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緊急発進

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急いで会議室に飛び込むと、全員が姫様のことを、待ち望んでいたみたいで席から立ち上がり、こちらの言動を今か今かと待ち望んでいる
皆だって気が気じゃないのだろう、だって、今まで他の街でこんな事態に陥ったことなんて一度もなかった。
議長の席に視線をやると、使い方を知らないけれど、過去に使用した遠距離でも会話できる蓄音機型魔道具が席に置かれている。

王都から知らせに来たであろう騎士の姿を見て状況を察することが出来る。
だって、鎧も着てない、兜すら、何も装備をしていない、騎士として常に帯剣しているはずなのに、由緒正しき規律を重んじる騎士団が帯剣すらしていない、装備しているのは王都騎士隊服だけ。
その状態を見て何を置いても、こちらに情報を渡す為に急いで走ってきたのだと、緊急事態、未曽有の危機、王都はパニック寸前という危機的状況だと伝わってくる

私が状況を把握している間にもメイドちゃんが動き出していた。
議長の席に置かれている、遠距離で通話ができる魔道具のセッティングをしている、その間に騎士からどのような状況なのかを姫が再確認を要求している。

その言葉に騎士は感じたこと、見てきたことを話し始める、最初はしどろもどろで言葉も詰まっていたがだんだんと流調になっていく

昨夜の夜中に、王都に向かって馬が走りこんでくる、遠目に見て馬の体に何かつけられている、よくみるとポーチが鞍に括りつけられていた。
中に怪しげな物や爆発物が入っていれば大惨事になると暴れる馬を宥めて、なんとか中身を確認すると予想外のものが入ってた。

それは、たった一枚の文が入っており、内容をその場にいる騎士全員で見るのだが、その文の内容が、とても信じられるような内容じゃなかった。
その為、その場に居た騎士たちは新手の王都に混乱でも招きたい悪しき人物の仕業じゃないかと一笑した。

すまない、その時に、直ぐにでも騎士団本部に直訴しに行けば、もう少し対処が早く出来ていたのに、本当に申し訳ない。

それから、空に浮かぶ月が大きく傾いて、あと少しで朝日が顔を覗かせる時間に近づいてくると、南の空から伝書鳩が1羽だけじゃなく複数羽、次々と方々に飛んでいくのが目撃されて、これは、本当にあのとんでもない内容が事実じゃないかと胸騒ぎがして、急いで騎士団本部に直訴しにいったんだ。

息も絶え絶えで本部に到着して部隊長に文を渡すと「同じような文がこちらにも届いている」どうやら、本部に伝書鳩が到着していたみたいで
情報が真実なのか南にある砦に馬を走らせて情報を持ち替えるように指令が出ていると教えてくれたので、僕は一安心して持ち場に戻ったんです。

震える足と心を落ち着かせるようにゆっくりと持ち場に戻ると、違和感が凄いんです、普段ではありえないんです。
おかしいんです、いつもだったら行商の誰かが門を訪ねてくるのに誰も来ないんです
南から、王都に向かっていつもなら行商の人達が門を通る為に絶対にこの道を通るのに、だれ一人来ないんです!!

いつもだったら、今日の野菜の出来はいい出来だから買ってくださいよー、最近は、腰が痛くてかなわんなぁ、王都で流行っている車ってのを買ってみるべきかな、どうおもう?とか、日常的で何気ない会話をしている時間帯のはずなのに誰一人こないんです。

普段ではあり得ない出来事に足が震え唇が震え、心が震え、自分が今どこで何をしているのかわからなくなって、気が付いたら騎士団の仮眠室にいたんです。

起きた後は、騎士団本部に顔を出したんですけれど誰も居なくて、剣や鎧などの装備や弓矢などの備品が見当たらないくらい全部ありったけを持ち出されていて、本当のホントに非常時代緊急事態人類滅亡?っという言葉がずっと頭の中でぐるぐるとまわってて、何度も何度も吐いてしまって、それでも騎士として何か出来ないかと今から現場に走ったとしても遅すぎる、何か自分にできることは無いかって辺り一面を探していたら

