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湧き上がる疑問… ②
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「大丈夫かい?起きれるかい、団長」
優しく頬を叩かれる感覚で目を覚ます、少し肌寒い…姫様は?
視線をちらりと下げると顔色はよさそうだけど、寒そうに震えているタオルの代わりに脱いだ服を上にかぶせてくれているけれど
肌寒い、魔力を消耗したから?…違う、純粋に気温が低い、それもそう、だって死の大地から遠いところまで来たから。
「やっぱり、この辺りはちょっと肌寒いねぇ、ついうっかりいつもの様な薄着の恰好で出てきちまったのは失敗だったかねぇ?」
どうやら、女将も肌寒いようだ、耐えれないほどではないけれど、肌を露出していい気温ではない。
気温が大きく変わるっと、いうことは
「もうすぐで到着だよ、南の砦に、あたいの…仇共が待ち続けている大地さぁねぇ」
最後の方の言葉を言い終わるころには殺気が駄々洩れになってるよ?心の気を鎮めなさい、運転している戦乙女ちゃんが驚いているじゃないの。
女将を宥めながら姫様の服装を整えてあげる、顔色も真っ青じゃなく普段通りの色になっている。
脈も血圧も魔力量もしっかりと検査し、特別おかしな数値ではなく正常値、寒さで免疫力低下が発生して風邪をひいたりはしていない様子。
念のために、色んな薬も持ってきているけれど、飲む必要はなさそう。
うん、よかったよかった、やっぱり、魔力欠乏症になっていたと考えるのが妥当なのだけどさ…あの一瞬で、そこまで魔力を消費したってこと?
いったいどんな術式を使っているのだろうか?考えられるっていうか、思い当たるのが思考を加速させる術式なのだと思う、思うんだけれども、魔力を欠乏するほどの消耗する程の強力な術式じゃないと思うけれど?
仮説として、思考加速術式ではなく、さらにその上の術式である可能性は?姫様だけが知る、始祖様が使うような秘術を発動していた可能性は?
大いにある…
あの本を私も熟読して理解しないといけない、絶対に時間を作って読む、読まないといけない、そうしないとイザ!というときに手段が思い浮かばずに為す術なしに崩れるように絶望の中死にゆく…そんなのは嫌だ、絶対に諦めたくない、最後まで足掻きたい、例え自分の限りある命を削ったとしても。
知識があるから、知恵があるからこそ開ける活路があるのだとNo2が教えてくれたじゃない。
知識は武器だ、知恵は勇気だ、思考が途絶えるのは愚者だ、持てる全てを動員して救え、それが体なのか心なのか、最後の判断はお前の心次第だ…ですね、大先輩。
「団長も、考え事してないで服を着なさい、女の子が肌を見せるものじゃ~ないよ?」
はっとして、自分の上半身が丸裸だということを思い出し戦闘服を着る。
戦闘服を着終わると、窓から反射した自分の姿を見て、思うことがある。
姫様によって私の体は疑似的に女性の体に近づいたから、その、今、冷静になって見ると、この服ってかなり体のラインが出る。だから、その、ぴっちりとしているから胸の形もばっちり、、、見えるのよ、ねぇ…
冷静になってこの後、起こる出来事を想像する
ここから先に会う人達は気ごころ知れていない人達ばかり…初対面の人達、その人たちにこの服装…ぁ、だめ、これ凄く恥ずかしい…かも!!
耳まで真っ赤になっている姿を見た女将がすっと隊服を差し出してくれる
「上から着なさい」
その眼差しは、娘の貞操を、辱めを、受けさせない為の母親のような強く優しい瞳だった。
瞳を潤わせながら「ありがとうおかみ~」感謝の言葉を述べながら受け取りささっと戦闘服の上に着る。
うん!これなら普通の服と変わりないから変に女性の部分が協調されない!恥ずかしくない!!
