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長引く戦いの裏で
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…うーん、士気が高いのか、指揮が高いのか、怪我人が居ない、ちょっとした怪我とか休憩とかで、ここ、医療班のテントで行っている。
戦いが始まって、もう三日?…えっとね、思い出しながら日付を数える、
うん、怪我をしてから、三日!三日も経つけれど未だに!決定打となる攻撃が何が有効なのか判明していない。
休憩に来る戦士達に話を聞くけれど、本当に色々と試しているみたい、火炎瓶を投げてもすぐさま、その場から離れられるし、水をかけて術式を使って全身を凍らせようとしてもすぐにその場を離れて水を払い落とされる、俊敏性が高いので捕まえないといけないが、力もあるしスタミナもあるし、難しい。
固定砲台魔力特化型は、稀に奥の手を、、、稀じゃないな半々だね、持ってることが多くて凄く厄介なのしかいなかった、解析班が敵の近くで解析・分析などの行為は出来ない。
理由は簡単、危険性が高すぎるから、何故なら、過去の経験則で非戦闘員を見かけたらここぞとばかりに、奥の手を披露してくる外道もいる。必殺の一撃が最も効果的で効率的で一番最悪なタイミングで使ってくる奴が過去にはいた。
それのせいで非戦闘員が狙われない様にどのようにして、相手の観察、分析、解析を行うのかが議題にあがって解決策を模索した結果、遠見の術がより改良されたんだったかな?
一部の人は偶々、現場の人数が増えたから危機感を感じて使ったのではないかという説を唱える人もいれば、あいつらを遠距離で動かしていて、状況判断をしっかりとしていて、確実に決めてくる説を提唱する人もいる。
なので、魔力特化型は本当にタフなのが多いので、長期戦を覚悟して、色々と物資も豊富に持ってきてくれるし、普段なら、医療班のテントには騎士部隊が居ないけれど、今回は敵が敵なので、護衛目的で騎士の方達が逗留してくれている。お陰様で非常に安心して医療行為が出来るので、その影響もあって現場がピリピリしていない。
ここで、ちょっと小話。最前線の街の戦闘部隊について説明だよ!
最前線の街では古くから戦士達の部隊が大きく三つに分けられていて、最初に分けられた組み合わせが今も名称は続いているけれど、中身は大きく変化したの。
①各国の貴族や王族等のお偉いさん達が作った精鋭である騎士達の部隊
②農民や、農村で育ち、戦いとは無縁だったけれど、徴兵によって参加させらている人達や、戦いで戦果を上げて成り上がりを目的とした、戦士、または衛兵が集まってできた部隊。
③術式等の広域殲滅を目的とした殲滅部隊
7年ほど前までだったかな?枠組みなんて関係なくなってきていて、各々が好きな部隊に所属して、連携なんて無かった時代があったの。
初期の結成時、大昔はこのように三部隊に分かれていたんだけど、派閥争いなんかもあったらしいよ、だけどね、今では先ほど述べたように7年ほど前は各々好き放題しちゃっていて、部隊の中身が、もうしっちゃかめっちゃかでごっちゃごちゃだったの。
それを!姫様が綺麗に役割と目的をわけてくれたのよ、その方が運用方法が楽になるし、部隊同士の統率が取りやすいからだって。
それから姫様が元々の呼称をベースに新しく役割と枠組みを作ったの。
①の騎士部隊は、
主に護衛、一番前で戦うのではなく、私達の様な部隊を守ったり、戦士部隊を戦場に連れていくために戦士部隊の体力温存を目的とした護衛を行ったりしている。
当然、騎士だから戦うことは出来るけれど、戦士部隊に比べて個の力は弱く、連携を主として攻撃するので、学生上がりのまだまだ未熟な部隊として構成されることが多く、現在はティーチャーが学生の指導を担当したり、隊の指揮を取ったりしている、前々はベテランさんがしていたのをティーチャーが後釜として勤めている。
②の戦士部隊は、
主に単独撃破を目的とした戦闘特化部隊、騎士からこちらに繰り上げられるとお給金も跳ね上がるので、歴戦の猛者たちは基本的にこちら所属になる。
姫様が仰るには、単独で豪傑無双が最終目標らしい、現在の統率者は不在で一番強くて長生きしているのがベテランさん、っていうか、この部隊を統率出来るのは姫様くらいじゃないかな?ん~全部隊、姫様の号令が出たら奮起するから、姫様直属の部隊!ってのは無いかなー。姫様だったら全ての部隊を自由に扱っても誰も文句言わないと思う。
③の殲滅部隊は、
戦士部隊、騎士部隊に向かって走ってきて、衝突するような敵を遠距離から削ったりする部隊。
主に術式を使った攻撃がメインかな、弓を使う人もいるけれど、遠距離の弓は決定打にかけるから弓で戦う人の多くは戦士部隊や、騎士部隊にいる。でも、道具を組み合わせて放たれる弓の攻撃は非常に有効なので、いないわけではない。でも、数は少ない、長距離で確実に弓矢を狙った場所にタイミング完璧に放てる名手は数がいない。
例えば、弓先に起爆譜を大量に魔石と一緒にくっつけて放ち、着弾と同時に広域爆撃なんてことも出来るので、要は使い道って姫様が言ってたね。
っとまぁ、こんな感じでみんなが連携獲れてしっかりと戦線を維持しているわけで、人型が出ればそれはもう、総動員で一致団結して応戦する。最前線の街でいがみあったりなんて無い、過去に会った派閥争いなんて無い、無くなった理由も至極当然、人通しで争っていたら生き残れないもの。
現に過去にあった派閥なんて人型に蹴散らされてそれどころじゃなくなってって歴史書に書いてある。
そして、現在の医療テントの中どうなっているのかと言うと!ちょっと、やる事が無い。
だから~医療班の皆と談笑しあったりするレベルで暇だったの、まぁそれのおかげで、なかなか聞けない色んな質問の応答をしてたりする。っていうか、周りの皆も暇そうにしている。
普段だとね、警戒するために見張り班とか、掃除班とか、魔力担当班とか、各々が仕事でいっぱいいっぱいなんだけど!今回は護衛もいるし、街からの非戦闘員の商店で働いている人達が応援に駆けつけてくれているから、仕事がない!
