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日常を送れる幸せ

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文を送ってから、三日が過ぎました。
この三日で、姫様の体調の方は万全と言っても差しさわりの無いほど回復している。

姫様が提案した色々な現場工事も8割を終えたみたいで、後は現場に姫様が居なくても大丈夫な進行具合になったので、任せても大丈夫と言っていた。
なので、現場から長期間、離れても何も問題なしっという状況。

前線で奮闘しているベテランさんにも街を離れると伝えてもらい返事をいただきました。

内容が、護衛をしたいが、今は吾輩が抜けるわけにはいかんからな、済まぬが吾輩推薦の戦乙女を手配するので、絶対に怪我無く帰ってくるのだぞっと返答を貰った。

続いてだけど、皆もそんなに気にしてないと思うけれどね、私の体調はね、文を出した次の日には、もう完全回復していた!
やっぱり、あの液体は効果が抜群で素晴らしい物!なんだと、頭では理解しているんだよね。舌が納得してない、二度と飲むんじゃねぇぞってアレを前にすると絶対に抵抗してくる。

誰が、言ったのか知らないけれど良薬は口に苦しッて言うけれど、苦いだけじゃなくてエグみが酷いし、匂いもきついのが辛い。苦いだけなら余裕だっつーの。

さて、出発するにあたっての荷物等の準備は終わったんだけど、っていうか実家に行くだけだから荷物なんて、お化粧品だけじゃないかな?ってくらい
王城の中は平民だと入りづらいので、姫様の護衛はお爺ちゃんにお願いしようと思ってるから、ドレスはもっていかなくてもいいよね?

ただね~、これがちょっと困ったのが、姫様がね、一緒について来るのならこの服を着て!って言われて渡された服があるんだけど~、着たのはいいんだけど~、可愛いすぎないこれ?私が来ても大丈夫?

姿見の全身が見える鏡を前に困惑する。鏡に映る映像が可愛い女の子女の子しているから。これは、ちょっと、過去にも似たような服を着た経験があるけれど、ウィッグなどの変装もなしで素の状態の私でこれはその、恥ずかしい…

どんな内容かって?えっとね、

白のワンピース風で、膝下まであるロングスカートで一応ね、脛ぐらいまで長さがあって、膝下はちょっと透けて見えるセクシー仕様、腰の部分にはフリルを盛大にあしらった帯がついてて、帯が太くて、ちょっと胸が強調されちゃってる感じで、全体的な雰囲気で言うと、ゆるくてふわふわな感じ。

履く靴も渡されているの、真っ白なヒールで、ヒールそのものはやや低いタイプで、靴っていうよりも、ヒールサンダルが近いのかな?この感じって、んで、足首にパチンと金具がついてて留める部分があって、足首の中央に白いリボンがついている。清楚な感じで可愛い。

さらに!それだけじゃないの!ストッキングも指定されてるの!広げる前は、真っ白なストッキングかなって思ってたんだけど!違った!
履いてみたら、なんこれ?網目?根元までしっかりと履くとがっつりと穴っていうのかな?網目が出てきて結構地肌も見えるセクスィな感じなんだけど?どこで買ってきたのこれ?

全体のバランスを鏡で見て診ると、流石に、これは、夢可愛ファッションすぎないかなぁ?まぁ、走ろうと思えば、ヒールの高さが走れるライン、だから機能的に問題ないけど、絶対に護衛させないためのチョイスでしょこれ!

もう一度、鏡の前に立って全身を隈なく見てみる…

普段の私では考えれられない姿!見慣れない姿!これはもう、知らない誰かにしかみえない!!んっぐぅ、この格好で身内に会うの恥ずかしいんだけど!ええい!小さな抵抗だぁ!

クローゼットからお気に入りの牛の革で作られた黒革ジャンバーを取り出して着る!!

ショート丈、半袖の真っ黒な革ジャン、さぁ鏡よ、鏡よ鏡さん!このコーディネートは如何ですか!?

…あわねぇ…あわねぇなこれ・・・・

ぁ、これダメだわ、上が真っ黒に下がフリフリすぎる、可愛くしたいのか、カッコよくしたいのか、なんだろうこれ?ぁ、そうだ中途半端なんだ、なんかどっちつかず、せめて靴をこっちのロングブーツだったら!いいじゃない!可愛いとクールが同居してるじゃないの!

靴って大事だよねー…ファッションは足からって誰かが記事にしていた気がするけど、納得だね。

しょうがない、靴は履き替えちゃダメだからね、上のコートを、もう少し可愛めのやつにしよう。
同じくショート丈で半袖、色は、空色に近い薄目の青で着古した感じのある、こなれた感じのデニムジャケット!胸元にあるボタンがハート模様になってて小さくCuteアピール!いいじゃん!あってる!可愛い可愛い!!