部隊長の席に置かれている文を見つけてしまって、部隊長が読んでいる書類などは本来であれば一兵である自分が手に取り読む行動が隊律違反に繋がるのですが、頭の中がぐちゃぐちゃだったので迷わず読んでしまったんです。

王都よりも南にある砦で大混戦となっていると逃げてきた着の身着のままの避難民を受け入れながらの得体のしれない統率された動きを見せる獣の大群を相手取っていて劣勢だと、大至急何をもっても、応援を寄こしてほしい、このままでは、持たないっと殴り書きの文があったんです。

それをみて、自分がするべきは獣と言えば!死の街で戦い続ける対獣のエリート、この人達に報を知らせるのが一番だと思い、今朝方に取り押さえた馬がちょうど残されていたのでそれに乗り知らせに参った次第であります。

最後の方はもう、息次ぐ暇もなく捲し立てるように説明を終えて、ほっと胸をなでおろしている

騎士の話を要約すると
①王都南の門番をする彼が門に向かって走ってくる暴れ馬を取り押さえて荷物の中から一枚の文が出てくる、
 一緒に働く門番達がこんなのは信ぴょう性もないし、悪戯だと笑う

②それからは何事もなく、時間が過ぎていったけれども、本当に何もない、誰も来ない、
 ガセ情報じゃないかと思っていたら地上ではなく上空で異変が起きていた。
 伝書鳩が数多く何処かに向かって飛びだっている。

③あり得ない上空の慌ただしさに先ほどの文の信憑性が上がったので急いで本部に知らせに行く。

④本部も情報を確認するために馬を走らせた

⑤持ち場に戻ってくると門を通り、王都に品物を運んだりする行商の人達がこないといけない時間なのに
 誰も来ないという日常ではありえない光景に、
 あり得ない事態になっていてフィアー症状によって昏倒する。

⑥一兵卒である、自分が本来読んではいけない書類を見てしまい、その内容を知らせる為にこちらまで走ってきた。
 獣の大群が押し寄せていて、本来、統率性のない獣たちが統率された不可思議な動きをする、ありえない現象にどの様に対処すればいいのか
 助けを求めて、走ってきた

ってことでいいのかな、内容がしどろもどろだから、何か抜けているような気もしないでもないけれど。

その報告を聞いた姫様も目をつむって何か考えている様子。

額にすごい汗が出ているので、ハンカチで拭ってあげる。念のために脈を取ろう…うっわぁ脈はっやいな、大丈夫これ?回復術式を使った方がいいのかな?
何か術式でも発動してたら邪魔しちゃうし、今は待つことしかできないかな。


ゆっくりと目を開けると顔が真っ青だった、やっぱり何かしらの術式を用いていたみたい、すっと、手に魔力を流して少しでも魔力を譲渡して消費した魔力を体に満たしてあげないと。

「メイドちゃん繋がった?」
震えるような声で絞り出された声に反応し返事が返ってくる
「ダメです繋がりません」相手側が蓄音機の近くにいないみたいで反応が返ってこない
「では、独断で動きます、メイドちゃんはこの場で待機、して欲しいことがあるので、それの為に待機してください。」
すかさず返答をする、その姿はまさに司令塔、どんな不測の事態でも対処してくれるのではと期待を込めてしまう。
そこからは色んな指示が各部隊に行き渡っていくんだけど

女将を呼ぶのはどうしてだろう?非戦闘員だよ?…何か、考えがあってかな?

医療班団長である私は、どうやら、姫様と一緒に行動みたい

移動用の大型車がセッティングを終えるまでの間に、作戦の全容を聞きたいところだけど、そんな暇も余裕もなさそうなので、私も自室に戻って新しく新調してもらった、戦闘服を着て、戦闘用の術譜、新調した毒を仕込めるナイフ、即効性のある薬、使用を躊躇う薬などなど、念入りに準備していく。

あとは、念のために魔石もいくつか持って行こうかな、たぶん、車に大量に積んであると思うけれども、念のためにね。

車に辿り着くと既に女将が、昔の鎧を着て待機してたんだけど、後から来た姫様に鎧は重いから置いていっていいよと言われて渋々と更衣室に戻っていく

車の後ろにつけられた荷馬車の中に色々な魔道具が次々と積み込まれていく。
いったい、何の魔道具を積み込んでいるのだろう?こういう殲滅戦の時に有効な魔道具で真っ先に思い浮かぶのが爆裂系なんだけど、あれ、まだ王都から帰ってきてないんだよね!返せよ!どこいったのあれ?

