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とある人物達が歩んできた道 ~ 会敵 ~

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姫ちゃんが気持ちよさそうに、幸せそうに、寝ている時間を堪能していると、唐突に目をパチっと開き、此方を見て幸せそうな笑顔で
「うん、やっぱり起きて目の前にお母さんがいるって、凄く嬉しい」
胸が張りそうな程の母性を感じさせる一言を言いながらぎゅっと抱き着く様に顔を胸に埋めて甘えてくるなんて、この子はもう、母性をくすぐるのが上手ね、甘やかしたくなっちゃうじゃないの。

姫ちゃんが、私が、お互いが、今の状況を感謝しながら日常を歩めることに感謝しながら満足する迄抱きしめあった後は、ゆっくりと起き上がって、封印術式に向けて再度準備に取り掛かる、本日の一大イベントのはずが、色んなのが同時に起こりすぎて、もう、何が何やらって感じになるのよね…
もう、ほんっと姫ちゃんがきてから毎日が濃すぎる、こんなにも毎日が何かしらの事件やイベントが発生するなんて考えたことも無かったわね…

姫ちゃんが封印術式を自身の体の施す為の陣を念入りに再度チェックを行っている間に、私の中に貯めておいた魔力の塊を確認すると、朝に比べて幾分かいつの間にか消えている…緊張の連続で抜けてしまったのだろう、取り合えず、現状無意識で維持できている魔力の塊を解いて全身から溢れないように巡らせ、意識として、血液の中に多く循環するように、血液に魔力の塊が色濃く宿るように意識して、集中しながら魔力の塊を解き血液に混ぜ込んでいく…

ある程度、混ぜ込んだ後は、血液を注射器を刺して抜いていく…

量で言えば300ってところかしら?注射器のメモリを見て確認する、うん、大体それくらいね…これくらいなら、影響もないでしょう。

抜いた血液に、更に!魔力濃度を高めるために魔力を流し込もうとする…
魔力を放出して入れ込もうとするが、出来ない…
魔石とかと違って何処をどうやっても入るような感じがしない、やっぱり、血液に直接魔力を込めるっというのは不可能に近いのかもしれない、何かしら手法が見つかればいいのだけれど、従来のやり方では不可能の可能性が高いわね。

姫ちゃんから以前受け取った、傷の回復を促す陣を使って注射器を刺した箇所を治癒させる。
刺した箇所が綺麗に治るのを目視で確認する。

うん、これのおかげで腕に注射器を刺したという痕跡が消えるのが、良いわね、血液を抜いたという事実を隠すことが出来る。

まぁ、隠す必要はないけどね

姫ちゃんから準備が出来たという合図を頂いたので、抜いた血液が入っている瓶を渡すと、全裸になって、陣の上に瓶を持ちながら待機する。
後は私が陣に魔力を最大限で入れ込めば、陣に描かれた術式が発動して、姫ちゃんの体に向かって、直接的に封印術式が刻まれることになる

お互い、目を合わせてこくりと頷く、覚悟は決まっている、これを施さない限り姫ちゃんの未来はない。

すぅはぁっと深く何度か深呼吸をして集中力を限界まで高める、雑念や不安を消し去る為、迷わない為、これが失敗するなんて微塵も考えない為!
迷いや不安は、ダイレクトに影響する!私はただ単純に魔力を注ぎ込むだけ!魔石と一緒!役割を果たすだけ!!

体内に織り込んで硬めている、魔力の塊を解き、腕に集中させ、陣の魔力を注ぐ場所に触れると、陣に描かれた術式が一か所ずつ光っていくと、姫ちゃんの手に持たせている私の血液が浮き上がり、姫ちゃんの体、腕や、足、お腹に胸…順序よくあちこちに吸い込まれる様に姫ちゃんの体に、はいっていく。

陣に描かれている全ての文字が光り輝く頃には姫ちゃんの顔にまで模様が刻まれていた、あの綺麗な顔に、透き通るような白い肌に、赤い模様が刻まれるのは、どうしてかわからないが、悲しい気持ちになる部分もあった…きっと、あの綺麗な肌が汚れてしまったような、そんな気持ちなのだろう。

全ての施術が施されるのを確認する、目を閉じている姫ちゃんに確認しながらも、私自身も魔力が見える魔道具で姫ちゃんを覗き込むと、魔力が体から抜け出てるような箇所は一切なく、問題はなさそうに見えるし、肉塊君で実験済みとはいえ、模様が常時浮き出てくることもない、見た目は依然と変わらず綺麗なまま、その綺麗な姿を見て内心胸を撫でおろす、永遠にあの模様が常時見えるのだとしたら、貰い手がいなくなってしまうものね。