普段はお店で働いている方達も警報が鳴っている間は基本的に非難しないといけないので、こうも長引くと手持無沙汰になる方が多い。
お店の食べ物を腐らせない様に飲食店の人は炊き出しとかに参加してくれたりする、畜産の方達は平常通りだったりする、畜産がある場所は街から少し距離があるので、基本的にそこまで敵が行くことは無い、今までも城壁を突破されたことが無いので、畜産の人は警報が鳴っていたら普段よりも注意するくらい。
なので、街中が一丸となって戦線を維持するから、この時ばかりは人手が足りる。
掃除班とか、魔力担当班とかの専門外の誰でもできる仕事が奪われてしまっている。
認識阻害とか、回復術式を展開している陣とかに魔力を通すのが魔力担当班なんだけど、魔力を流すだけだから、街にいる非戦闘員でも出来る仕事なので、率先して手伝ってもらっている。
街の皆ともこんなにゆったりとお話したことが無いから、凄く楽しい。こんな緊急事態中なんだけど、申し訳ないけれど、楽しい。
なんだろう?凄く素で居られている気がする、きっと、全身包帯だらけで男性か女性かわからない恰好しているからなのかも?
外からの視線を気にしなくていいって、こんなに気持ちが穏やかになるものなんて知らなかったなぁ
・・・ん?でも姫様と一緒に遊びに行く時もこんな気持ちになるときあるけれど、姫様と一緒にいるときは基本的にテンション上がってるから穏やかじゃないかな?
まったりゆったりと過ごしていると、テントの入口を勢いよく開かれる周りが急患!?かと緊張するが、そんな感じではなさそうだった。
勢いよく入ってきた女性には見覚えがある、何処だったかな?
あの子は、確か、新人達のグループにいてた、はず、ぁ、そうだ、女将のお店で酔いつぶれた新人二人組じゃないの、脇に抱えて運んだ片割れの、三つ編みちゃんだ。
今日は三つ編みしていないから頭の中で=に繋がらなかった、最初に覚えた印象って大事。
「ぁ、あの、こちらに、こちらにこんな感じの見た目の方はいらっしゃっていませんか?」
探している人の似顔絵を医療班にいる人達に見せて尋ねている、あんまり、場を乱されるのは良くないので対応しよう
「もし、そこの貴女」トントンっと肩を叩くと、こちらに振り返りと涙目だった、そして、私の姿を見た瞬間に動きが止まる、ちょっと怯えているような?っは!?
…もしかして、私って新人さんから怖い人って思われてるのかな?…それはショックだなぁ、ちょっと泣きそうになる。あんなにやさしく接してあげてるのに。
「ぉ、驚いて、もも、申し訳ありません、その、見た目が凄くて」見た目?…ぁ、そうか医療班のテントに全身包帯が居て、話しかけてくるなんて想定してないよね。
コホンっと咳ばらいをして
「そちらの紙を見せていただいてもよろしくて?」紙を見せてもらうと見覚えがある、絵が上手だね…記憶を頼りにひねり出すと、新人の中で会議の話題になった根性のある子に似てるね。もしかして、その子かな?
試しに特徴を伝えると「ぁ、はい!そ、その人です!」どうやら当たりみたい、こんな非常時に探しているなんて、友情なのか、訳ありなのか?