るんるんで姿見の鏡の前で後ろも前も横もチェックしていると、はっと冷静に、我に返って気が付いてしまう。


なんでより一層、可愛く仕上げちゃったんだろう…

もう少し可愛い感じを抑えめにしたいな、何かないかな?

クローゼットをガサガサと漁っていく、体型が変わったと言っても肩幅はかわってないのでこういった感じの羽織る系統の服は、前々からあるやつが使えるので捨ててない、っていうか超お気に入りばっかりだから捨てれない!!

あれや、これやと引っ張り出して鏡の前で合わせていく、これはどうかなー?それもいいよねー?あれもいいじゃん、合わせてみてよ。あ、私これ好きです着て欲しいですー。と探していく…ん?
ふと横をみると姫とメイドちゃんが一緒にクローゼットから服を引っ張り出してきて、服を選んでいた…ノックしてから部屋に入ってきて欲しいなぁ…

その後は、三人で色々と話し合った結果!!決まりました!デデン!!

二番目に選んだデニムで決定しました!!

なお、それ以外の変更は、頑なに却下されました…何か意図がある気がするけれど、まぁ、可愛いからいいかな、普段の私だと絶対に選ばないファッションだし、こういうのって嫌いじゃない寧ろ憧れていた。なんだけど、その、実際に着るとやっぱり、恥ずかしい。

たまーにだけど、休日にね、姫様に着せられてウィッグも被せられて街に買い物に一緒に行ったりはしていたけれど、その時はお化粧もして、ばっちり変装してたから、気にしてなかったけど、何処からどう見ても私って一発で解るこの格好で外に出るのは、ちょっと勇気がいる。

コンコンっとドアがノックされ姫様がどうぞーって言う、あの、ここって、私の部屋なんですけど?…主導権を奪わないでいただけますぅ?

「姫様ーお客様がいらっしゃってますよー」戦乙女の人がひょこっとドアを開けて顔を覗かせると
「って!きゃあ!団長!?すっごい可愛い!!!めちゃくちゃ似合ってます!!いいなぁ!凄い可愛い!!」
戦乙女の人が、此方を見てピンクの悲鳴を上げている。やめて見ないで恥ずかしい。普段のクールファッションイメージが崩れちゃう。

顔を真っ赤にしてじっとしていると
「お客様?誰?」姫様に覚えのない、戦乙女の人がわざわざ呼びに来る人物…ん?あれ、何か忘れて…

…あ!!思い当たる人物がいる!っていうか、呼び寄せた!戦乙女ちゃんに慌てて返事を返す。
「ごめん、それ、私のお客様かも!」
思い当たる人物、それは、私のお爺ちゃん!!お爺ちゃんが来たんじゃないかな?

「ぇ、でも、王都の紋章付きの高級車ですよ?私、車が好きなんですけど、あれすっごい高い高級車メーカーの車ですよ?平民が買える品物じゃないですよ?それに、王家の紋章付きなんて、普通はつけれませんから、王都からのお迎えじゃないんですか?」
あ、確実に、お爺ちゃんだ、そんな車で来る非常識な感じはもう間違いないよ。
それに王都から護衛がくるとしたら大型の車で来るから、違うよ。

お爺ちゃんはね、実はなんと!王都の筆頭騎士!だからね、王家の紋章をつけても怒られないの、お爺ちゃんもね、王家の紋章を見て、かっちょええじゃろ?ワシの誇りって言ってすっごいお気に入りだもの。代々守り続けてきた紋章だもの、誇りに思えるのは良い事だよね。

それにね、王都からの護衛車なんて、こっちから絶対に頼まない物、何されるかわかったものじゃないし。

姫様が、じとーっとこっちを見てくる、どうやら、姫様も到着した人物が誰なのか直ぐにわかっちゃったみたいで、こっちをジト目でずっと見てくる。
ごめんってー、釘を刺される前に文書いちゃったんだもん。

「まぁまぁ呼んじゃったのはね?しょうがないよね?」笑顔で誤魔化そうとするが、ジト目が変わらない、ちょっと怒ってるかも…
納得のいっていない姫様とメイドちゃんの背中を押して、車を停めて待っている人の元へと、二人を押していく、途中で「もう、呼んじゃってしまったのなら、仕方がないよね」っといいながらスタスタと歩いてくれた。良かった、機嫌を損ねると長い人だからその後の旅の間ずっとご機嫌伺いをしなくてもいいと思えると、ほっとする。

向かっている道中で、私達も荷物を持ってくるから、先に行っててっと姫様が言うので、向かっている途中の道で、別れることに。
なので、私だけが先に待っている人の元に向かうことに。まぁ、姫様もメイドちゃんも手ぶらだったものね、姫様とメイドちゃんは王城に入るからドレスは必須だもの。

