最前線

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- side M - 最前線に、残されたメイドちゃん奮闘記

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完全完璧究極パーフェクトガァァルメイド!っというのは、言い過ぎなのですが、それ程までに私は素晴らしい才能あふれる存在。

そんな、何処に出しても何処に行って完璧に馴染、染み込むように溶け込む究極メイドである、一族の中でも最優秀といっても過言ではない、そんなとってもきれいで可愛い誰からも愛される美貌の持ち主である、そんな私も長いこと、この街で働いてきました。

この大陸で最も危険な人物、この街の領主である姫様を監視するために、ありとあらゆる伝手を使って派遣されたこの大陸に潜むある国から大昔から溶け込むように暮らしてきた諜報員が一族、そんな特殊な生まれで育った、ごく普通のどこにでもいるメイドちゃんです。

本来は、諜報員としてこの大陸の主だった人物の活動を監視し、暗躍するのが使命なのですが、

今はもう純粋に人類の為に粉骨砕身の思いで生き抜いていきたいと思っています。

最近、こう言っては申し訳ないんですが、本国がとある事情で地上から存命する人がどこにもいなくなってしまったので、その、一族の使命とかそういうのが消えてしまったわけで、もう、祖国の為に何かをする必要性が無くなってしまいました。

なので!個人的に…夢?うん、夢物語、幼い時からずっと、ずっと、密かに胸の中に潜めてきた夢を叶えてもいいのかなって思って、ます!!

王都に居る、本国と繋がっている一族の長に色々と確認したんですけど、使命とかもう関係なく今の生活を優先しなさいとお言葉を頂いたので、我ら諜報員一族はこの大陸に帰化することに相成りました。

っていっても、ねぇ?正直、生まれも育ちも王都だし、8割くらいはこの大陸の人と同じ血筋だから、本国って言われても何も思わない。
滅んだと思ったときは、それは、その、悲しい気持ちには、なったよ?なりましたよ?

だって、一応は心の故郷じゃない?一族の集まりでは本国の人と話すこともあったし、小さなころからずっと、本国の為に生きろって洗脳のように育てられてきたのだから、幼い頃からずっとずっと宿命づけられた運命が急に無くなったら、自分の生きる意味を失ってしまうわけじゃないですか?
だから、その、今まで生きてきて頑張ってきた証しが急に抜け落ちて、消えたら

どうしたらいいのか、わからなくなってしまいました、寂しくなって、世界に一人だけになってしまったんじゃないかなぁって、ずっとずっと心が裂けそうになるくらい不安でした。

それはもう、誰かに、縋りたくて縋りたくて、心が騒めいて、騒めいて、辛かったです。
でもね、縋りたくても誰にも縋れない、王都に行ったときに、一族の長に独りで生きろって突き放されたのですから、縋る相手がいないのです。
人生全ての後ろ盾もなくなって、生きる為の目標もなくなって、もう一つ、可能であれば実行しろと言われている、本国の為に死の大地にある大穴の主を討伐するのも一つの目的だったけれど、それは、一族全員が不可能だと思っていたので除外してもいいですよね?

本当に

一瞬で全てが無くなってしまったときに、襲い来る、あの、焦燥感、不安感は、今でも思い出すと足が震えて唇が真っ青になってしまいそうになる。


狂ってしまいそうな時に、私の心の支えとなるような、太くて逞しい、心の柱になってくれたのが姫様に…団長。


生きる目的は…姫様と共に本国を滅ぼした怨敵を打ち滅ぼし仇を討つこと

夢は…心惹かれる殿方と一緒に、使命だとか一族の安永、発展、礎になれとか、そういうのを完全に忘れて、一人の女性として生きること
はぁぁ、どうして団長は心が女性なのかな?