積み込まれていく荷物をチェックしようかと思っていたら、更衣室の方向から巨体がこちらに向かって歩いてくるのが見える、女将、なんだけど服装が

女将が普段着に着替えて戻ってくるのかと思ったら珍しく隊服だった、更衣室で着替えているときに戦乙女ちゃんに汚れるので隊服を着てくださいと特注サイズの隊服を渡されて着替えてきたみたい。

そうこうしているうちに、全員の準備が終わったみたいで全員が車に乗り込み王都よりも、もっともっと南にある砦に向かって全速力で飛ばしていく。
動力である魔石も大量に積んであるので燃費どうのこうの考えずに全力でパワフルに突き進んでいく。

このまま、休まずに何処にもよらないで進めば1日?かな?そこらでつく計算になるけれど、それは、無理があるので休憩を挟みながら進むとなると2日くらいかな?
ちゃんと後続に支援物資を積んでいる車も共に走っているので強行行軍ではあるけれど、資材や物資に問題はないと考えていいだろうし、敵に襲われる心配もないので警戒する必要ないのだけれど

肝心の姫様がダウンしてしまって起きる様子がないので、女将と一緒に心配している

静かに眠っているようなんだけど、いつもならこの間に説明とかどのような配置で、どのように動けばいいのか念入りに説明してくれるのに、最近の姫様は良く寝る。
疲れが溜まっているのだろうか?

取り合えず、私が見て聞いた作戦概要を女将に伝えていくし、女将も何か作戦を伝えられているかもしれないので出来る範囲で状況を共有しよう。

まずは、しっかりと今の状況を把握しないといけないので頭の中で整理整頓していく。

するべきことは、現地に行って指揮官と話をつけて状況を確認する。
姫様が持ってきている魔道具を使って何かしらの策を講じるのだけれど…ふと気が付く

あれ?人員少なすぎない?

後続の車に積んでいるのは、ほとんど魔道具とか資材とか、補給物資、あれ?人は?っていうか戦士の一団は乗ってない…よね?
自分の準備や資材を運んだりしていたので、人員がどのような動きをしているのか見ていなかった…

メイドちゃんが居れば全容を把握してたりするんだけど、今回の任務は、現地じゃなくて最前線の街で何かしら作戦の為に残ってもらっている。

女将に何をするのか聞いてきた?っと確認をすると
「ぇ、あたしはてっきり、仇を取るために呼んでくれたんだねぇ!!って昂って、準備して来ただけさぁ…」
…説明してない?…用意周到で人の生き死にがかかっているときは凄く慎重に事を運ぶ姫様が?強行策って言ってたから時間との勝負なのかな?

血の気が引く、大丈夫、大丈夫!姫様ただ、疲れているだけで起きる、きっと起きる!
ここ数日、色々ありすぎて疲れているだけだよ!今日だって、説明に次ぐ説明で、脳が疲れたんだよね?きっと…

姫様が起きるのか心配になってじっと見つめていると女将が優しい声で
「そうさぁね、今ここであたしたちがあーだこーだ作戦の内容を話し合うよりも姫様のことを信じて、起きるのをまつさぁね、時間もあるからねぇ」
やっぱり女将は地獄を見てきた一人なだけあって胆が据わっている。落ち着いている。
私達が慌てふためいちゃったら前で運転している戦乙女ちゃんにも不安が伝番しちゃうからね。ここは先輩としてどっしりと構えよう。

車も結構なスピードを出しているのでいくら舗装された場所とはいえ結構、揺れる
椅子で座るように寝ている姫様が「ぅ、ぅぅ」と小さな悲鳴を上げているので
近くに抱き寄せて私の太ももを枕にするように寝かせてあげると、気持ちよさそうに寝息をたてる。すると
「どっちがお姉さんかわかりゃしないねぇ」っとクスクスと女将が笑っていた。