どうしようかな?事情か何か聞いてあげたいけれど、どうしたものかと悩んでいると
「大丈夫ですよ、長い事、休憩とっていらっしゃらないじゃないですか、休憩に出ても、問題ないですよ」
隊員が私の迷いを察してくれて後押ししてくれる。
そうね、折角の新人が勇気を振り絞って非常事態真っ只中の最中に人を探しているのだ、助けてあげてもいいよね。
「それでは、休憩の程、頂きますわ、何かあれば人伝にお願いしますわね」ヒラヒラと手を振ると隊員が可愛く声をそろえて、はーいっと返事を返してくれる。
切磋詰まって、緊迫した状態でなければ皆も愛想のいい器量よしの淑女ばかり、戦場モードになると全員ピリピリして怖くなる。…私も含め…
二人で仲良くテントを出る、テントの中で話を聞くのは良くない、そんな気がする内容だと察することが出来たので、テントの外で話を聞くことに
話を聞くついでに、三つ編みが綺麗だった彼女の髪はあの時と比べて焼けたのか、チリチリと捻れている。手入れをする余裕もなく、探していたのかな?
テントの外で彼女を椅子に座らせ、身だしなみを整えるセットが入っている乙女ポーチから櫛等を取り出し、彼女の髪の毛を整えてあげながら話を聞いてあげることに。
椅子に座っている彼女は、そんな、大丈夫です。っと恐縮していたけれど、いいからいいからと押し切って、手入れをしていく、女の子なんだから綺麗に出来るタイミングがあれば綺麗にしてあげないとね。
話を聞くと、予想通り。彼女の配属先である隠蔽部隊に、探している女性と一緒に働いていたのだけれど、急な襲撃で部隊が吹き飛んでしまった。
その爆発がある直前に、探し人の彼女は何かを察知したのか、爆発の衝撃を庇う様に三つ編みの彼女を爆発から守ろうと身を前に差し出した。
そして、大きな光と、音と共に両者ともに吹き飛ばされ、気が付いたら泥の中にいて、朦朧とする意識の中、庇ってくれた友人を探したのだけれど、視界の中に見当たらず、探そうにも力が入らず、声を出そうにも恐怖で声が出なかった、視界の端にずっと、あの化物と相対する一人の戦士様が居るのだけがわかりましたの、あの戦士様がいらっしゃらなかったら、きっと私の命は無かった、後でその戦士様にもお礼を申し上げたい。
その戦士様の事はきっと私だと思う、っていうか私以外、居なかったから確定でいいと思う
…ここで名乗るのは、恩着せがましいから、止めとこう、皆を助けたい一心だったから、君一人を助けたいってわけでもなかったし、いつか気が付いたときに声をかけて貰えたらいいかな?
要約すると、吹き飛んでしまった友人の安否の確認って事だよね?なら一緒に探してあげよう、私が一緒じゃないと一般人立ち入り禁止の場所も入れるからね。集中治療室とかね。
うん、私自身も集中治療室とかの状態を把握しておきたいし、一度、街に戻った方がいいタイミングだし、一緒に行こう。
彼女の髪も綺麗になって、初めて見た時の様に綺麗な三つ編みにしてあげる。
はいっと手鏡を渡してあげるとポロポロと涙を流しながら感謝の言葉を述べている。感情が表に出やすい子はいいなぁ、社交界とかで擦れていないから。
手を差し伸べて椅子から立たせてあげる、この子自身も結構ボロボロで傷だらけだ。爆心地にいたのに、これだけですんでいるのはきっと、庇ってくれた友人のおかげだろう。
そして、その友人は直撃を受けたのだ、内心、生きていないのじゃないかって彼女も思っている、だから、情緒も不安定になるというものだ。ポンポンと頭を撫でてあげるとさらに泣き出したので胸の中で泣かせてあげることに。
こうしていると何となくだけど感情が伝わってくる、怖くて、悲しくて、友を心配して、不安で寂しくて、でも、殆どの感情は友達を思っての感情だ。
彼女の抑えきれない心の高ぶりが落ち着くまで頭を撫でてあげて、泣き声も小さくなってきたので、ハンカチで目元を拭ってあげ、手を握って転移陣がある場所に連れていく。
手を握るのは、怪我をしている彼女の足幅に合わせて、ふらつく彼女を支えてあげる為に手を繋ぐのが一番支えやすいので、それ以外の他意はない。
私自身の怪我は主に火傷と、打撲と、骨にひびと、あと肋骨が折れてたかな?
