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とある人物達が歩んできた道 ~ 脅威を取り除く① ~

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仕度をしている最中も、姫ちゃんが教えてくれた秘術がずっと気になって仕方がないので、耐え切れずつい、質問をしてしまう。
空間跳躍っというのが、どういうものなのか教えてくれるのなら教えてもらいたい。

さらっと、軽く説明してくれた、内容も言葉にすると簡単そうに感じるのが不思議だけど、実現可能なのかしら?
Aの地点とBの地点に瞬時に移動するってイメージなのよね、原理も軽く説明してくれたけれど、ちょっと理解が出来ないのよね。

空間に干渉して空間に穴を空けて通る
空間に干渉?くうかん…?穴をあける?あけ…る?
何もないところを触れてみようと手を振るが当たることは無い、何もないのだから…何もない部分にどうやって干渉をするの?姫ちゃんには私達では見えない何かが見えているの?

その空間を通るには条件があって、その条件を満たしていない生物が通ると死を免れない。
本来であれば、生物が、生きる為の条件を満たしている空間ではないので、防御策を一切施さないで通ると、一瞬で、その空間に溶け込むように消える…

ぇ、こっわ…ぁ、でもまって?生き物なら即死させることが出来る特殊な攻撃方法に転用できないかしら?
その空間にどうにかして、敵を放り込めば一撃で殺せるんじゃないの?

この画期的な閃きを是非とも伝えてどんな敵でも倒せる術として運用すれば、恐れ知らずじゃない?

姫ちゃんなら空間だけを空けることが出来るトラップ式の魔道具とか作れそうじゃない?実現が可能なのか、また、トラップとして運用が可能なのかどうか確認すると
「うん、魔力さえあれば出来るよ、魔力さえあれば、理論上穴はあけれるよ。でも、空間に穴を空けたところで一瞬で、本当に一瞬で閉じるの、瞬きよりも光よりも早く閉じるよ?」
光よりも?光って速いのかしら?明かりの事よね?…瞬きするよりも早くに閉じてしまうのであれば空けたとしても、ってことなのね。
「穴を空けてその、穴に吸い込まれる様に指向性を持たせていないと敵が中に入ることもなく、一瞬だけ開いて閉じるっていう魔力を無駄にする行為になるよ?さらに言えば何か大きな物質が存在する場所に空間を空けることは出来ないし、穴をあけた状態で維持するだけの魔力って、どうだろう?何十人っという人の魔力がいるかもしれないから、運用が難しいかな?いい方法あれば教えて欲しいかな~」
莫大な魔力を無駄に消費するのはよろしくないわね、起動するだけでも相当な魔力が必要で、維持するのも大変ってことね。
「仮に中に放り込めたとしても、敵が死ぬ保証が無いよ?別の時間に、何処かで空間を開いた瞬間に過去に放り込んだ敵が空間から出てくるっていうリスクがついてくるよ?つまり、私達が空間跳躍の術を手に入れたとしても、過去に敵をその空間に封じてしまったら、二度と使えなくなってしまうからおすすめできない」
なるほど、短絡的に考えていたわ、そうよね、敵からその技術を奪ったのなら此方も利用しない手は無いじゃない!移動するための道に敵を落とし込んで出れなくしたのは良いけれど、自分達も使えなくなるなんて不便にもほどがあるわね。

「私も理論だけ知ってるって感じで空間干渉しようとしても、できなかったから特殊な材料とかがいるかもしれないし、純粋に私が持っている魔力じゃ足りないのかもしれない、相当な魔力が必要なのかも、だから、それらを補助してくれる現物の魔道具があれば凄く欲しい!!それを参考にして改良できる部分があれば改良したいかな!始祖様の秘術ってけっこう強引な手法で実現していることが多いの、無限にも等しい始祖様が体内に内蔵されている災害レベルの魔力量だからこそ出来ているって部分も多い気がするの!」
心なしか声が嬉しそうね、街の危機っていうよりも知的好奇心が勝ってる感じがするわね。本当にこの子に恐怖っていう感覚があるのかしら?
それにしても、始祖様の秘術をしっかりと解析して分析もしているなんてね、この子が始祖様と同じ質量の魔力を保持していたらあっという間に世界を救ってしまうのでしょうね。