そうなんだよね~年齢は姫様の方が年上なんだけど、所々あどけないっていうか、子供っぽいというか、でも、大人としてしっかりとした対応もできるし。

長年、一緒に遊んだり悪戯したり、心の悩みを打ち明けあったりしたけれど、掴み切れない不思議な人。
この人が居れば、きっと私達は大穴の脅威を退けて、幸せな未来を手に取れるのだと信じれるくらいの偉業を成し続けた人だからね。

今回も私達が想像も出来ないようなとんでもない作戦で切り抜けてくれると信じてるよ。

そうと決まれば、ポーチから例の小瓶を出す。女将が小瓶を見た瞬間に眉を顰める
「あんた、飲むのかい?窓開けていいかい?」女将もこの味と臭いを十二分に知っているのできっと味と臭いを思い出してしまったんだね。
「うん、姫様がね、言ってたんだ、私の魔力を頼りにしているって、冗談かもしれないけどね」
えへへっと笑った後、女将や前で運転している戦乙女ちゃんたちが車の窓を開けるのを待ってから小瓶の蓋をあけ一気に飲む!!!

っぅぐぅ、まっずぃ…何度も飲んでるけれど、飲んで数日たてば、いやーあれは全然のめるよー薬だと思えばへいきだよーなんて言葉を口走る自分の物忘れの速さに、軽口を叩く口を、脳を、叩きたくなる!!

やっぱりまずいものはまずい!!

女将も鼻をつまんで心配そうにこちらを見ている、匂いが充満しないうちに小瓶に蓋をして、ポーチにしまう。
ぁーもう、口直しのやつがないと後味の悪さが響くー!ぁーもぅ、ああー!!もう!!

口の中に広がる後味の悪さに、胃から込み上げてくる臭いに悶え苦しむ、誰も悪くないのに悪態をつきたくなってしまう、なんでこれの味って永遠に改良されないのよぉ!!伝統のまずさなんてキャッチフレーズ創ったやつ出てこい!!!はったおしてあげるから!改良して!お願いだから!!
「こ、これどうぞ」
運転をしている戦乙女ちゃんから何かを受けっとている、受け取った女将が、それを、すっと渡してくれる、あ、果実の飲み物だ
手に取った瞬間に甘い香りですぐにわかる、これ絶対、美味しいやつやぁ、戦乙女ちゃんの飲みかけっぽいけど気にせずに飲む!!

口の中にめいいっぱい含んで暫く制止する、制止する理由は単純に味を中和しきる為!中和しきるまで口の中に液体を保持する。
舌から伝わってくる味が、含んだ果実の味に染まるのをまってから一気に飲みこむ!!

っぁあ、幸せ…

全部飲んじゃうのは、どうしようかな?申し訳ないけど、口をつけちゃったしなぁ、全部飲んじゃったほうがいいのかな?
「ぁ、出来れば、気にせず、こちらに返して貰ってもいいですか?ほかに飲み物持ってきてなくて」
ぇ?そんな大事な水分だったの?ごめんね、半分くらい飲んじゃったかも…本当に良かったのかな?ごめんね?

「ありがとう!…そのごめんね?貴重な水分じゃないの?」
申し訳なさそうに女将に渡して、運転している戦乙女ちゃんに渡してもらうと
「いえいえ、いいんですいいんです。止まれば後続の車とかにちゃんと水や食料を積み込んでいるんですけど、止まらないと取り出せないだけなので」
そっか、それでも運転するのって結構、疲れるし集中しないといけないのに、申し訳ないことしちゃったかも?