それくらいですんでいるのは、姫様のおかげである、あんな高性能な戦闘服を一緒に作り上げてくれていたからであって、その性能を最大限に活かせれなかったら、考えたくない、五体満足では確実…それ程までにあの爆発の威力は恐ろしい程だった。…改めて思い出すとよく生きてたなぁ私。ぁぁダメダメ、考えたくない考えたくない。
転移陣で街の中央に飛ばしてもらうと…ぁぁそうか、そういうことか、もう、判定されているのか…
陣から少し離れた場所で泣く声が聞こえる、あの場所は戦闘時に死んだ尊き方達の遺体を安置する場所だ…助けれなかった…ギリっと奥歯を噛み締めてしまう。
あそこは確認したのと指をさすと首を振る、手が震えている、膝が笑っている。歯もカチカチと鳴らしている。握られてた手が強くなり、立っているのも辛くなったのか、腕にしがみついてくる。腰に手を当てて支えてあげないとね、どんな時だって受け入れがたい真実はある。
震えも収まり、覚悟が決まったのかコクリと頷く
遺体の安置所に彼女を連れていく、安置されている遺体の中に探し人が居るのか見ていく、遺体を見ていると医療班の皆が最後まであきらめずに頑張った痕跡が、遺体から察することが出来る。飛び散った肉片をしっかりとかき集め、出来る限り繋げてあげていた。
顔だってそうだ、爆発でぐちゃぐちゃになってしまった者もいるのに、見れる程度には綺麗に整形されている、これ程の熱意と愛情と死者に対して深い敬意を示すのはきっと、No2だ、彼女くらいしかここまでの熱意をもってやろうとは思わないだろう。
全員を見て回ると、探し人が見つからない、ひと先ずは安心といったところだろう、遺体の近くで絶望し涙を流し、この惨状を見て胃の中の全てを吐き出している二人組がいる、見覚えがある、前の会議でやらかした新人の二人組だ、自分たちが起こしてしまった些細な出来事がバタフライエフェクトとなって、今回の事件に繋がってしまったと普通の人なら考えるだろう、だからこそ、今起きている現実を目のあたりにして人として成長しなさい。
…隠蔽部隊の隊長も、同じように反省させないとね、迂闊すぎる、露見した場所を間髪入れず使うなんて襲ってくれといっているようなものだよ。
吐いている二人組に、支給されている鞄の中にあるフローラルな香りのするうがい薬を渡してあげる、今にも精神が崩壊しそうなほど追いつめられた顔をしていた。
「男ならしっかりと現実を受け止めて立ち上がりなさい、貴方達が起こした出来事の先の事です、自暴自棄にならず、貴方達が出来ることで彼らに償いなさい」
その言葉を聞いた瞬間に二人組は更に激しく泣き出した、聞こえてくる声は、
学校では、楽しく遊んでいたんだ!とか、ついこの間、一緒に遊ぶ約束をしたんだ!明日の事を、わらい、あいながら話してたんだ!、そんな日常の事を吐露する。
「そうだよ、いきなり死ぬ、それがこの街だ、誰だって例外じゃない」
この一言で二人は更に胃の中を吐き出し咽び泣いた。
「ここから立ち上がってこれたら君たちは強き戦士になれるよ。お姉さんが保証してあげる。今は泣きなさい、吐き出しなさい、そして、いつか彼らの無念を晴らしてあげれるくらい強くなりなさい。」
二人組に別れを告げ、三つ編みの彼女もまた惨状に眩暈がしているようで、目が、瞳孔が、落ち着かないでいる。
そうね、誰だってそう、知り合いの死は、深く関わっていない人でも、堪えるもの、彼女もまた新人、恐らく、ここに並んでいる人達の殆どが顔見知りだろう。
当然、私だって知っている顔が並んでいる、隠蔽部隊で働いていた数名、彼女らも共に連れていかれたのね、安静なる永久の安らぎを、死者には安寧を。
祈りを捧げ、三つ編みの彼女を連れて離れていく。
目的の探し人が見当たらなかったので、次に一番可能性があるとすれば、未だ治療中であるという事、医療班の集中医療室にいる可能性がある。
もしくは、跡形もなく…あの爆発だ、その可能性だってある。
少し離れた場所まで歩くと、彼女が歩くのも辛そうにしているので近くのベンチに座らせてあげる、座っていても顔が真っ青で辛そうにしているので、ベンチで横にならせてあげる、固いベンチに寝かすのもちょっと配慮が欠けるので私の太腿で良かったら使わせてあげようと、彼女の頭を太腿の上に乗せ頭を撫でてあげる
頭を撫でてあげると先ほどの惨状を思い出したのか、またスンスンと鼻を鳴らしている、泣きなさい、死を悼むことは当然だもの、私だって、泣けるのなら泣きたいよ。でもね、立場的にも人前で泣くわけにはいかないからね。
彼女がまた、落ち着きを取り戻すまで付き添ってあげる。人の心のケアは大事。
少し落ち着いたのか頬を赤らめながら何度も何度もみっともないところ見せてしまい申し訳ないですぅっと謝るが気にすることは無い、今回の事件は慣れている人でもけっこうくるものがある、現に今回の作戦に参加している人達の憤りが凄い、私でもあそこまで熱を持てないくらいに…持ってたかもしれないけれど、落ち着いちゃったかな?
次の目的地に行こうとベンチから立ち上がり、気丈に振舞おうとする彼女の足は、まだ、ふらついている、すっと腕を組みしっかりと立たせてあげる、この状態でもし、集中医療の治療中で人に見せられないような状態だったら、彼女の心は
耐えられるのだろうか?
お酒に負けてしまう様な経験の浅い、まだまだ若い子にこんな辛い現実がどんどんと襲い掛かってくる悲しくて辛い出来事に心もまだ未熟な覚悟の決まっていない彼女に、次に待っている辛い現実に耐えられるのだろうか?
