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とある人物達が歩んできた道 ~ 欲 ~
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司令官からの号令により、司令官の元に救護者を探す為の人員、その全てが集結する敵との戦闘を終えた後とは思えない程、この場にいる全員の目は曇っておらず、使命に燃えている。
奥へ向かえば向かう程、凶悪な敵と出会う確率が高くなる、死地へと、これから足を踏み入れる、現時点よりも、死という恐怖が色濃く漂う深いエリアへと駆け出す…
予定だったのだが、拍子抜けだった…何故なら、戦士の一団からすると、予想外、あり得ない場所でありえない声が聞こえたから…
「おお!爆発音がしたから駆けてきてみれば!みんな!!無事だったか!!」
声の下方向を見ると、背中に、大きな大きな人の何倍もありそうな、長い、とても長い何かを背負っていた。
よくよく見ると、何かを丸めた様な感じで、とても大きな物を背負っいるベテランさんがこちらを見つけれたことに嬉しいのか満面の笑みで手を振って駆け寄ってくる。
手を振りながら近寄ってくる姿を見ても、直ぐに現状を理解できないのか、戦士全員が、驚きの余り声を出せないで制止している。
私と姫ちゃんは、敵の動きからこうじゃないかっていう、予想をしていた、していたけれどこうだと良いよねっという希望というか、願望というか、そういうのが多少はエッセンスとして加えられていたと思うのよね、だから、本当に近くにいるなんてね…
ありがとう騎士様、貴方が彼を徹底的に鍛え上げたことによって彼の命は救われました…
貴方の愛弟子である、坊やが、独りで死地から帰ってこれました。
坊やが手の届く場所までゆっくりと近づいて漸く、戦士達が坊やだと、目の前にゆっくりと合流して来た男が、独りで、任務を終えて、無事に死地から帰還したのだと理解した、その瞬間に、坊やの胸元へと突撃していく、突撃して来た仲間達を大きく手を広げて受け止めている、その為、ガンガンっと鎧と鎧が衝突した際に産まれる金属音が辺り一面に響き渡る。
嬉しいのはわかるけど、激しい音をだすんじゃないわよ、まったく…認識阻害の術式があるから大丈夫かもしれないけど、認識阻害が通用しない敵も居るのよ?速く撤収しましょう?
戦士達の悦び姿を眺めているとパンっと小さく手を叩く音が聞こえると、一瞬で全員が音がした方向へと体を向ける
「はい!撤収するよ!ベテランさんも、詳しい話は街に帰って聞かせてね、あと、歓ぶのは帰ってからね!」
姫ちゃんが声を出すと、全員の呼吸が統一されるかのように隊列を整えながら司令官の元へと駆け寄り、司令官の前で姿勢を正す。
これはもう、完全に指揮権を得たわね…
集合した後は、怪我は無いか、装備に異常が無いか、必要なことを全て確認したので、後はもう撤収するだけ、だけなのだけれど、肝心の司令官はどうしても、一か所から視線を外すことが出来ないでいる。
姫ちゃんの視線はお熱だった、自爆タイプをとても欲しそうに、熱いまなざしで釘付けだった。
そうよね~自爆タイプであそこまで、綺麗なのってそうそうないじゃない?それはもう、ね?とっても、貴重なサンプルだものね~、もって帰りたいよね。
でもね~、凍り付いているのよね~、あれを街まで運ぶのは、億劫よ?まずは、氷を溶かしてからになるじゃない?どうやって溶かすのかってことなのよね、徐々に暗くなってきている状況で灯りとなる火なんて出せないわよ?どうにかして溶かしてから、胸を貫いた土を外さないといけないものね。…そんな時間ないわよ?
ほら、行くわよっと意志を込めながら急かす様に、背中をペチペチと叩くと、意志が伝わったのか眉を八の字にして未練がましい表情でこっちを見ないの…駄目よ、今は時間がないでしょう?明日にでも戦士の一団に取りに行ってもらいなさい、明日には氷も溶けてなくなっているでしょ?
観念したのか、ぐっと眉間に皺を寄せて「撤収…」悔しそうにつぶやくと、全員が頷き、戦地を後にする。
帰り道は、非常に楽だった。
戦士の一団もいるし、背にバカでかい何かを背負っているけれど、坊やもいるし。
認識阻害の術式しっかりばっちり機能していて、綺麗に作用しているから、そこそこの集団行動なのに、敵に見つかることがなかった。
過去に私達が、苦い思いと共に学び、経験し、紡いできた、教訓。その全てが、姫ちゃんの手によって過去の物へと…全てが覆りそうよ。
平穏無事に帰ってこれた、行きとは違い、命を賭すような意気込むこともなく、緊張感も薄れ、雑談などの私語は無いけれど、余裕の笑みが零れ出るくらい心穏やかに街に帰ってきて、門を潜ったら、全員が大きな声で叫ぶ、全て、そう、本当に全てが完璧ともいえる奇跡の様な結果に、誰しもが涙を流し感極まっていた。
そのお祭り騒ぎの様な声に街の人達も何事かと駆けつけきて状況を確認しようと辺りを見回している。
直ぐに、どうして叫んでいるのか状況を理解する、戦士の一団が歓喜の声を上げながら舞っている姿がそこら中に溢れている。
全員が笑顔で肩を組みあったり鎧のままでハグをしているのだから、喜ばしいことがあったのだとすぐにわかる、その姿を見て全てが解決したのだと察し、戦士の一団の歓喜の舞に混ざって喜びを表現し始めていく。