「もうすぐ、着きますけれど、どうします?姫様は起きました?一旦停車します?」
後ろの席から、前方を見ると、確かに遠目に砦が見える。このまま進んでもいいのだろうか?だって、私達はまだ作戦の全容を聞いていないし、肝心の姫様も起きていないのであれば
「ええ、とま」「らなくていいよ、ありがとう、私を万全の状態で運んでくれて、信じてたよ団長にみんな!」
言葉を遮るように後ろから姫様の声が聞こえてくる
振り返ると二本の指、示指、中指だけを伸ばして「ふっかつ!ブイブイ!!」っと笑顔で声も元気な姫様の姿があった
姫が何者であろうと、例え人でなかろうと、悪魔だろうと私は、いいえ、私達人類はきっとこの人に縋る
だって、こんなにも頼もしく感じるのだから
気が付くと姫様を抱きしめていた「もう、団長は甘えん坊だなぁ~お姉ちゃんにそんなに会いたかったの?」ぽんぽんっと背中を叩かれたと思ったら頭を撫でられていた
「心配したんだよー」「うん、ごめんね、これが終わったら全部、説明するからね…私の事」
私にしか聞こえない声で
「団長なら気が付くよね、この体の不自然さに」
すっと私から離れると「ごめん!やっぱりちょっと止まって!」何か緊急事態!?「も、もれるぅ…」緊急事態だ!!
窓から緊急停止の合図をだすと、即座にその場に停車し、全力で準備に取り掛かる、後続の戦乙女ちゃん達も緊急事態に備えて槍などの武装を整えて駆けつけるが
簡易トイレを設営した瞬間に駆け込む姫様を見て状況を察し、胸を撫でおろす
そりゃ、まぁ、ね、急停止の合図を送れば、普通に考えれば敵襲かと思うよね。
うん、ある意味、敵襲だよね~、普通に考えたらほぼ丸一日排泄してないんだもんね、よく耐えられたね…
簡易トイレから満足そうに出てきたので、術譜を使って水を作り出し、桶いっぱいに貯めて、衛生ポーチから石鹸が入った瓶を取り出し、液体石鹸を手の上に出して手を綺麗にしてもらう、手が綺麗になった姫様が
「こっから、すぐに作戦に入るけど、みんな大丈夫?たぶん、着いたら休む暇ないから」ぴっと指を指す簡易トイレ
うん、準備は大事、全員が順番で入っていく
その間に、喉を潤したり、丸薬を齧る、私と姫様はアレを飲み干し眉間に皺が出来ている…その姿を見た女将がすぐに口直しの液体を渡してくれたので、受け取り、躊躇いなく蓋を開けて口に含む
あのえぐい味から解放されるまで口に含み、全てが癒された瞬間に飲み干すと、眉間に出来ていた皺がなくなる。
今のうちに作戦を確認したほうがいいのだろうか?
「ひめさ」「作戦は非常に簡単だから車の中で説明するから安心してね、はっきり言うけどね、今回の作戦は凄く簡単だから」
その代わり、多大な犠牲を強いられるけどね
ぽそっと聞こえたその言葉に背筋が凍る…その犠牲は、まさか、南の砦に居る兵士?それとも、助けを求めて避難しようとこっちに向かっているであろう村人?
全員の支度とこれから待ち受ける困難に立ち向かう勇気を胸に抱き車に乗りこみ、南の砦に向かっていく
夜通し運転したおかげもあって、予定よりもかなり早くに到着することができそう
もう見えている砦につくまでの間に姫様から話された作戦内容は非常に簡単でシンプルな物だった
本当にそれだけで解決するの?っと驚きがあるが、余りにも内容が簡単すぎてすこし不安にもなる、けれど、そんなのはいつものこと!姫様の作戦が失敗することなんて今まで一度もなか、、、なかった!!