私はずっと自分の事をノーマルだと思っていたのだけれど、あの時、団長の肌を見た瞬間に胸がときめいてしまって、日が経つにつれて、胸のときめきが抑えきれないほど高まっていく、どんどんと、恋焦がれるようになってしまった。

姫様にも相談しようかなぁって考えたこともあったけれど、なんかもう、連日怒涛のイベント!?姫様からこれよろしく♪って笑顔で渡された仕事量のえぐさ!!

体が足りないですぅ、後二人くらいメイド雇ってください、私のとこに同じくらい優秀な諜報員がいるので雇ってもいいですかぁ?

仕事を任せてもらえるのは、裏を返せば私の能力を認めていることになるし、それだけじゃない、私のことを長年、観察して何が出来るのか何が出来ないのかしっかりと能力を見定めてもらって、貴女なら信頼して任せれるっ、というしっかりとした共に歩んできた信頼感によってなのだから
そこまでしっかりと考えたうえで選んでもらえたのだから、その信頼に、応えたいと思う気持ちも、大いにあるのです、あるのですが!!

渡された任務、今までとは比べ物にならないくらい重大で責任が重いんですけど?

去り際に、「メイドちゃんが失敗したら私と団長と女将と戦乙女ちゃん達と、砦に居るその他大勢、全員死ぬからよろしく♪」ってウィンクしていかないでくださいよぉ…
今も重圧で心が圧し折れそうですぅぅぅ

心では涙を流しながらも、信頼してくれる人を守るために、恋焦がれる人を救う為に、未来を勝ち取るために!!止まるわけにはいかねぇんですよぉ!!
心を奮い立たせ、多幸感を脳内から強制的に生産して溢れ出させて、多幸感によって全身を満たす、それを原動力にして私は動き続ける!!…無理のない範囲で

今は何をしているのかというと、必死に渡された資料を研究塔の長とティーチャーとベテランさんで、っていうか、幹部全員で取り組んでいるのですけれど、複雑すぎませんこれぇ?
資料にはこの部分はどの人が仕度をするのか、ここはどのチームが担当すればいいのかしっかりと持ち場も支持されているので、全員が資料片手に、書かれている指示書通りに動こうとする。

私は指令室に残って、自分に渡された分厚い資料を読んでいく。読んでいくのだけれど!!!
資料を見れば見るほど専門的な内容過ぎて頭がこんがらがる、こんな時に頼りになる人が脳裏に過る、だが、その人はこの場にいない。

ああもう、どうしてこんな非常事態にNo2さんはいないんですかぁ!!!!
現状、この街に残されたメンバーで一番頼りになる人なのにぃ!!!!

産まれてくる子供は、ここで育てたらいいじゃないですかぁ!!!
医療設備なんて王都の比じゃないほど充実してますよぉ!?
相手が誰だかそりゃ、知られるわけにはいかないかもしれないけれど!!!
打ち明けたらみんなきっと受け入れてくれますって!!!!
ここの人達子供大好きだから、皆で全力で子育てしますってぇえぇぇぇ!!!!
医療の父も喜んで子育てしてくれますよ!

「お~い、メイドのー、大体の魔道具を運び終えたであるぞー」
指令室で嘆いているとベテランさんが声を掛けてくれたので設計図を片手にセッティングの手伝いに行く
「は~い、ご協力ありがとうございますー!今行きまーす」

日程的にも余裕はない、試し運転もできない、ぶっつけ本番、理論は完璧、後は、魔道具の全てをミスなく完璧にセッティングできていれば、理論上は発動する

こんな怖い任務ってありですか?失敗したら全滅ですよ?しかも、これを作った人がここにいないんですよ!?
ぁぁもう、心臓と胃が痛い、無事全部終わったら団長を一日借りきって徹底的に甘えてやるぅぅぅ!!メイド服とか着せてご奉仕させてやるぅぅぅ!!!