歓びが溢れる現場を目の当たりにしたのか、走り続けた影響なのか、足が限界に近付いてきたのか、唐突に震え始めるので、姫ちゃんを地面におろした後、緊張の糸が切れたせいなのか体に力が入らず、その場に座り込んでしまう。
座り込んだ状態で、皆の様子を眺めていると、ふと、坊やの姿が目に留まる。
どうやら限界を迎えたのか、鎧を着た状態で、私と同じようにその場にへたり込む様に座って、歓喜の舞を眺めている。
座り込んでいる坊やに街の人達が食料や飲み物を手渡している、坊やも屈託のない安心しきった、緩んだ笑顔で受け取り、美味しそうに飲み食いを始めていく。
はしたないと思われても、仕方がないけれど、私も今の状況にあてられてしまったのか、更に全身の力が抜けてしまい、全身を地面に預けてしまう。
無事、誰も怪我をすることなく、失うこともなく、人型の奇襲を防ぎ切れたという結果に、心の底から安堵したのだろう…
大の字で横になり、空を見上げてしまう、気が付けばもう夜になるのね、空に点々と光の粒が輝き始めているわね…
「ふぐぅ」
お腹にどすんっと衝撃が来るものだから空気が漏れるような声を出しちゃったじゃないの…
空を眺めていたら唐突に、お腹の上に何かが乗っかってきたと思ったら流れるように、乗っかってきた人が全身を預けるように私の体をベッド代わりにしてくるじゃないの、そういう事をするのは、考えるまでもないじゃない、この世に、一人しかいないわね…
胸骨の真上に乗せられた頭の感触を味わいながらも、ゆっくりとお腹に手を回すと、小さなふくらみがあるので、その上に両手を置き、ポンポンっと叩きながら
「お疲れ様、ひと段落するまで、長かったわね」
人の体をベッドのように扱う遠慮しらずの我儘お嬢さんに声を掛けると
「そう?私はまだまだへいきだよ~、お祭り騒ぎみたいで楽しかった…うん、楽しかった、こんなこと、したことが無かったから、凄く楽しかった」
私の手に、そっと手を重ねるようにしたあと、ゆっくりと握りしめてくる。
本当に、この子は能天気なのか、誰も死ななかったから良い物の…人が死んでいたら、そんな感想出てこないわよ?まったく。
こうして、この街に未曽有の危機をもたらしかねない大事件は、平穏無事に幕を閉じた…
翌日に、坊やから敵地での出来事を幹部会として報告をしてもらった。
どうして合流が遅くなったのか、偏に飛んだ先にあった魔道具が滅茶苦茶でかかったからだった。
姫ちゃんも、先に手に入れた魔道具と同サイズと考えていたみたいで、これ程までに、巨大だとは想定外だったみたい。
認識阻害の術式は非常に効果的で敵に見つからないのは良かったのだけれど、魔道具がデカすぎて通る予定だった森林エリアを通ることが出来なかった。
その為、大きく迂回して、ルート変更を余儀なくされていたのね。
坊やが、持ち帰った魔道具を実際に広げてみると、驚きの大きさだったわね。
確かにあれ程の大きさだったらパワータイプもすっぽりと入るわね…
縦幅は坊や三人分ってところかしら?それが正方形だから、横幅も同じくらいね。
敵地の様子は閑散としていて、飛んだ先で敵が出迎えているのじゃないかって言う不安もあった。
こればっかりは始祖様のご加護だろう、最悪の事態を回避できたのも運が良かったのだろう。っと、各々の感想を言いながら、戦士の一団が奇跡的に運が良かったのだと坊やの肩を叩きながら喜びを露にしていた。
それに関しては、私も姫ちゃんも同意見ね、飛んだ先の状況までは調べようがないから、わからないもの。
今後は、この魔道具を運用できるように姫ちゃんが解析、改良を施した後、実戦配備することになるみたい。
なので、門の手前にある広場に設置する方針が決まるので、今後、転送陣エリアっという名称に変更するみたい。
後、姫ちゃんからの指令で、自爆タイプの遺体を回収させに戦士の一団を送り込んだのだけれど、現地には敵の死骸が無く、手ぶらで帰ってくる。
戦士の人達は、その辺にいる大型の肉食獣にでも持っていかれたのだろうと言うが…
私達は、そう思うことが出来なかった…
それから、数日後、王都に帰っていた監視の方が街に帰ってきたと思ったら、30名近くの武装した集団と共に帰ってくるものだから、私達は王都から粛清されるのでは!?っと、恐怖する人が出てしまったわよ
実際は粛清とかではなく、王都にいる世継ぎから縁遠い貴族の三男、四男に、妾の子、側室の世継ぎ候補から除外された人達を搔き集めて連れてきてくれたのよね。
彼らを集める為の触れ込みとして、
【ここで一旗揚げて、報酬を得て家を興せ】
だって、無茶を言うじゃないって、昔なら思ったけれど、現時点だと、実はそうでもないのよ。
術譜が王都で大量に売れてしまったのよ…しかも、まだまだ発注されていて、現状では材料が足りてないのよね、なので、材料共に大量に用意しないといけないのよ…
術譜の原材料が敵の皮膚なのよね、それが足りない。
なので、死の大地にいる獣達を乱獲する勢いで戦士達が遠征に出ているのよね。
術譜なんて、戦闘用の道具が大量に売れるなんて想像していなかったけれど、意外にも需要があって、売れる物なのね。
てっきり、騎士団に全部売っているのかと思っていたら、実は、騎士団よりも、貴族から平民まで、数多くの人達が欲しがっているのよ!
主に、水を生み出す術譜、風を生み出す術譜、温度を下げる術譜が、物凄い需要があるのよ、作っても作っても足りないくらい受注されてるのよ!!