砦の門に繋がる橋の手前に車を止めると、門番の人が駆けつけてくれる「避難民のか、いえ!失礼しました!お待ちしておりました!我らが救世主!死の大地の姫様!」敬礼をしながら挨拶をしてくれるのだけれど
その二つ名、すっごい物騒だからやめようね?って軽く念を押したくなる、けれども、そんな暇はないよねっと思っていると姫様が車からゆっくりと降りて
「ごきげんようっと、挨拶を優雅にしたいところですが、緊急事態です、司令官が居る場所に案内をしていただいてもよろしいですか?」
優雅に気品あふれる返事を返すと門番もその優雅な佇まいに、圧倒されながらも、声をどもらせながらも、兵士として、しっかりと責務を果たそうとする
姫様は門番の兵士と一緒に司令官のいる場所に向かって案内されていくのを見送った後は
その間に私達は姫様に言われたとおりにある場所に魔道具の設置をするために移動する。
姫様なら、ここの司令官から指揮官をもぎ取ってくる、その姿はまさに、我儘なやんちゃ盛りの男の子からおもちゃを取り上げてから、新しくて見たこともない、もっともっと面白いおもちゃを渡してあげる、魅惑的な年上のお姉さんのように指揮権をもぎ取ってくるだろう。
獣の軍勢がいる南から見て、砦の正面の門、砦に入る為の橋、本来であればこの二つの侵入者を防ぐための機構は、有事の際は絶対に開いていてはいけない、敵に内部に侵入される恐れがあるため今の状況化であれば門を閉めて橋を上げるのが普通だと思う。
この二か所の門と橋だけでも異常事態だと理解できるのに、それだけじゃない、他にもある砦に渡る為の全ての門が開門されており、堀の上に橋がかかっている。
この南の砦は☆の形を描いていて、尖っている方から凹んでいる方向に向かっていく線上に門があり、全部で、10の門がある、☆の形と言っても角度はこれ程まで急ではなく、かなり緩やかな角度で構成されている。
その全ての門が開き、橋が架かっているなんて、恐らくこの砦が生まれてから一度も無かった出来事だろう。
色んな方向から避難民が来るので、それを手早く受け入れる為だろうし、遠見の術式で遠くを見た時に遊撃部隊が獣軍勢を引き付けたり防衛ラインを作ったりしているのが見える。
ただ、その周りに兵士以外の人が見当たらないので殆どの人達は非難が終わったのではないかと推測される。
現に、門の奥を覗くと色んな人たちがテントをはり、砦の中で生活を送っている、きっと避難してきた各村の人達だと思うの誰けど、どうして、危険な砦にずっと駐留しているのか?危険場所で生活を続けるよりも、安全な王都に行かないのはどうしてなのだろうか?
見て判断できるだけの材料を見ても、この砦を包み込んでいる現状は、不思議だと感じながらも作戦の為に準備を進めていく。
準備をしていると、門の奥から、砦に居る兵士達が私達の行動を注意しに来るが、女将の姿を見て言い淀む、そりゃぁ遠くから見ても大きくて、近くに来て更にでかく見える、あの巨体だとびっくりするよね。初見だと遠近感狂うよね。
「ぉ、ぉお前たちはな、な、んだ?」言い淀んでいたが意を決して声を掛けてくる、ん~時間的余裕も、あるから相手してあげるか
兵士に近づいて説明しようと思って作業を中断しようとしたら、資材をこっちに向かって運んでくる戦乙女ちゃん達がすれ違いざまさらっと一言だけ
「私達の服装で判断できないの?無知なのかしら?」兵士の耳元で怒気を含めた声で声を掛けている。
駄目だよー?そんな相手を下に見るような発言って、余り褒められた行為じゃ~ないよ?
ほらー兵士さんが委縮しちゃってるじゃないの、めちゃくちゃこっちを見て怖がってるよ?
「団長、あの手の無知な一兵卒なんて相手をする必要なんてありませんわ、作業を進めていきましょう」資材を置きながら切れ味鋭い冷たい意見をいただく。
ん~、まぁ、そう…だね、それはそう、戦乙女ちゃんの言い分ももちろんわかるよ?だって、隊服の紋章で判断できるだろ?って思うけれども、兵士さんだって怪しい人たちが突如、敵が居るであろう方向の門前で陣取って、何か作業をし始めたら声を掛けるのが仕事じゃない?
ちゃんと職務を全うしている兵士さんに一言だけフォローしておいてあげようかな
「兵士さん、気分を害さないでくださいね!私達は、獣たちから守る、最初で最後の砦、最前線の街からきた一団です、人類を守るために駆けつけただけですので!ご心配をおかけしましたー!お仕事、ご苦労様です~」
大きな声で兵士さんに届くように声を出し、兵士さんがこちらを見て話を聞いてくれたので最後に軽くごめんねっとジェスチャーをした後、ウィンクしながら手を振ってから作業を再開する
作業も終わろうか、という段階になる。
大体の設置は終わったんだけど、袋から出てきたこの装備って、どうみても…
防護服だよね?対毒用の…
使うの?毒?敵の方がだよね?だって、さっきしてくれた説明だと獣の軍勢に向かってぶちかますだけっていってた、だけど何をぶちかますのか、何を弾にするのか教えてもらっていない。
毒をぶちかますの?それとも敵の一団の中に毒を使う敵が居るから、それを浴びても問題ないように念のために対策として持ってきたのかな?全員分、入ってるし、この前、毒を使ってきた人型が居たから二度あることは三度ある、立て続けに毒使いが出てくることもあるよね?だから、念のため…だよね?