ひたすら走りまわりながら、手が空いている人を見かけ次第、出来そうな仕事を渡してお願いする。
この街の中、全てを走り続けていると思う、西へ東へ北へ南へ、地下から最上階、全ての場所を走り続けていると思う

「望遠鏡セッティングできたよ!砦も見える見えるよー!」
あ~身重なのにお手伝いに、大きな声で知らせていただき、ありがとうございますー。研究塔の長に呼ばれたのでこの街で一番高い塔に登っていく。

姫様が急ピッチで完成させた、ものすごく高度がある、高い塔。
まさか、作って早々に出番が来るとは思ってもいなかった、姫様考案のえれべーたー?っという魔道具のおかげで一番上まであっさりと人も資材も道具も運んでくれるので、身重の長でも楽々、一番上まで運んでくれる。
塔の天辺はそれはもう、凄く眺めがいい、この高さを知っている人は、この世界ではこの街で働く人だけだとおもう、つまり、この街しかない特権ではないかと、この街の人だけの特別な世界なのだと、肌と目で感じ取れる。だんだん、この特別な状況に愉悦のような高揚感が湧いてくる

なんだろうこの、遠くに見える王都の中央に偉そうに存在している王城を見る。
普段なら、見上げてみて出てくる感想が、なんて格式の高い特別な場所なのだろうと想えれるけれど、今この特殊な環境で見る、王城は、つい鼻で笑って見下してしまいそうになる小さくて小さくて、ゴミみたいって抱いてはいけない感情が腹の底から湧いて出てくる。

私って実は、性格わるいのかな?…ふと思い返す、今までの行いを、うん、そうだね、客観的に見ても、ちょっと性格がわるいの、かも?
元々、この街は王都よりも高台にあるので、王都を見やすい位置にあるから、普段から王城を見下ろしているのだけれど絶対的な高度からは見下ろしたことがないから湧き上がってきたのかも?

それにしても、冷静に考えると本当に、この塔の存在がありえないものだと王家の歴史を学んだからこそわかる。
だって、王城よりも高い建物なんて、どう考えても、不敬になる!そんなことをすれば、王族に目を付けられて取り壊しを要求してくるのに、姫様は王族のプライドなんて関係なく容赦なく創ってしまう。

まぁ、壊されないように反感を買わないように、しっかりと根回しは徹底的に行ってきたから王族も文句は言わないとおも、いたいですよねー、なんかひと悶着ありそうな気はしないでもないですけどー。

そんなことを考えていないで、呼ばれた場所に向かうと、研究塔の長が望遠鏡を覗き込んでいる。
追々、この場所にこの望遠鏡をセットするのは決まっていたので、セッティングは特に問題がないのだけれど、この塔にセットする予定じゃなかった、作戦の要となる特殊な魔道具をセットするのが困難を極めているので、研究塔や術式研究所に所属する皆には無理をさせている。

望遠鏡を覗き込んでいる長に声を掛けると
「いやー凄いねーこれ、お月様も見えちゃいそうなくらい、遠くまで見えるよ~私の実家にいる親戚の顔が見えたのは驚き」
望遠鏡の余りにもな性能に興奮している長、身重なのであまり興奮しないでくださいね?私は医療の知識はないですからね?

長が、望遠鏡を覗き込む場所から離れて「どうぞ」っと言われるので覗き見るつもりは無かったのだけれど、確認は大事だと思い覗き込む。
望遠鏡を覗き込むと、しっかりとセッティングされていて、見えた場所は姫様が向かった砦で、肉眼や術式を使ったとしても到底見えるとは思えないほど見える。
多少、ぼやけているけれど見える!!凄い!!あの距離が見えるなんて!!
「これねー、凄いのがレンズを交換すると見える距離を変えれるみたいで、王都に合わせれるし、王都周辺の街も見える…怖いけど」

大穴もこれで観測できるよ

何気ない一言、やはり研究塔の長、人類救済の為に命をかける人達だ。
こんなすごい道具を悪用することよりも、真っ先に人類を救うことだけを考えている。

本当に、存在全てが、善性の素晴らしい人達。

そう、姫様がこの塔を建てる為に使った方便の一つとして、
これから先、事態が急変した時の為に、天にも届きそうな高い塔を創り、大穴を観測し、監視する必要があると説得していた。