向かっていくと、視界に見えてくる銀色の如何にもこれ高いっていう自己主張の激しい車の前が見える、その近くに筋肉ムキムキで、ベース色は青で、ところどころに南国の花をあしらったシャツにハーフパンツでサンダル、首の根元には、純金の太い鎖でいかついデザインのネックレス、指には純金の指輪、目元はサングラス、頭は麦わら帽子…うん、あんなど派手で悪趣味なファッションはお爺ちゃんしかいない。

その誰もが悪趣味だと思えるファッションお爺ちゃんの隣には日傘をさしているご婦人が見える、日傘+後ろ姿だから誰かわからないけれど、お爺ちゃんがラフな格好で一緒に入れる人っていうと、お祖母ちゃんかな?

それはそうと、久しぶりに会うお爺ちゃん!大好きなお爺ちゃんに会えるのは嬉しい!!
ついつい、運ぶ足も速くなってしまう。
「おじいちゃぁぁぁあああぁぁぁんんんぅ!!」
スカートが舞い上がらない程度にヒールでもこけない程度の早さで手を振りながら駆け寄っていくと、
お爺ちゃんは一瞬、小走りで近寄ってくる人物が誰なのか、身内の私だと、わかっていないみたいで、んん?っと眉をひそめながら、サングラスをずらしてこっちを凝視している。

お爺ちゃんが悩んでいる、その間にはもう、飛びつけるくらいの距離になったのでお爺ちゃん目掛けて飛びつく!

首元に腕を回して抱き着くとようやく私だと気が付いたみたいで
「孫ちゃんか!!普段と恰好が違い過ぎてわからんかったぞ!!」
ぎゅっとお互いを抱きしめた後、お爺ちゃんは私の腰を持って、高い高いしてくれる。未だに現役の騎士だけあって筋肉が凄い、私くらいなら片手でも持ち上げれるっていっつも豪語している。

「いやー、娘ちゃんから聞いていたけど‥‥」
じーっと私の胸を凝視するお爺ちゃん…そして、視線を日傘の人に向けて

「…孫ちゃんの勝」
パーンっとお爺ちゃんのお尻が平手で叩かれている

お爺ちゃんのお尻を勢いよく叩いた日傘の人が凄いにらみをきかせながら静かな怒りを露わにしている。
「お義父様?それ以上は、わかっていますね?」声が怖いよ…

「…はい、ごめんなちゃい」
お爺ちゃんが、すっと私を下ろしながら怯えている、お爺ちゃんが怯える人はお祖母ちゃんかお母さんしかいない!それにあの声は!

日傘から顔が見える、やっぱり!!
「お母さん!」
お母さんにも、大型犬も驚きの飛びつきで抱き着く

「こら、もう、大人になったんですから、落ち着きなさい」
文句を言いながらもきゅっと抱きしめてくれるお母さんが好き。どんな姿になっても受け止めれくれると信じてる。

「今日は、いつもと真逆のコーデねー、どうしたの?何時もだったら中性的なファッションスタイルなのに」
服飾関係のお仕事をしているお母さんは普段から色んなファッションにアンテナを広げているので、私の普段からしているファッションもしっかりと把握している。

どうして、いつもと違うファッションなのか、姫様が同行するならこの服じゃないとダメっていうからっと伝えると
「…なるほど、それじゃ仕方がないね」
お母さんは、直ぐに納得がいった様子だけど、やっぱり意図がある?ぇ?もしかして、私、誰かとお見合いとかさせられない?やだよ?何の意図があるのだろうか?わからない…

「それにしても、娘ちゃんに似て育ったからめんこくなったのぅ」
お爺ちゃんがデレデレで話しかけてくる、うん、私もそう思う、子供のころはお父さん似だねーって言われてたけど、大人になるにつれてお母さんに雰囲気が似てるねーにかわったもの。

「やっぱりお父さんには、似てない?」
私ってね、お父さんと一緒にいた記憶ってあまりないから、記憶のころのお父さんと比べようがない。

「似とらんな!完全にお母さん似だぞい、それにあやつは…ん?何歳で月の裏側にいってしまったんだったかな?」
ふぅっとお母さんが溜息をつくと
「24ですよ、自慢の息子が亡くなった年齢くらい覚えておいてください。ボケるには、まだまだ早いでしょ?」
お母さんはお爺ちゃんにすっごい厳しい、お爺ちゃんもお母さんには甘いのか口答えが出来ない。

