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とある人物達が歩んできた道 ~ 許可 ~

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綺麗なドレスって程でないけれど、ドレスに近いとってもとってもきれいなお洋服を選ぶの
騎士様とデートするために買っておいたとっておきを着ていこう。

日差しも気を付けないといけない、お肌にシミが出来ちゃうものね、再会したときに、幻滅されては妻としてはダメよね?
しっかりと美貌にも気を付けないと、私の体は私だけのものじゃないもの。

日よけの傘も持ったし、大きな麦わら帽子ももったし、久方ぶりに実家に帰るのだし、何かお土産とか持った方がいいかな?
別に要らないか、家族に興味ないし

お化粧道具も大丈夫、あ、そうそう騎士様を忘れちゃだめじゃない、仮初の姿とは言えちゃんと騎士様の一部なのだからちゃんとしないとね
骨壺の中から騎士様をお出しして、私の秘密の箱に入れる

骨壺の中には騎士様の一部分だけでも入れておいてあげようかなっと、何もないと変に怪しまれたら悲しいわ、騎士様の愛する妻が疑われるなんて騎士様からしたら心外しちゃうもの。
行ってきますねダ~リン寂しがらないでね?貴方の元奥様に会ってちゃんとお別れを告げてもらわないと、だって貴方は一夫多妻制を良しとしない高潔なるお人でしょう?

貴方が愛するのは地上でたった一人、私だけでしょう?うふふ、そうよね?うん、そういってくれると思った♪愛してる♪

愛する人の一部分だけ入った骨壺を胸に抱いて、大きな大きな荷物をもって、乗り合いの場所に乗り込む
暫くは、お休みをいただいていますの、だって、私にはしないといけないことがいっぱいい~~っぱいあるから。

まずは~元奥様にお別れを告げてもらって~、あ、いけなーいご家族に新しい妻でっすって挨拶しないとー
うーんでも、騎士様が見えてない人たちにそんなこと言ってもおかしな人だって思われちゃうよね?う~ん、演技しないとなぁめんどくさー
人の理ってめんどうだね~

あとはー何があったかな?

嗚呼、そうだった、あいつも見つけて殺さないとなぁ…最低限でも首謀者を見つけて、顔くらいは確認しないとダメだよねぇ?私の騎士様に手を出した罪は重いからね、存在してきたことを謝らせて、生きてきたことを後悔させて、死が救いと感じるくらい苦痛を与えてあげなきゃ、神様はそれを望んでいるもの。

馬車の中で静かに静かに、愛する人の一部分を抱きしめながら待ち続ける

愛する人を穢した罪しかない罪人が吞気に日常を謳歌している腐り果てた王家の宝玉が名前は知っている、だって騎士様が呟いてたもの…
だから、辿り着くのはとってもか・ん・た・ん♪

問題があるとすれば、どうやって殺すかなのよねぇ…仮にも王族だし~そいつを殺したとしても私だってばれないようにしないとなー
騎士様に会う前に私が極刑で死んじゃったら意味がないもの…

なら、騎士様に再会してから殺せばいいのか!あたまいいなぁ

じゃぁ、今回は、見逃してあげるけれど、顔だけでも確認しておくのは…大事よね…

ガタゴトガタゴト
ゆれるよユレル

運ぶよハコブ

おおきな大きな

どく

毒どく毒ドク毒

甘いアマイあまい

どくをはこぶよ

がたごとがだごどだがどご

近づいてくるね?うんチカヅクヨ

どこだってチカクにいるよ

カミさまはいつだって近くにいるよ…

さぁ、運んでちょうだい、あま~いあまい毒を運んでちょうだい。
王都へ、王族殺しは極刑?ふぅ~ん、それってさ人の理でしょ?私は違うわ私は神の理でいるのよ?
だから何?って話…

嗚呼、見えてきたわ、ねぇだーりン、貴方の生きた育った街が見えてきたわぁ、嗚呼、そうね、貴方だけじゃないわね、貴方と愛する妻の私も育った街



貴方を殺した街



馬車を降りて向かう場所はただ一つ、まずは元奥様に話をつけにいかないといけないわねぇ
ぁーでも、荷物が邪魔ねぇ?…先に実家に行って荷物を置いてこようかしら

スタスタと歩いていく、懐かしいわ、色が無くてもわかるものなのね、ここがどこだか意外とわかるのね、もう何年帰ってなかったかしら?