さて、気になることは相談したし、最後の支度として鎧の部分なのよね。
クラフトに使えるかな~っと、研究塔から拝借…もとい、借りておいた錬金素材である鉄板。これをどうするのか手に持った鉄板を見て悩んでしまう。

どうやって身に着けようかと悩んでいると
「取り合えず、心臓とお腹と背中を守れたらいいんじゃない?」姫ちゃんのアドバイスに従ってみようかな。
試しに小さな鉄板を心臓の上に置いてみると…
「これは無理ね」
固定できないっていう理由もあるけれど、直に肌はちょっと、肌着の上にセットしたとしても…
鉄板に体温うばわれて低体温症をおこすかもしれないし、体が冷える=筋肉の動きが鈍くなりそうだし、何よりも動こうにも、形を作っていない真っすぐな鉄板だから、角が当たって痛いし、何かと動かそうとすると、邪魔されるのよね、鎧というのが如何に完成されている構造なのか驚かされるわね。素人考えじゃ駄目ね…

どうしたものかとお腹にあてたり腰に当てたりして、考えては諦めを繰り返していると、姫ちゃんが唐突に声を掛けてくる
「あ、魔力ある?」
鉄板と向き合っていると唐突に声を掛けられたけれど、今の魔力量を確認してみないとわからないわね。
鉄板を手に持ったまま、目を閉じて自身の中に流れる魔力を探ると、しっかりと感じ取れる、うん、まだまだいけるわね。
「大丈夫よ、貴女の中に最大限にまで魔力を渡せるかは微妙なところだけど、あるわよ」
実際問題、この子の体って何処まで魔力を貯めれるのかわからないのよね、どんだけ注いでも抜けていくイメージがあるのよね。
実際に何処かで抜けているかもしれないわね、いくら封印術式を施していても、姫ちゃんが術式を発動するために弁は用意しているけれど、こじ開けれるようにしてあるから、注いだ圧力でその弁から溢れている可能性もあるのよね。

鉄板を持ちながらも返事をして振り返ると、更に質問が飛んでくる。
「魔力を渡しながら走れる?」
さらっと、無理難題を言ってくるわね、この子はぁ…
イメージしてみる、右手でパンを掴んで食べる動作をしながら、左手で文字を書いて、先輩の講義を受けるみたいなものじゃないの!…あれ?やれそうな気がするわね。

簡単ではないが出来そうな気がする
「頑張ってみるわよ、何?何かいい案があるの?」
事前確認させてくるってことは、魔力を使った何かしらの策があるってことよね?…頼りにされているのは嬉しいわね、実際に魔力譲渡が出来るのはこの街で私だけでしょうし。
「一応ね、ぶっつけ本番、相手に有効かどうかはやってみないと確証はないよ?でもね、敵を解体して、構造を把握したからこそ、いけると私は感じてるの」
あら、脳みそをこじ開けたのが良い方向に進んだのね、私だったら、敵とはいえ、脳みそをこじ開けてまで、いじる気にはなれないわ。流石に、絵面がやばすぎるわよ。

両拳を胸の高さまでに上げて小さなガッツポーズを作りながら鼻息をフンっと鳴らして自信満々にしている。
「だから、任せてよ、危険な目には合いにくくなると思うよ、一部の敵には反応ないかもしれないけれど」
そこまで自信満々な姿勢をとっておいたのなら、言葉も自信満々に最後まで言って欲しいわね。
少しでも可能性があると考えるからこそ断定しないのが彼女の良いところでもあり、悪い所でもあるわね。
まぁ、概ね大丈夫、特殊な例外もある、可能性が少しでもあるのなら、その可能性を考慮する、そんな感じでしょうね、だったら、大丈夫でしょ。信頼も信用もしているから、何も問題ないわね。

