最前線

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覚悟を決めろ、生きるべき人は誰だ?

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姫様が、各種、魔道具の状態を念入りに確認している間に、近くで砦の兵士達が何かセッティングしている、机が置かれたり地図が置かれたり、地図の上に駒が置かれていく。
椅子には軍服で帽子を深くかぶっていて胸元に勲章が多くつけられている人が座って、こちらをじっくりと熱のこもった視線で見てくる、ううん、こっちじゃないな、視線の先にあるのは常に姫様だけ、姫様を熱心に見つめ続けている?

見つめる先の人のことを思い返せば納得だよね、だってさ、今まで数多くの実績や画期的な発明をしてきているし、自ら大陸全土で色々な交渉をしてきた強者だから、あちこちに知り合いがいるし。ファンも多いと聞いている、ならあの熱い視線はそういう類の視線って考えるのが自然だよね…
一瞬だけ思い出す姫様の色んな場所で嫁に来ないかされててうっとしいっという愚痴を…まさか、ね?けっこうお年をめされていますよね?貴方

姫様も視線に気が付いたのか帽子をかぶっている人の席に向かって歩いていくと、机の上にある駒を見て、帽子の人と何か話し込んでいる。
帽子を被った人が後方に待機している人に何か伝えると、待機していた人が砦の方に向きを変えて旗を振っている?あ、手信号か、伝え先は砦の上で敵の位置を監視している人達かな?
砦の上に居る人も同じように両手に持った赤と白の旗をふっている。

何処に何の指令が伝わっているのだろうか?と考えていると、視界の隅っこが一瞬だけ光ったように見えたので、光った方に視線を向けると、砦の先端部分からチカチカっと何かが一瞬光ったような気がした。
いや、気のせいじゃない、光を何処かに向かって、消したり付けたりしているってことは、合図を送ってる?なるほど、光を使っての通信だ

帽子の人の近くで待機していた人が大きな声を出す「伝令良し!」その声を聞いて姫様も頷き、こちらに戻ってくる
「作戦開始だよ」
たぶん、獣の軍勢と応戦している人達に撤退の指示とかそういうのを出していたのかな?

女将が片膝をついてあの大きな大きな一人では絶対に持てないほどの筒型の魔道具を肩に乗せて、大きな両腕でがっしりと掴み支えている、筒の後ろで姫様が何かブツブツと言いながら何か準備をしている

後方にある魔石から魔力を送る為の魔道具を見るとランプが光っているので魔力を女将が持っている魔道具に送っているのがわかる。
魔石のサイズは長くて太い、長さは私の胸ちかく?くらいまであるかな?だとすると、120センチは確実にあるのかな?今まであまり見たことがない大きな大きな魔石

日常で使っている魔石のサイズ、その殆どが手に持てるサイズのものばかりだから珍しく感じる。
たぶん、私の知らない間に開発されて、世に出回っていたんだと思う、よくよく考えるとあんな大きな車の燃料にするのだから、そうとうなサイズじゃないと不可能だよね…
工学、錬金学もしっかりと勉強していないとダメだよね。医療ばっかりだから私は…

「移動良し!!」

大きな声が後方から聞こえると「行くよ!」姫様が大きな声を出すと筒状の魔道具から大きな丸い球が発射される
発射される衝撃は凄まじく支えていた女将が少し仰け反るくらいの衝撃で、音もゴウっと風が通り抜けるような凄い音が聞こえた

筒の中に何かを入れている素振りがなかったけれど、いったい何を飛ばしたんだろう?飛んだものを見る為に目に遠見の術式を使って視力を強化し、遠くまで見えるようにすると、点になるまで飛んでいく球体を見る

何かわからない、鉄でもないし?なんだろう?何を飛ばしたんだろう…

凄い勢いで飛んでいく物体が急に爆発する、爆発した場所から、そのまま視線を下に下げると、土煙が大きく立ち上っている場所がある、つまり、獣が多くいる場所ってことになる。
暫くすると、煙が小さくなっていき、上がらなくなる

「魔石交換完了!次、いけます!」

声の方向を見ると戦乙女ちゃん達が魔石を交換し終えたのだと、声で合図を送ると「移動良し!」また、後方から大きな声が聞こえると姫様もすぐに大きな声を出す
「ちょっとまって!!角度計算、まだ・・・・・・・よし!いくよ!」姫様の言葉が終わると同時に筒状の魔道具からまた何かが発射される