覗き込んでいると姫ちゃんが机に置いてある陣を手に取り、意識を集中し始めると、姫ちゃんの指先からわずかに魔力が薄く、溢れているのが見えると同時に、陣から風が吹いているのか姫ちゃんの前髪が揺れている、風が止まったと思ったら全身を震わせながら大きな声で
「うん!出来る!めっちゃ集中しないとダメだけど、慣れたらいけそうな気がする!術式がつかえるぅ!!!!」
全裸なのを忘れて何度も何度もジャンプしたりして喜んでいるので、水を差すのは悪いと思いつつも、風邪をひいては良くないので、脱いである下着や肌着を渡そうとすると
「封印術式が施されているネグリジェ…着た方がいいの?」不満そうな顔で指摘される、確かに、言われてみればそうだけど、暫くは念のために着て欲しいかな、いつどこで、自身の体に刻み込んだ封印術式が解けたり、解除されるかわからないでしょ?
それを伝えながら、下着を着せていると両手を合わせて懇願してくる。
「じゃ!寝るときだけ!寝るときだけでいいよね?お願い!術式が使えないの不便で嫌なの!!」
下着姿で一生懸命お願いされてもねぇ…
貴女の体質を考えると、不安なのよ?どうしたものかな?

悩んでいるときに、ふと、昨日の夜に飲んだお世辞にも美味しいと絶対に言えない薬物の存在を思い出す同時に、魔力の回復を促す薬があるから、それを日課として飲むのならいいよっと交換条件として提案すると

「…薬かぁ、本当は飲みたくないけど、いいよ?その条件で、いいなら飲む!」
ふんっと鼻息を大きく音が出るように鼻息を出しながら勇ましく言うけれど、二言はないわね?後悔しないわね?

瓶を取り出して姫ちゃんに渡すと躊躇いもなく蓋を開ける、だが、開けた瞬間に表情が豹変する。
先ほどの勇ましい表情が一瞬で曇った…匂いで察したわね、これだから賢い子は…
「ねぇお母さん」
これがどのような物なのか匂いで察したのか、額に汗をうっすらと浮かべながら名前を呼ばれる
「これ、土の臭いがするけど?飲めるの?本当に飲めるの?」
これは口に含んではいけないのだと体が抵抗しているのだろう、瓶を持つ手が震えている、しょうがない手本を見せてあげるとしましょう。

蓋を開けた瓶を姫ちゃんから受け取り、一気に飲み干す!!!っくっそぉ!まっずいわねぇ!!!

飲んだ後の見悶える私の姿を見て、予想通り不味い物だというのが伝わってしまうが、これを無表情で飲めるわけないじゃない!!でも、飲めるものだと伝わったみたいで、瓶を取り出した場所に自分から向かって行って瓶を取り出し、蓋を開けると同時に私がしたように一気に飲み干す…その直後に
「うっわもう、まっずー!!!」
叫びながら、人生で初めてのまずさに見悶える様に地団駄を踏んでいる、その後ろ姿からでも察することが出来るわね、苦悶の表情をしているのだと…

いつか姫ちゃんに飲ませるために、飲んだ後に口の中をさっぱりとする為の液体を渡すと素早く受け取り躊躇いなく飲み干すと
「っぱぁ!はぁ、はぁ、はぁ、な、なにこれ?苦い?えぐい?なにこれ?初めての味だったぁ…でも、何となく使われている素材がわかった」
肩で息をして呼吸を整えながらも、しっかりと素材の味を分析するなんて、器用っというか、肝っ玉が据わっているわね、普通はどんな素材が使われているかまで、考えが至らないわよ?