ある程度の準備が出来たので姫様からの指示を待つだけの状態になる、魔石のチェックも終わったし、魔道具の起動も確認した
ん~む、それにしても、持ってきた魔道具を見る。
大きな大きな二人係じゃないと持てないサイズで、筒状の魔道具。
どんな魔道具なのか、詳しくは知らないんだよね、でも、どっかで見たことがあるなぁ。何処だったかな?敵から奪った魔道具を改良したものだってのはわかるんだけどなぁ…
まぁ、使用方法とか具体的な指示は姫様が来てから来てから。
後は~チェックするもの準備するものミスはないよね?目の前にある大量の大型魔石、これでたぶん、魔道具を起動して獣軍勢に対して運用するのかな?
後は、魔道具に魔力を流すための道具、その道具の台座に魔石をセットすると、セットした台座から魔力が流れていく仕組みになっていてる
台座と魔道具を繋ぐためのケーブルもしっかりとある、ケーブルの破損が無いかの確認はしていないが、予備が複数あるので問題はない。
もう一つ台座タイプの魔道具があって、それは魔石をセットするのではなく既に球状の物体が設置されていてケーブルが魔石を乗せる台座に繋がっている。
見たことがない魔道具だけど?これも魔石を使って起動させるのかな?
セッティングも終わって点検も終わって、司令塔がくるのを待つばかりで、ふと、女将がじっと動かないである魔道具を見つめている。
どうやら、筒状の魔道具を見ているみたいで、もしかしたら、何処かで見たことがあるのかな?歴戦の猛者だから、これがどの人型が使用していたのか知っているのかも。
だったら、どんな風に使用されていたのか知ってるかもしれない、時間もありそうだし聞いてみようかな?
女将に声を掛けようとしたら「お待たせ!作戦開始するよって、もう準備万端じゃーん!やっるぅ!!」ニコニコでうっきうきの姫様が現場にやってくる
姫様はたまにテンションがおかしくなる時がある、一応、緊急事態で緊迫した現場なんだけど?よっぱど作戦会議が楽しかったのかな?
あと、その、姫様の後ろから大量の物見遊山みたいな人たちがいっぱい、いるんだけど?何か演説でもしたの?
鼻歌でも聞こえてきそうなくらい上機嫌で近くに来ると
「指揮権も全てもぎ取ってきたよ、確認したいことも全部できた、遠慮なくいけるよ、終わらせよう、これ以上は好きにさせない」
指令室で、確認しておきたいことや、予め準備をしないと作戦が開始できない、それらの、条件は全て整ったってことで、よいのかな?
姫様は、先ほど袋から出した対毒用の防護服を手に取り着こんでいく、女将も、私も?渡されるので着ていく、っていうかみんな、しっかりと着始めてる、それだけじゃない、しっかりとメンバー全員の体のサイズに合わせてつくられているみたいで、女将も綺麗にすっぽりと全身覆われている。
ここまで念入りに準備するってことは、やっぱり、敵の一団の中に毒を使う敵がいるってことかな?
後から胸に勲章を付けている、責任者かな?部隊長かな?その人と一緒に付いてきた兵士達に姫様が一人一人指示を出すと砦の兵士達が動き始める。
魔石を置く台座と魔道具を繋げるケーブルをだいぶ遠くに運ばせている、それと一緒に球体の魔道具をケーブルに繋げた状態で砦の中にまで運んでいく
前に置きすぎてしまったのかな?
準備が出来ると、姫様が合図を送ると司令官の方が橋を上げるように声を出すと、橋が上がる、でも門は開けている。
魔道具から伸びているケーブルもしっかりと台座に刺さっているし、台座からもこっちにケーブルが伸びていて筒状の魔道具と繋がっている。
「さぁ、元気に殲滅作戦といきますか!…なるべくトラブルが無ければいいんだけどね~」
珍しく弱気な発言、どんな時でも自信満々な姫様も今回ばかりは手を焼く相手ってことになるのだろう。
気を引き締めていこう、一つのミスでこの砦が落ちてしまったらかなりの損害になってしまうし、多くの人の命が失われることはよろしくないからね。
優しく頬を叩かれる感覚で目を覚ます、少し肌寒い…姫様は?