遠見の術式で、勢いよく発射された物体を視線で追いかけるとまたも先ほどと同じように上空で爆発する

爆発したものが降り注ぐおおよその場所に視線を向けると、先ほどと同じように土煙があがっている場所から徐々にゆっくりと土煙が消えていく…

二発目の物質も同じような結果になる、この時点で発射した物質が何か、おおよその予測がつく、爆発して地面に降り注いでも何も音がしないのに土煙が消えていく…

毒だ

予想は99%当たっている自信がある
上空で爆発して辺り一面にまき散らす、そのまま、まき散らされた物質が爆発するものであれば、着弾時に音がする、なのに着弾の音がしない。
燃える液体を飛ばしていて地面に触れると燃えるようにするのであれば、燃やし殺すのなら辺り一面が燃える、だけど、火柱が上がらない。

そういった反応もなくただ、静かに土煙が消えるってことは、それはもう、毒の液体を何かしらの方法で包んで飛ばし、特定の場所に来たら何かしらの方法で爆発させて散布していると考えらえる…

多大な犠牲って、もしかしなくても、その辺り一帯を人が住めない毒の景色に変貌させるってこと!?

うわぁっと作戦内容の惨さに絶句していると姫様がこっちに近づいてくる「魔力ちょうだい♪」防護服からは目元しか見えないけれど笑っているのがよくわかる。
ああ、そっかそういうことなのね、着弾地点と爆発するタイミングを計算するために術式を使っているから魔力の消費が断続的に続く、つまりは、魔力が足らなくなる

私、本当に魔力タンク担当だったんだ…い、医療班としての仕事、じゃ、なくない?いや、魔力譲渡法を練習しているのは医療班が殆ど…医療班の仕事、だね。うん。

言葉の通りだったとしても、落胆せずに姫様と一緒に女将の元にいく。
「女将大丈夫?肩とか、腰とか、膝とか痛くない?」
砲台を担当している女将を心配そうに声を掛けると
「大丈夫さ!何発だって耐えてみせるよ!!」
元気いっぱいに力こぶを作るポーズをとって元気アピールをしてくれる。
「無理しないでね?痛い箇所が出来たら早めに団長にいって治癒してもらってね?」
ぁ、よかった、ちゃんと医療班としての仕事もある。

「魔石、ご協力感謝します!チャージ完了です!次、打てる分の魔力あります!!」
「移動良し!!!」

二つの大きな声が後ろから聞こえてくると「団長、魔力ちょうだい!背中の部分から手を入れれるようになってるから!お願いね!」その声に二人は即座に配置につき
次を打ち出す準備をするので、私も指示通りに姫様の防護服の背中を調べるとしっかりと手が入れれる構造になっていて毒が降り注いでも肌に当たらないようにつくられている。

防護服の手の部分を外して背中に手を入れる、更に、姫様の服の隙間から手を入れて肩に直接、手で触れる、触れた後は、目を閉じて意識を集中させ魔力を注いでいく

「ちょ~っち、まっててねー今計算するから・・・・よし!いくよ!」
その言葉に女将はぐっと足と両腕に力を入れ衝撃に備えると凄まじい衝撃と音と共に毒が詰まった、ううん、毒そのものが球状になっている、毒の液体が遠くまで飛ばされていく。
同じように上空で爆発し辺り一面に毒が散布される。当然、地面に居る土煙を巻き上げている場所から土煙がゆっくりと消えていく。

それでも、少量の土煙が出ているのを見る限り全てを毒で殺しつくしているわけではないのだろうが、確実に量を減らしている、この作戦を繰り返す為に兵士達にこちらに向かって逃げてもらいながら毒を打ち続ければ、確実に獣の数を減らしていけるだろうけれど、現場にいる兵士たちは毒に汚染されないのかな?


…兵士達も犠牲に含まれている気がするのだけれど?


今、敵を引き付けている兵士たちはどこで何をしているのだろうか?作戦の全容を知らないので兵士を犠牲にしているとしか思えない。

「移動良し!」「こちらも準備OKです!いけます!」「計算は終わってるよ!いくよ!」
ほぼ同時に声が上がる、そして、打ち出される毒の球…

そして、私はひたすら魔力を注ぎ続けていくだけ。

これを何回繰り返したのかわからない、何度も何度も同じ号令だけが現場に響き渡っていく…魔力を注ぐことだけに集中し、そろそろ限界が近づいてくるのを感じてくると

「獣軍勢沈黙!!作戦は成功です!!」

その大きな号令によって辺り一面で大勢の大きな大きな歓声が沸き上がる

余りにもあっさりとした幕引きに心から安堵すると姫様からは緊張の糸が切れていないのが伝わってくる、まだなにかある?
「…いや、まだだよ、いる、絶対に居る、獣の軍勢を」

