最前線

TF

文字の大きさ
上 下
12 / 224

悲劇はいつも、突然に

しおりを挟む
警報が鳴り響くと同時に瞬時に判断する、長い事この街で活動している人だとしたら、この音が鳴り響くときは全員が神経を尖らせることになる。

何故なら、この警報が鳴った時は決まって奴を発見した時。

そう、古い人の表現だと2足歩行タイプ、新しい人の表現だと人型。
人型には、過去、全てに置いて討伐するのに多大な犠牲が伴った、全ての歴史において犠牲無しで討伐出来た試がない。

私達が最も警戒している相手で、神出鬼没。
どの周期で現れるか、どこに現れるか常に未知数、ふと横を見たら視線の先に居る時もあった。

今まで静かだった街が急変し、張りつめた緊張が街全体を包み緊張感が肌で感じる程である。
耳を澄ませば、あちらこちらで慌ただしい物音が聞こえる。
警報が鳴ったら、非戦闘員の方は絶対にすかさず避難するようになっている、避難を怠って死んでしまうこともある。

新入りさんが近くに居れば状況を的確に伝えないといけないが、昨今の新人はみんな、この警報が何を意味するのか知っているので問題はない。

さっきまでの私は、優雅に紅茶を飲み、焼き立ての手作りクッキーを食べて、気になっていた医学書を読んで、久方ぶりの休暇を満喫していた、けれど!優雅な休暇もここでお終い!!それどころではない!

私は、どちらかと言えば、非戦闘員だが、戦えないわけじゃない!医療だけが私の術じゃない!こう見えて多少であれば戦闘もできる。

姫が用意してくれた私専用の決戦用戦闘服や、近接戦闘用毒付きナイフ、
超接近戦用爆発兵器、使い方は至ってシンプル、敵に突き刺した後に術式を起動する、そうすると、敵に突き刺した先端部分が敵の体内で爆発するという兵器、注意点があるとすれば、爆発した際に自分自身もダメージを食らってしまう危険性が高い、他の使い方として、敵から考えたくもないひどい目にあう予感がしたら自決用に使うことも出来る。

他にも、魔力を通すだけで発動する攻撃術式が組み込まれた術式譜が数枚。
色んな種類があって、発動したら周囲事、燃えたり、発動した周辺の温度を急速に下げて凍らせたり、風を巻き起こして敵を押し出したり、吹き飛ばしたりと、色々な種類がある。

本来、私の様な医療がメインの医療班はこのような戦闘装備を持たないことが多いが、個人的に姫と一緒に戦闘服とかを共同研究してたりしているので、どんな時でも応戦できるよう様に準備している。
戦闘装備を身に着け、次の一手に必要な情報を得る為に走り出す!

目標は見張り台だ。

見張り台には、隊員が居るので、緊急事態用の花火が打ちあがってそれを見た隊員が警報を鳴らしたのか、それとも、敵を目視したのか、それらの情報を直接、聞くことが出来る。

現時点で、私の居る場所からであれば見張り台に行くのが一番的確な情報を得ることが出来るので、敵の位置を知る為にも、全速力で見張り台へ向かう方が今後の動きを考え場、それが一番早い。

悠長に、伝令なんて待っているわけにはいかない!
人型であれば、1秒でも早く現場でソロでも活動できる人は行くべきだ、そうしないと被害が広がる一方になる。

駆けつけようにも何処で敵が居るのか正確な情報がないと、転送先を選べない、闇雲に転送陣に突っ込んでたら到着できないからね。

転送術式とは?予め用意した転送を行う事が可能とする魔道具で、原理は、対となる陣同士の空間をつないで陣の上にあるものを転送することが出来る、画期的な術式装置で、現状、数多くない貴重な品物。

物凄く便利ではあるが、弱点もある、その一つが、起動するのに必要な魔力量がとてつもなく必要で、一人では不可能だ、その為、複数人が魔力を捧げないと起動できない。
一人では絶対に起動するのに必要な魔力量が足らない大規模な術式、その為、古い人は祭壇方式という人もいる、また、新しい人だと、協力術式と呼んでたりもする。

後、もう一つ懸念点があって、移動距離が、難ありで、そこまで遠くに転送が出来ない。
なので、転送できる距離の例として、最前線の街から医療部隊、医療部隊から前線部隊と中継しないといけない。
現状で主に中継しているのが、だいたい三つかな?
作戦によっては変わることがあるけれど、基本はこんな感じ。

最前線の街 ┬ 医療班
      ├ 隠蔽部隊+見張り部隊+連絡部隊
      └ 前線にいる兵士部隊に物資を送ったりする物資班

そして、警報が鳴っているという事は目視できる距離である可能性がある!つまりは!私の医療部隊が攻められている可能性が高い!やらせるものか!!