ちょっと魔力を込めるだけで水汲みから解放され、生み出した風によって仕事や、訓練などで火照った体を冷やすことが出来、飲食店からも氷を作り出せる画期的な魔道具として重宝されているのよね~、まだまだ冷蔵庫という魔道具は高価で、平民では手が出せない。
なので、平民にとっても貴族にとっても姫ちゃんが生み出す魔道具を持っているのが一つのステータスみたいになりつつあるって言っていたわね。
更に、これって、実は消耗品なのよ。
一定回数使用したら、描いた陣が崩れるみたいで使えなくなるのよ、その場合は術譜を一度、こちらに返してもらって、再度、陣を描き直してからお返しているのよ。
あ、勿論、有料よ?タダでするわけないじゃない、新しく術譜を購入するよりも格段に安いので需要が途切れないのよね、素材となる皮が使い物にならなくなった場合は新品の購入を勧めているわ。
だから、王都とこの街から、術譜を反復するように何度も運搬するために人手が足りないから、王都にいる行商人に術譜を運ぶ仕事を行商のついでにお願いできないかと、頼むと、莫大な値段を吹っ掛けられちゃったのよね~。
確実に私達の足元を見てきているわね、私達が唐突に莫大な資産を手に入れたものだから羨んでいるのか、こんな街で働いているから学が無いだろうと馬鹿にしているのか、そのどれかでしょうね。はぁ、これだから王都を根城にしている商人どもは性根が腐ってるわね。
余りにも暴利で舐め腐った態度で取引を勧めようとしてくるものだから、姫ちゃんが行商の人に怒っちゃったのよね~、まぁ私もぶん殴ってやろうかと思っていたけれどね。
私達を小馬鹿にしたような、誰も得しない契約書、それら全てを跳ね除けて、っていうか、実際に契約書を行商の人に投げつけようとしていたのを止めたわよ。
自分で解決する!っていうと直ぐに行動に起こして実現しちゃったのよね~。
馬車代わりの魔道具も造り上げて、畜産の旦那経由で、商会から人を雇って、雇った人に車っていう魔道具を使って運搬してもらっているのよね。
おかげ様で行商人の方も反省したのか、姫ちゃんに媚び諂っているわよ?
大富豪になれるかもしれない縁を、商機を、逃したのだから、それはもう命がけの様に必死だけど、姫ちゃんも性格が悪いから、笑顔で追い払うのよね~若干、いいえ、確実に小馬鹿にしながらね。
意趣返しとはいえ、性格悪いわよ~?見ていて凄く気持ちが良いから、もっとやれなんて、思ってないわよ~?っふ…王都のそういう汚れたところが嫌いだったのを思い出したわ、それだから、あの街には、輝く色がないのよ。
そういういざこざがあったからなのか、姫ちゃんの名前が商人の間で凄く広まって行っているのよね~。
今まで、この街に来たことも無い商人が姫様に合わせろ!って来るものだから、それの相手をするのも大変なのよね~、財務のやつ早く帰ってこいっての!!
ええそうよ!財務担当が不在なのよ!あいつったら、ずっと王都に泊まり込んで、まったくなにをやってんだか…
取引先が居るのか知らないけれど、帰ってくる気配がないわよ…
それだけじゃないのよ~、色んな貴族から大人気になってしまった影響もあって、姫ちゃんが作ったカメラっという魔道具も大量に貴族様に売れたわよ…恐ろしい金額でね!!
これらすべての結果によって、私の部屋にある倉庫が、それはもうとても、凄いことになってるのよ…
金貨が山ほど積まれているのよ、私の部屋着とか隅っこに追いやられてしまうくらいにね。
ここは大貴族の宝物庫か!ってくらい、凄いことになっていてね、これを管理するという仕事も増やされてしまったのよ…
私、事務的なこと、苦手なのよ…
計算は、そりゃ、出来るわよ?毒を作ったり薬を作ったりするのに、数式は必須だもの。
だからといって、私に押し付けるのは如何なものよ?そりゃぁねぇ?姫ちゃんの自称お母さんよ?この街の幹部よ?だからといって、この膨大な量の資産管理なんてしたくないからって押し付けてくるのは、ひどくないかしら?
おかしいわね、私って医療班の団長よね?最近、医療班として動いていない気がするのだけれど?
坊やもね、最近は街にいることが多くて王都から来た人たちを鍛えることに専念しているわね。
驚いたことに、貴族として鍛錬を続けてきた人達が束になっても坊やに敵わず、さらっと、全員を捻じ伏せて、尊敬されていたわね。
それについては、凄い喜ばしいことなのだけれど、どうもね~坊やと同じようにあっち方面が好きな人がそこそこ居るみたいで、その人たちの話題によって、坊やがもう限界迎えちゃったのよね~…雄としてのパッションが溢れそうになってるのよ、いいえ、溢れ出ているでしょうね。
だもんで、子供を抱きに行くので休みが欲しいといって、四日ほど休みを取ったのよね。
乙女ちゃんも若い男を相手にするのは大変でしょうねっと思っていたのだけれど、その憐れみというか同情の念は直ぐに掻き消えたわよ。
街の入り口近くで、昔から良くしてもらっている行商の方に必要な物を取り寄せてもらう話をしていたら、坊やが馬車に乗り込むのが見えたのよね。
その瞬間は、嗚呼、王都にある実家に顔を出しに行くのって、乙女ちゃんによろしくねっと、微笑ましく見送ったのだけど、どうも凄い違和感を感じたのよね…
だって、坊やが乗った馬車って王都行じゃないわよね?乗り込んだ馬車の行き先ってさ、あれよね?隣町の…っふ、これからは私も貴方の事をベテランさんって呼ばせてもらおうかしら、二つの意味を込めてね!!!
夜になり、自室で寵愛の一族が残した歴史を読んでいると部屋のドアがゆっくりと開き、フラフラになりながらも、何とか自力で歩き、靴を脱いでベッドに倒れるように横になる人物がいるけれど、こんな時間まで研究をしていたのかしら?
