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湧き上がる疑問…

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沈黙が続く、お互いが何を考えているのか、何となく伝わってくる早く答えが知りたいと…
答えを、下手をすると、この大陸で起きた全ての出来事、自称すら把握しているかもしれない人物が目を覚ますまで
この沈黙は続くのだと感じる。

現場に向かって大急ぎで走り続ける車、運転に集中している戦乙女ちゃんも疲労が見え始めている。
すでに王都は通り過ぎている、王都から離れれば離れるほど道が悪くなるのかと言われると答えはYESでありNOである。
姫様がしっかりと舗装された道はきっちりと綺麗だけれど、手入れを怠っている道もあるので、主要な道は綺麗で、そこから外れた
あまり利用されていない道は舗装の為に引いた石が割れてたりするので地面がガタガタとしている。

今は知っている道は騎士団が南の砦に向かう為に使われる道なので比較的、整備されているので道は綺麗。
なので、揺れも殆どなく快適なのだが、魔力を使う車を制御するのはやはり疲れるのだろう、未知のコンディション関係なく。

そろそろ、何処かで野営をした方がよさそうだと運転手の状況から判断し、最悪、姫様が寝ていても関係なしに休憩をしようと思って声を掛けようとすると

姫様がうっすらと目を開けて、こちらを見ているので、寝ぼけていても今が休憩タイムに入るのであれば最適解だと判断し、後続に続く車に窓を開けて合図を送り
ゆっくりと停車し、手早く野営の準備に取り掛かる。

幸い、ここは、死の大地と違って、安全地帯っと思いたい、さすがに南からの獣軍勢から抜け出た獣がこの辺りをうろついているのであれば、私達が到着する前に、南の砦は陥落していることになる。

人類の要を信頼し、この辺りを安全地帯と思い、全力で休憩するときは休憩すると実行する。
なので、警戒する必要はないので、安心して休憩をしよう。常に張り詰めていると、確実に到着時に心も体も疲弊してその先に待ち受けるハードな戦いに耐えれなくなる。

野営の準備の為に、荷馬車の中を確認していると、運転を長いこと続けてきた戦乙女ちゃんが疲労困憊で出てくる、自身の魔力も地味に消費し続けていたみたいで、顔が真っ青だったので例のあれを差し出すと、しかめっ面になる、戦乙女ちゃんがそれを受け取りながらも冗談交じりだと思うのだけれど、はにかむような、モジモジと恥ずかしそうな顔で「魔力、私も、ほしいなぁ、駄目ですか?」っと上目遣いで聞いてくるけれど。

…うーん、魔力譲渡法をしてあげたいけれど、私の魔力は姫様の為に取っておきたいんだよねぇ。

私達の会話を聞いた女将が近くに来て、腕を振り回りながら「してやろうか?」っと申し出てくるんだけど、「女将って出来るの?」っと、確認すると沈黙される…

やる気が漲るのは良いことだけどね、今回は遠慮してもらってもいいかな?魔力譲渡法は熟練の域に到達していないと事故が起きるからねっと伝えると
女将は、しょんぼり肩を落として、野営の為に必要な火を手早く起こす、戦乙女の人も観念して魔力回復促進剤を一気飲みし、この世の全てを憎みそうな顔で仁王立ちしている。たまに頬が膨らむのは吐きそうになっているのだろう。

…もしかしなくても、あの子は魔力回復促進剤を生まれて初めて飲むのかもしれない、だとしたら…

少しでもあの味を緩和してあげる為に、後続につけてある荷馬車の中に、魔力回復促進剤を飲んだ後に飲む、口直し用の味付きの液体が入っていないか、荷車絵に荷物を積み込んだ戦乙女ちゃんに話を振る。
どうやら、あるみたいなので戦乙女ちゃんが荷車の荷台から、液体を取り出してくれるので、今にも吐きそうな違う意味で顔を青ざめている運転してくれていた戦乙女ちゃんに口直しの液体を渡してあげると、頬の中身をごくんっと飲み干し、手早く蓋を開け瓶の中身を一気に口に含むと全てを憎んでいた表情が全てを許しそうな程、聖なる存在へと変貌している。
だけど頬はパンパンに膨れたままだ、あのえぐい味が消えるまで口に含んでお口直しを堪能するのだろう。

さて、彼女の様子は置いといて、私も野営の準備をしようと思ったら、すでに終わっていて仮設トイレまで作られている。
手際よすぎない?もう、火も起こされていて焚火の上にしっかりと鍋が吊るされていて料理が作られ始めている…

その殆どの準備を女将が終わらす辺り、手慣れているのだと感じさせる、その手際の良さに過去は歴戦の猛者だったのだと、頼もしい姿を彷彿とさせる

寝ぼけている姫様を車の外に連れ出して、設置された背もたれのある組み立て式の椅子に座らせると、いつの間にか全員が火を囲むように集まっていた。

今いるメンバーを確認する為に見回す
姫様に、私に、女将に、運転してた戦乙女ちゃんに、後続の何を積んでいるのかわからない大量の荷物が入っている車を運転している戦乙女ちゃんと助手席にいて今はおトイレ中の戦乙女ちゃん
合計で6名…6名!?走ってきた道を振り返るが他にこちらに向かってくる車の存在を感じ取れない…すごく静かな夜

たったの6名でこの先に待ち受けている作戦を遂行するの?もっと連れてきても良かったんじゃないのかな?
それとも、海の街でしたように、騎士団に指示を出して作戦を展開する予定なのかな?

