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とある人物が歩んできた道 ~嫌な兆し~

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昼間、食事を終えてちょっと休憩でもしようかと、広場に向かって歩いていく。
広場の片隅で、坊やと乙女ちゃんが二人で何かをしているのが見えたので、何をしているのか見てみると
大きな木箱を開けている様子だったので、邪魔をしないように遠巻きで本を読んでるふりをしながら観察することに。

何か送ってもらったのか商人から購入したのかは知らないがめちゃくちゃ大きな箱。
それを丁寧に空けているのを見る辺り、中身は高級品なのだと予測できる。

本を読むふりをしつつっていうよりも、元々、この本を読むために広場のベンチに来たのだから、本を読んでいると巨躯の女性も大きな大きな木箱を持ってきた?
皆で共通の何かを購入したのかな?三人で共通していることなんて決まってるよね、武具の類を新調したのだろう、よくそんなお金がって、ああ!そうだよ!なるほどだよ!
本が売れたからか!戦士達の装備がより良い物になるのであれば、正しい使い方だと思うので、その使い方に文句はない。むしろ、嬉しいよ、私たちの愛の結晶がみんなの生存確率を向上させるのだから。

つまり!貴方達が身に着けるのは私と騎士様の愛の結晶から産まれたのよ!つまり子供同然!それを着ることになるのよ!ぜひ後世にも語り継いでね!

中身の予想も出来てしまったので、私も木箱の開封を手伝いに行くことに
釘がしっかりと打ち込まれていて、頑丈に保存されている、中身が高級品じゃなければ力づくにでも開けれるのだけれど、それが出来ない、早く開けて中をみたいっていうもどかしさがあるけれども!こういった開けることが楽しいものって個人的に言えば好きよ。

開けるのも楽しいじゃない。

一つ一つ打ち付けられた板を外して、ようやく上蓋を外せれたので、中身を取り出していく、中には木屑が大量に入っている、衝撃を吸収するためのものだろう
その中から出てきたのは鎧だった、とても煌びやかで洗練されたフォルム、使っている素材も一級品、これ、すっごく高価なものじゃないの?
よく見ると、胴の一部分にある紋章が掘られているってこれ、見覚えあるなって思ったら王家御用達の匠が掘る紋章じゃないの!!

はぁ~。見たところ確実に特注だよね?お金っていうよりも、どうやって頼んだの?相当なコネがないと絶対に受けてくれないのに。

他の二つの箱も皆で開けていく、中から出てくるのは同じ紋章が掘られている鎧だった。
三人が鎧を装着すると、出来が素晴らしくて自然と拍手してしまうほど、完成されていた。
坊やも、この鎧に感涙して「家宝にします」と喜んでいる、巨躯の女性も「思っていた以上に動きやすくていいじゃないか」っと喜んでいる。
乙女ちゃんも無言ではあるけれど、表情や仕草で喜んでいるのがよくわかる。

皆の喜ぶ姿を見て、私も何か、たっかい魔道具を購入しようかと欲が湧いてくる。
買っちゃおうかなー商人さんがやたら勧めてくるやつがあるんだけど、気になってるのよねー。
どうしよっかなー、あの時の商人さん、いつも以上にやたらしつこいと思っていたら、思い返せば、当然知ってるよね、本がえげつないほど売れたの。

でもなー美容液も1ランク、ううん、3ランク上の極上で王妃様御用達!?と、噂されている超一級品の方が欲しいのよね~。…魔道具よりも高いし…

お金の使い道を悩んでいたら愛しの声が聞こえてくる
「無事、届いたみたいだね、着心地はどうだい?全員の体型に合わせた特注オーダーメイドだから違和感は感じないと思うけれど?」
三名が各々、鎧の素晴らしさを語っている
重装備なのに、動いても重いと感じないくらい動きにフィットしていて邪魔しないとか、
筋肉に喝を入れても邪魔にならないように設計されているから殴りやすくていいじゃねぇかとか、
凄い、今まで使ってのも、良い品物だったけど、超えてくるなんて、思ってなかったですっとか、

その感想をそうだろうそうだろうっとうんうんと腕を組みながら頷いているのでこそっと騎士様に聞いてみる
「うん、そうだよ?父上に思い切ってお願いしてみたら快く引き受けてくれてね」
…予想通り、王家御用達の意匠だった、流石に、王家の紋章は掘っていないけれど、それに何処となくデザインを寄せている紋章。

あれ?ちょっとまって、完全オーダーメイド?ってことは、あの鎧一つで王都の一等地で豪邸建てれるお値段じゃないのかしら?