最近は、お互いのすることが多すぎて共に行動する時間が減っているのよね、姫ちゃんも自分のしたいことを好き放題、我儘放題にしているのよね、まぁ、本人がそう言っているだけで、別に我儘放題ってわけじゃないのよね~。
大浴場だって綺麗になる予定だし、トイレとかの設備も何か変わるのでしょ?良いことばかりじゃない。
よりよく便利になるのは私達だって歓迎だし、その予算も貴女が開発した画期的な発明を売って生まれたお金だもの、貴女が好きに使うのは我儘ではないと思うわよ?
気にし過ぎるのは良くないわよ?気疲れもするし、将来はげるわよ?
姫ちゃんがベッドで横になり気持ちよさそうな寝息が聞こえてきたので、私も、今日はこれくらいにして、寝ましょうかしら~。
初代様の本は凄いのよね、貴重過ぎる、歴史的価値が凄いのよ、聖女伝説がどういったものなのか詳しく書いてあったし、それが国の礎になった背景も書いてあって、驚きの連続だったわ。
白く黄金に輝く太陽に寄り添う白き月…ステキなフレーズよねぇ、聖女様も王道的な恋物語を歩んでいたのね、胸が締め付けられちゃった。
まだ、全部、読み終わっていないけれど、ハッピーエンドだといいわね~。
ぐぐっと伸びをしてから、日課である修練をしてから、ベッドに向かうと姫ちゃんが作業着のまま気持ちよさそうに寝ている、起こしたところで起きるわけないので、寝ながらでも服を着替えさせれるのでコロコロと転がしながら服を脱がしていく。
お風呂は、朝にでも入ればいいけれど、せめて服くらいしっかりと着替えてから寝て欲しいわね。
しっかりとベッドの中央に姫ちゃんを移動させる、着替えさせている間も気になっていたけれど、顔色が悪いわね、この子は研究するときに絶対と言えるほど、術式を使っているだろうから、いくら封印術式で魔力を漏れにくくしたとはいえ、使用頻度が多いから、ナチュラルに魔力が枯渇していくのよね。
ふぅっと、姫ちゃんを着替えさせた際に額に浮き出てきた汗を拭う。
今後も、こんな調子が続く様なら寵愛の巫女だから早死にするのではなく、純粋に過労死、し兼ねないわね、ちょっと研究から遠ざける為に何かしら考えないといけないわね…財務の人に付いて行かせて取引は自分でするようにさせようかしら?
確実に暴れるレベルで猛反対してきそうな気がするわね…なら、私から言わないで、そういう風に根回し、しておくべきね。
寝る前に姫ちゃんに注げれるだけの魔力を注いであげないとね。
ちょこっとずつ、日々、魔力を渡してあげているから枯渇症になっていないと思いたいわね。
最近は敵の襲撃どころか、こちらが敵を襲撃しているくらいだものね、おかげ様で戦線は安定している事でしょう。
姫ちゃんの体に無理のない範囲で魔力を渡す予定だけど、私が溜め込んだ魔力がそろそろ、抑えきれないというか、溢れ出そうなのよね。
何度も何度も圧縮するように重ねた魔力を解放するのもいいかもしれないわね、非常事態に備えて溜め込んでいたけれど、ほんっと、もう限界近いのよね、ついでに封印術式がしっかりと機能しているのか確認もしておきたいものね。
上半身裸になり、姫ちゃんに抱き着き魔力をフルで開放して全力で魔力を姫ちゃんに注ぎ続ける。
封印術式は問題なく機能しているわね、弁もしっかりと作用しているし、今のところ問題なさそうね、何か月に一度、血を抜いて施せばいいのか、それもしっかりと把握しないといけないもの、状況を見誤って、魔力が抜け出ないように気を付けないとね。
魔力を渡し続けていると、どうしても気になってしまうことがある。
この体の不思議について、気になるのよね、本当に何処まで魔力が入るのか、気になるわね~…
注ぐことはできるけれど、注いだ先、私は、折りたたんだイメージで魔力を蓄えているけれど、姫ちゃんの体でも同じことが出来ないかしら?…
してみたいけれど、意識のない人にそれをして、何か起こっても困るから、姫ちゃんが起きている時にチャレンジしてみるのがいいわよね。
魔力の流れが留まるというか、流れにくくなる感覚がくるまで、永遠と魔力を注ぎ込んでみるのだけれど、うーん、本当に何処か弁が開いていないの?
漏れ出てないの?何処までも魔力が注げるような感覚がするのだけれど?私が溜め込んだ魔力帯が全部吸い込まれそうな気がするわね。
持てるだけの魔力を注ぎ終える、注ぎ終えてしまった…
嘘でしょう?数日間、溜めに溜め込んだ魔力よ?練りに練って何度も何度も帯の様に重ねた高濃度の魔力よ?それがぜんぶ、吸い込まれる様に、はいっちゃった…
姫ちゃんの容態に変化が無いか心配になって脈を測るけれど、特に問題なし、問題は無いのだけれど、心なしか肌が暖かい?体温が高くなっているのかしら?
でも、寝る時ってほんのり体温あがらない?それの影響じゃないのかしら?