慌てながら、言葉を続けるお爺ちゃん
「そうだったそうだった、孫ちゃんはこの間、二十歳になったんじゃよね?」んー、これは追撃もあるぞぉ?
はぁっと溜息をつくお母さん
「22ですよ、孫の年齢くらい覚えておいてください、これだから貴族は、他にも沢山子供がいるからわからなくなるのでしょ?」まぁ、もう少しで23になるけどね!
軽蔑の目で見つめられるお爺ちゃんは大きな大きな体なのにとっても小さく見えてしまう。

「孫ちゃ~ん、娘ちゃんが、か弱いじぃじをいじめるんじゃよー」
お爺ちゃんが私に抱き着いて顔を胸にうずめて泣くふりをするとパパーーンっと大きな大きな音がお爺ちゃんのお尻から響き渡る
容赦のない連続平手打ちを繰り出すお母さん、思い返せばおかあさんも手が早い。そして、私も手が早い…ぁ、これ血筋だ。

余りにも痛かったのか、飛び跳ねるように離れていくお爺ちゃん
「いちちちち、しくったのぅ、薄いパンツだから皮膚に響く痛みじゃわい、びしっと決めた革の服にすればよかったわい」
お尻をさすりながら涙目になっている、こんな姿を職場の人に見せちゃったら幻滅されちゃうね。

「革のズボンは運転がしにくいから、運転しやすい楽な格好を選んだのは貴方でしょう?」
ツンっと突き放す様な返事にお爺ちゃんもそうじゃけどもぉっとしおらしくなっている。

ふと思い出したけれど、目の前にある車ってさ、戦乙女の人が言ってたけど、高いんじゃないのかな?お祖母ちゃんよく許可だしたよね?

車の方に視線を向けていると、私が見ていることに気が付いたのかお爺ちゃんが自慢してくる。
「かっちょええじゃろ?それな、最新モデル、王都で開かれた魔道車コンテスト第一位に選ばれた大貴族ご用達の超一級品じゃぞい」
バンバンっと車を叩いて自慢されても、王都の流行はよくわからないからなぁ、車のメーカーも詳しくないし。

はぁっとデカい溜息をお母さんが吐いている
「お義母様たちが全員反対しても、押し切って買いましたものね、孫ちゃんにかっちょええとこ見せたいからって、展示品を買ったのよね、昨日に」
え?昨日買ったばかりなのこれ?しかも展示品って!?職権乱用絶対したでしょ?ああいうのって直ぐに納車出来ないはずなのに!まさか、私の為に!?

「…だって、久しぶりにあうんじゃし、っていうか、こういう機会でもないと車買わせてくれんもん…」
ぁ、自分の趣味を貫く口実が欲しかっただけか、私の為に無理をしてくれたのかと一瞬おもっちゃったじゃん。

「だから、お義母様たちが全員止めたんですよ、つい、一か月前にも最新モデル買いましたよね?まだろくに乗っていませんよね?これだから貴族はお金の使い方が荒いし狂ってる」
お爺ちゃんがネチネチと説教されている、聞きたくないのか明後日の方向をずっと見ている、きっとお婆ちゃんたちからもガッツリと怒られたけど反省してないから、お母さんが怒ってるのだと思う。

お爺ちゃんは昔から我を通す人だから、周りに迷惑をかけまくる人なんだよね、良いご年齢なんだから、落ち着いて欲しいってのがお婆ちゃん全員からの意見

「まぁまぁ、お母様、貴族がお金を使う事で下の人達にもお金が回っていくのですから、持ってる人が溜め込むのは良くないことですから」
いつの間にか姫様が来ていてお母さんを宥めている

「あら~姫ちゃんは、あっち側なんだー、もう姫ちゃんの好きなパスタ作ってあげないわよ」お母さんの圧が真っすぐに姫様に向けられると
「いえ、節制は美徳です、はい、筆頭騎士様!無駄遣いはよくありません!きちんと家計を考えてください。」すぐに寝返った、姫様のこういう反応速度が人気なんだろうね。

そんな二人のやり取りを見ていたら、お爺ちゃんがキョロキョロと辺りを見回している、他にも誰か来るのかと探しているのかな?
「もう誰もこないよ?」メンバーは私と姫様とメイドちゃんと護衛の三名。

「ん?友達も一緒にいくからって文に書いておらんかったか?」
あれ?友達=姫様って感じにしてたんだけど、他にも思い当たる人って誰かいたかな?

「いるじゃん、目の前に」
姫様を指さすと、お爺ちゃんは頭を抱え溜息をついている

「姫様を誘うならそう書かないとダメじゃろ!姫様は上司だぞ?友達っていうから、てっきり坊かと思っていたのに」
ん?お爺ちゃんからして坊ちゃんっていう表現だと、あれかな?ベテランさんのことかな?面識あるもんね、こういうのは確認が大事。

「えっと、先輩のこと?」
お爺ちゃんの驚いた表情で、どうやら違うのだろうと伝わってくるのだけど、じゃぁ、誰の事だろう?
お爺ちゃんがこれはどうしたものかと、何かに悩んでいる?