震える声で予算は幾らほどかかったのか聞いてみるとウィンクしながら口元に指をあててシーっと言った後「ひ・み・つ」っと一言だけ述べた後、仕事がありますのでそれでは!っと離れていった。
もう、お茶目さんなんだからぁぁあぁぁ…ぇ?はぐらかされていないかって?それがなーに?些細なことじゃないの、あの可愛い仕草を見れただけでもそれ以上の価値があるのよ。

私も研究用に欲しかった魔道具を発注しちゃおっと!

後に、財務を管理している人から、予算はもう空っぽですよ、次回に予算があれば検討させていただきますね。と断られてしまった…

さ、些細なことですよね~…おかしいなぁ、そうとう荒稼ぎしたと思っていたのになぁ、予算が空っぽになるなんて、鎧だけじゃねぇぞ?
研究塔の奥様の部屋に行く途中で今まで気にも留めていなかったけれど、なんか、新しい魔道具とか錬成道具とか増えてない?
見知らぬ素材もありますし?

…出遅れただけですねーこれ

まぁ、ここにある物は、すべからず!私のものなので!遠慮なく使わせてもらいましょう!!

大きな事件も無く、研究も地道に少しずつ進んでいく、そんなある日、仕事終わりに騎士様がすれ違いざまに耳元で私だけに聞こえるように囁いて行ったの
「相談があるので、会議室で会えませんか」っという、言葉を!お誘いを!受けてしまったからには!!

全力でお風呂にはいって、こっそりと貯めに貯めたお給金から捻り出して来る日に備えて購入しておいた!超高級、王宮御用達の化粧水に化粧品!さらに!初夜に備えて買っておいてエロスの権化達を身にまとう!!
その状態で廊下を歩くわけにはいかないので、いつも着ている白衣ロングコート上に羽織って前をしっかりと止めれば胸元がちょっとセクシーなだけ!いつも通り!…あれ?いつもとあまり変わりがないような?ううん、このさり気無いエロスに気が付かない男なんていないわ。

会議室に入ると騎士様だけじゃなく、この街の財務を担当してたりする人、後はテーブルを挟んで騎士様の向かいに座っている人は…
見たことがある、確か、定期的に来る成果報酬を受け取りに来る王都からの使者が待ち構えていた…
知ってた…っふ、知ってたわよ…

心の中で盛大な溜息をついた後、何食わぬ顔で騎士様の隣に座ると
テーブルの上に広げられている公的文書が散らばっている、どうして、これが公的文書だとわかるのか?
右下に王家の捺印が押されているからよ。王家からの依頼?嫌な予感しかしないわね。

騎士様は王都からの使者と何か会話をしているし、とりあえず、目の前にある公的書類を読んでいくとしましょうか、ね。
ここ数か月、いや、数年、本を読む機会が非常に増えておかげで読むスピード、内容を噛み砕くスピードがかなり速くなった。
目の前に散らばる文書を常人ではあり得ない速さで読み切る。

絶句した

心の底から絶句した…
死ねって言ってるようなものじゃないの
内容を簡単に言うと

王子がデッドラインに行きたい

ふざけるなよ?
狙いとしては王族の身でありながら、この大陸で最も危険で調査や討伐遠征に出たものが、そのラインを越えてしまったら、帰ってきたことがない危険な場所。
そこに挑み、敵を仕留めて生還することによって他の王族が真似できない成果、人類の怨敵を打ち取ることによって名声を上げ、民を獣達から守る勇敢なる戦士として認められ、次の王位継承第一候補に名乗り上げるために、武勇伝という箔をつけたい?

その為に、この街にいるすべての戦力を徴収したいだぁ!?それって、騎士様達にデッドラインを超えていけってことでしょ?死んで来いってことじゃないの!!

書類をもう一度、隅から隅まで目を通して確認する、これを断るために必要な抜け穴が無いか逃げ道を探す。
王都が、私達を見捨てていない、私達を軽視していないのであれば、何処かに抜け穴が用意されていたりする、それに気づけ!きっと、騎士様はそれを私に求めている!