見張り台に到着すると、対応が早く、見張り台に人が居ない、作戦本部に直接伝えに言っている可能性が高い、なので、遠見の術式を使って、医療部隊が予定では、陣取っている地点を見る。

慌てて撤退作業を開始しているのがわかる、襲われているのは医療部隊じゃない?

であれば、隠蔽部隊か!隠蔽部隊だとすると術式が起動していたら探すのが厄介だけど、今回は何処で陣を築いているのだろうか?

何処を見ようか判断が一瞬遅れた刹那、遠い場所からこちらまで鳴り響くほどの轟音が聞こえる、すぐさま轟音が発生した箇所に遠見の術式で確認すると、煙が立ち上がってる場所がある。

居場所が分かった、けれど、あの場所って確か!!
襲われているのは隠蔽部隊の地点Aだ!ついこの間、学生がやらかして敵に露見した場所じゃないか!
なんでそんな場所をまだ使ってるの!相手を馬鹿にしすぎ!油断しすぎ!場所変えなさいよ!なにやってんのよもう!!

立ち込める煙の中から、薄っすらと影が見える!煙のど真ん中に味方がぼーっと突っ立てるわけがない!あれが敵の影だ!!

これで確信した、粉塵から覗くシルエットから判断できる、人型だ!!!
タイプは、、、目を凝らして煙から少しでも姿が見えるのを待つ。

サルかな?あの感じ、手も長いし・・・嫌な相手だ・・・

細身で手が長いタイプ、リーチの長さから懐に入りづらく死角からの一撃が怖い相手。

しかも!杖みたいな得物みたいなの、持ってるじゃないの!?最悪だ・・・

人型タイプは稀って程でないが、なかなかの頻度で特殊な得物を持っていることが多く、人型を倒した後に、残された得物を解析して、こちらがわの技術に転用したりもしている。
姫や、歴史に詳しい人が言ってたけど、過去の超文明の遺品ではないか?っというのがこちら側の見解。

人型が装備しているタイプで、発見されているのは大きく分けて二つ、武器を持っているか、防具をもっているか。

今回はどう見ても武器。鈍器だとすれば、長い手+杖によるリーチが怖い、だけど、恐らくあれは鈍器ではないと直感が告げる。

嫌な予感だけど、ここまで届くくらいの轟音が出せる程の爆発術式をアイツが撃っている可能性がすっごく高い。しかも、結構、溜めるのに時間が掛からない連発タイプかもしれない。

過去の記録・経験上、武器タイプが一番厄介!対処が遅れれば遅れる程被害が広がる!
しかも、隠蔽部隊が相手取ってるわけでしょ!?非戦闘員だよ!?急がないと!!

見張り台から、転移陣が展開されているであろう広場に向かって最短ルートで急いで向かう!!

最短で行くのであれば!見張り台から飛び降りるのが一番早い!

飛び降りると同時に、風の術式を展開し尚且つ!服に装備されてる機能で浮力を受け止めやすく形状変化させる!地面から上空へと風の力で浮力を生ませる!

地面が近くなると形状変化を解除し、衝撃を逃がすために横方向に転がりながら着地すると砂煙が巻き上がる、砂煙をまき散らしながらも上空で既に転移陣が解放されているのを目視で確認済み!なので、転移陣に勢いよくダイブする!!

ダイブする刹那、敵が人型であると戦士達も判っているみたいで念入りに準備をしているのが見えた、であれば私がすることは一つ!
隠蔽部隊が撤退する時間を稼ぎながら、戦士たちの到着時間を稼ぎながらも!相手の体力や攻撃手段を削ぐ!!次につながる一手を!!

ダイブ後、転送陣から景色が見えると、敵の人型が杖に向かって何か意識を向けている!

やっぱり嫌な予感が的中している、あの光り方は爆裂系か!先ほどの粉塵は味方が起こした爆撃ではなく敵のやつ!!もう一度、遠くまで聞こえる轟音迸る爆裂なんて、それが撃たれるのは、非常にまずい!

やらせるかぁ!!!

ダイブした勢いを殺さずに、すかさず腰に装着している毒ナイフを取り出し、狙いを定める!!
確実に刺さって尚且つ、相手の術を止めるには!どこがいいか?決まっている!手だ!つまりは!指先!目掛けて!全力で投げる!!!