視線をちらりと下げると顔色はよさそうだけど、寒そうに震えているタオルの代わりに脱いだ服を上にかぶせてくれているけれど
肌寒い、魔力を消耗したから?…違う、純粋に気温が低い、それもそう、だって死の大地から遠いところまで来たから。
「やっぱり、この辺りはちょっと肌寒いねぇ、ついうっかりいつもの様な薄着の恰好で出てきちまったのは失敗だったかねぇ?」
どうやら、女将も肌寒いようだ、耐えれないほどではないけれど、肌を露出していい気温ではない。
気温が大きく変わるっと、いうことは
「もうすぐで到着だよ、南の砦に、あたいの…仇共が待ち続けている大地さぁねぇ」
最後の方の言葉を言い終わるころには殺気が駄々洩れになってるよ?心の気を鎮めなさい、運転している戦乙女ちゃんが驚いているじゃないの。
女将を宥めながら姫様の服装を整えてあげる、顔色も真っ青じゃなく普段通りの色になっている。
脈も血圧も魔力量もしっかりと検査し、特別おかしな数値ではなく正常値、寒さで免疫力低下が発生して風邪をひいたりはしていない様子。
念のために、色んな薬も持ってきているけれど、飲む必要はなさそう。
うん、よかったよかった、やっぱり、魔力欠乏症になっていたと考えるのが妥当なのだけどさ…あの一瞬で、そこまで魔力を消費したってこと?
いったいどんな術式を使っているのだろうか?考えられるっていうか、思い当たるのが思考を加速させる術式なのだと思う、思うんだけれども、魔力を欠乏するほどの消耗する程の強力な術式じゃないと思うけれど?
仮説として、思考加速術式ではなく、さらにその上の術式である可能性は?姫様だけが知る、始祖様が使うような秘術を発動していた可能性は?
大いにある…
あの本を私も熟読して理解しないといけない、絶対に時間を作って読む、読まないといけない、そうしないとイザ!というときに手段が思い浮かばずに為す術なしに崩れるように絶望の中死にゆく…そんなのは嫌だ、絶対に諦めたくない、最後まで足掻きたい、例え自分の限りある命を削ったとしても。
知識があるから、知恵があるからこそ開ける活路があるのだとNo2が教えてくれたじゃない。
知識は武器だ、知恵は勇気だ、思考が途絶えるのは愚者だ、持てる全てを動員して救え、それが体なのか心なのか、最後の判断はお前の心次第だ…ですね、大先輩。
「団長も、考え事してないで服を着なさい、女の子が肌を見せるものじゃ~ないよ?」
はっとして、自分の上半身が丸裸だということを思い出し戦闘服を着る。
戦闘服を着終わると、窓から反射した自分の姿を見て、思うことがある。
姫様によって私の体は疑似的に女性の体に近づいたから、その、今、冷静になって見ると、この服ってかなり体のラインが出る。だから、その、ぴっちりとしているから胸の形もばっちり、、、見えるのよ、ねぇ…
冷静になってこの後、起こる出来事を想像する
ここから先に会う人達は気ごころ知れていない人達ばかり…初対面の人達、その人たちにこの服装…ぁ、だめ、これ凄く恥ずかしい…かも!!
耳まで真っ赤になっている姿を見た女将がすっと隊服を差し出してくれる
「上から着なさい」
その眼差しは、娘の貞操を、辱めを、受けさせない為の母親のような強く優しい瞳だった。
瞳を潤わせながら「ありがとうおかみ~」感謝の言葉を述べながら受け取りささっと戦闘服の上に着る。
うん!これなら普通の服と変わりないから変に女性の部分が協調されない!恥ずかしくない!!