でも、こんな状態で探し人が見つからない方が、嫌な想像ばかり掻き立てられて鬱になってしまいかねない、それであれば、先の事を考えてあげるのであれば、次に進ませるのが良いと思う、それに、誰かと一緒に知ることが出来たらどんな結末だろうと痛みは分かち合える。連れて行こう集中治療室へ
戦いが始まって、もう三日?…えっとね、思い出しながら日付を数える、
うん、怪我をしてから、三日!三日も経つけれど未だに!決定打となる攻撃が何が有効なのか判明していない。
休憩に来る戦士達に話を聞くけれど、本当に色々と試しているみたい、火炎瓶を投げてもすぐさま、その場から離れられるし、水をかけて術式を使って全身を凍らせようとしてもすぐにその場を離れて水を払い落とされる、俊敏性が高いので捕まえないといけないが、力もあるしスタミナもあるし、難しい。
固定砲台魔力特化型は、稀に奥の手を、、、稀じゃないな半々だね、持ってることが多くて凄く厄介なのしかいなかった、解析班が敵の近くで解析・分析などの行為は出来ない。
理由は簡単、危険性が高すぎるから、何故なら、過去の経験則で非戦闘員を見かけたらここぞとばかりに、奥の手を披露してくる外道もいる。必殺の一撃が最も効果的で効率的で一番最悪なタイミングで使ってくる奴が過去にはいた。
それのせいで非戦闘員が狙われない様にどのようにして、相手の観察、分析、解析を行うのかが議題にあがって解決策を模索した結果、遠見の術がより改良されたんだったかな?
一部の人は偶々、現場の人数が増えたから危機感を感じて使ったのではないかという説を唱える人もいれば、あいつらを遠距離で動かしていて、状況判断をしっかりとしていて、確実に決めてくる説を提唱する人もいる。
なので、魔力特化型は本当にタフなのが多いので、長期戦を覚悟して、色々と物資も豊富に持ってきてくれるし、普段なら、医療班のテントには騎士部隊が居ないけれど、今回は敵が敵なので、護衛目的で騎士の方達が逗留してくれている。お陰様で非常に安心して医療行為が出来るので、その影響もあって現場がピリピリしていない。
ここで、ちょっと小話。最前線の街の戦闘部隊について説明だよ!
最前線の街では古くから戦士達の部隊が大きく三つに分けられていて、最初に分けられた組み合わせが今も名称は続いているけれど、中身は大きく変化したの。
①各国の貴族や王族等のお偉いさん達が作った精鋭である騎士達の部隊
②農民や、農村で育ち、戦いとは無縁だったけれど、徴兵によって参加させらている人達や、戦いで戦果を上げて成り上がりを目的とした、戦士、または衛兵が集まってできた部隊。
③術式等の広域殲滅を目的とした殲滅部隊
7年ほど前までだったかな?枠組みなんて関係なくなってきていて、各々が好きな部隊に所属して、連携なんて無かった時代があったの。
初期の結成時、大昔はこのように三部隊に分かれていたんだけど、派閥争いなんかもあったらしいよ、だけどね、今では先ほど述べたように7年ほど前は各々好き放題しちゃっていて、部隊の中身が、もうしっちゃかめっちゃかでごっちゃごちゃだったの。
それを!姫様が綺麗に役割と目的をわけてくれたのよ、その方が運用方法が楽になるし、部隊同士の統率が取りやすいからだって。
それから姫様が元々の呼称をベースに新しく役割と枠組みを作ったの。
①の騎士部隊は、
主に護衛、一番前で戦うのではなく、私達の様な部隊を守ったり、戦士部隊を戦場に連れていくために戦士部隊の体力温存を目的とした護衛を行ったりしている。
当然、騎士だから戦うことは出来るけれど、戦士部隊に比べて個の力は弱く、連携を主として攻撃するので、学生上がりのまだまだ未熟な部隊として構成されることが多く、現在はティーチャーが学生の指導を担当したり、隊の指揮を取ったりしている、前々はベテランさんがしていたのをティーチャーが後釜として勤めている。
②の戦士部隊は、
主に単独撃破を目的とした戦闘特化部隊、騎士からこちらに繰り上げられるとお給金も跳ね上がるので、歴戦の猛者たちは基本的にこちら所属になる。
姫様が仰るには、単独で豪傑無双が最終目標らしい、現在の統率者は不在で一番強くて長生きしているのがベテランさん、っていうか、この部隊を統率出来るのは姫様くらいじゃないかな?ん~全部隊、姫様の号令が出たら奮起するから、姫様直属の部隊!ってのは無いかなー。姫様だったら全ての部隊を自由に扱っても誰も文句言わないと思う。
③の殲滅部隊は、
戦士部隊、騎士部隊に向かって走ってきて、衝突するような敵を遠距離から削ったりする部隊。
主に術式を使った攻撃がメインかな、弓を使う人もいるけれど、遠距離の弓は決定打にかけるから弓で戦う人の多くは戦士部隊や、騎士部隊にいる。でも、道具を組み合わせて放たれる弓の攻撃は非常に有効なので、いないわけではない。でも、数は少ない、長距離で確実に弓矢を狙った場所にタイミング完璧に放てる名手は数がいない。
例えば、弓先に起爆譜を大量に魔石と一緒にくっつけて放ち、着弾と同時に広域爆撃なんてことも出来るので、要は使い道って姫様が言ってたね。
っとまぁ、こんな感じでみんなが連携獲れてしっかりと戦線を維持しているわけで、人型が出ればそれはもう、総動員で一致団結して応戦する。最前線の街でいがみあったりなんて無い、過去に会った派閥争いなんて無い、無くなった理由も至極当然、人通しで争っていたら生き残れないもの。
現に過去にあった派閥なんて人型に蹴散らされてそれどころじゃなくなってって歴史書に書いてある。
そして、現在の医療テントの中どうなっているのかと言うと!ちょっと、やる事が無い。
だから~医療班の皆と談笑しあったりするレベルで暇だったの、まぁそれのおかげで、なかなか聞けない色んな質問の応答をしてたりする。っていうか、周りの皆も暇そうにしている。
普段だとね、警戒するために見張り班とか、掃除班とか、魔力担当班とか、各々が仕事でいっぱいいっぱいなんだけど!今回は護衛もいるし、街からの非戦闘員の商店で働いている人達が応援に駆けつけてくれているから、仕事がない!