指揮している人型が

「撤退はどうなってるの!?現状伝えて!!」
姫様が後方に座っている帽子を被った人に向かって大きな声を出すと、座っている人もこれで終わったのだと油断していたみたいで、帽子をとって深呼吸をしていた様子だったので慌てて指示を出している、伝令係も終わったのだと思って油断していると、

遠い遠い場所から大きな声が聞こえたような気がした

「報告!読み上げます!大量の獣が死骸の中から、死なない獣あり!こちらに向かって走ってきています!!」
その大きな報告を聞いた瞬間に「それと絶対に応戦しようと思わないでください!徹頭徹尾、逃げるか、隠れてください!!後、走ってくる敵とこの場所の直線状に絶対に居ないようにしてください」
姫様の声を聞いた瞬間に旗を振っている人が帽子を被っている人の指示を待つまでもなく伝令を旗を振って伝えていく
「戦乙女ちゃん!車をこっちまで持ってきて!大急ぎで!」
その声と同時に門に繋がっている橋が下りてくる、姫様がポケットから何かを取り出す、ベル?ベルをチンチンっと二回ほど鳴らしている?
「司令官様!ケース2!大急ぎでお願いします!人型が来ます!!」
その声にどうしたらいいのか慌てふためいている司令官が兵士達に指示を出していく。
門と繋ぐ橋が下りてくると車がこちらに向かって走ってくる、車が手前に停車する、どうやら砦の兵士が車に乗って待機していてくれていたみたい
「ケース2を出して!」車の近くで待機していた戦乙女ちゃんが荷台からすぐに箱を持ってくる、箱をよく見ると、ケース2と書かれている木箱だった。

「団長は筒の洗浄お願い!道具は足元」その声と同時に手を防護服から抜いて、再度、毒に触れても大丈夫なように手袋を装着し筒の中を女将の足元に置かれている道具を使って毒を洗浄していく、その為には何の道具があるのか確認する必要がある、少しでも手早く終わらすためには道具を見て手順を構築しないといけない。
足元の道具を確認する、置かれている道具を見るとしっかりと毒の中和剤まで入っており、乾拭きモップもある、っということは、しっかりと乾燥させるべきと判断する

女将が筒をこちらに向けてくれるので一旦、魔力を送るケーブルを外して、大急ぎで洗浄する。

遠くから聞こえていた音が少しずつ近づいてきているのがわかる、大きな声、咆哮しながらこっちに走ってくるのが伝わってくる

そうとうご立腹だと音と肌で感じ取れる。

今この場に、アレと真正面から戦える戦士はいない!!姫様の作戦が間に合わなかったら全滅は免れない!急がないと!!!

風を生み出す術譜に魔力を使って発動させ筒の中を乾燥させていく、自身の中にある、魔力残量が辛い、連日で魔力を注ぎ続けているので体内の魔力量が少ない!
乾燥が終わり洗浄が完璧であるとチェックし終えると同時に「洗浄完了!」声を出すと姫様が何か道具を持って待機していたので、筒を地面に置いてもらい魔道具のパーツを外して違うパーツを取り付けていき、魔力ケーブルを繋げると「魔力、送って!」後方に待機している戦乙女ちゃんに指示を出すと「魔力送ってます!魔石残量残り僅かです!!」

筒状の魔道具をじっと見る姫様がポツリと声を漏らす
「やっぱり、足らないか」
どうやら、魔道具を発動させるための魔力量が足らないみたいで起動しない
「「魔力を使って」」私と女将が同時に申し出るが「無理だよ、二人の魔力残量じゃ起動できない」なら、砦に居る皆から魔力を…どうやってわけてもらうの?
一人一人、並んでこの魔道具に魔力を注ぐの?それとも魔石に魔力を送るの?訓練もしていない人がいきなり出来る物なの?

出来るわけないじゃない…

これ、かなり危険な状況じゃないの?今すぐにでも砦の中に入って橋を上げて門を閉じるべきじゃないの?
後方にある防壁の高さと堀の距離を見る…無理だ、この程度の高さと距離じゃ、殆どの人型は飛び越えてくる。

姫様も黙って、じっと一点を見続けている、後ろを振り返ると魔石に魔力を必死に注入している戦乙女ちゃん達、司令官は棒立ちで遠い目をしている
戦闘が出来るのは、今は誰が出来る?誰が人型を食い止めれることが出来る?…皆を逃がす時間くらいは稼げるのは誰?