顔を覗き込むと青白かった頬は赤みを取り戻している、でも、少々熱いのか額に汗が浮かんでいるわね。
額に手を当ててみるが普段よりもやや、高いだけ、寝息も特に大きな変化はないわね、ちょっと艶のある声が聞こえるけれど、問題はなさそうね。
まぁ、顔色も良いし問題なさそうだし、私も寝ることにしましょう。
姫ちゃんと同じベッドに横になると、私が横に来たのを寝ながらにして気が付いたのか、何時もの様に絡みついてくる…
寝ながらにして甘えてくる仕草は可愛らしいけれど、日に日に抱き着いてくる力が強くなっている気がするのよね、貴女、研究するために色んなものを持ち上げたりしているから、力ついてきてるんじゃない?…健康的で、とても喜ばしいことだけど、日に日に抱きしめられる力が強く感じるのは、ちょっと、身の危険を感じるのよね~…
私としては何時までもこうやって、二人抱きしめあって、生活を共にしたいけれど、何時かは、この子もお嫁にいくのよね…
そんな幸せな姿を、見れたらいいわね…
抱きしめられているのを抱きしめ返す様にして眠りにつく
翌朝
机の上に大量に書かれている紙を発見する。
資料の様に山積みになっている紙と文字を見て、まだまだ私がすべきことが多いのだと知る。
未来姫ちゃんから、次の指令が書かれていた。
奥へ向かえば向かう程、凶悪な敵と出会う確率が高くなる、死地へと、これから足を踏み入れる、現時点よりも、死という恐怖が色濃く漂う深いエリアへと駆け出す…
予定だったのだが、拍子抜けだった…何故なら、戦士の一団からすると、予想外、あり得ない場所でありえない声が聞こえたから…
「おお!爆発音がしたから駆けてきてみれば!みんな!!無事だったか!!」
声の下方向を見ると、背中に、大きな大きな人の何倍もありそうな、長い、とても長い何かを背負っていた。
よくよく見ると、何かを丸めた様な感じで、とても大きな物を背負っいるベテランさんがこちらを見つけれたことに嬉しいのか満面の笑みで手を振って駆け寄ってくる。
手を振りながら近寄ってくる姿を見ても、直ぐに現状を理解できないのか、戦士全員が、驚きの余り声を出せないで制止している。
私と姫ちゃんは、敵の動きからこうじゃないかっていう、予想をしていた、していたけれどこうだと良いよねっという希望というか、願望というか、そういうのが多少はエッセンスとして加えられていたと思うのよね、だから、本当に近くにいるなんてね…
ありがとう騎士様、貴方が彼を徹底的に鍛え上げたことによって彼の命は救われました…
貴方の愛弟子である、坊やが、独りで死地から帰ってこれました。
坊やが手の届く場所までゆっくりと近づいて漸く、戦士達が坊やだと、目の前にゆっくりと合流して来た男が、独りで、任務を終えて、無事に死地から帰還したのだと理解した、その瞬間に、坊やの胸元へと突撃していく、突撃して来た仲間達を大きく手を広げて受け止めている、その為、ガンガンっと鎧と鎧が衝突した際に産まれる金属音が辺り一面に響き渡る。
嬉しいのはわかるけど、激しい音をだすんじゃないわよ、まったく…認識阻害の術式があるから大丈夫かもしれないけど、認識阻害が通用しない敵も居るのよ?速く撤収しましょう?
戦士達の悦び姿を眺めているとパンっと小さく手を叩く音が聞こえると、一瞬で全員が音がした方向へと体を向ける
「はい!撤収するよ!ベテランさんも、詳しい話は街に帰って聞かせてね、あと、歓ぶのは帰ってからね!」
姫ちゃんが声を出すと、全員の呼吸が統一されるかのように隊列を整えながら司令官の元へと駆け寄り、司令官の前で姿勢を正す。
これはもう、完全に指揮権を得たわね…
集合した後は、怪我は無いか、装備に異常が無いか、必要なことを全て確認したので、後はもう撤収するだけ、だけなのだけれど、肝心の司令官はどうしても、一か所から視線を外すことが出来ないでいる。
姫ちゃんの視線はお熱だった、自爆タイプをとても欲しそうに、熱いまなざしで釘付けだった。
そうよね~自爆タイプであそこまで、綺麗なのってそうそうないじゃない?それはもう、ね?とっても、貴重なサンプルだものね~、もって帰りたいよね。
でもね~、凍り付いているのよね~、あれを街まで運ぶのは、億劫よ?まずは、氷を溶かしてからになるじゃない?どうやって溶かすのかってことなのよね、徐々に暗くなってきている状況で灯りとなる火なんて出せないわよ?どうにかして溶かしてから、胸を貫いた土を外さないといけないものね。…そんな時間ないわよ?
ほら、行くわよっと意志を込めながら急かす様に、背中をペチペチと叩くと、意志が伝わったのか眉を八の字にして未練がましい表情でこっちを見ないの…駄目よ、今は時間がないでしょう?明日にでも戦士の一団に取りに行ってもらいなさい、明日には氷も溶けてなくなっているでしょ?