抜け道があったわ
騎士様の太ももに手を置き、指先で2回たたく、抜け穴として使えれるかもしれないのがあると伝える
「どうしたんだい?」合図を理解した騎士様がが私の腰に手を置きすっと抱き寄せる
私も合図通り騎士様が所有する娼婦のように動く
「あのねーあなたぁ、私ねぇ頭よくないからわからないのーこれってさぁ、王子さまって何歳なのー?」公的文書を雑に持ちながら上目遣いで騎士様に尋ねる。
誰がどう見ても、頭の悪い人のように発言する、財務を管理する人は私のことを知っているから、この動きで察するはず、私達の意図を、貴方は余計なことを言わないで黙ってなさいよ?
「ああ、王子様はね、僕の記憶が正しければ13歳とかじゃないかな?」騎士様もそれを理解しているので合わせてくれる。
「13かーそれってぇ、一人であるけるの?すごく遠い場所じゃないのこれー?」
そうデッドラインまで13歳の王子が歩いて行ける距離ではない、王子と歩幅を合わせて休憩を挟みながら慎重に向かうとなると、往復で一週間は必要になる。
「言われてみればそうだねー、馬なんてあの先に連れていけないからねー怯えてしまって一歩も歩けなくなるからな~」
騎士様と私はそのセリフでテーブル向こうの人がどんな反応をするのかちらりと確認すると、想定以上に遠いのかっと考え始めた。追撃が必要ね。

「あたしーばかだからーわかんないのーここにいってー帰ってくるのにー、何日いるのー?」
上目遣いの後は騎士様の胸元に頬を擦り付けながら甘えるように発言する。
「そうだねー良い質問だねー、往復で一週間以上は必要かなー」
騎士様もしっかりと演技として私のお尻をさすったりしてくる、最高じゃねぇか!!
「ぇえー一週間もあえないのーやだー」
ぐりぐりとお凸を騎士様の分厚い胸板に擦り付ける、最高よ!天国よ!!
「ははは、そうだねー僕もいやだなー」
ちょっと!演技が棒読みになってる!ちゃんとして!もっと触って!!ふへへ・・・

この甘ったるい空気に嫌気がさしてきたのか使者も気怠そうに
「会議の場にいかような女人を連れて、まったく品がない!」
イライラとしているのがよくわかる、その空気を察した騎士様が追撃として
「すいません、何分、僕も多忙でして、今日はその予定だったんですよ、次からは前もって来るのを知らせてほしいな」
腰辺りに添えられている手を私の手によって下げさせお尻を撫でろと小声で言うと一瞬躊躇いながらも、お尻を触り始めるので
「やぁんもう、せっかちさーん、人前だぞ~」
体をくねらせながら、悶えるふりをする、実際には私の心はもんどりをうってますけどね!!!

目の前で広がるあま~い空気に苛立ちが最高潮になっているので、最後の追撃をしないと
「せめてねー、みんなが往復で三日くらいでかえってこれるくらい~?王子さまがー大きくなってからのほうがいいんじゃないの~?」
やんやんっと騎士様の首元に頭を擦り付けながら、正面を向きなおし、騎士様の腕をお腹の方にもってきながら、相手の方を見る。
苛立ちで適当な理由をつけてこの場から去りたそうにしている。
「それもそうだねー、王子様の御身を考えるのであれば、危険な場所に一週間も居るのは死亡説が囁かれてしまいかねないよねー」
腕を私の胸まで上げさせてもませようとするが、ぐっと力を入れて抵抗される。
それ以上はダメだってか?いいから、するの!っと太ももをきゅっと抓むと一瞬ビクっとする、覚悟を決めたのか抵抗する力を緩めるので騎士様の手をゆっくりと白衣の中に入れさせ胸を揉ませる。
「やぁんもう、ひ・と・ま・え」
体をくねらせ妖艶な表情と吐息で悶えているとようやく、相手も我慢の限界に達する
「そうだな!貴殿の言うとおりだ!!御身を考えればこの作戦は無謀すぎるな!助言感謝する!」
バンっと勢いよくテーブルを叩きながら立ち上がり勢いよく会議室のドアを開いて出ていく。

そそくさと私も立ち上がり、ドアを閉める。

相手の足音が遠ざかるまで息を潜めて音に集中する。
足音が聞こえないほど遠くに行ったあと、その場に居る全員からため息が漏れ出る…

はぁ、これって抜け穴っていうか一時しのぎってだけだけど、対策を練る時間が出来たから良しとしよう…

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