戦闘服を着た私だけ…


残された魔力量は少ない、けれど、お父さんがしたようにきっと私だって出来るはず、天秤にかけたら誰だって同じ答えを出す、一人の犠牲か、未来を、人類を救う可能性が高い人達の命…どちらを残し生き長らえさせるべきか?


ここが私の死に場所だ


覚悟を決めろ、私ではお父さんのように何かの極致に到達したわけではない、けれども、成せるはずだ、この体は、あの戦士長の息子だから…
覚悟を決めた瞬間、狙いを定める為に耳を研ぎ澄ます、一度しか使えない、そう、人生の全てをかけた一撃だ。外すわけには、いかない

近づいてくる叫び声、狂ったような声、大きな足音が…いっぱい?

ばっと音のする方向を見ると、毒で死ねなかった獣たちもこっちに向かって走ってきてる!?人型一体だけじゃない!!
最悪、一体だけなら命を捨てれば倒せれると思っていたけれど、あの数は…

どうする!?どうすればいい?…人型さえどうにか出来れば、この砦ならある程度は耐えれる…かな?答えは決まってるじゃない



犠牲は伴う、姫様の言葉通り、私一人犠牲にすればいいだけじゃない




ばっと同時に立ち上がる…二人の女傑

どうやら女将もそのつもりだったみたい「女将は下がって、非戦闘員でしょ?」「あたいの前で大切な人を二度も失わせるわけにはいかないよ、あの時は至れなかった、でも、今なら悔いはないさ」

二人とも譲る気はない、最後の花道、月夜に輝く始祖様へと至る道、行こう月の裏側へ
「まって!お願いだからまって!早まらないで!大丈夫、信じて!!」
立ち上がった私達に必死に声を掛けてくる姫様、待ったところでどうしようもない未来をどうやって覆すの?

すうっと深呼吸をする、神経を、心を、全細胞を研ぎ澄ませていく、脳の奥に…感じる、押してはいけないスイッチが見える
これを押せば願いが叶う、代償は命…

過去に体験した色んな出来事や思い出、大切な人の顔に、言葉、人生の全てが瞬時に脳内を駆け巡る、うん、死なせたくないんだね、自分を、このスイッチを入れてしまうと戻ってこれないから、だから必死に押させないようにしてくれている、まだ生きたいって、自分の願いを叶えていないのに、幸せな未来を掴んでいないのに、死のうとしないでって、全力で訴えかけてくる。

空を見上げる、月は…でていない、最後くらいお父さんに見守っててほしかったっていうのは我儘だったかも

敵が遠見の術式を使わなくても見えてくる、その後ろから大量の獣が走ってくるのも見える、恐らく、後10分もすれば会敵する。

心は決まった、何時でもスイッチを押せる
後は、タイミングだけ

すぅっと鼻から冷たくて冷えた空気を肺にいれる、スイッチを押そう

チーーン

スイッチを押そうとした瞬間だった、後ろから何か音が聞こえると「よかった!間に合った!女将と団長これつけて!大急ぎで付けたら、女将はゴーグルもって、ぁぁ、じゃないじゃない、魔道具をもって!急いで演算するから、団長は全力で魔力を頂戴!四の五のいってらんないからこっちも余力ゼロで演算するから!途中で演算係の私が倒れると終わっちゃうから全力で!!」
ばっと上半身の服を脱いでいく姫様、私もそれと同じように上半身の服を急いで脱ぎ姫様の背中に胸を押し当てる

「くるよ!!」

後ろの方から色んな叫び声が聞こえる?まぶしいっとか、うわぁっとか?そんな悲鳴がいっぱい
その声がしたと思ったら戦乙女ちゃん達の声が聞こえてくる、眩しいっという悲鳴が、いったい後ろはどうなっているのか気になってしまい見える範囲で背中を逸らし、首を曲げ、後方へと視線を向けると

城壁の上に丸い何かが一筋の光を受け止めている?光が消える、視線をかえる、魔力を送る為の魔道具の近くにいる戦乙女ちゃん達に向けると魔石が輝いている?