お爺ちゃんが動かないで腕を組んで悩んでいると姫様が
「お孫ちゃんね、あの人の出自しらないよ」っと耳打ちしていた、お爺ちゃんに耳打ちするのはいいんだけど、お爺ちゃんちょっと耳が遠いから気持ち大きな声を出さないといけないから、ガッツリ聞こえてるんだけど?出自?誰の?

納得がいったみたいでお爺ちゃんが腕を組むのをやめて
「騎士として言わせてもらうが孫ちゃんよ、街の代表を友達と表記するのはよしなさい、仲が良くても」
お爺ちゃんがお説教を始めようとしていたら言葉を遮る様に姫様が
「貴族の方達ってね、全員勘違いしていますけれど、しっかりと訂正させていただきますね。私が最前線の街の代表じゃないですよ?ここは、代表が居ない特殊な自治区です。誰か独りに責任を負わせず、誰か独りの独裁を許さずが、鉄則で、基本的に民主主義です、何事も、投票で行動を起こしていますよ。それに!お孫ちゃんと私はマブのダチ!なんで、そこんとこよろしくぅ!!」びしっとキメ台詞と共にポーズをとっている。

しっかりと弁明しているけれど、内容がちょっと納得できない部分がある。
うーん、確かにちゃんと会議して議題を出し合って話し合いや投票で決めているけれど、実際問題、決定する権限はぶっちゃけると、姫様が握っているのでお爺ちゃんが姫様が代表だというのはあながち間違いではないので否定できないし、私からは何も言えない。

「っぐむぅ、そうじゃな、書類上はそうなっておるしな、姫様がそう仰るのであれば当方としては文句は言えまいて」
頭をガシガシと書いた後、車に向かってのっしのっしと歩いていく。

車の前に到着すると、お爺ちゃんは「ええい!わかった!姫様は孫ちゃんの友人として対応すればよいのじゃな!準備が出来たらいくぞ!車に乗りなさい」姫様の意図が何かしら伝わったのか腹を括ったような顔持ちで車に乗り込んでいく。

ゴロゴロと音がするので音の方を振り返ると、メイドちゃんが押し車で大量の荷物を持ってきたのでお爺ちゃんが運転する車の後ろに積んでいくけれど、入りきらないんじゃないこれ?

それを察したメイドちゃんは途中で荷物を積むのをやめ、手を振ると別の車を予め手配していたのか、かなり大きいサイズの車が走ってくる。
残りの荷物を大きいサイズの車に積んで、空いた席に戦乙女の皆さんが乗り込んでいく、どうやら、護衛は用意していたみたい。全員の準備が整ったみたいで運転席からおっけーのサインを出してくれる。メイドちゃんが運転するんだ…

お爺ちゃんの車には私と姫様とお母さんが乗って、メイドちゃんが運転する車には戦乙女が3人乗り込んでいる、その組み合わせで出発進行となった!

まぁ、野党とか山賊とかそういうやつらは殆ど駆逐されているから道中は安全だしね、生きていたとしても、このメンバーに勝とうと思ったら、20人は最低限でもいるんじゃないかな?お爺ちゃんのことだから最低限の武器は絶対に何処かに隠してるはずだろうし。

ふと、気になったことがあったので聞いてみる
「お母さんと姫様ってさ、結構、顔なじみなの?」
そう、あんなフランクに接するお母さんは珍しい、気を許した相手じゃないとあんな風に話さない

「あれ?いってなかったっけ?私が王都に行くときは泊まる場所は、いつもママのとこだよ」隣にいる姫様が何を当然?と言わんばかりに教えてくれる
「あら?いってなかったのね、そうよ、姫ちゃんが王都に商談とかで来るときはいつも、家にお泊りに来てくれるのよ」助手席にいるお母さんもそらっと教えてくれる…

ねーって二人で声を合わせられても、知らないよ、驚きだよ、あ!だから私が教えてない過去の思い出話を何故か姫様が知ってるんだ!お母さんから聞き出してたんだ!!