そのほかにも、急ぎ足で突貫作業でこの街が色々と変化している。
毎度ながら、不思議に思うのが、姫様はどうやってこんな高い建造物を創る知識を得たのだろうか?
望遠鏡だって製法や図面を引いたのは姫様だっていうし、本当に底が見えない、才能が天井知らず過ぎる。偉業を成し遂げるのを傍で見続けてきたからこそわかる。

あれは、人じゃない、人の皮を被った別の存在、人類では到達できない高みに居る、高次元の生命体…

病・怪我・瀕死の重傷・吹き飛んだ腕さえ再生させ人類を救済したと、言われる神の御使い、聖女

獣の軍勢に滅ぼされる寸前に月から突如現れ、人類を蹂躙せんとする獣を断罪し、救世するために神から遣わされた使者であり、
この大陸に住まう人類が大きく強く生まれ変わった、その種をまいた始まりの祖、始祖

困窮した人類を導き、未知なる技術をもたらし全ての生産業に革命を起こした、文明開化、産業革命、人類の夜明けをもたらした姫

きっと、後の世に伝説の人物として記録され、語り継がれるのだろう。

そんなことを考えながらも、しっかりと仕事はこなしていく。
望遠鏡のピントが合っている場所を確認した後、セッティングを施してくれた長に感謝を述べながら、ついでにお腹を触らせてもらうが、動くほどの大きさじゃないのでわかりませんでした、残念。

研究塔の長も王都に帰って子を産もうかと考えていたみたいだけど、一族に生まれて、落ち着いてから挨拶だけはする予定で、この街で子供を産み、育てたいと優しくはにかみながら、嬉しそうにお腹を撫でている。

正直に言うと、凄く羨ましい、この幸せそうな顔を見て、何も思わない、感じない人はいないと思う、自然と私も自分のお腹を触ってしまう。

おめでたから、えっと、3か月?2か月でした?っけ?疑問に思ったので聞いてみると
「まだ、お父さんからもね、激しく動くんじゃないぞってよく注意されるの、後、一か月かな?それくらいしたら落ち着くけど、お腹の中の子が動き出すから楽しみにしときなさいって、その時が来たらまた、挨拶に来て欲しいな」
お腹をさすりながら、自分のお腹というよりも、中にいる子供を見ているような慈悲深い、聖母みたいな眼差しをしている長に
「もちろんです!」優しくお腹の子供も伝わるように返事をする

そんなやり取りをすると、えれべーたーが上に上がってきて、この場に、到着する音が聞こえる、振り向くとえれべーたーから運び込まれていく特殊な魔道具
「術式研究所の人達が起動確認と調整が終わったから持ってきましたよ」
長の旦那であるティーチャーさんが魔道具を運んでくる、近くで見ると本当に大きな魔道具、女将さんよりも大きいかも。

ちらりと、長の顔をすると母親のような慈愛溢れる表情から、がらりと変わって、女の顔になる。
「は~いセッティングするねー」
ティーチャーさんを目の前にすると母親の顔っていうよりも一人の女性って顔になるのは新婚さんって感じが伝わってきて、甘々でいいなぁっと自分も、目の前でいちゃつくラブラブ新婚カップルみたいになりたいなぁっと強く願ってしまった。

だからね、今握りしめている拳はきっと、幸せな光景を見て力強く私もああなりたいと願っただけで、決して嫉みや羨望で拳を握りしめているわけじゃないですからね?ですからね??…ぃぃなぁ、うぐう…

そんな甘々な空気の中、黙々と作業を開始していく、独り身のわたし…
次々と、運ばれてくるパーツを絶対に間違えないように何度も何度も設計図を見て確認して慎重に組み立てていく。