どうしようもない使い道が思い浮かばなかった鉄板をテーブルの上に置いて、動きやすい服装に着替え終わったので、急ぎ足で研究塔に戻ると戦士の一団がピリピリとした、一触即発の緊張した雰囲気が漂い、面構えも険しく、何時でも戦えれるという状態で待っていてくれている。
戦士の一団の中には、前回しっかりと私達を守ろうとしてくれた戦士の人もいるじゃないの、良いわね、姫ちゃんの騎士第一号ね。

集まった一団に姫ちゃんが今から行う緊急ミッションを伝えると、やっぱり納得できない人達もいるみたいで、一部から抗議の声も出てくる

第一声がまっとうな理由なのよね、不満とかそういうのではなく至極当然、私達の中では常識である内容

【もう日が暮れる、本当に今必要なのかと】

そう、日が暮れた死の大地は本当に危険、昼間とは段違いで危険度が上昇する。
元来、私達、人類の多くに共通することがある、夜目が効かない。
だけど、敵は夜目が効く、なら灯りを灯して行動すればいいというのは短絡的考え、死の大地で、灯りを灯す行為は基本的に死を招く行為に繋がる。
何故なら、敵に此方の位置を知らせてしまう作用がある為、灯りを灯すという行為は敵に見つかるリスクしかない。

本来であれば、昼間に行動するのが基本、だけど姫ちゃんが予想している内容が当たっていたら、今危険を冒してでもアクションを起こさないと…

姫ちゃんが声を出そうとした瞬間、暫くの間は聞くことがないだろうと思っていた非常事態を知らせる鐘が鳴る…

音が知らせる内容から姫ちゃんは自分が予測していた内容が確かであると確信し、焦った表情で声を荒げる
「くそ!先手を打ってきたってこと!?やっぱり空間跳躍が正解じゃないの!!!」
姫ちゃんが慌てて全部隊に出撃命令を告げる、戦士の一団もまさか、出撃しようかと悩んでいたタイミングで敵が出現したことに驚いているが、それよりも、この事態がやってくると予見してかのように動き出していた姫ちゃんにも驚きの声が漏れ出ていた。

集まっている一団は、中堅どころが多い、けれど、今のこの街で一番手と呼べる使い手である、肝心の坊やの姿が無いわね。っとなると、現場に既に居てそうね。
鐘の音が鳴ることによって戦士の一団全員が気持ちを引き締め、門の場所まで駆け出す。
門の近くに到着すると、鐘を鳴らしていた人が大きな声で叫んで知らせてくれる
「2足歩行だ!ベテランのやつが相手取っている!応援に出れるなら出てくれ!!場所はここだ!!」
地図が書かれた紙を丸めて投げて渡してくれる、受け取った人が直ぐに姫ちゃんに渡してくれる。
真っ先に姫ちゃんに渡してくれるってことは、段々と姫ちゃんがこの街の司令官になりつつあるっということね、前回と、今回の襲撃を予見したという部分が姫ちゃんの評価を大きく向上しているのね。

研究だけじゃなく作戦参謀としても非常に優秀であると厳しい目で見てくる戦士の一団からも徐々に評価を勝ち得ているのね…
この子は、この調子でこの街を引っ張って行ってくれる、騎士様という失われた太陽のように、今も輝こうと登ってくる白き光で世界を包み込む月の様に私達を照らしてくれる、暗いくらい夜道を、その光り輝く笑顔で…

過去の偉人達が寵愛の巫女に縋ってきた歴史…その歴史は繰り返されようとしているのね。

月の様に白く輝く髪の毛に、儚げな雰囲気をまとった超常なる力を持つ一族、奇跡を目の当たりにしてきたのであれば、その力を欲しがるのは必定よね、神に縋るように縋りたくなるわよ、そんな宿命宿業…紡いできて人類を導くという呪いの様な希望を私は守り通して見せないといけないわね。

気合を入れて門を潜ろうとすると
「魔力ちょうだい!全力で展開するから!!」
一歩を踏み出そうとした瞬間に制止させられる、正直背負った状態では、魔力を譲渡するのは難しいので、お姫様抱っこの姿勢に切り替えて、手を姫ちゃんの服に潜り込ませて魔力を渡すと

音が消えた?