作戦内容を詳しく聞きたいけれど、姫様の顔色は優れないし、ぐったりとしている、寝ているのか起きているのかわからない。
うっすらと目を開けているし、きょろきょろと視線を動かしているときがあるので現状を把握しようとしているので、寝てはいないと思いたい。

姫様の状態を観察し、医療班として簡易的な診察をしていると
料理が出来たみたいでみんなにテキパキと配っていく女将、作っていた料理はどうやらシチューみたいで、予め、街を出る前に作っていたやつを、凍らせていたみたいで、
それを鍋で温めなおしたって感じだから、出来上がるのが早い。

女将から渡された自分の分を食べる、姫様の前に小さな簡易テーブルを置いてシチューが入った器を置いているけれど、姫様がご飯を食べようとしない、寝起きで動けないのか、それとも、動くのが辛いのかどっちなのだろうか?もう少し様子を見よう。
女将から乾パンを受け取る、シチュー以外にも、乾パンも用意されているみたいなので、シチューにつけて食べる。

てっきり、食事の全ては、いつもの丸薬だと思っていたんだけど、以外にもご飯が用意されているのは驚いた、死の大地じゃないのだから、火も起こせるし認識阻害の術式も要らないのだから、普通に野営が出来るのだと、死の大地が異常なだけなのだと痛感する。

姫様の為にも、自分の食事を手早くもしっかりと咀嚼して食べ終える、姫様は予想通り、まだ食事に手を付けていない、ぼーっとどこか1点だけを見つめながら動かない。
姫様の前にあるシチューに触れると程よく人肌くらいの温度に下がっているので、少しでも食べて栄養を体に満たしてあげないと良くなるものも良くならない、なので食介をするために、スプーンでシチューをすくっては、姫様の口にゆっくりと運ぶとぼ~っとしながらも、口をもにゅもにゅと動かしてゆっくりと食べる。

暗闇でわかりにくいけれど、まだ、顔が青い、本調子では無さそう

シチューですら飲み込むのが辛そうなので、シチューの具をスプーンで細かく切ったり潰したりしていく、当然、この状態で乾パンを食べるのは辛いだろうと思い、女将に頼んで乾パンを握りつぶすようにパラパラに砕いてもらい、バラバラになった乾パンをシチューに入れて、ふやかしてから食べさせる。

なんとか、用意したシチューを食べ終えた後は、ゆっくりと目を瞑り静かな寝息が聞こえてくる、どうやら、また眠ってしまったようだ。

姫様が眠りについた後も少しだけ休憩を続けていく、食事の後はどうしても催してしまおうものなので、それらが落ち着いてから出発しても問題はないだろうし、運転する人のコンデションも大事なので、最低限の休息は必要。

全員が最低限の休憩を終えたので、この先に進むための準備をしていく。
本来であれば司令官である姫様が時間や状況を考えて休憩時間なども考えてくれるので、普段であれば何かしら指示がある。
なので、時間的に余裕があるのであれば、無理をしないで、ここで一泊したりとか、そういう判断もあるのかもしれないが、事前情報からも逼迫した状況だと判断されるので、ここは少しでも現場に近づくためにも、寝ずに進むべきだと判断し、運行を再開する準備をする

スピードを出す為に燃料の消費は当然、激しくなるので、車の燃料である魔石を全部取り外して新しい魔石へと入れ替えていく、準備した魔石はまだまだあるので、あと5往復は問題なくいけるだろう。

車の準備を終えたので、次の準備に取り掛かる、野営の痕跡を手早く消す、これはもう死の大地で染みついた習慣、少しでも痕跡を残してしまえば、その周辺を獣たちがうろついて次回にその場所が使いづらくなる。

なので、仮設トイレも匂いけしを使うし、蓋をするときは木の板を1枚かまして、その上に小石や砂利などを敷いてから土を被せて誰かが通ったときに穴に足を取られないように配慮する。

全てを綺麗に完璧に片づける、当然、火も消す、術譜を使って水を生み出し焚火の後にかければ、完全に火種は消えるだろう。

後はもう、全員が車に乗り込み運転を再開するだけ、なのだけれども、戦乙女ちゃん達は夜通しの運転は辛くないのか確認すると「問題ないです!」っと、やや辛そうな表情と声で返事が返ってくるので「代わろうか?」っと、声を掛けるが首を横に振られる「最後まで頑張ります!」っと、次は空元気だけれども、元気よく返事をしてくれたので

その覚悟を受け止め、全員が車に乗り込み出発する。

出発してからも沈黙が続いてく、誰も話さないせいか、気が付くと微睡んでしまっていた。
ふと、車の揺れる衝撃で目を覚ます。時計を確認すると、車に乗り込んで1時間くらいたったあたり、沈黙が続くのでつい、ウトウトと舟をこいでしまっていたみたい。
目の前にいる女将はどうしているのか見てみると女将は、腕を組みながらしっかりと寝ている。
うん、休息が取れるときに取るのは戦士として正しいと思う。

野営をする直前の会話などを思い返せば思い返すほど、様々な疑問が湧いて出てくる

この人数で本当に作戦は成功するのか?
女将と一緒に話し合った内容が真実なのか?