「もうすぐ、着きますけれど、どうします?姫様は起きました?一旦停車します?」
後ろの席から、前方を見ると、確かに遠目に砦が見える。このまま進んでもいいのだろうか?だって、私達はまだ作戦の全容を聞いていないし、肝心の姫様も起きていないのであれば
「ええ、とま」「らなくていいよ、ありがとう、私を万全の状態で運んでくれて、信じてたよ団長にみんな!」
言葉を遮るように後ろから姫様の声が聞こえてくる
振り返ると二本の指、示指、中指だけを伸ばして「ふっかつ!ブイブイ!!」っと笑顔で声も元気な姫様の姿があった
姫が何者であろうと、例え人でなかろうと、悪魔だろうと私は、いいえ、私達人類はきっとこの人に縋る
だって、こんなにも頼もしく感じるのだから
気が付くと姫様を抱きしめていた「もう、団長は甘えん坊だなぁ~お姉ちゃんにそんなに会いたかったの?」ぽんぽんっと背中を叩かれたと思ったら頭を撫でられていた
「心配したんだよー」「うん、ごめんね、これが終わったら全部、説明するからね…私の事」
私にしか聞こえない声で
「団長なら気が付くよね、この体の不自然さに」
すっと私から離れると「ごめん!やっぱりちょっと止まって!」何か緊急事態!?「も、もれるぅ…」緊急事態だ!!
窓から緊急停止の合図をだすと、即座にその場に停車し、全力で準備に取り掛かる、後続の戦乙女ちゃん達も緊急事態に備えて槍などの武装を整えて駆けつけるが
簡易トイレを設営した瞬間に駆け込む姫様を見て状況を察し、胸を撫でおろす
そりゃ、まぁ、ね、急停止の合図を送れば、普通に考えれば敵襲かと思うよね。
うん、ある意味、敵襲だよね~、普通に考えたらほぼ丸一日排泄してないんだもんね、よく耐えられたね…
簡易トイレから満足そうに出てきたので、術譜を使って水を作り出し、桶いっぱいに貯めて、衛生ポーチから石鹸が入った瓶を取り出し、液体石鹸を手の上に出して手を綺麗にしてもらう、手が綺麗になった姫様が
「こっから、すぐに作戦に入るけど、みんな大丈夫?たぶん、着いたら休む暇ないから」ぴっと指を指す簡易トイレ
うん、準備は大事、全員が順番で入っていく
その間に、喉を潤したり、丸薬を齧る、私と姫様はアレを飲み干し眉間に皺が出来ている…その姿を見た女将がすぐに口直しの液体を渡してくれたので、受け取り、躊躇いなく蓋を開けて口に含む
あのえぐい味から解放されるまで口に含み、全てが癒された瞬間に飲み干すと、眉間に出来ていた皺がなくなる。
今のうちに作戦を確認したほうがいいのだろうか?
「ひめさ」「作戦は非常に簡単だから車の中で説明するから安心してね、はっきり言うけどね、今回の作戦は凄く簡単だから」
その代わり、多大な犠牲を強いられるけどね
ぽそっと聞こえたその言葉に背筋が凍る…その犠牲は、まさか、南の砦に居る兵士?それとも、助けを求めて避難しようとこっちに向かっているであろう村人?
全員の支度とこれから待ち受ける困難に立ち向かう勇気を胸に抱き車に乗りこみ、南の砦に向かっていく
夜通し運転したおかげもあって、予定よりもかなり早くに到着することができそう
もう見えている砦につくまでの間に姫様から話された作戦内容は非常に簡単でシンプルな物だった
本当にそれだけで解決するの?っと驚きがあるが、余りにも内容が簡単すぎてすこし不安にもなる、けれど、そんなのはいつものこと!姫様の作戦が失敗することなんて今まで一度もなか、、、なかった!!