普段はお店で働いている方達も警報が鳴っている間は基本的に非難しないといけないので、こうも長引くと手持無沙汰になる方が多い。
お店の食べ物を腐らせない様に飲食店の人は炊き出しとかに参加してくれたりする、畜産の方達は平常通りだったりする、畜産がある場所は街から少し距離があるので、基本的にそこまで敵が行くことは無い、今までも城壁を突破されたことが無いので、畜産の人は警報が鳴っていたら普段よりも注意するくらい。
なので、街中が一丸となって戦線を維持するから、この時ばかりは人手が足りる。
掃除班とか、魔力担当班とかの専門外の誰でもできる仕事が奪われてしまっている。
認識阻害とか、回復術式を展開している陣とかに魔力を通すのが魔力担当班なんだけど、魔力を流すだけだから、街にいる非戦闘員でも出来る仕事なので、率先して手伝ってもらっている。
街の皆ともこんなにゆったりとお話したことが無いから、凄く楽しい。こんな緊急事態中なんだけど、申し訳ないけれど、楽しい。
なんだろう?凄く素で居られている気がする、きっと、全身包帯だらけで男性か女性かわからない恰好しているからなのかも?
外からの視線を気にしなくていいって、こんなに気持ちが穏やかになるものなんて知らなかったなぁ
・・・ん?でも姫様と一緒に遊びに行く時もこんな気持ちになるときあるけれど、姫様と一緒にいるときは基本的にテンション上がってるから穏やかじゃないかな?
まったりゆったりと過ごしていると、テントの入口を勢いよく開かれる周りが急患!?かと緊張するが、そんな感じではなさそうだった。
勢いよく入ってきた女性には見覚えがある、何処だったかな?
あの子は、確か、新人達のグループにいてた、はず、ぁ、そうだ、女将のお店で酔いつぶれた新人二人組じゃないの、脇に抱えて運んだ片割れの、三つ編みちゃんだ。
今日は三つ編みしていないから頭の中で=に繋がらなかった、最初に覚えた印象って大事。
「ぁ、あの、こちらに、こちらにこんな感じの見た目の方はいらっしゃっていませんか?」
探している人の似顔絵を医療班にいる人達に見せて尋ねている、あんまり、場を乱されるのは良くないので対応しよう
「もし、そこの貴女」トントンっと肩を叩くと、こちらに振り返りと涙目だった、そして、私の姿を見た瞬間に動きが止まる、ちょっと怯えているような?っは!?
…もしかして、私って新人さんから怖い人って思われてるのかな?…それはショックだなぁ、ちょっと泣きそうになる。あんなにやさしく接してあげてるのに。
「ぉ、驚いて、もも、申し訳ありません、その、見た目が凄くて」見た目?…ぁ、そうか医療班のテントに全身包帯が居て、話しかけてくるなんて想定してないよね。
コホンっと咳ばらいをして
「そちらの紙を見せていただいてもよろしくて?」紙を見せてもらうと見覚えがある、絵が上手だね…記憶を頼りにひねり出すと、新人の中で会議の話題になった根性のある子に似てるね。もしかして、その子かな?
試しに特徴を伝えると「ぁ、はい!そ、その人です!」どうやら当たりみたい、こんな非常時に探しているなんて、友情なのか、訳ありなのか?
どうしようかな?事情か何か聞いてあげたいけれど、どうしたものかと悩んでいると
「大丈夫ですよ、長い事、休憩とっていらっしゃらないじゃないですか、休憩に出ても、問題ないですよ」
隊員が私の迷いを察してくれて後押ししてくれる。
そうね、折角の新人が勇気を振り絞って非常事態真っ只中の最中に人を探しているのだ、助けてあげてもいいよね。
「それでは、休憩の程、頂きますわ、何かあれば人伝にお願いしますわね」ヒラヒラと手を振ると隊員が可愛く声をそろえて、はーいっと返事を返してくれる。
切磋詰まって、緊迫した状態でなければ皆も愛想のいい器量よしの淑女ばかり、戦場モードになると全員ピリピリして怖くなる。…私も含め…
二人で仲良くテントを出る、テントの中で話を聞くのは良くない、そんな気がする内容だと察することが出来たので、テントの外で話を聞くことに
話を聞くついでに、三つ編みが綺麗だった彼女の髪はあの時と比べて焼けたのか、チリチリと捻れている。手入れをする余裕もなく、探していたのかな?