周りにいる戦士の一団の中には視覚・聴覚・嗅覚に敏感な人たちがいる、その人たちが直ぐに違和感に気が付き、慌てている。
「認識阻害の術式を常時展開します、なので、音なんて気にしないで走ります!私から半径30メートル以上離れないように気を付けて付いて来てください!」
その言葉に全員が何かは知らないが何かをもって敵から見つかりにくくしているのだと納得してくれている、全員が現状に納得してくれたみたいなので、姫ちゃんを抱っこしながら走り始める!!

昼間にいっぱい歩いたのに夜も走るなんてね!!!もう、足が太くなるのは…もう覚悟したわよ!!!

全員で行軍するように走り出す、音もガシャガシャと盛大に鳴っている、音を盛大に鳴らしても構わず駆けていく。
この辺り一帯を熟知してくれている人が、前を先導してくれる。前を先導してくれている戦士の方は、この辺りを何年も巡回している経験豊富な人材。
なので、彼について行けば門で受け取った地図の場所まで真っすぐに夜道だろうが暗くて前が見えない状況でも、最短ルートで案内してくれる。

何分か走り続けると、前方から、戦闘する音が聞こえてくる、鎧がこすれる音、盾が何かにぶつかる音…

暗くなってきているせいで、よくは見えないが、誰かが闘っているのが音によって伝わってくる。
「止まって!後、戦闘に自信があって、彼の応援に出れる人は前に出て!」
姫ちゃんが止まると8割の人が立ち止まり、残り2割の腕に自信がる戦士達は応援へと駆け出す。

応援へと駆け出した人たちを見送りながらも、敵に気づかれないようにジリジリと間を詰める様に慎重に敵に近づいていく。
「認識阻害の術式を解除し、一旦、見に回ります、皆さんは、戦闘態勢を維持して、近辺の状況把握に努めてください」
幸いにまだ、完全に夜っと言う程、日が暮れていない、ある程度進んだ、敵からも見えているけれど、襲ってこないであろう、この位置から、敵と誰か、恐らく坊やで合っていると思うけれどね、前に進んだ戦士達と敵が闘う姿がギリギリ見えるか見えないかの範囲に位置取りをする。

「今回の猿はどれかなっと…テナガザルか、腕長いね…」
やっぱりこの距離からでも見えてるのね、その術式いいわね。今度、遠くが見える術式を教えてもらおうかしら。
術式を使っているということは魔力を消費しているという事、言われるまでもなく姫ちゃんの首に手を触れて魔力を渡していく。

「…おかしい?敵の様子が、なんで?動きが単調?疲れている?…転送直後だからとか?…なら、もしかして、攻めるなら今が好機?…そうであったら、力押しで行くのが。速いかな?今、この瞬間一番気を付けないといけないのが、次の敵が次々とこの現場に送り込まれることの方が…脅威だよね」
ぶつぶつと、小さな声で独り言を言いながら策を巡らせているなと、姫ちゃんに魔力を贈りながら眺めていたら、急に立ち上がって声を出す。
「敵は弱っている!今を逃すと長期戦になる!突撃するよ!」
全軍に前に向かって、駆け出す様に指示を出すので、私も慌てて立ち上がって姫ちゃんを抱き上げて、もう少し前へと駆け出す。