幹部全員にはこの作戦が失敗すると現場に急行している人達全員が死ぬと伝えてあるので、組み立て作業中は一切しゃべらず、集中して行っており、組み立てた箇所を点検するときは私、長、ティーチャーの三人でしっかりとチェックして、チェックしたら丸を入れるようにしている。
姫様的にもここだけは絶対に気を付けろってポイントをしっかりとまとめてくれているので、その項目もしっかりと複数人で確認してからレ点を入れるようにしている。

命が掛かっている作業だからこそ、緊張して取り組む、ミスは絶対に許されない。

集中力が落ちてきたらすぐにでも休憩を取って、万全の態勢で組み立てるようにしている。
後々からミスが発覚してしまうと、そのミスした箇所を探す為に必要な時間も足らないし、ミスがミスを生むし、何よりも、設計者不在なのが本当に怖い、起動しなかった時のことを考えると、想像するだけで…

ぅぅ、胃がいたいですぅ…考えれば考えるほど吐きそうですぅ…

えれべーたーがあがってくる音が聞こえる、誰かな?ちらりと見ると
「こっちの配置は全部終わったであるぞ、こっちの専門的なことは手伝えんでな、ほれ、差し入れを持ってきたので何かのタイミングで食べるのであるぞ」
大きなピクニックバスケットと、タオルとかひざ掛けとか色んなものをを置いて降りて行った

確かにここは冷える、地面から高い位置にあるからなのかな?ひんやりとする。

ふと、研究塔の長の方を見る、そして、疑問が湧いて出てくる
…胎児って寒いの良くないよね?子供を産んだことが無いから知らないけれど、良くないんじゃないのかな?

慌てて確認しにいくと
「あら~心配してくれてありがとう、ちゃんとお母さんとお父さんにあったかい恰好をしろって言われて対策してるわ、おかげ様で汗をかいちゃうくらい暑いの」
厚着をしながらの作業で汗が薄っすらどころか顎先から汗が落ちるほど出ている、それはそれで大丈夫なのかな?

その言葉にティーチャーがこちらをみてぎょっとした表情で驚いた後、ベテランさんが置いて行ったタオルと飲み物を取り出して奥さんの汗を拭きながら飲み物を渡していた。

本当にいい旦那さんだねー、こういう人が王様になったらきっと、今の腐敗した王政から清く正しい王政へと悪い方向から解き放たれる。
そう感じるけれど、彼は王様に成るという野心も無ければ、民を導くっというカリスマもない人なのですよね。

…そして、私の恋のライバル!ガルルル!!…だったんだけど、まぁ彼にその気はなさそうなので許してあげます。

だが、脳裏に過る、彼の出自を、その周りの環境を
…ん?王子、側室…駄目だ!彼をその気にさせてはいけない!!団長がとられちゃう!!

っていっても、彼は絶対にそんな気を起こさないとわかっているので、即座に湧き上がる焦りの感情を捨てる。

そして、じっくりと仲睦まじい夫婦の姿を見て、心の底から思う。
平和な世界だったらきっと、この二人はノンビリと音楽でも奏でながら過ごしていたのだろうなと
彼に至っては争いごとも嫌いだし、戦いも嫌いだし、部下に無理難題の命がけの戦いを強いるなんて、心の底から嫌悪している。
ほとほと、戦闘に向いていない人、でも、愛する人を守るためにここ数年、頑張り続けて、ベテランさんの後釜になるほど成長した。

そんなひたむきな姿勢に団長は惹かれてしまったのかな~?…私だってがんばってるもん。

二人のラブラブな空間から逃げるように、作業に戻って集中力が切れるまで没頭する



…集中力が切れてきたので、ふと、外を見ると真っ暗で遠くからは王都からしか光が見えてこない、反対方向にある、大穴の方はを見ると、深淵のような暗闇
その暗闇をじーっと、見ていると、時折、何かが蠢くのが見えるので、背筋が凍り付きそうになる。ぞわぞわと背筋が騒めく

