子を指さすと王様もご満悦で私の向かい側に座ってくれる
全員が席に着いたので私も座ろうとしたら
「はいよー!シチュー出来たからもっていっとくれー」
おばちゃんからの呼び声によって座ろうとした動きを止め、カウンターへ向かうとメイドちゃんも慌てて立ち上がって運ぶのを手伝ってくれる
他の人達も立ち上がり運ぶのを手伝ってくれるので運ぶ作業は直ぐに終わった。

椅子に座るころには全員の前にメニューが揃っている。
それでは、仲良く一緒に食事と行きましょう!
普段ならそのまま、何も言わずに食べる事が多い、もし、教会の作法をする人が居ればその作法に合わせたりする、でも、今回はその二つは違う気がしたので、こういう時に便利なのが姫様の知識!
手を合わせていただきますっと声に出し、姫様がときおりする祈りを捧げると
「この地方での習わしか?なれば」
王様も同じように手を合わせて瞳をつぶりいただきますと祈りを捧げてくれる。
食事を開始する合図の後は、周りなんて気にせずに食事を楽しむ!
スプーンを手に取りシチューを掬い口の中に流し込む。
熱すぎず冷たすぎず!食べやすい。
「うん、美味しい…」
久しぶりに食べた様な気がする…自然と感想が喉から滑っていく。
もう一口、焦らず慌てず、シチューを口の中に流し込むと、違和感を感じる。

美味しいんだけど、どうしてだろう?女将が作るのと味が違う気がする?

何が違うのだろうかと、もう一度、シチューを口の中に流し込み、違いを探してみる。
お肉と一緒にシチューを口の中に入れ噛み締めた瞬間に違いがわかった気がする。
女将の方がもっと、こう、臭みっていうのかな?野性味?っというのかな?それがある感じがするし、女将の時はもっとお肉が硬いんだけど

おばちゃんの作ったシチューだと柔らかいしお肉の臭みがない。

こっちはこっちで食べやすい!
女将のシチューだから何時ものを想像してたんだけど、やっぱり、作る人によって料理って変わる。
No2もそう言っていたけど、私もそう、料理っていうのは薬の調合と違って難しい。
だって薬なんて味なんて気にしないから…

おばちゃんが作ったシチューと女将が作るシチューの違いに気が付けたことに自分が料理に対する知識や経験が増したのだと、鼻を広げ興奮しながら
「ええい、この様な場所、状況でどうやって毒を盛るというのだ、寄こせ」
柔らかいお肉を噛み細かく舌で解し更に味わいを噛み締めるように噛みながら味わっていると目の前にいる王様が苛立ったご様子?
どうしたのだろうかとお肉を噛みながら王様の方を見ると

何をしているのかわからないけれど、一緒について来た人たちが一つの器を回し、一人一人がシチューをスプーンで掬い口に入れて食べている。
全員が一口食べ終わってからシチューが入っているお皿が王様の前に置かれるが…
「では、此方をどうぞ」
当然、小鉢に近い小さな器の中に盛られたシチュー、5人が一口でも食べてしまったら、中身なんて残るわけもなく、殆ど空っぽだった…

元々が小さなお皿だから、5人がスプーン一杯口の中に入れたら無くなるに決まっている。
王様って、まずは食事を分け与えてから食べるってこと?民を優先するのが王ってこと?
王様だからこそ貧するべきってこと?

王様ならではの習わし?風習?んー…よくわからない。

そんなことしなくても、っていうか、そもそもシチュー…全員分あるよ?
よくわからない王族の風習でご飯をお腹いっぱい食べられないのは違うよね?
風習を重んじるだっけ?大事にするならこの街の風習にも従ってもらいたい!

そうと決まれば、私のすることはひとつ。
「はい、貸してお代り貰ってくるから」
ようやく目の前に置かれたシチューをスプーン一杯だけ、掬い口の中に優雅に流し込んでいる王様に向けて手を差し出すと
「よい、幾ばくかの量があれば何も問題はない」
断られちゃう、でもここは引けない。
その言葉を無視してシチューが入っていた器を手に取り
「いいから、遠慮しないで。明日は大事な日。お腹いっぱい食べて力をつけて欲しいから、そんな一口で満足するわけ…」
手に持った器が思っていた以上に軽く、視線を器へと落とすと
「うわ、ほっとんど無い、一口しか食べてないのにこれくらいしか残ってないの!?これじゃよくない!医療班としても認めれません」
中を見ると殆ど無く、器の中に残されたシチューは、あとスプーン2杯もすくえたら良い程の僅かな量しか残っていなかった。