観念したのか、ぐっと眉間に皺を寄せて「撤収…」悔しそうにつぶやくと、全員が頷き、戦地を後にする。
帰り道は、非常に楽だった。
戦士の一団もいるし、背にバカでかい何かを背負っているけれど、坊やもいるし。
認識阻害の術式しっかりばっちり機能していて、綺麗に作用しているから、そこそこの集団行動なのに、敵に見つかることがなかった。
過去に私達が、苦い思いと共に学び、経験し、紡いできた、教訓。その全てが、姫ちゃんの手によって過去の物へと…全てが覆りそうよ。
平穏無事に帰ってこれた、行きとは違い、命を賭すような意気込むこともなく、緊張感も薄れ、雑談などの私語は無いけれど、余裕の笑みが零れ出るくらい心穏やかに街に帰ってきて、門を潜ったら、全員が大きな声で叫ぶ、全て、そう、本当に全てが完璧ともいえる奇跡の様な結果に、誰しもが涙を流し感極まっていた。
そのお祭り騒ぎの様な声に街の人達も何事かと駆けつけきて状況を確認しようと辺りを見回している。
直ぐに、どうして叫んでいるのか状況を理解する、戦士の一団が歓喜の声を上げながら舞っている姿がそこら中に溢れている。
全員が笑顔で肩を組みあったり鎧のままでハグをしているのだから、喜ばしいことがあったのだとすぐにわかる、その姿を見て全てが解決したのだと察し、戦士の一団の歓喜の舞に混ざって喜びを表現し始めていく。
歓びが溢れる現場を目の当たりにしたのか、走り続けた影響なのか、足が限界に近付いてきたのか、唐突に震え始めるので、姫ちゃんを地面におろした後、緊張の糸が切れたせいなのか体に力が入らず、その場に座り込んでしまう。
座り込んだ状態で、皆の様子を眺めていると、ふと、坊やの姿が目に留まる。
どうやら限界を迎えたのか、鎧を着た状態で、私と同じようにその場にへたり込む様に座って、歓喜の舞を眺めている。
座り込んでいる坊やに街の人達が食料や飲み物を手渡している、坊やも屈託のない安心しきった、緩んだ笑顔で受け取り、美味しそうに飲み食いを始めていく。
はしたないと思われても、仕方がないけれど、私も今の状況にあてられてしまったのか、更に全身の力が抜けてしまい、全身を地面に預けてしまう。
無事、誰も怪我をすることなく、失うこともなく、人型の奇襲を防ぎ切れたという結果に、心の底から安堵したのだろう…
大の字で横になり、空を見上げてしまう、気が付けばもう夜になるのね、空に点々と光の粒が輝き始めているわね…
「ふぐぅ」
お腹にどすんっと衝撃が来るものだから空気が漏れるような声を出しちゃったじゃないの…
空を眺めていたら唐突に、お腹の上に何かが乗っかってきたと思ったら流れるように、乗っかってきた人が全身を預けるように私の体をベッド代わりにしてくるじゃないの、そういう事をするのは、考えるまでもないじゃない、この世に、一人しかいないわね…
胸骨の真上に乗せられた頭の感触を味わいながらも、ゆっくりとお腹に手を回すと、小さなふくらみがあるので、その上に両手を置き、ポンポンっと叩きながら
「お疲れ様、ひと段落するまで、長かったわね」
人の体をベッドのように扱う遠慮しらずの我儘お嬢さんに声を掛けると
「そう?私はまだまだへいきだよ~、お祭り騒ぎみたいで楽しかった…うん、楽しかった、こんなこと、したことが無かったから、凄く楽しかった」
私の手に、そっと手を重ねるようにしたあと、ゆっくりと握りしめてくる。
本当に、この子は能天気なのか、誰も死ななかったから良い物の…人が死んでいたら、そんな感想出てこないわよ?まったく。
こうして、この街に未曽有の危機をもたらしかねない大事件は、平穏無事に幕を閉じた…
翌日に、坊やから敵地での出来事を幹部会として報告をしてもらった。
どうして合流が遅くなったのか、偏に飛んだ先にあった魔道具が滅茶苦茶でかかったからだった。
姫ちゃんも、先に手に入れた魔道具と同サイズと考えていたみたいで、これ程までに、巨大だとは想定外だったみたい。
認識阻害の術式は非常に効果的で敵に見つからないのは良かったのだけれど、魔道具がデカすぎて通る予定だった森林エリアを通ることが出来なかった。
その為、大きく迂回して、ルート変更を余儀なくされていたのね。
坊やが、持ち帰った魔道具を実際に広げてみると、驚きの大きさだったわね。
確かにあれ程の大きさだったらパワータイプもすっぽりと入るわね…
縦幅は坊や三人分ってところかしら?それが正方形だから、横幅も同じくらいね。
敵地の様子は閑散としていて、飛んだ先で敵が出迎えているのじゃないかって言う不安もあった。
こればっかりは始祖様のご加護だろう、最悪の事態を回避できたのも運が良かったのだろう。っと、各々の感想を言いながら、戦士の一団が奇跡的に運が良かったのだと坊やの肩を叩きながら喜びを露にしていた。
それに関しては、私も姫ちゃんも同意見ね、飛んだ先の状況までは調べようがないから、わからないもの。
今後は、この魔道具を運用できるように姫ちゃんが解析、改良を施した後、実戦配備することになるみたい。
なので、門の手前にある広場に設置する方針が決まるので、今後、転送陣エリアっという名称に変更するみたい。
後、姫ちゃんからの指令で、自爆タイプの遺体を回収させに戦士の一団を送り込んだのだけれど、現地には敵の死骸が無く、手ぶらで帰ってくる。
戦士の人達は、その辺にいる大型の肉食獣にでも持っていかれたのだろうと言うが…
私達は、そう思うことが出来なかった…
それから、数日後、王都に帰っていた監視の方が街に帰ってきたと思ったら、30名近くの武装した集団と共に帰ってくるものだから、私達は王都から粛清されるのでは!?っと、恐怖する人が出てしまったわよ
実際は粛清とかではなく、王都にいる世継ぎから縁遠い貴族の三男、四男に、妾の子、側室の世継ぎ候補から除外された人達を搔き集めて連れてきてくれたのよね。
彼らを集める為の触れ込みとして、
【ここで一旗揚げて、報酬を得て家を興せ】
だって、無茶を言うじゃないって、昔なら思ったけれど、現時点だと、実はそうでもないのよ。
術譜が王都で大量に売れてしまったのよ…しかも、まだまだ発注されていて、現状では材料が足りてないのよね、なので、材料共に大量に用意しないといけないのよ…
術譜の原材料が敵の皮膚なのよね、それが足りない。
なので、死の大地にいる獣達を乱獲する勢いで戦士達が遠征に出ているのよね。
術譜なんて、戦闘用の道具が大量に売れるなんて想像していなかったけれど、意外にも需要があって、売れる物なのね。
てっきり、騎士団に全部売っているのかと思っていたら、実は、騎士団よりも、貴族から平民まで、数多くの人達が欲しがっているのよ!
主に、水を生み出す術譜、風を生み出す術譜、温度を下げる術譜が、物凄い需要があるのよ、作っても作っても足りないくらい受注されてるのよ!!