むーっと納得がいかない感じに包まれていると、運転中のお爺ちゃんが
「しかし、姫様のおかげで、この大陸全土、大きく変わりましてな~馬車の代わりになる移動手段を作ってくださっただけではなく、その技術を一切合切、秘匿せずに特許と言う新しい制度を共に携えて広めてくださってな、その技術を元に研究を重ねたおかげで、こんなかっちょええ車が生まれたので感謝しかありませんな。どうですか?うちの孫で気に入ったのがあれば貰ってくれませんか?」
さらっと感謝の気持ちを添えての姫様を身内に取り込もうとするのでお母さんが

「お義父様?いいつけますよ?」
圧+睨みを効かせてくる、怖い…

「む、娘ちゃん!ち、違うんじゃよ?筆頭騎士以上の立場を求めていないんじゃよ?純粋に、我が孫達で気に入ったやつがいれば貰ってやって欲しいって意味で主導権は全て姫ちゃんにあるからの?」
慌てて弁明しているけれど、お母さんの殺気は消えていないので、姫様が

「お気持ちは、大変嬉しいのですが、お孫さんたちってまだ、10代になりたて、ですよね?未熟な果実を摘まむ様な悪食はありませんので、ご遠慮いたしますわ」
きっちりと営業トークで断る辺りよくあるんだろうね、この話題。

ここでちょっと小話!
王都にいる極一部の貴族が、10代になりたての若い未熟な子供達の事を熟れていない果実、未熟な果実と称して闇で売買していた事件があって、過去に、それらを駆逐した一連の事件があったのだ!
その事件を揶揄して、10代の若い子達を貰う事を悪食と呼ぶようになったんだって!!

姫様は博識だからね、色んな人と関わっているうちに色んな事件に巻き込まれていて大変だったんだよーって、帰ってくるたんびにお酒片手に愚痴ってたもの。

あとね、お爺ちゃんみたいにね、姫様の財力、知力、手腕を買って取り込もうと色んな貴族がお見合いに誘うんだけど毎回、綺麗にやんわりと角が立たたないように躱してるんだけど、あまりにも不躾でうっとおしいレベルでしつこい人には「死の街で全一族、漏れなく参戦していただけるのが最低条件ですが、よろしいですか?」っと笑顔で言うと誰もそれ以上は踏み込んでこなかったんだって。

踏み込めない愛の為に全てを投げうてるような人じゃない人に、若い頃の姫様は去り際に「っは、根性無し、そんなのが相手してもらえると思うなよ」って、きつめの止めと言わんばかりの一言をぐっさりと刺してきたせいもあって、一部で敵が生まれてるんだよねって反省してた。
今はちゃんと角が立たないように言葉を考えて、失言無い様に頑張ってるっていうけど、絶対に、たまーにやらかしてると思う、暗殺されかけたの一度や二度で済まないもの。

少し話題がそれたけど小話は以上だよ!


「ワシが若かったら全力で口説き落とすんじゃけどなぁ…」
溜息を、つきながらお爺ちゃんが更なる失言をするので、お母さんに思いっきり太腿を抓られてた
「いたい、いたい、娘ちゃん、ワシ今運転中、危ない危ない、堪忍してちょ」
痛みを訴え続けていても運転が一切乱れ無いあたり、痛みに対する耐性が高い、歴戦の猛者なだけあって流石だなぁって思うのと、たぶんだけど、場を和ませつつワンちゃん狙ってるって分かる辺りがお爺ちゃんの良い所でもあり悪い所でもある。


王都まで、一気に行ってもいいのだけど、焦る時間でもないので一旦、車を端に停めると、後続の大きな車も止まり。
メイドちゃんは、何故止まったのか意図を確認するまでもなくこちらが言うよりも早くにアクションを起こす。
メイドちゃんがテキパキと折り畳めるテーブルや椅子を展開していく、手慣れているのがよくわかる一連の流れに優雅さが垣間見れるくらい手慣れている。メイドちゃんは本当にスペックが高い王宮での筆頭メイド長に絶対に成れると思う。

何もしないわけには行かないのでメイドちゃんのいいです!やりますから!を押し切ってテーブルの上にクロスを引いたり、魔道具コンロに魔力を通してポッドにお湯を沸かしたりと手伝っていく、戦乙女ちゃんは念の為に辺り一面に展開し非常事態が発生しても対処できるようにしっかりと警護してくれている。

といっても、ぴりついた雰囲気は無く非常に和やかである。

その和やかな状況に姫様もポツリと
「あ~やっぱり、王都からの迎え全部断って大正解、こっちが向かう時刻も日付も、伝えてないから、襲撃される恐れも無いってのがリラックスできていいねぇ」

ん?あれ、三日後って言ってなかったっけ?
「ん?そうだよ、【最低、三日は下さい】って、伝えているからね、三日後に行きますなんて一言も書いてないよ」

それじゃぁ祝勝会がいつ始まるか向こうは予定を立てれないじゃないの?
「それも、ぬかりなし!返答では、明日に行く予定になっているから、前日から王都に行きますなんて一言も書いてない。」ふんっと鼻息を出しながら紅茶を優雅に飲んでいる。

「流石にね、この何処で、休憩するかもわからない、休憩する可能性のある場所全てに伏兵をずっと潜ませるのは普通に考えたら不可能に近いレベルで大変だし、最前線の街に見張りを置こうにもさ、王都に行く為の道ってね、複数のルートがあるんだよ?どの道を選ぶかわからない、こちら側が選択する全てのルートを警戒するなんて無理があるのさ」
確かに!この広い複数の広大な道、全てに暗殺用の伏兵を潜伏させるなんて現実的じゃない!!