そのまま、器をもって椅子から立ち上がりお代りを貰いに行くと、遠めで一連の流れを見ていたおばちゃんが洗い物をせずに待ってくれていた。
「貴族ってのは、しょうがない生き方だね」
「あ、わかっちゃうもの?」
呆れた顔のおばちゃんに器を渡すと、わからないわけがないよっと言いながら器を受け取りお代りを注いでくれる
「ほいよ、お代りはまだまだあるから遠慮しないで食べな、たくさん煮込んで作ってあるからね」
大きな鍋を指さしてくれる。
姫様考案の寸胴鍋っていう大きな鍋が三つもコンロの上に置かれている。
「ありがと!」
きっと、戦士達だけじゃなく応援に駆けつけてくれた騎士達の分まで用意してくれたのだろう。
その量を見て、何故かうれしくなってしまった。

席に戻って王様の前にシチューが入った器を置き
「どうぞ、冷めないうちに」
一声かけてから自分も席について食事の続きをしようとパンを千切ってシチューに浸し口に放り込むと
「・・・?」
視線を感じたので何だろうと、パンを噛みながら前を向くと
何故か王様と一緒についてきた5名が口を開いて此方を見てる
何で見られてるのだろうかと思った瞬間、王様が私の器に指を刺し
「そうやって食べるのも此方では」
「・・・ぁ」
どうやらお行儀が悪いってやつかな?
「ううん、これは、私が好きな食べ方でこういった食べ方が、この街での作法とかじゃない」
これまたお行儀が悪いのだろうけれど、つい、直ぐに返事をしてしまった。
口の中にまだシチューが湿ったパンがあろうと、前へ飛ばない程度の小さな声で返事を返す。
途中でさすがに無作法すぎるっと判断し、直ぐに口元は手で隠しはしたけれど、これまた無作法。

「っふ、門を潜れば同胞だったか、俺も共にしようぞ」
その言葉と同時に席に座っていた五名が立ち上がろうとする前に王様は私と同じようにパンをシチューに浸し口に運び
「美味いな」
無作法に私と同じように口の中にパンが入った状態で感想を言う。
その姿を見て、私の中にある王様のかたっくるしいイメージが壊れ親近感がわき
「いっぱい、い~~っぱい食べてくださいね、この街では飢えさせないっが…みんなの願いなので」
素朴でされど、微笑ましい感想につい、気持ちが昂り笑顔で大きな声で返事を返してしまった。
後になって湧き上がってくる気恥ずかしい気持ちを抱えながら道中のような無言ではなく、他愛の無い会話をしながら一緒に食事を楽しんだ。





シチューもパンも、サラダも、出された食事は全て食べ器が空っぽになったとしても、後片付けが終わったとしても、直ぐにお開きにならず、王様が私の知らない王族の日常を語ってくれた。
気が付けば、テーブルの上にはおばちゃんが特別に出してくれたワイングラスが一つと、後は姫様御用達のジュースが入ったグラスが二つ。

グラスの中が空っぽになるまで、きっと、この食事会は終わらない。

「いつ以来だろうか…」
ワインを口に含みながらどこか遠くを見ながら呟いている王様…その顔をみて、少しばかり胸がときめいてしまう。

だって…最初にあった時と違ってさ、なんか、可愛いなって思っちゃった瞬間があるんだもん。
表情が強張り張り詰めているのと違ってさ、何処にでもいる気のいいおじさんのような顔つきだったし、その、話をしてくれてるときの顔が、失礼だけど、どうしてかな?幼く見えちゃったんだよね。
その、それに気が付いた時に、ちょっと、ちょっとだけだよ?胸がときめいちゃった…

彼の話を聞いて、胸がときめいて、わかっちゃった、自分が単純で恋多き馬鹿だっていうのを。
失恋したばかりだというのに、私はすぐに…ちょっと自己嫌悪な部分もあるけれど、単純な私は直ぐに新しい恋を探し出すのだと心が軽くなった様な気がした。

だから、つい、隣で笑顔のまま固まり続けている人がいたとしても、彼との会話を楽しんじゃった。
「美味しかったです?」
つい、先ほどまで談笑していたからか、相手が王様であるのを忘れて話しかけてしまう。

此方の質問に対しても嫌な顔なんて一つもしなかった、姫様が言う程、この人が悪人だとは思えれない
、思えれないけれど…姫様の記憶を見たから完全には信用できない、しちゃいけないって思ってたりもしたんだけど…
はぁ、私ダメだなぁ、もう絆されちゃってるかも?

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