うう、ちゃんと休憩のタイミングとかで魔力回復促進剤を服用すればよかったかな?失敗失敗

後は無駄な体力を使わないように全神経を戦闘に向けて研ぎ澄ましていく
目の前で向かい合わせで座っている女将も戦闘する気満々だ、闘志があふれ出ているのが感じ取れる。

女将も重々、心から理解していると思う、南から現れる獣の軍勢なんて決まっている。

きっと、女将の村を滅ぼしたやつらだろう

私の記憶が正しければ、女将の村はこの大陸でも最南端にある辺境の村で
農業、畜産、林業、鍛冶、海も近いので漁などなどが、主な産業となっている村だったよね?
女将はたしか、女将から聞いた話だと、力作業の殆どを担当していて、主に林業を生業としていたって教えてくれた気がする。

えっと、ああ、そうそう思い出した思い出した、凄くのどかで牧歌的で村中のみんなが仲良くて争いも無く獣の脅威なんて何一つない平和な世界
だって、この大陸の中では大穴から最も遠い村だもの。

自分の言葉にある矛盾が生じたことに違和感を感じる。記憶違いなのかな?

…あれ?おかしいな

確かめよう

「女将ってさ」
思考を止めずに淡々と女将に声を掛ける
「過去に、この街に来る前に自分の村で大穴の獣に出会ったんだよね?」
「ああ、そうさね、そんな話をしたねぇ、若い頃はあんな獣がいるなんてさ、信じられなかったけれど、あいつらと戦い続けて確信できるさぁねぇ、あれは、大穴の獣だよ」
女将に視線を向けないで頭の中に沸いた疑問をそのままぶつけてみる




「じゃぁ、女将の若い頃には大穴の獣は、海を渡っていたってことになるんじゃないの?」




その一言に女将もはっとして
「そ、そうだよ、そうじゃないか、てっきり何処かからすり抜けて渡ってきたってずっと自分の中で納得して来た」
うん、私も子供のころに、お爺ちゃんから死の大地以外でも極稀に大穴の獣と遭遇するって話は聞いたことがあるんだけど、そもそも、それっておかしな話だよね?

「けれど、この街で戦い抜いてきたからわかるさ、どうやっても大穴から此方側に抜け出れない?あんな大きな大きな壁にしっかりと囲まれているじゃないか、唯一通れる門も常に人が居て監視する人もいる…」
そう、そうなんだよ!姫様曰く、あの壁は始祖様が創った魔法によって生み出された奇跡の壁、かなりの高さで、綺麗に大穴から王都へと進攻が出来ないように建てられているのに
どうやって、その壁を乗り越えたのって、私はてっきり地中を移動するタイプの獣が目撃されてたって思っていた、後は鳥タイプもいるから上空からかなー?って、納得していた。

「いやでも、王都とかでもたまに目撃されてるじゃないか、だから、あたいらが知らないだけで、どこか、いや、そもそも、あんな特殊な獣を目撃したらすぐにでも誰かしら報告するさぁね…」
そうなんだよ、確か、女将が若い頃に出会った獣って陸を走るタイプの獣だから走って歩いて移動する獣でしょ?
どうやって誰にも出会わずに南の端までいけるの?大穴はこの大陸の北の果てだよ?

「あんなにも離れた大地で人に敵意しかない大穴の獣が人に出会わないで辿り着ける?…辿り着けやしないさ、あたいらはあいつらの習性を嫌でも知ってるじゃないか、どうして今まで気が付かなったんだい!?あたいの村はずっと脅威に晒され続けてきたってことじゃないか!!」
そうだよ、そうなんだよ!大穴の獣は人を見つけ次第、絶対に殺しにくる!何があろうと絶対に殺しに来る習性があるんだよ!!

そうか、だから姫様は女将のこの話を聞いて、確信に至っていたんだ…確実に海を渡る術があると
でも、それが何かは突き止めれていないから周りを不安にさせるだけなのでずっと、黙っていたんだ…

答えはずっとずっと近くに転がっていたんだよ、ただ、小さな小さな違和感過ぎて誰も、気が付かなっただけで
女将は答えに辿り着いていたんだ。だからといって、その小さな小さなヒントに誰も気が付きようがないし、たまたま偶然だって誰しもが思ってしまう。
女将の若い頃に、姫様ほどの思慮深い人はいないのだから、

気が付いた事とか、今後の事とかいっぱい話したいことがあるけれども

どうしてかな?静かに寝ている姫様を起こす気にはなれないの。どうしてだろう?どうしてこんなに


命の火が弱々しく感じてしまうの?



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