砦の門に繋がる橋の手前に車を止めると、門番の人が駆けつけてくれる「避難民のか、いえ!失礼しました!お待ちしておりました!我らが救世主!死の大地の姫様!」敬礼をしながら挨拶をしてくれるのだけれど
その二つ名、すっごい物騒だからやめようね?って軽く念を押したくなる、けれども、そんな暇はないよねっと思っていると姫様が車からゆっくりと降りて
「ごきげんようっと、挨拶を優雅にしたいところですが、緊急事態です、司令官が居る場所に案内をしていただいてもよろしいですか?」
優雅に気品あふれる返事を返すと門番もその優雅な佇まいに、圧倒されながらも、声をどもらせながらも、兵士として、しっかりと責務を果たそうとする
姫様は門番の兵士と一緒に司令官のいる場所に向かって案内されていくのを見送った後は
その間に私達は姫様に言われたとおりにある場所に魔道具の設置をするために移動する。
姫様なら、ここの司令官から指揮官をもぎ取ってくる、その姿はまさに、我儘なやんちゃ盛りの男の子からおもちゃを取り上げてから、新しくて見たこともない、もっともっと面白いおもちゃを渡してあげる、魅惑的な年上のお姉さんのように指揮権をもぎ取ってくるだろう。
獣の軍勢がいる南から見て、砦の正面の門、砦に入る為の橋、本来であればこの二つの侵入者を防ぐための機構は、有事の際は絶対に開いていてはいけない、敵に内部に侵入される恐れがあるため今の状況化であれば門を閉めて橋を上げるのが普通だと思う。
この二か所の門と橋だけでも異常事態だと理解できるのに、それだけじゃない、他にもある砦に渡る為の全ての門が開門されており、堀の上に橋がかかっている。
この南の砦は☆の形を描いていて、尖っている方から凹んでいる方向に向かっていく線上に門があり、全部で、10の門がある、☆の形と言っても角度はこれ程まで急ではなく、かなり緩やかな角度で構成されている。
その全ての門が開き、橋が架かっているなんて、恐らくこの砦が生まれてから一度も無かった出来事だろう。
色んな方向から避難民が来るので、それを手早く受け入れる為だろうし、遠見の術式で遠くを見た時に遊撃部隊が獣軍勢を引き付けたり防衛ラインを作ったりしているのが見える。
ただ、その周りに兵士以外の人が見当たらないので殆どの人達は非難が終わったのではないかと推測される。
現に、門の奥を覗くと色んな人たちがテントをはり、砦の中で生活を送っている、きっと避難してきた各村の人達だと思うの誰けど、どうして、危険な砦にずっと駐留しているのか?危険場所で生活を続けるよりも、安全な王都に行かないのはどうしてなのだろうか?
見て判断できるだけの材料を見ても、この砦を包み込んでいる現状は、不思議だと感じながらも作戦の為に準備を進めていく。
準備をしていると、門の奥から、砦に居る兵士達が私達の行動を注意しに来るが、女将の姿を見て言い淀む、そりゃぁ遠くから見ても大きくて、近くに来て更にでかく見える、あの巨体だとびっくりするよね。初見だと遠近感狂うよね。
「ぉ、ぉお前たちはな、な、んだ?」言い淀んでいたが意を決して声を掛けてくる、ん~時間的余裕も、あるから相手してあげるか
兵士に近づいて説明しようと思って作業を中断しようとしたら、資材をこっちに向かって運んでくる戦乙女ちゃん達がすれ違いざまさらっと一言だけ
「私達の服装で判断できないの?無知なのかしら?」兵士の耳元で怒気を含めた声で声を掛けている。
駄目だよー?そんな相手を下に見るような発言って、余り褒められた行為じゃ~ないよ?
ほらー兵士さんが委縮しちゃってるじゃないの、めちゃくちゃこっちを見て怖がってるよ?
「団長、あの手の無知な一兵卒なんて相手をする必要なんてありませんわ、作業を進めていきましょう」資材を置きながら切れ味鋭い冷たい意見をいただく。
ん~、まぁ、そう…だね、それはそう、戦乙女ちゃんの言い分ももちろんわかるよ?だって、隊服の紋章で判断できるだろ?って思うけれども、兵士さんだって怪しい人たちが突如、敵が居るであろう方向の門前で陣取って、何か作業をし始めたら声を掛けるのが仕事じゃない?
ちゃんと職務を全うしている兵士さんに一言だけフォローしておいてあげようかな
「兵士さん、気分を害さないでくださいね!私達は、獣たちから守る、最初で最後の砦、最前線の街からきた一団です、人類を守るために駆けつけただけですので!ご心配をおかけしましたー!お仕事、ご苦労様です~」
大きな声で兵士さんに届くように声を出し、兵士さんがこちらを見て話を聞いてくれたので最後に軽くごめんねっとジェスチャーをした後、ウィンクしながら手を振ってから作業を再開する
作業も終わろうか、という段階になる。
大体の設置は終わったんだけど、袋から出てきたこの装備って、どうみても…
防護服だよね?対毒用の…
使うの?毒?敵の方がだよね?だって、さっきしてくれた説明だと獣の軍勢に向かってぶちかますだけっていってた、だけど何をぶちかますのか、何を弾にするのか教えてもらっていない。
毒をぶちかますの?それとも敵の一団の中に毒を使う敵が居るから、それを浴びても問題ないように念のために対策として持ってきたのかな?全員分、入ってるし、この前、毒を使ってきた人型が居たから二度あることは三度ある、立て続けに毒使いが出てくることもあるよね?だから、念のため…だよね?