「うん、使われている素材も理に適っているし、よくここまで味とか考慮せずに作ったね!…思い出しちゃった、うっわぁ、まっずぅ・・・でも、成分的にもお互いを補助して高めあう作用があるから、いいじゃん!これ!…ぁ、まって、お母さん」
一瞬忘れてたでしょ?
「これ、毎日飲むの?」
そうよっと頷くと軽く小刻みに体を震わせてながら、顔が曇っている、思い出してはいけない味を思い出してしまったのか、眉をひそめながら視線を彷徨わせている、逃げる方法を考えてるでしょ?二言はないわよ?念入りに毎日飲むのよっと肩を掴んで目の前でしっかりと、目を見て非情な言葉を伝えると、涙目になりながら「うん」消え入りそうな声で諦めたかのように返事をする。

我慢して条件をしっかりと飲んだ聞き分けのいい娘の頭を撫でながら、偉い偉いと頭を撫でてあげると不服みたいで膨れっ面になりながらぶつぶつと文句を言っている。
その気持ちはわかるわよ、あの味は理不尽よ、この世の摂理を捻じ曲げたくなるくらい不味いからね…

下着姿でむーむーっと逃げれないあの味に文句を静かに伝えようとしているが、その程度、我慢しなさいっと一声かけながら脱いだ服を着せていくと
「まぁいっか!あのネグリジェの上に服を着るのってちょっと不快に感じてから、それに比べたらあの味なんて、なんて…ぅぅ、やっぱりヤダなぁ…」
思い出すたびに表情が曇るのだから思い出さなければいいのに、記憶力がいいのも、困りものね…

服を着てからは色々と不具合が無いのか念入りにチェックを行う、魔力が漏れ出ないか、術式は任意で使えるのか、魔力を練るという訓練も付き合ってあげると、ネグリジェを着ている時に感じた変に魔力の流れが乱れるような感覚もなく、何となくだけど体内に廻る魔力を感じることが出来ていると嬉しい報告が出てきた。

これからは寝る前とかに一緒に魔力を練る訓練をする約束をした後、一緒に食堂に向かってご飯を食べる。

食べながら、明日以降のスケジュールを確認すると、聞けば聞くほどハードなスケジュール過ぎない?今後は魔石の改良もしていくのね…天才っていうのは大変ねぇ…

ご飯を食べた影響か、あの味を完全に忘れることが出来たのか上機嫌になっている姫ちゃんと一緒にお風呂に入ってみるが、特に問題は無かった。
懸念点として考えていた、血液を触媒にしているのだから、お風呂に浸かったら血が滲み出てこないかっていう不安があったけれど、特に問題はなさそうね、はぁ、よかったーお風呂が血で染まることが無くて…
血で思い出したけれど、姫ちゃんにちゃんとあれの管理は自分で、するように伝えると、うぇ~忘れてたぁっと嫌そうな顔をする、そうよね、年齢的にもボチボチあるんじゃないかって不安に思っていたらやっぱりあったのよねぇ、夜中に起こされて何事かと思っていたら、涙ながらに忘れてたぁって、訴えられて、凄く辛そうにしていたものね…

私の腕の中に包まれながらお風呂に浸かっていると姫ちゃんが唐突に
「うん!決めた!お風呂とかその辺の設備をもっともっと良い物にする!!お金の使い道はこの街の利便性、住みやすさ、毎日が楽しく有意義に過ごせるようにする!!」
その発言を近くで肩が触れ合う程に、近くにいた人達が一斉に立ち上がって、拍手をし、喝采し、姫ちゃんを褒め称え始めた。

拍手に囲まれた姫ちゃんは満更でもない表情で照れながらも、輝くような笑顔で

「任せて!!」

大きな声でみんなの期待に応えていた。
この子は人前だろうと何も変わらず怖気づくことなく堂々としている、この姿を見て、この子は人前だろうと変わることなく、皆の心を引っ張っていけるリーダーシップ、カリスマ、そういったものを持ち合わせているのだと感じる。

騎士様とは違う、頼もしさ、騎士様は傍にいることによって絶対的に、何があろうか守ってくれるという安心感
姫ちゃんは、これから先に輝く未来を感じさせてくれる、心が高揚するような、希望が胸に宿るような…そんな気持ちにさせてくれる。

嗚呼、ぁぁ、そうよ、そうなのよ、この子はこの街から失われた希望になるのね、この子が来た時に感じた、この街に失われた心臓、この街を動かす為の血液を流し、街を稼働させる、希望の心臓になるのね。

お風呂に浸かりながら、皆が不満に感じていた各種施設の不満点を次々に姫ちゃんにおねだりするように色んな人が話しかけてくれるのはいいのよ?でもね、姫ちゃんがのぼせそうだから、意見書を作成して後日、私に渡す様にと伝え、のぼせ気味な姫ちゃんを抱えながらお風呂を出て、うちわで仰ぎながら体を拭いて髪の毛もしっかりと乾かした後は、食堂で冷たい飲み物を受けとって、それを片手に公園で二人で涼んでいると先輩が声を掛けてくる。