「まぁ、私を暗殺したい人達とは、もうかなり潰しあってきたので、勢力はかなり滅ぼしたから、さすがにもうね?大規模な人員動員した作戦は打てないでしょ。今のアイツらに私の全てを封じることは出来ない、唯一の警戒すべき点は王都からの迎えを寄こされた時だね!過去にもあったからね!馬車もろとも爆弾を馬車にしこんで爆殺しようとしやがったからね!あれはもう、肝が冷えたよ!!」
ぇ?それどうやって回避したの?
「ふふふ、術式で遠隔起動するタイプだから、察知してジャミングしてやった、マジ焦った一歩遅かったらお尻から爆発してた」

しかめっ面でメイドちゃんが用意したサンドウィッチを頬張りながら語る内容がヘビー過ぎる、これにはお爺ちゃんも申し訳なさそうな顔をしている、筆頭騎士として王都の貴族たちの恥部を大っぴらにあっけらかんと言われると何も言えなくなるよね。

お母さんは、ほんっと貴族ってどうしようもないよねーっと同意しつつ煽ってくる。

お母さんが創るドレスの取引先の殆どが、貴族だからね。お母さんが体験した、本当に心の底から嫌悪する事件が多そうな匂いがするので、私もお爺ちゃんもその辺りは聞けない…
現に、今その話題を聞いてしまって姫様が腰を上げて恥知らずのろくでなしの貴族を粛清しかねないからね。
話の流れを考えて発言に気を付けないと危険。

姫様ならやる、確実にやる、滅ぼしたい貴族を叩く口実を欲している節さえある。

姫様もね過去の話を聞く限りね、、姫様のお父様を心底、嫌っているので、そこから考えれる答えは一つ、根っことして、貴族嫌いだと思う。

一般的に考えても、命を狙ってくる一派なんて好きになれないのは道理だよね、私だって積極的に隙あらば命を狙ってくる奴を愛せなんて言われても出来ないよ。愛した瞬間に殺されるわ。

「安心なされよ、姫様の御身は、この老骨が全身全霊でお守りしますので、っといいますか、姫様を御乗せすると事前にわかっていれば、重装備で出てきたのに!!」
腹いせに隣にいる私の頭をガシガシと撫でまわしてくる、ごめんよー

「いえ、これに関しては、私としてですが、完全に私服スタイルのその方が非常に助かります、何故なら、ラフな格好で隣には平民の女性、そして新型の車で手ぶらでの出発、そこから導き出される答えは、ただの、新車を自慢するだけのドライブだと誰しもが判断するでしょう。」
ふむふむと、小さく頷いている、お爺ちゃんは騎士としての職務経験が長い部分もあって、位の高い人の意見や話は真剣に聞く。
姫様が真剣な顔で言葉を続けていく
「もしくは、逢引だろうと判断されると思いますよ、ましてや、私を迎えに行ったなんて露にも思わないでしょう。完璧な偽装へと至ったわけです、結果オーライでございますでしょう。」
完璧な説明にお爺ちゃんも小さな拍手を送っていた、お母さんはこれと一緒に逢引なんて思われたくないなぁって顔をしている、メイドちゃんもうんうんっと一歩下がったところで頷いていた。

それにしても、すかさずフォローを入れてくれるのは純粋に嬉しいと思う、ありがとう。
こっちも、思い付きで動かないでちゃんと相談すればよかったよね、まさか、そこまで深く読みあいしないといけない程、険悪な関係だとは思っていなかったんだよー、だってもう、この間、一掃したってお酒の席で言ってたから~、暫くは、落ち着いてるものだと思ってたんだよ~。

「っむ、成程、欺くは味方からという兵法ですな?噂に違わぬ兵法物でございますな、この爺、そこまで見抜けませんぞ」
どうやらお爺ちゃんの中でも完全に納得した様子だった。

お母さんが、パンパンっと手を叩いて注目を呼び掛けてくる、なんだろう?
「そんな暗い話や堅苦しい話よりも、色々と聞きたいことがあるのよね、私としては」
そう言いながら私に向かって指をさしてきたんだけど、何か怒られるようなことしたかな?

「経緯も気になりますけれど、これ、幾らでしていただけるのかしら?」
違う、私を指さしてるんじゃなくて私の胸を指さしてたんだ!?