ちょっと魔力を込めるだけで水汲みから解放され、生み出した風によって仕事や、訓練などで火照った体を冷やすことが出来、飲食店からも氷を作り出せる画期的な魔道具として重宝されているのよね~、まだまだ冷蔵庫という魔道具は高価で、平民では手が出せない。
なので、平民にとっても貴族にとっても姫ちゃんが生み出す魔道具を持っているのが一つのステータスみたいになりつつあるって言っていたわね。
更に、これって、実は消耗品なのよ。
一定回数使用したら、描いた陣が崩れるみたいで使えなくなるのよ、その場合は術譜を一度、こちらに返してもらって、再度、陣を描き直してからお返しているのよ。
あ、勿論、有料よ?タダでするわけないじゃない、新しく術譜を購入するよりも格段に安いので需要が途切れないのよね、素材となる皮が使い物にならなくなった場合は新品の購入を勧めているわ。
だから、王都とこの街から、術譜を反復するように何度も運搬するために人手が足りないから、王都にいる行商人に術譜を運ぶ仕事を行商のついでにお願いできないかと、頼むと、莫大な値段を吹っ掛けられちゃったのよね~。
確実に私達の足元を見てきているわね、私達が唐突に莫大な資産を手に入れたものだから羨んでいるのか、こんな街で働いているから学が無いだろうと馬鹿にしているのか、そのどれかでしょうね。はぁ、これだから王都を根城にしている商人どもは性根が腐ってるわね。
余りにも暴利で舐め腐った態度で取引を勧めようとしてくるものだから、姫ちゃんが行商の人に怒っちゃったのよね~、まぁ私もぶん殴ってやろうかと思っていたけれどね。
私達を小馬鹿にしたような、誰も得しない契約書、それら全てを跳ね除けて、っていうか、実際に契約書を行商の人に投げつけようとしていたのを止めたわよ。
自分で解決する!っていうと直ぐに行動に起こして実現しちゃったのよね~。
馬車代わりの魔道具も造り上げて、畜産の旦那経由で、商会から人を雇って、雇った人に車っていう魔道具を使って運搬してもらっているのよね。
おかげ様で行商人の方も反省したのか、姫ちゃんに媚び諂っているわよ?
大富豪になれるかもしれない縁を、商機を、逃したのだから、それはもう命がけの様に必死だけど、姫ちゃんも性格が悪いから、笑顔で追い払うのよね~若干、いいえ、確実に小馬鹿にしながらね。
意趣返しとはいえ、性格悪いわよ~?見ていて凄く気持ちが良いから、もっとやれなんて、思ってないわよ~?っふ…王都のそういう汚れたところが嫌いだったのを思い出したわ、それだから、あの街には、輝く色がないのよ。
そういういざこざがあったからなのか、姫ちゃんの名前が商人の間で凄く広まって行っているのよね~。
今まで、この街に来たことも無い商人が姫様に合わせろ!って来るものだから、それの相手をするのも大変なのよね~、財務のやつ早く帰ってこいっての!!
ええそうよ!財務担当が不在なのよ!あいつったら、ずっと王都に泊まり込んで、まったくなにをやってんだか…
取引先が居るのか知らないけれど、帰ってくる気配がないわよ…
それだけじゃないのよ~、色んな貴族から大人気になってしまった影響もあって、姫ちゃんが作ったカメラっという魔道具も大量に貴族様に売れたわよ…恐ろしい金額でね!!
これらすべての結果によって、私の部屋にある倉庫が、それはもうとても、凄いことになってるのよ…
金貨が山ほど積まれているのよ、私の部屋着とか隅っこに追いやられてしまうくらいにね。
ここは大貴族の宝物庫か!ってくらい、凄いことになっていてね、これを管理するという仕事も増やされてしまったのよ…
私、事務的なこと、苦手なのよ…
計算は、そりゃ、出来るわよ?毒を作ったり薬を作ったりするのに、数式は必須だもの。
だからといって、私に押し付けるのは如何なものよ?そりゃぁねぇ?姫ちゃんの自称お母さんよ?この街の幹部よ?だからといって、この膨大な量の資産管理なんてしたくないからって押し付けてくるのは、ひどくないかしら?
おかしいわね、私って医療班の団長よね?最近、医療班として動いていない気がするのだけれど?
坊やもね、最近は街にいることが多くて王都から来た人たちを鍛えることに専念しているわね。
驚いたことに、貴族として鍛錬を続けてきた人達が束になっても坊やに敵わず、さらっと、全員を捻じ伏せて、尊敬されていたわね。
それについては、凄い喜ばしいことなのだけれど、どうもね~坊やと同じようにあっち方面が好きな人がそこそこ居るみたいで、その人たちの話題によって、坊やがもう限界迎えちゃったのよね~…雄としてのパッションが溢れそうになってるのよ、いいえ、溢れ出ているでしょうね。
だもんで、子供を抱きに行くので休みが欲しいといって、四日ほど休みを取ったのよね。
乙女ちゃんも若い男を相手にするのは大変でしょうねっと思っていたのだけれど、その憐れみというか同情の念は直ぐに掻き消えたわよ。
街の入り口近くで、昔から良くしてもらっている行商の方に必要な物を取り寄せてもらう話をしていたら、坊やが馬車に乗り込むのが見えたのよね。
その瞬間は、嗚呼、王都にある実家に顔を出しに行くのって、乙女ちゃんによろしくねっと、微笑ましく見送ったのだけど、どうも凄い違和感を感じたのよね…
だって、坊やが乗った馬車って王都行じゃないわよね?乗り込んだ馬車の行き先ってさ、あれよね?隣町の…っふ、これからは私も貴方の事をベテランさんって呼ばせてもらおうかしら、二つの意味を込めてね!!!
夜になり、自室で寵愛の一族が残した歴史を読んでいると部屋のドアがゆっくりと開き、フラフラになりながらも、何とか自力で歩き、靴を脱いでベッドに倒れるように横になる人物がいるけれど、こんな時間まで研究をしていたのかしら?