スタスタと歩いていく
そうそう、ここのパンが美味しいのよね~…もう味を思い出せないけど
あー懐かしいなぁ、あそこの花屋さんで花を買ってプレゼントするのが王道なのよねー…渡す人の肉体は今はもうないけど
あら~あそこが取り扱うドレスや服って凄い評判いいのよね~お値段はっちゃうけどー…見せる相手はもういないけど
ん~いい匂い、だと、思う、もう匂いも色もわからなくなっちゃったなーお母様と一緒によく食べたなぁあの食堂…味なんて何も感じないけど
ステキな旋律ねー今日は広場に楽団がいるのね~…耳障り、一緒に喜んでくれるひとはもういないけど

あら?もう着いちゃった~久しぶりの実家だー落ち着くなぁ…私の安寧はここじゃないけど

門番の人に挨拶をするお久しぶりですと挨拶を返してくれる…あなただーれ?しらないんだけど
玄関に入って使用人たちが声を掛けてくれる…色がないからだれかわからないんだけど
懐かしい声が聞こえた優しくハグしてくれたの…うっとおしいなぁ、荷物をおきにきただけなんだけど
楽しそうに会話しなきゃ…気持ち悪い、演技する自分が気持ち悪いんだけど

骨壺を見て大事な用事があるのって説明すると離れてくれる…すぐに察してよ頭わるいんだけど

ドアを開けて部屋を見渡す…こんな部屋だったかしら記憶にないからしらんけど
私の部屋そのままにしてくれたんだぁ嬉しいなぁ…ダーリンがいない部屋なんて興味ないけど


荷物を置いていきましょうか、元奥様の元愛の巣へ


スタスタ
歩いていく

スタスタスタスタ
あるいていく

すたすたすたすたすたすたたたたたた
アルイテイク

家の近くまで来ると黒髪の聡明な男の子が走り抜けていった

嗚呼、私の愛しい子、騎士様の子供は私が産んでいなくても私の子供。待っててね、何時かお母さんが迎えに行くからね。待っててね。家族一緒に暮らしましょうね。
貴方のお父さんも一緒に居るからね。暫くは仮初の家族と一緒に居ててね。嗚呼、なんて可愛らしいのかしら、嗚呼、なんて美しい子なのかしら。

あの子だけは色があったわぁ…家族を見間違うことなんてないもの、嗚呼、愛しき我が子、愛してるわぁ…

コンコン

ドアを優しく叩く、だって、この家はあの人が暫くの間、宿り木にしていた場所でしょ?あの人が大切にしていた場所だもの大切にしてあげないと
ゆっくりとドアが開かれる、そう、貴女も死を受け入れたいのね死にたいのね、一目でわかるわ

だって、同じ人を愛し愛された者同士ですもの、通じるわよ。貴女の心の叫びが

「初めまして、戦士長の奥様、私はあの街で共に戦い抜いてきた仲間です」
丁寧に丁寧にお辞儀をして挨拶をする。どんな人であればあの人が愛した人ですもの、しっかりと礼儀くらいはね?ちゃんとしてあげないとね。
ダーリンが悲しんじゃうもの…嫌われくないものだーりんに…

一瞬困惑した表情をして、何か躊躇っているのか、動かないでいる
「大変申し訳ありませんが中に入れて頂いてもよろしいでしょうか?立ち話をする内容ではないと思いますので」
はっと、そ、そうよね、うん、そうよねっと視線が右往左往していますわねー、何を驚いているのかしら?おかしな格好してるかな?