「ほほぅ、奥様も気になりますか?旦那様は月の裏側にいってしまわれても、まだまだ美容に関心がおありで?」ニヤリと笑みを浮かべながら私の胸を指さす二人、やめてよ!恥ずかしい!
「もちろんじゃない!色んな人から胸の事は何度も何度もネタにされてきているのですよ?ボリュームアップなんて夢じゃない!」
ギロリとお爺ちゃんをにらんでいる、確かに、お爺ちゃんはそういうのすぐネタにしてた記憶がある。
お爺ちゃんはバツが悪そうに明後日の方を向いて紅茶を飲んで、視界に入ったメイドちゃんを手招きして、この紅茶の茶葉がどこの銘柄なのか聞いている、普段絶対に気にしたことないのに、これはあれだね、逃げたな…

姫様は、テーブルの上に紙を広げ、紙の上にさらさら~っと、必要な費用を記載していく…ぅぇ!?そんなに高い!?この豊胸、豊尻にする術式って!?うわ!?ぇ?ぇぇ~、、、ちらっと覗いてみると紙の上には、、驚愕の金額が書かれていた

「お義父様~」
笑顔でお爺ちゃんの肩を叩いているけれど、お爺ちゃんは振り向きたくない様子だった
「この車を2台購入するくらいの金額くらい、たまには、散財しても良いと思いませんかー?ほーら~、経済を回すのは貴族の勤めでしょう?下の者たちにお金が流れる事が貴族の務めでしょう?豪遊することが、貴族としての見栄に繋がるのではなくて?」
よっぽど、昔から弄られていた恨みつらみが積み重なっている、可能性がすっごく高いよねこれ?詰め寄り方がえげつない…こんなお母さん見たことないなー。お爺ちゃん、ふぁ~いと!私では助けれないのでチラチラと視線だけをこっちに向けないでね♪

「…その、む」
「お義母様達に、あのことをいいつけますわよ?」

ぁ、弱み握られとるやん、逃げ場ないやん、あかんやんこれ…

「…ちなみにどのけん?」ちらっと、お母さんに視線を向けると、紙にさらっと文字を書いて見せると、お爺ちゃんが驚いた顔と同時に青ざめていると
「了承した!構わぬぞ!全ての費用を出してやろう!貴族の見栄を見せないとな!ガッハッハッハッハ!」
冷や汗を流しながら顔は青ざめたまま偉そうに大声を出しているけれど、何しでかしたの?まったく…

その後、小声でお母さんに
「ぁ、因みに、奥様連合に娘ちゃんから説明してもらってもいい?これ以上散財するとわし、本気で殺される…」
とお願いをしている辺り、この人の家での立場がわかってしまう…威厳が無いなぁ…
「これでまた、貸しが一つですね、お義父様♪」笑顔でにっこりと返すとお爺ちゃんがしおれたような声ではいっと小声で返事を返していた

あんな大きな大きな体が小さく見えるよ、孫からしても情けないよお爺ちゃん…

そこからは、どうして豊胸することになったのか、事の顛末を伝えると、お爺ちゃんとお母さんにがっしりと抱きしめられてしまった。
戦闘要員じゃない人が前にでるんじゃない!お前の体を守るために鍛えたのであって命を投げ捨てる為に武術を教えたんじゃないんだぞ!っと色々とお小言を言われてしまった。

ううん、心配かけちゃうから伏せていたのになぁ…お爺ちゃんもお母さんも心配性だから。

「はぁ、我が一族の誰かが、敵によって命を落とすなんてことはもうやめて欲しい、これ以上はワシの心も持たん、全精力を引き連れて特攻しかねん…」
私の頭を撫でながら悲しそうな顔をする、そうだね、息子もあいつらに命を奪われて、次は、その子供ってなったら、私だったら感情を抑えきれなくなってありとあらゆる爆弾を体に身に着けて特攻するもの。
「おやめくださいね、その時が来たらお声をかけさせていただきますけれど、まだ、突入するには攻め手が欠けておりますので、命を無駄に散らすだけですよ」
姫様が紅茶を優雅に飲みながら諭す、その言葉に少々、違和感があった、姫様は防衛だけじゃなくて攻撃も考えていることに。

てっきり、姫様は守りを固めるタイプだと思っていたけれど、攻めも考えていたんだ。


会話も落ち着いて、良い休憩にもなったので、皆で車に乗り込んで王都に向かってアクセルを踏み込んで進んでいく。

いざ!王都へ!いざ!故郷へ!いざ!暗殺の危険が付きまとう王都へ!いざいざいざ!まいろうぞ!!

…王都に近づけば近づく程、姫様の眉間に皺がよっていた、たぶん、苦い経験を思い出しているんだと思う、偶に小声で行きたくないって言ってるのが聞こえた。
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