内容は特になく、最近は平和な状況が続いているからいいけど、怪我や病気はするんじゃねぇぞっと姫ちゃんの健康そうな表情を見て満足したのか去って行った。
普段なら絶対に涼んでいるだけなら声をかけてこない、姫ちゃんのことが気になって様子を見に来たってことね、本当にあの人は、根っからの医療人ね、もしくは、王都にいるため、会う機会がない娘と姫ちゃんを重ねているのかもしれないわね。

年齢的にも近いからね、ついつい、姫ちゃんと娘さんを重ねてしまうのはしょうがないわよ。
詳しくは聞いていないけれど、娘さんの方が少し年上の様な気がするけど、どうだったかしら?…詳しく年齢は聞いていないからわからないわね、いや、何処かで聞いたような気がする、かなり前の話だから忘れてしまっている可能性がたかいわねぇ…失礼になるかもしれないから思い出したいけれど、思い出せないわね、どうだったかしら?まぁ、奥様に今度それとなく話題として聞いてみてもいいかもね。

二人とも、程よく体の火照りが収まったので、部屋に戻ろうかと声を掛けた瞬間だった


非常事態を知らせる鐘がなる…


最近、忙しすぎたし、平和だったから忘れていたけれど

ここは死の街、死の大地の瀬戸際…人類の命を守るための最終防衛を任された街…会敵したのね、鐘を鳴らすということは!!敵は二本足!!!
憎き仇がやってきたと感じた瞬間、母親として、姫ちゃんを安全な場所に連れて行かないといけないという気持ちと、憎き騎士様の命を奪ったやつらを殲滅したいという感情が同時に湧き上がる!!!
殺気だつ私を見た姫ちゃんが一体どういう事態なのか困惑している。そうよね、姫ちゃんがきてからあの鐘が鳴らされることなんて無かったわね

「戦士部隊と敵が会敵したのよ、人類の脅威、私達の憎き敵!!!二足歩行の怨敵よ!!!」
全身から湧き上がる殺気に姫ちゃんが怯えるので、湧き上がる殺気を何度か深呼吸を繰り返して抑え込んだ後は、女としての私ではなく、優しく包み込むように、母親として接する
「姫ちゃんは私の部屋でじっとしていて、敵は私達が絶対に殺すから、この街に絶対に近づけさせないから!!!」
強く宣言すると、その切羽詰まった内容に、姫ちゃんは勇気を振り絞りながら声を出す。
「私も闘う!!」
体を震わせながらも勇気を振り絞る、その姿に心が打たれる。

見たこともない未知なる敵に恐怖を感じるのは仕方のないこと、それでも、勇気を出せるこの子は本当に心が強いわね、連れて行ってあげたいけれど、心の強さと、戦闘での強さは別よ、貴女は大人しくしていなさい?

どうやって説得しようかと悩んでいたら
「おい!休みの所、悪いが病棟に来てくれ!急患だ!!最悪なことに敵と遭遇したのは、この街の近くみてぇだ!!会敵したやつらが命がけで避難してきた!結構重症だ!現場には、坊主が駆け足で向かっているから、敵がこの街に攻め込むことはねぇ、ねぇと信じたいが、かなり危険だぞ!!」
先輩がこちらに駆け寄りながら大きな声で応援要請をしてくる、こんな状況になるとはね、敵が近くに居るのであれば、姫ちゃんは目の届く範囲に居てもらうのが得策ってことね
「姫ちゃん、ごめん、私の傍が一番安全だと思うから、私の傍にいてね?」
手が震えている、いいえ、手だけではないわ、全身が震えている、けれど、目は怯え切っていない。
姫ちゃんを抱きしめるようにしてから、そのまま抱っこするように抱き上げ
「先輩!今行きます!!」
姫ちゃんと共に、病棟へと駆け出す!!

お願いだから、坊やだけで仕留めれる敵であって欲しいわね…
あいつはもう、牙は抜けているだろうし…たぶん、闘えない、あんな女性として、母親として喜びを噛み締めている、そんな女性の顔をするような状態だもの、戦士の顔じゃないわ。
もう、命がけの現場で闘える精神は宿していないわ、それに、あいつもまた、あの戦場で心に大きな傷を持っているのが、何となく、伝わっているもの…頼りになるのは坊やだけってことね…

ほんっと、嫌なタイミングで攻めてくるじゃないの!!!




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