怖い方を見ないように、気分を入れ替える為に一度、満点の夜空を見上げると、様々な光の粒々が見渡す限りに広がっている。

姫様が教えてくれた、あの一つ一つが星といって、ここと同じように大地があったり、海があったり、空があるそうで、星によっては生命体がいて、あの光ひとつひとつが生きているのだと…教えてくれた。

視線をセッティングしている魔道具に向けると、今の自分が置かれた状況に笑ってしまいそうになる。
だってさ、まさか、諜報員として必要だからと詰め込まれた教育がこんな場所で生かされるなんて思ってもいなかったんだもの。
諜報員で必要なの?って思っていた時期があったけれど、勉強していてよかったと、今なら心から思えれる、だって、勉強を頑張ったからこの場に私がいるわけで、私以上に優主な人がいれば、その人がこの街でメイドをしている。そう、私じゃない誰かがこの場所に派遣されていたのだと想像していまうと

心の底から悲しくなってしまう。

今いるこの場所が、私の居場所なのだと心の底から思えれるし、感じれる。
この場所じゃない何処かで諜報員として活動しているなんて…考えたくも、想像したくもない。ここ以上にこの場に居てよかったと、思える場所はどこを探しても無い、絶対にないのだと言い切れる。

そんなことを考えていたら、ふと、思い返してしまう、姫様に抜き手を向けてしまったこと、つい、感情的になってしまった、あの時。
でも、その全てを受け止め、あっけらかんと私の敵意を受け止め、包み込むように返してくれた。

あの態度に仕草、それを見た瞬間に、私の中にあった【故郷こそ全てであり人生の全て】っという頭の底から手先、髪の毛一本一本に至るまで、何かに束縛されていた、何かが解き放たれた気がした。解放されたような気がした。

きっと、幼い頃から徹底した教育によって洗脳されていたのだと、今でなら思うことが出来る。
そして、洗脳が解ければ解けるほど、私の心は自由になっていく。
その結果、私の中で叫び続けて、自分の身すら焦がしつくしてしまい層ほどの愛という炎がより強く燃え上がってしまっている。

…会いたいです

今ならわかります、No2さんが語ってくれた過去の話、あの時は、馬鹿な女って見下してごめんなさい。
今ならわかります、心の底から理解できます、これが 恋 なんですね、こんな激しい感情をずっとずっと、体の中に住まわせて制御していたなんて

あの人は本当に心が強い人なのだと、今になって深く理解しました。

もし、次合うことがあれば、いっぱいお話したいな…たぶん、もう、会うことはないとおもう、賢いあの人の事だから

きっと、二度と私達に会わないようにしているはずだから…


過去のことを思い返していたら眠くなったので、ベテランさんが用意してくれた毛布にくるまりながら塔の頂で眠ることに

目を覚ますと、物音がする、音がする方を見ると、長とティーチャーと術式研究所や、研究塔の皆さん総出で一つ一つ姫様が用意した書類を見ながら何かをしている

たぶん、組み立てが終わって、動作確認をしているのだと思う。
私も手伝おう…包まっていた毛布から這い出てお集りの皆さんに、上品な挨拶をしてから、現場で指揮を執っているティーチャーに現状を教えてもらい、動作確認の作業を行っていく。

全ての準備が完全に終わり、みんなでハイタッチをした!!
後は、この場で姫様から渡されたベルが鳴るのを待つばかり。



独り静かに待ち続ける、運命のベルが鳴るのを…



チンチン

鳴った、二回鳴った!!一回だけだったら間違い、2回素早く連続で鳴るのが発動しての合図!!

音声を拡張する魔道具を使って全力で叫ぶ

「作戦開始です!!!」

その言葉に静まり返っていた、ううん、音はあった、でも私が神経を研ぎ澄まし過ぎてベルの音以外をシャットアウトしてたから気が付かなかっただけで生活をする音はあった、でも今は色んな場所から掛け声が聞こえる。

遠くから聞こえる「接続よし!」という言葉が順序よく聞こえてくる

全ての箇所から合図の声が聞こえ終わると、全員で組み立てた特殊な魔道具が聴いたこともないような音をだす。
後は、照準を合わせるだけ、姫様が言うには、ある程度、方向さえ正しければ術式で自動修正されるように創ってあると言っていたけれども
ミスが許されないのですから、完璧にこなしてみせます!!