戦士の一団も敵との闘いに気合を入れると、一気に、この場に居る全員から殺意に近い決意が溢れていく、今のこの瞬間、この場所には殺気が渦巻いて死の戦場へと雰囲気が切り替わっていく。

声を出さないが一斉突撃で全員が敵に向かって駆けだす
急に、大人数が前に向かって突撃する、敵からすればそれだけで脅威に感じているはず、焦ってくれて冷静な判断を失ってくれていればいいわね!
駆けだした一団、その光景を見送りながらも、一団に付いていくように後ろをついていく、流石は、戦士の一団、重たい装備を背負っていても駆け出す足は速い。

後方から大勢の足音が聞こえたのか、相手取っていた坊やらしき人物もっていうか、この距離なら、あれば坊やだって一目瞭然ね、あの鎧でわかるわ。
坊やも、敵の前に出て敵の攻撃を一身に受け止める為に、適度に敵を攻撃して敵からの意識を引き付けてくれている。
駆け出している戦士の一団に姫ちゃんが大きな声で作戦を伝える
「電撃作戦で行くよ!時間との闘いだから!敵側の応援が来る前に転移するための魔道具を抑える!そのためには速攻で敵を殺すよ!!」

中央は、ベテランの人に任せて左右に分かれてください。
中央の人は、敵が上からの振り下ろしの攻撃を誘発させて!左右の人達は振り下ろされた手を地面に打ち付けるようにして!あの長くて邪魔な腕を封じて!封じるための手段は問いません!!
敵の腕を封じるまでの間、敵が動けないように伸びていない片側から敵の背中、または、脇腹目掛けて攻撃して意識を引き付けて!

その声を聞いた坊やが、直ぐに動き出す。
得意の槍で、敵の喉元や胸元を、何度も執拗に攻撃して、敵の注意を引き付けて尚且つ、敵の攻撃を誘発させる。
坊やの攻撃をうっとおしく感じたのか、敵は腕を真横水平に薙ぎ払う様に攻撃する、周囲に人が増えてきたから焦ったのかもしれないわね。
坊やは、その攻撃全てを、姿勢を低くして避けている。

敵からすれば執拗に攻撃してきたうっとおしい相手が避けにくい姿勢になるのを好機と捉えるわね、姿勢を低くして攻撃から逃れにくい姿勢になっている坊や目掛けて、真っすぐに殴りつけてくると、坊やがすかさず立ち上がって、盾を使って真っすぐに伸びてくる敵の拳を地面に向かって叩きつける、叩きつけた直後は、バックステップで、素早くその場から離れると、坊やの動きに合わせるように敵の手の甲に向かって剣を突き刺す為に戦士が飛び掛かる。
敵が自身の腕を守るために、引っ込めるという行動をさせないために、槍を持った戦士が敵の背中めがけて突きを放つと、敵はその行動に直ぐに釣られてしまい、地面に伸ばして手を引っ込めることなくその場に置いてしまう。空いた片方の手で背中を突いた相手を振り払う様に長い腕を鞭のように振り回している。

その隙が命取りになるわね

剣の切っ先が放置してある腕の甲に触れるかどうかの距離まで近づくと、槌を持った戦士が勢いよく全体重を乗せて剣の柄を轟音と共に叩き敵の拳ごと、地面に剣を深く突き刺す。
その痛みと衝撃で慌てて手を引っ込めようとするが、敵も本調子ではないのか動くが鈍い?
地面に剣という名の杭を打ち付けられた為か、腕を引っ込めることが出来ず、バランスを崩して前のめりになって、慌てている。

その隙を見逃す一団ではないし、姫ちゃんも見逃さない次の指示を叫ぶ

「前のめりに体制を崩した敵の頭は下がっている!より深く地面につけるためにもっと、下げるよ!槌を持った戦士に敵の肩を地面に向かって殴りつけて!後方にまわれそうな人は後ろから敵のケツを全力でぶん殴って!」