戦闘服に仕込んである筋力瞬間増強の術式を発動させ、自身の力+アルファで強化された力により、投擲されたナイフは空を切る音が辺り一面に響くほどの物凄いスピードで飛んでいく。

カァァン!っとナイフが杖に突き刺さる音が聞こえる、音で分かる確実に当たっていると、だけれど、敵の悲鳴は無い。

ナイフが刺さった個所を見ると、敵の指に刺さる以上の成果を上げていた、敵の人差し指と中指を同時に切り落とすことに成功していた。
その光景を見て思うことは一つ、これで、悲鳴を上げないなんて、アイツらは本当に生き物なの?生物として間違ってない?痛覚が無いの?

こちらの攻撃を食らって、相手がどの様に動くのか、相手の出方を伺う、後の先を取らないといけない、私は戦闘職ではないから、先手で動いたり、ここが決め手だと欲をだしちゃって、人型に対して追撃なんて、そんな愚かな事をすれば、確実に私が死ぬ!それくらい相手との力量差が致命的にある。

全神経を集中させると、魔力の高ぶりが杖に再開されようとしているのを感知する。

一瞬だけか、私の攻撃で、ほんの一瞬だけ魔力の収束が止まった、けれども!すぐさま魔力の収束が再開されていっているのが、肌でも感じるし、目視でもわかる。杖の先端に光が収束し、その光が大きな魔力で光っているのも感知できる。

ここまでの規模の魔力が込められているとなるとこれは!!
瞬時に、魔力量から逆算し、爆発の規模を計算する。血の気が引く程の爆発だと刹那に察する。

これ、だめだ!規模がでか・・・・

慌てて戦闘服に備えさせてある、防御術式を起動させる。
戦闘服の強度を底上げさせつつ両腕を体の前で閉じ、爆風に備える為に地面を蹴って、両足を上げて膝と肘をくっつけるようにして、背中を丸めて前方からの衝撃に備える為のガードポジションの姿勢になる。
丸まってしまえば爆風で吹き飛ばされても転がって衝撃を分散させることができる!それだけじゃない!口を開け鼓膜が破れないようにする!耳にも防御術式が起動しているので多少は耐えられる!

飛んだ瞬間に、杖の先端から光ったと思ったら相手の目線の先にある地面が大きな音、光が共に弾け、感じたことのない衝撃波が襲い掛かる。



ぁぁぁあああああぁぁぁぁぁぁぁぁあああぁぁっぁあぁぁぁっぁぁぁぁあ



物凄い轟音と共に閃光による視覚と聴覚情報のシャットアウト、私の軽い体なんて爆風で吹き飛ばされてしまう。

幸いにも、この戦っている場所が更地で木等の障害物がない、だから、木や岩等に、体を打ち付けられる心配はない。

けれども!地面には衝突する!頭を衝撃からしっかり守って!!!腕が折れても、命はある!!頭は良くない!衝撃で意識が飛んだら、命が終わる!意識が落ちてる間に確実に殺される!!!

運よく、地面から見て水面に向かって飛ばされた。
例えるなら、綺麗な水面に、アンダースローで石を投げて何処まで遠く跳ねれるかを競う水切り遊びの様に、私の体は飛ばされた。
でも、そのおかげで、地面を水平に転がることが出来る、地面と正面衝突しなかったのが助かった、地面に叩きつけられていたら意識が持ってかれるのは必定、それほどの、衝撃が飛んできていたのだから。

ある程度の衝撃を殺し切れた後、素早く立ち上がり、自身の怪我を瞬時に診察する。
ほぼ、擦り傷と軽い打ち身だけで済んでいる、次の一手を判断する為に瞬時に臨戦態勢になると同時に沸き上がる感情

っちくしょうがよぉ!!!!!!!!こちとら、てめぇの指おとしたんやぞ!!!生物ならよぉ!痛がれよ!!!!冷静に術式発動してんじゃねぇよ!!!くそがよぉ!!!

無機物か!ってくらい冷酷に冷淡な行動に苛立ちや、焦りといった感情が込み上げ溢れ出るのが止められない。

口の中に入った砂を唾液と少量の血液が混ざった液体で絡めて地面に吐き出す。
爆発に、よって吹き飛んだ地面周辺を見ると、無残な状況だった、かなりの人数が更に吹き飛ばされたのが分かる。

人のパーツが転がっている、それだけじゃない、肉が爆ぜて灼ける臭いがする。

よく見ると吹き飛んだ腕には、新人かどうかを直ぐに見分ける為のスカーフが巻かれている、ころす!!!ぜってぇころす!!ぜったいにぶちころしてやる!!!てぇめぇだけはかくじつにころす!!吹き飛んだのは非戦闘員だぞ!それだけじゃない!それだけじゃないんだぞ!!!そいつらはまだ死ぬ覚悟が備わっていない新兵どもだぞ!ごらぁ!!!