テントの外で彼女を椅子に座らせ、身だしなみを整えるセットが入っている乙女ポーチから櫛等を取り出し、彼女の髪の毛を整えてあげながら話を聞いてあげることに。
椅子に座っている彼女は、そんな、大丈夫です。っと恐縮していたけれど、いいからいいからと押し切って、手入れをしていく、女の子なんだから綺麗に出来るタイミングがあれば綺麗にしてあげないとね。
話を聞くと、予想通り。彼女の配属先である隠蔽部隊に、探している女性と一緒に働いていたのだけれど、急な襲撃で部隊が吹き飛んでしまった。
その爆発がある直前に、探し人の彼女は何かを察知したのか、爆発の衝撃を庇う様に三つ編みの彼女を爆発から守ろうと身を前に差し出した。
そして、大きな光と、音と共に両者ともに吹き飛ばされ、気が付いたら泥の中にいて、朦朧とする意識の中、庇ってくれた友人を探したのだけれど、視界の中に見当たらず、探そうにも力が入らず、声を出そうにも恐怖で声が出なかった、視界の端にずっと、あの化物と相対する一人の戦士様が居るのだけがわかりましたの、あの戦士様がいらっしゃらなかったら、きっと私の命は無かった、後でその戦士様にもお礼を申し上げたい。
その戦士様の事はきっと私だと思う、っていうか私以外、居なかったから確定でいいと思う
…ここで名乗るのは、恩着せがましいから、止めとこう、皆を助けたい一心だったから、君一人を助けたいってわけでもなかったし、いつか気が付いたときに声をかけて貰えたらいいかな?
要約すると、吹き飛んでしまった友人の安否の確認って事だよね?なら一緒に探してあげよう、私が一緒じゃないと一般人立ち入り禁止の場所も入れるからね。集中治療室とかね。
うん、私自身も集中治療室とかの状態を把握しておきたいし、一度、街に戻った方がいいタイミングだし、一緒に行こう。
彼女の髪も綺麗になって、初めて見た時の様に綺麗な三つ編みにしてあげる。
はいっと手鏡を渡してあげるとポロポロと涙を流しながら感謝の言葉を述べている。感情が表に出やすい子はいいなぁ、社交界とかで擦れていないから。
手を差し伸べて椅子から立たせてあげる、この子自身も結構ボロボロで傷だらけだ。爆心地にいたのに、これだけですんでいるのはきっと、庇ってくれた友人のおかげだろう。
そして、その友人は直撃を受けたのだ、内心、生きていないのじゃないかって彼女も思っている、だから、情緒も不安定になるというものだ。ポンポンと頭を撫でてあげるとさらに泣き出したので胸の中で泣かせてあげることに。
こうしていると何となくだけど感情が伝わってくる、怖くて、悲しくて、友を心配して、不安で寂しくて、でも、殆どの感情は友達を思っての感情だ。
彼女の抑えきれない心の高ぶりが落ち着くまで頭を撫でてあげて、泣き声も小さくなってきたので、ハンカチで目元を拭ってあげ、手を握って転移陣がある場所に連れていく。
手を握るのは、怪我をしている彼女の足幅に合わせて、ふらつく彼女を支えてあげる為に手を繋ぐのが一番支えやすいので、それ以外の他意はない。
私自身の怪我は主に火傷と、打撲と、骨にひびと、あと肋骨が折れてたかな?