全体に指示を出す、けれど。頭じゃなくて肩?なんでお尻?
その指示を聞いた戦士が敵の右肩、左肩を同時に槌で地面に向かって全体重を乗せて肩を叩く!!
前かがみに重心が崩れていた敵は、より深く前かがみになる。

止めと言わんばかりに戦士の一団で後方に回りこめえた人達が、後方から、前方へと向かう衝撃を二発も!その体に衝撃を与える。
指示を受けとった戦士が駆け出し、後方へと周り込めたのが、2名も居ており、その二人がほぼ同時にフルスイングで、剣の腹の部分で叩き、槍の柄の部分で真っすぐに突きだして後方から前方へと力が抜けるように叩いていた。
その結果、前かがみになっていた敵は更に深く前かがみになり後ろから押される様に前へと押し出された。

その結果、敵は、無残にも額を地面に擦りつけてしまう、その瞬間、無防備に首をさらけ出して…隙を作ってしまう。

「首を落として!」

姫ちゃんの声が聞こえる前に、すでに、戦士達が行動起こしている、熟練の戦士であれば気が付くだろう、ここまでくれば、次にするアクションは決まっている!!
敵の首を落とす為に斧を振り下ろしていた、斧が敵の首に当たる!!

だが、首が飛ぶことがなかった、当然、戦士の一団も一撃で首が落とせるとは思っていない、槌を持った人が更に斧に向けて全体重を乗せた必殺の思いを込めて槌を振り下ろして斧を叩く!!!

ゴンっと、凄まじい金属音がする!!
だけど、それでも敵の首が胴体から離れることは無い、それも、戦士達は理解しているのか、次弾の更なる追撃として斧を叩いた槌、その更に別の槌で、首の上にある斧と槌を叩き折るつもりで敵の首に向かって叩き込むとゴギンっと大きな音がした…首の骨が砕けた音だ

その音を聞いて一団は敵の死を確信するが
「油断しない!空いてる方の手から攻撃されるよ!下がって離れて!!」
その一声で攻撃をしていた戦士達が斧と槌を手放し転がるようにその場から離れると、転がる上空を敵の腕が鞭のようにしなりながら掠めていく。
首の骨が折れ、首がぶらんと胸元に垂れながらも起き上がり地面に打ち付けられていない片方の腕を振り回して攻撃してくる

敵は此方の動きが見えていないのか、辺り一面に腕を振り回して攻撃してくる、しかし、片方の腕の動きが封じられており、視界も封じられている敵は此方に向かって的確に攻撃を繰り出すことが出来ていない、ただただ、無我夢中でパニック状態なのか、腕をブンブンっと振り回しているだけ。
それだけなのだけれど、敵の腕力を考えると振り回された腕に触れるだけで、こちらは吹き飛んでしまうし、当たり所が悪いと確実に骨を持っていかれる。
その為、敵にどうやって止めを刺せばいいのか攻めあぐねてしまう。

「槍部隊は敵の背中に回って刺して!敵の攻撃が届かないエリアがあるよね?そこから攻撃して!」
その一言で槍を持っていた戦士達が、片腕を封じられ視界も殆ど封じられパニックを起こして単調な動きしか出来ていない敵の動きだと認識する。
単調な動きで暴れ回るのなら対処は非常に簡単で、敵の後ろにまわってしまえば敵の攻撃が届かない場所がある。
その場所から執拗に敵の背中を何度も槍を突くのだが、決定打に欠けるみたいで致命傷を与え切れていない。

っていうか、首の骨が折れた程度では死なないの?