望遠鏡から覗き込み、砦に用意される予定の目標が設置される場所を探す、さがす、さがす…遅い!遅い!!早く、速く、はやくしてよ!!どこ?どこに設置するの!?
焦りながらも探し続ける、この無駄な時間が続けば続くほど、もし、何かの誤作動で発動しなかった時に用意された緊急マニュアルを使って再度点検をしないといけなくなる!!
そんな時間がないくらい切羽詰まっていたら、もし、間に合わなったら?心が痛い、心臓が張り裂けそう、胃がストレスでねじ切れそう、お腹もいたぃ…お願いはやく、はやくして

ほんの数秒でも、眠れなくてただじっと、夜が明けるのを待つくらい長く感じる…お願い、神様、始祖様、導いてください…

探し続けると城壁の上で数多くの人が階段から登ってくるのが見える
…いた!たぶん、あの一団、何かをもって砦の城壁に上がってきてる…丸いオブジェ…あれだ!!

姫様、今お届けします、この大陸全土から搔き集めた祈りを、姫様が何年もかけて用意した結果を

魔道具の スイッチを 押す そして素早くベルを力いっぱい叩く!!チーーーンっと大きな音が鳴った

魔道具の尖った先から輝く直視すると目が痛くなるほどの光の柱がまっすぐまっすぐ、伸びていく



姫様が待つ砦へと


望遠鏡を覗き込むと、しっかりと目標のオブジェに吸い込まれる様に光の起動が緩やかに弧を描くように曲がっているように見える
光の柱がオブジェに吸い込まれていく…

成功した

全身が歓喜に包まれていくのがわかる

現場での動きを確認する、望遠鏡の見ている箇所を変えると、光り輝き、今は光っていない、丸いオブジェの近くで、別の光の柱がまっすぐ何処かに伸びていくのが見えた…
その光をみて、確信をする、気が付くと全身で喜びを表現していた。


大成功しました!!


今にも泣き叫びたくなる感情を発散させるように
直ぐに、音声を拡張する魔道具を手に取り起動し、街で固唾を飲んで祈っている人達に報告する

「大勝利です!!みなさま!!私達の大勝利です!!!」

全力で叫んだ声が遠くまで響き渡ると、遠い地面から色んな歓声が沸き上がる

嗚呼、気持ちがいい、こんな一体感をずっと、感じてきたんですね…これは、癖になりそう…

腕を見ると鳥肌が浮き上がっている、全身が震えるような快感を感じているのがわかる。
きっと、脳内からよくわからない何かが出ているのだと思う、ふわふわと地に足がついている感じがしない。


いま、団長に抱きしめられたらたぶん、この世から旅立っちゃうかも…ぇへへ

この瞬間の私の顔はきっと誰かに見せていい顔じゃない、ここが誰もいない塔の天辺でよかった…



えれべーたーが動く音がするけど、上がってくる音だよね?下がる音じゃないよね?
音が鳴りやむ

誰も来ない…


っは、はは、まぁいっか…完璧美少女だって気が緩むときくらいあるもん。

その場でぺたりと座り込み、ごろりと大の字で横になる、不思議とさっきまであった胃の痛みやお腹の痛みが無くなっている。
「…こんな辛くて、辛くて、寂しい任務はもうこりごり、次は絶対についていくからね!姫様!!」

空に向かって特大の愚痴を叫ぶ

もし、天に神様がいるのでしたら、その言葉を姫様にぶん投げてください。
きっと、姫様なら受け止めてくれるので…

気が付くと、その場で眠りに落ちてしまった…
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