ちゃんと、何処に出ても笑われないくらい綺麗な恰好をしてきましたわよ?少しだけせくすぃっで男の人が好きそうな、ううん、だーりんが好きそうなやつをね…

中に入ると一階が何か、作業をするお部屋の様ね、見た限り…洋服を作ってらっしゃるのかしら?
ふぅん、ちゃんと仕事をしているのね、騎士様のお金で遊んで暮らしていたら殺そうと思っていたのに…

近くにある椅子とテーブルに案内されたけど、その前にダーリンの一部が入った壺を渡してあげないと
「あの、これを遺骨です」
手に受け取った瞬間、目の前の人が大粒の涙を流しながら崩れ落ちる…わかるわぁ、私もそうでしたもの、でもね、貴女と私は大きく違うの
貴女は二度と会えないだろうけど、私は会う方法を神様から教えていただいたのよ…貴女にとっては最後のお別れみたいなものよね。存分にお泣きなさい。

「お悔やみ申し上げます。その心、みな同じです、あの街に居た人はみんな戦士長によくしていただきました、みな涙を流しお別れをいいました」
泣き崩れている人の背中をさすり優しい言葉を投げかける、元奥様だからね、多少は気を使ってあげないとね、ダーリンに嫌われたくないもの

「はい、はぃ、ぁりがとう、ありがとうご、ございます」

声を出すのも辛いのだろう、小声で震えるように声を捻り出す、この人も気高き魂を持っていらっしゃったのね、だから、騎士様はこの人に魅かれ恋をしたのね。
自分が辛いのに、しっかりとお礼をいれるなんてね…

ゆっくりと立ち上がってふらふらと歩き始め「骨壺を供えてきます」ペコリをお辞儀をしたあと、二階へと上がっていく、

騎士様が入った骨壺を祭壇にでも供えにいったのだろう。
…平民の家に祭壇?…あるの?どうして?…嗚呼、そっかダーリンがいたからきっと信仰深きダーリンが作ったのねきっと

立って待っているのも無作法よね、せっかく椅子に案内されたのだから座って待ちましょう。
それに、勝手に職場をうろつかれるのは職人としては嫌な気分になるでしょうから。

このテーブルで騎士様は家族と一緒にご飯でも食べたのかしら?この場所で家族と一緒に笑って過ごしていたのかしら?
どんな生活だったのかな…あったら教えてねダーリン

部屋をゆっくりと眺めているとコツコツと階段を下りてくる音が聞こえるここ数日ずっとずっと泣いていたのね
目が赤くなっているわ、何か目薬を処方してあげないと、先輩だったら何が一番いいのか知っているかも、先輩にそうだ・・・
ああそうだった、ここはちがったちがったちがっちあっちが

「お待たせして申し訳ありません」
すっと目の前に座る女性、だれだっけ、ああ、そ、だ、そうよ、おわ、お別れをつげ、てもらわないと
「いえ、悲しいのはみな同じです、あの、差しさわりなければ、貴女の大切な人のお話をしてもよろしいでしょうか?」
そ、そう、よ、わた、私をふれ、触れて、愛してくれたことをつ、つたえないと…愛の言葉は貰ったけれど、行為はしてないわよ?
「はい、よろしくお願いします。」

そこからは台本でも用意していたのかと思うくらい、滑らかに騎士様と私の思い出が流れ出てくる
色んな事があった、いろんな思いがあった。

一つ一つ、紡いできた、重ねてきた日々を言葉にして伝えていく。
楽しかった日々、辛かった日々、もどかしかった日々、恋焦がれた日々、思いが通じた日々、あの人がいたことで救われたこと
あの人がいたからこそ、真実の愛に辿り着けたこと、あのひとがいたからかみにであえたこと

「だから、きょかをください、あなたのきょかをくださいくださいくだしいくだだいさいいし」
どうじでにげるの?どうしてこわがるの?あなたとおなじあいしたひとじゃない
わたしたちは なかま でしょ
あなたのおもいはわたしがうけつぐわ

どうし じゃないの?ねぇ?ねぇ!?ねぇ!!??
「きょ、許可します、お、お願いだからむ、息子には手を、手を出さないで」
やっぱりわたしたちは どうし! なかま! きょかがおりた
きょかがおりたおりったおりいいりりたいいだいいたい

「だすわけないじゃないですかー私達、同じ人を愛した者同士じゃないの、あの人の大事な人を穢すなんてことしないわ。ありがとう、貴女にあえででおよかだ、よかったわ」
あら、どうしてわたしのてにないふがあるのかしら?しまわないといけないわ
「ご機嫌よう」
もうここにようは ない つぎ へ いき ましょう

すたすた歩いていくすたすた歩いていくスタスタあるいていく

気が付くと仮初の宿だ、寝よう、疲れた…

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