相変わらずふざけた生き物ね…生き物とは呼べないわね。姫ちゃんが言っていたように生物兵器、何かしらの魔道具って言われた方が納得できるわね。

敵も背中から攻撃されるのが嫌なのか、これ以上、背中を攻撃されないために背中を地面につけて、お腹をさらけ出しながらも、惨めな動きを連想させるように腕と足を振り回している。
どうやら、地面に打ち付けられた腕はもう機能していないのか肩から外れたのか、だらんと動く気配がない、構造的に脱臼していそうな角度だものね…いえ、あれは、ほぼ間違いなく脱臼してそうね、かといって油断はできない、自分で脱臼させて再度、脱臼を自身の力で関節に嵌め込むくらいしてきそうよね。

敵の無残な攻撃方法に此方も何処から攻めたらいいのか悩んでいると
「両サイドから脇腹目掛けて槍で突きさして」
その声と同時に槍を持った戦士が敵の脇腹を何度も執拗に刺すと、刺されるのが嫌なのか両足を地面につけてお腹を浮かせてブリッジの姿勢になり踏ん張っている?違うあれは
「腕を捨てるわね、立ち上がるよ!足の力を使って地面を蹴って立ち上がるよ!着地と同時に首が暴れる!その瞬間に敵がこちらの位置を把握する恐れがあるから気を付けて!」
ブリッジの状態で地面すれすれでバク転するように跳躍すると、ブチブチブチっと凄い音と共に敵が立ち上がる、地面に打ち付けられていた腕を考慮せずに飛ぶから関節がぐるっと一周して肩と腕を接続する全ての腱が切れたわね。

ブランっと垂れている首もぐるりと回った瞬間に、こちらを見ているのか眼球が動いているのが見えた…見ているわね首の骨が折れているのに、どれだけ動くのよ…

「あまり時間はかけたくないってのに!しぶとすぎ!!敵は後方への攻撃を嫌がるから後ろから攻撃して注意を引き付けて!!」
その声に合わせるかのように槍を持った人たちが後ろから背中を突くが刺さる気配がしない、皮膚っていうよりも毛皮が頑丈っぽいわね。
「前は俺が引き受ける!」
坊やが駆け出して敵の前に陣取り、ブランブランと揺れている頭目掛けて何度も突きを繰り出し頭を突くが固定されていないせいもあって槍が刺さらない。
敵も前後から攻撃をされていてどっちを攻撃すればいいのか悩み、腕を振り回すだけで何も攻撃が出来ていない。

幸いにも打ち付けた剣がまだ地面に突き刺さっているし、腕の腱をちぎって立ち上がった影響で使い物にならない上に、腕が肉体と繋がっているせいで自由に動けないでいる。
パニックを起こしるのか正常な判断が出来ないせいか、わからないが、地面に突き刺さった腕を解放するために、もう片方の手で打ち付けられた剣を引き抜くという考えに至らないのだろう。

ほっといてもこのまま、絶命しそうな気がするけれど、しっかりと止めを刺さないと、この場で作業するということを考慮すると…危険なのよね。
どうにか次の手段は無い物かと、敵を観察すると、小さな違和感?違和感というか、敵の毛皮がしっとりとしている?
「敵の体液が漏れ出てきてるぞ!攻め時だ!!」
坊やが声を出すと、一斉に戦士達が敵の体を切り刻もうとすると、先ほどまでと違い、打って変わって敵の毛皮を切り裂くことが出来ている。槍が剣が、敵を切り刻んでいく。

執拗に切り刻んでいくと、突如、敵が唐突に動かなくなり、その場に崩れ落ちる。
すかさず、坊やが、首を切り落とす為に槍を上から振り下ろすと、先ほどまで切れなかった首もあっさりと切り落とすことが出来た。

その姿を見て姫ちゃんもひゅうっと溜息の様な吐息を漏らしている
「どうやら、敵は魔力か何かで毛皮を強化していたって感じかも…それが解っていたらもう少しやりようがあったなぁ…反省しないと」
額の汗を拭いながら今回の作戦で反省する部分を見出しながらも相手が動かないのかしっかりと観察している。

恐怖心は無いのかもしれないけれど、人一倍警戒心が強いっというか、慎重な部分もしっかりと持ち合わせているのが素晴らしいわね。考え無しの私とは大違いじゃない。


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