ある程度の準備が出来たので姫様からの指示を待つだけの状態になる、魔石のチェックも終わったし、魔道具の起動も確認した
ん~む、それにしても、持ってきた魔道具を見る。
大きな大きな二人係じゃないと持てないサイズで、筒状の魔道具。
どんな魔道具なのか、詳しくは知らないんだよね、でも、どっかで見たことがあるなぁ。何処だったかな?敵から奪った魔道具を改良したものだってのはわかるんだけどなぁ…
まぁ、使用方法とか具体的な指示は姫様が来てから来てから。
後は~チェックするもの準備するものミスはないよね?目の前にある大量の大型魔石、これでたぶん、魔道具を起動して獣軍勢に対して運用するのかな?
後は、魔道具に魔力を流すための道具、その道具の台座に魔石をセットすると、セットした台座から魔力が流れていく仕組みになっていてる
台座と魔道具を繋ぐためのケーブルもしっかりとある、ケーブルの破損が無いかの確認はしていないが、予備が複数あるので問題はない。
もう一つ台座タイプの魔道具があって、それは魔石をセットするのではなく既に球状の物体が設置されていてケーブルが魔石を乗せる台座に繋がっている。
見たことがない魔道具だけど?これも魔石を使って起動させるのかな?
セッティングも終わって点検も終わって、司令塔がくるのを待つばかりで、ふと、女将がじっと動かないである魔道具を見つめている。
どうやら、筒状の魔道具を見ているみたいで、もしかしたら、何処かで見たことがあるのかな?歴戦の猛者だから、これがどの人型が使用していたのか知っているのかも。
だったら、どんな風に使用されていたのか知ってるかもしれない、時間もありそうだし聞いてみようかな?
女将に声を掛けようとしたら「お待たせ!作戦開始するよって、もう準備万端じゃーん!やっるぅ!!」ニコニコでうっきうきの姫様が現場にやってくる
姫様はたまにテンションがおかしくなる時がある、一応、緊急事態で緊迫した現場なんだけど?よっぱど作戦会議が楽しかったのかな?
あと、その、姫様の後ろから大量の物見遊山みたいな人たちがいっぱい、いるんだけど?何か演説でもしたの?
鼻歌でも聞こえてきそうなくらい上機嫌で近くに来ると
「指揮権も全てもぎ取ってきたよ、確認したいことも全部できた、遠慮なくいけるよ、終わらせよう、これ以上は好きにさせない」
指令室で、確認しておきたいことや、予め準備をしないと作戦が開始できない、それらの、条件は全て整ったってことで、よいのかな?
姫様は、先ほど袋から出した対毒用の防護服を手に取り着こんでいく、女将も、私も?渡されるので着ていく、っていうかみんな、しっかりと着始めてる、それだけじゃない、しっかりとメンバー全員の体のサイズに合わせてつくられているみたいで、女将も綺麗にすっぽりと全身覆われている。
ここまで念入りに準備するってことは、やっぱり、敵の一団の中に毒を使う敵がいるってことかな?
後から胸に勲章を付けている、責任者かな?部隊長かな?その人と一緒に付いてきた兵士達に姫様が一人一人指示を出すと砦の兵士達が動き始める。
魔石を置く台座と魔道具を繋げるケーブルをだいぶ遠くに運ばせている、それと一緒に球体の魔道具をケーブルに繋げた状態で砦の中にまで運んでいく
前に置きすぎてしまったのかな?
準備が出来ると、姫様が合図を送ると司令官の方が橋を上げるように声を出すと、橋が上がる、でも門は開けている。
魔道具から伸びているケーブルもしっかりと台座に刺さっているし、台座からもこっちにケーブルが伸びていて筒状の魔道具と繋がっている。
「さぁ、元気に殲滅作戦といきますか!…なるべくトラブルが無ければいいんだけどね~」
珍しく弱気な発言、どんな時でも自信満々な姫様も今回ばかりは手を焼く相手ってことになるのだろう。
気を引き締めていこう、一つのミスでこの砦が落ちてしまったらかなりの損害になってしまうし、多くの人の命が失われることはよろしくないからね。
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