まずは上記の2つが一番気になるが、それ以外にも聞きたいことは山ほどある、疑問だらけ…

太ももの上で寝ている姫様の頭の中は、姫様が見ている世界は、どんな風になのかいつも、気になってしまう。

深い深い思考の末に辿り着いた答えは、一手どころか何手先まで見据えているのか計り知れない時が多い。

太ももの上で寝ている姫様の顔色を見る…心臓が冷えるような感覚が背中に伝わり背筋が冷える

さっきよりも青くない?

脈を計る、脈拍が遅い…血圧は?

手早く血圧を測る道具を取り出して聴診器を血圧を測る腕に当て、血圧を測る為の道具を姫様の腕に巻き、その道具に空気を送る為のポンプを握り、シュコシュコと音を出しながら空気を送り、血圧を測る…

最低血圧が低い!?いや、それだけじゃない、最高血圧もひくい…寝ているにしても低い…指を姫様の鼻の下におき、呼吸のリズムを確認する。呼吸は乱れていない…

…魔力量を計る装置があったはず、それを取り出して、寝てる人で試したことは無いけれど、姫様に握らせて計測する

過去に姫様が安静時にどれくらいの魔力を自然放出しているのか、しっかりとデータを取っているので、過去の状況と比べる

魔力測定機に記された数値は明らかに少ない…寝ているから?それとも純粋に体内の魔力が少ない?
思い返してみる、作戦会議で姫様は目を瞑って何かの術式を発動させていた、そこから一気に顔が青ざめていた

魔力を消費しているのだと判断して、その場で魔力を渡していたけれど、足りていない?
それ程までの莫大な魔力を消費していたってことになるの?…いったいどこに何を作用させたの?

無駄な考察をしてる暇があるの?違うよね?今、私が医療班の団長としてやるべきことをする!!
姫様の服を脱がして肌着も取り払う、私が動き出したのを女将が気が付き目を覚ます

説明しないと、この光景はよろしくないよね?っと一瞬躊躇するが
すかさず、さっきまで座っていた椅子の背もたれを倒して即席のベッドにし、私の服を脱がしてくれる

そうか、女将も魔力譲渡法を知っているんだった

私も上半身を裸にし、魔力伝達効率を最大限にする為に、姫様を抱きしめ即席のベッドで横にならしてもらい意識を集中して魔力を放出し全力だけれど、ゆっくりと丁寧に絶対に事故がないように細心の注意を払いながら、姫様に魔力を全力で注いでいく。

幸いにも、あれを飲んだおかげで魔力を精製するための体内の臓器が活発に動いているので、持てる全ての魔力を注ぎ込んでも問題はないだろう。
全力で魔力を姫様を抱きかかえるように注いでいると、視界にはいった女将の表情が悔しそうで泣きそうな表情をしている?

そうだね、魔力を渡す方法であれば女将も出来る仕事だったかも、女将を頼ってあげればよかったのかな?
「…あたいも、、、、学があれば、、、救えたのかねぇ?…」
涙がつぅっと落ち握りしめる拳に落ちる、すっと女将の握っている拳に手を添え
「おかみ、違うよ、おかみは、いっぱい救ってきた、人によって出来ることがある、君だっていっぱい救ってきたじゃないか、だから、大丈夫、自信を持て」
言葉をかけると
「ぅぁ…はい、戦士長、はい、そ、そうですね、そ、うですね。はい…はい・・・・」
大粒の涙を流し始めた

そっか、お父さんに言って欲しかった言葉だったんだね。

女将の手を握りながらも、意識を集中させ、姫様に魔力を注ぎ続けていく

違和感を感じる、魔力を注いでも注いでも、満たされていく感覚がない、底が見えない…

やっぱり、姫様の体はおかしい、魔力を貯蔵する箇所が多すぎる?全てを満たしきれる自信がない

…ちがう、貯蔵する場所が多いんじゃない




本来あるべき場所に、魔力がない、空っぽなんだ、姫様は、魔力を…保持できない?



そ、んなこと、って、あり、えるの?

ある理論では、人の細胞全てに、魔力が宿り、魔力を一定量、貯蔵し意識しないでも活用しながら人々は生活をしている。
魔力を精製する臓器、魔力を貯蔵する臓器、そして、魔力を運ぶ臓器、それらが血液のように循環して、細胞を、体内にある全ての臓器、
筋肉から骨、脳に至るまで魔力に満たされ魔力を保有している

それが空っぽだったら


どうやって術式を発動しているの?だって、魔力がないじゃない?…細胞を犠牲にしている?

そんな、ことをして…どうして、生きているの?



姫様は、本当に人なの?


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