怒りに任せて、飛び掛かりたい、だが、その衝動を抑える。感情のまま行動して勝てる相手じゃない。落ち着け。冷静になれ。
医療班である私が出来ることを思い出せ、役割を心に刻め!相手の戦力を削ぐことだろ?特攻して無様に死体を野に晒すの役割じゃないだろ?今、死ぬわけにはいかないの!

冷静になろうとしても、冷静になることができず、余りにもな不条理に感情が溢れ出る。

厄介なのが、思考なんていらない、魔力さえ通せば発動する術式が刻まれた、あの杖!
くそがよぉ!どこからそんな厄介な依り代見つけてくるんだよ!低脳なサルがよぉ!!!それさえなければ、なければ!こんな、こんな大惨事が発生しなかったのに!!!
許せない、許すことができない!細切れになるまで刻み続けたい!!!!

怒りの矛先をぶつけたい一心で、あの杖を無力化する!!あの手の猿は、魔力内蔵特化型の可能性が高い!無尽蔵に魔法をぶちまける歩く砲台タイプ!
依り代さえ、どうにかすれば、あの手のタイプは楽に沈黙させることが出来る。
なら、やる事は一つ!得物を持てないようにするか魔力を発動させないようにす、、るのがって!!

なに、あいつ!?どうなってるのよ!?間髪入れずに、もう一発!?
爆裂術式を発動させようとしてんのよ!ふざけるんじゃないわよ!内蔵してある魔力量、おかしくない!?

ギリっと奥歯を噛み締めると同時に瞬間的に、筋力増強を発動させ、腰にある毒入りナイフを取り出し、相手の首に狙いを定め、全力で殺意を込めて投げる!!!
そんなほいほい、投げて、ナイフの残量を考えなくてもいいのかって?まだ大丈夫!複数本、持ってきている!あと二つだけしかないけど、っね!!

さされぇえええええええぇぇぇぇぇええええええええええええええええええっぇ

空を裂く音と共に投げ出される高速ナイフは、敵の首に向かって真っすぐ飛んでいく。
どんな獣であろうと!首に刺されば多少は!じか、、ん、、を、って、ああもう!!くそったれがぁ!!!!

全力で投げたナイフ、確実に、相手の首にHITしたのだが、相手の毛皮が硬いのかナイフが刺さることは無かった。

砲台タイプの攻撃特化タイプだと思っていたのに!難なく刺さると思っていたのに!ああいうタイプで、毛が硬質タイプなんて初めてじゃないのぉ!?

術式の依り代である杖の先端が更に輝き始め、先ほどよりも、より濃く密度の高い魔力が収束しているのを感じる。
先ほどよりも、より強い威力の爆撃をこんな、こんな、短時間でホイホイ発動させるんじゃないわよ!!!

相手の目線で、爆撃を起こす着弾点を割り出す!発動まで時間は、まだ猶予はある!着弾点を予測して衝撃に備えればまだ、たたかぇ。。。うそでしょぉ、、、

目線の先から割り出された着弾点には、隠蔽部隊の生き残りと思われる人たちが横たわっており、ここからでも、わずかに胸が呼吸で浮き沈みしているのが見える。

それ座ち、かすかに息のある人たちが居るという事!そして、それらに確実に止めを刺すための魔力を高めているということになる。

アイツは!攻撃してくる相手よりも!敵の数を淡々と減らすなんて冷酷で残酷な判断を!獣ごときがもってんじゃないわよ!!!やらせるかぁぁぁぁ!!!

再度!己の肉体の負担なんて考えずに、筋肉が裂けようとも!自身の筋肉で骨が折れようとも!!限界まで強化を高め!瞬間強化術式を発動させる!!

狙いは相手の目!流石に目を潰せば止まるはず!!ナイフ残り二つを瞬時に投擲する!!!

空を裂く音と共にナイフが敵に接近するが、空を裂く音を敵が覚えてしまったのか、ナイフが通らない硬い毛が生えている、腕の部分でナイフが弾かれてしまった。

ぅ、うそでしょ、もうナイフに対しての対処法を会得したっての?私から放たれるナイフが自身の毛を貫通しないってもう学んだの!?獣風情が!?
その光景を見て、私が出来る、次の一手が無いことを瞬時に悟る

この瞬間にも、杖に魔力が集約されていくのが、空気の振動でもわかる、先ほどの一撃よりも強く空気が震えている。あれで臨界寸前?それとも先ほどのは余力を残してたの?

先ほどよりも確実に魔力を溜めてる、確実に、先ほどよりも威力をあげようとしている!?そんなの、あの子たちが虫の息のあの子たちが、、、、耐えれるわけ、、、、
手持ちの攻撃手段だと、今からだと全て射程外、止めれない、やれること、そんなの、これくらいしかないよね、我が身を…
しおりを挟む

処理中です...