筒の方に視線を向けると筒全体が光ってる?それに震えてる?その光ってて震える筒を女将が
「うわあわわ、ちょ、姫ちゃん!?こいつすっごい震えてるけど、だ、大丈夫なのかい?」
暴れる筒状の魔道具を脇で首を〆る様に持ち、もう片方の腕で抱き寄せるように体にぴたりとくっつけて支えている
「わかんない!ぶっつけ本番だから!理論上は大丈夫!!筒の先を敵に向けて!!!」

気が付けば敵が大きく跳躍しこちらに飛んでくる!!
「光は質量!!光は熱!!!始祖様が秘術をここに再現!!」

ほーりーーーーーー

ばーーーすと!!!


姫様が叫んだ瞬間に筒から見たこともない光が一瞬だけ、真っすぐ伸びていく、その光は人型の上半身を壁も何もなかったようにあっさり通り過ぎる
光が消えた瞬間には人型の上半身も消えていて、残った下半身だけが自身の力で地面を蹴って得た推力だけである程度まで、こっちに向かって落ちてくるが、こちらに届くことなく地面に叩きつけられる

その光景を見た私と女将は素っ頓狂な声をだす「ぇへぇ?」

余りにも見たことがない光景に驚きしか湧いてこない…何がどうなってこうなったの?
「女将構えて!次くるよ!!次は連続で撃ち続けるから敵の軍団に筒を向けて!!筒が熱くなったら教えてね!」
「ぃ、いまもあっついよぉ!?」「どのくらい?」「ほんのり人肌さぁねぇ」「なら大丈夫構えて!」
慌てて敵のいるであろう方向に筒を向けると「いくよ!発射!」姫様の声と同時に光の柱が獣の軍勢に向かって伸びていく

光が当たる瞬間に次々と消えていく獣たち…ぁ、あっとうてきすぎる、力、こ、こんなの人類がつかってもいいものなの?

「女将、気持ち左に傾けて」腰を使って筒の向きを変えると筒から伸びる光の角度が大きく変わり獣の群れから外れ、遠くにある木に光が当たったと思ったら一瞬で消えてしまう、それだけじゃない、触れてもいない場所が燃え始める
「もうすこし、右!慎重にね!」「ぁぁ」女将も見たことも聞いたこともない余りにも凄まじすぎる力に驚きを隠しきれていない
「あ!そうそういい感じ!そうそう!いいじゃん!光の矛先を調整できてるよ!慣れてきた?」光の柱がこちらに向かってくる獣を的確に消し飛ばしていく
「ああ!慣れてきたさぁねぇ!…きぃんもちいいねぇえぇぇぇえっぇえ」今きっと、女将の顔は輝くばかりの笑顔だと声から察することが出来る

「アイツでたぶん最後!やっちゃえぇぇぇぇえぇえぇ!!!」「応さぁ!!!」

最後に走ってくる長い首をした獣、その長い首が光で切断され空を舞いながら、余りにもな熱量によって一瞬にして空中を舞いながら燃えていく

視線を地面に向けると辺り一面…燃えていた

全ての敵を倒し終わり「ぷっはぁ!つかれたぁ!!」全身から汗が迸る姫様が後ろにもたれかかってくるのでしっかりと抱きしめる。
気が付くと私も全身汗だくだった、女将の方を見ると女将も防護服を脱ぐ、すると、すさまじいほどの汗をかいていて女将の上半身から湯気が出ている。

ここの大地は冷たい土地のはずなのに、辺り一面が凄く熱を持っているように感じる、それもそうだよね、あんな凄い熱量の光の柱を打ち出した場所なんだから、熱を持ってもおかしくないけれど、吹き抜ける風は冷たいのでテキパキと姫様の服を整えていく「あつぃー」服を着せられても文句を言わないの風邪ひくでしょ

私も服を正していると姫様がこちらをみて「ぁ~無理させちゃったかな、ごめんね、でもお揃いでちょっと嬉しい、本当の姉妹になったみたい」
その声に女将も「本当だぁねぇ、いっそのこと全部真っ白に染めるってのもいいかもねぇ」こちらを見て笑っている?

なんだろう?真っ白?染める?何を?

二人の言葉の意味が解らずにいると「ナイフある?ぴっかぴかのやつ」うん、ある太ももにつけてあるナイフを取り出して渡そうとすると受け取らずに「それを鏡のように使って自分の髪を見てみて」言われたとおりにナイフを鏡のようにして自分の顔を見ても変化はない、ゆっくりと角度を変えて髪を見ると
「っわ!?」
私の前髪の一部が頭頂部から毛先まで真っ白になってる!?


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