それくらいですんでいるのは、姫様のおかげである、あんな高性能な戦闘服を一緒に作り上げてくれていたからであって、その性能を最大限に活かせれなかったら、考えたくない、五体満足では確実…それ程までにあの爆発の威力は恐ろしい程だった。…改めて思い出すとよく生きてたなぁ私。ぁぁダメダメ、考えたくない考えたくない。
転移陣で街の中央に飛ばしてもらうと…ぁぁそうか、そういうことか、もう、判定されているのか…
陣から少し離れた場所で泣く声が聞こえる、あの場所は戦闘時に死んだ尊き方達の遺体を安置する場所だ…助けれなかった…ギリっと奥歯を噛み締めてしまう。
あそこは確認したのと指をさすと首を振る、手が震えている、膝が笑っている。歯もカチカチと鳴らしている。握られてた手が強くなり、立っているのも辛くなったのか、腕にしがみついてくる。腰に手を当てて支えてあげないとね、どんな時だって受け入れがたい真実はある。
震えも収まり、覚悟が決まったのかコクリと頷く
遺体の安置所に彼女を連れていく、安置されている遺体の中に探し人が居るのか見ていく、遺体を見ていると医療班の皆が最後まであきらめずに頑張った痕跡が、遺体から察することが出来る。飛び散った肉片をしっかりとかき集め、出来る限り繋げてあげていた。
顔だってそうだ、爆発でぐちゃぐちゃになってしまった者もいるのに、見れる程度には綺麗に整形されている、これ程の熱意と愛情と死者に対して深い敬意を示すのはきっと、No2だ、彼女くらいしかここまでの熱意をもってやろうとは思わないだろう。
全員を見て回ると、探し人が見つからない、ひと先ずは安心といったところだろう、遺体の近くで絶望し涙を流し、この惨状を見て胃の中の全てを吐き出している二人組がいる、見覚えがある、前の会議でやらかした新人の二人組だ、自分たちが起こしてしまった些細な出来事がバタフライエフェクトとなって、今回の事件に繋がってしまったと普通の人なら考えるだろう、だからこそ、今起きている現実を目のあたりにして人として成長しなさい。
…隠蔽部隊の隊長も、同じように反省させないとね、迂闊すぎる、露見した場所を間髪入れず使うなんて襲ってくれといっているようなものだよ。
吐いている二人組に、支給されている鞄の中にあるフローラルな香りのするうがい薬を渡してあげる、今にも精神が崩壊しそうなほど追いつめられた顔をしていた。
「男ならしっかりと現実を受け止めて立ち上がりなさい、貴方達が起こした出来事の先の事です、自暴自棄にならず、貴方達が出来ることで彼らに償いなさい」
その言葉を聞いた瞬間に二人組は更に激しく泣き出した、聞こえてくる声は、
学校では、楽しく遊んでいたんだ!とか、ついこの間、一緒に遊ぶ約束をしたんだ!明日の事を、わらい、あいながら話してたんだ!、そんな日常の事を吐露する。
「そうだよ、いきなり死ぬ、それがこの街だ、誰だって例外じゃない」
この一言で二人は更に胃の中を吐き出し咽び泣いた。
「ここから立ち上がってこれたら君たちは強き戦士になれるよ。お姉さんが保証してあげる。今は泣きなさい、吐き出しなさい、そして、いつか彼らの無念を晴らしてあげれるくらい強くなりなさい。」
二人組に別れを告げ、三つ編みの彼女もまた惨状に眩暈がしているようで、目が、瞳孔が、落ち着かないでいる。
そうね、誰だってそう、知り合いの死は、深く関わっていない人でも、堪えるもの、彼女もまた新人、恐らく、ここに並んでいる人達の殆どが顔見知りだろう。
当然、私だって知っている顔が並んでいる、隠蔽部隊で働いていた数名、彼女らも共に連れていかれたのね、安静なる永久の安らぎを、死者には安寧を。
祈りを捧げ、三つ編みの彼女を連れて離れていく。
目的の探し人が見当たらなかったので、次に一番可能性があるとすれば、未だ治療中であるという事、医療班の集中医療室にいる可能性がある。
もしくは、跡形もなく…あの爆発だ、その可能性だってある。
少し離れた場所まで歩くと、彼女が歩くのも辛そうにしているので近くのベンチに座らせてあげる、座っていても顔が真っ青で辛そうにしているので、ベンチで横にならせてあげる、固いベンチに寝かすのもちょっと配慮が欠けるので私の太腿で良かったら使わせてあげようと、彼女の頭を太腿の上に乗せ頭を撫でてあげる
頭を撫でてあげると先ほどの惨状を思い出したのか、またスンスンと鼻を鳴らしている、泣きなさい、死を悼むことは当然だもの、私だって、泣けるのなら泣きたいよ。でもね、立場的にも人前で泣くわけにはいかないからね。
彼女がまた、落ち着きを取り戻すまで付き添ってあげる。人の心のケアは大事。
少し落ち着いたのか頬を赤らめながら何度も何度もみっともないところ見せてしまい申し訳ないですぅっと謝るが気にすることは無い、今回の事件は慣れている人でもけっこうくるものがある、現に今回の作戦に参加している人達の憤りが凄い、私でもあそこまで熱を持てないくらいに…持ってたかもしれないけれど、落ち着いちゃったかな?
次の目的地に行こうとベンチから立ち上がり、気丈に振舞おうとする彼女の足は、まだ、ふらついている、すっと腕を組みしっかりと立たせてあげる、この状態でもし、集中医療の治療中で人に見せられないような状態だったら、彼女の心は
耐えられるのだろうか?
お酒に負けてしまう様な経験の浅い、まだまだ若い子にこんな辛い現実がどんどんと襲い掛かってくる悲しくて辛い出来事に心もまだ未熟な覚悟の決まっていない彼女に、次に待っている辛い現実に耐えられるのだろうか?
でも、こんな状態で探し人が見つからない方が、嫌な想像ばかり掻き立てられて鬱になってしまいかねない、それであれば、先の事を考えてあげるのであれば、次に進ませるのが良いと思う、それに、誰かと一緒に知ることが出来たらどんな結末だろうと痛みは分かち合える。連れて行こう集中治療室へ
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