最近は、お互いのすることが多すぎて共に行動する時間が減っているのよね、姫ちゃんも自分のしたいことを好き放題、我儘放題にしているのよね、まぁ、本人がそう言っているだけで、別に我儘放題ってわけじゃないのよね~。
大浴場だって綺麗になる予定だし、トイレとかの設備も何か変わるのでしょ?良いことばかりじゃない。
よりよく便利になるのは私達だって歓迎だし、その予算も貴女が開発した画期的な発明を売って生まれたお金だもの、貴女が好きに使うのは我儘ではないと思うわよ?
気にし過ぎるのは良くないわよ?気疲れもするし、将来はげるわよ?
姫ちゃんがベッドで横になり気持ちよさそうな寝息が聞こえてきたので、私も、今日はこれくらいにして、寝ましょうかしら~。
初代様の本は凄いのよね、貴重過ぎる、歴史的価値が凄いのよ、聖女伝説がどういったものなのか詳しく書いてあったし、それが国の礎になった背景も書いてあって、驚きの連続だったわ。
白く黄金に輝く太陽に寄り添う白き月…ステキなフレーズよねぇ、聖女様も王道的な恋物語を歩んでいたのね、胸が締め付けられちゃった。
まだ、全部、読み終わっていないけれど、ハッピーエンドだといいわね~。
ぐぐっと伸びをしてから、日課である修練をしてから、ベッドに向かうと姫ちゃんが作業着のまま気持ちよさそうに寝ている、起こしたところで起きるわけないので、寝ながらでも服を着替えさせれるのでコロコロと転がしながら服を脱がしていく。
お風呂は、朝にでも入ればいいけれど、せめて服くらいしっかりと着替えてから寝て欲しいわね。
しっかりとベッドの中央に姫ちゃんを移動させる、着替えさせている間も気になっていたけれど、顔色が悪いわね、この子は研究するときに絶対と言えるほど、術式を使っているだろうから、いくら封印術式で魔力を漏れにくくしたとはいえ、使用頻度が多いから、ナチュラルに魔力が枯渇していくのよね。
ふぅっと、姫ちゃんを着替えさせた際に額に浮き出てきた汗を拭う。
今後も、こんな調子が続く様なら寵愛の巫女だから早死にするのではなく、純粋に過労死、し兼ねないわね、ちょっと研究から遠ざける為に何かしら考えないといけないわね…財務の人に付いて行かせて取引は自分でするようにさせようかしら?
確実に暴れるレベルで猛反対してきそうな気がするわね…なら、私から言わないで、そういう風に根回し、しておくべきね。
寝る前に姫ちゃんに注げれるだけの魔力を注いであげないとね。
ちょこっとずつ、日々、魔力を渡してあげているから枯渇症になっていないと思いたいわね。
最近は敵の襲撃どころか、こちらが敵を襲撃しているくらいだものね、おかげ様で戦線は安定している事でしょう。
姫ちゃんの体に無理のない範囲で魔力を渡す予定だけど、私が溜め込んだ魔力がそろそろ、抑えきれないというか、溢れ出そうなのよね。
何度も何度も圧縮するように重ねた魔力を解放するのもいいかもしれないわね、非常事態に備えて溜め込んでいたけれど、ほんっと、もう限界近いのよね、ついでに封印術式がしっかりと機能しているのか確認もしておきたいものね。
上半身裸になり、姫ちゃんに抱き着き魔力をフルで開放して全力で魔力を姫ちゃんに注ぎ続ける。
封印術式は問題なく機能しているわね、弁もしっかりと作用しているし、今のところ問題なさそうね、何か月に一度、血を抜いて施せばいいのか、それもしっかりと把握しないといけないもの、状況を見誤って、魔力が抜け出ないように気を付けないとね。
魔力を渡し続けていると、どうしても気になってしまうことがある。
この体の不思議について、気になるのよね、本当に何処まで魔力が入るのか、気になるわね~…
注ぐことはできるけれど、注いだ先、私は、折りたたんだイメージで魔力を蓄えているけれど、姫ちゃんの体でも同じことが出来ないかしら?…
してみたいけれど、意識のない人にそれをして、何か起こっても困るから、姫ちゃんが起きている時にチャレンジしてみるのがいいわよね。
魔力の流れが留まるというか、流れにくくなる感覚がくるまで、永遠と魔力を注ぎ込んでみるのだけれど、うーん、本当に何処か弁が開いていないの?
漏れ出てないの?何処までも魔力が注げるような感覚がするのだけれど?私が溜め込んだ魔力帯が全部吸い込まれそうな気がするわね。
持てるだけの魔力を注ぎ終える、注ぎ終えてしまった…
嘘でしょう?数日間、溜めに溜め込んだ魔力よ?練りに練って何度も何度も帯の様に重ねた高濃度の魔力よ?それがぜんぶ、吸い込まれる様に、はいっちゃった…
姫ちゃんの容態に変化が無いか心配になって脈を測るけれど、特に問題なし、問題は無いのだけれど、心なしか肌が暖かい?体温が高くなっているのかしら?
でも、寝る時ってほんのり体温あがらない?それの影響じゃないのかしら?
顔を覗き込むと青白かった頬は赤みを取り戻している、でも、少々熱いのか額に汗が浮かんでいるわね。
額に手を当ててみるが普段よりもやや、高いだけ、寝息も特に大きな変化はないわね、ちょっと艶のある声が聞こえるけれど、問題はなさそうね。
まぁ、顔色も良いし問題なさそうだし、私も寝ることにしましょう。
姫ちゃんと同じベッドに横になると、私が横に来たのを寝ながらにして気が付いたのか、何時もの様に絡みついてくる…
寝ながらにして甘えてくる仕草は可愛らしいけれど、日に日に抱き着いてくる力が強くなっている気がするのよね、貴女、研究するために色んなものを持ち上げたりしているから、力ついてきてるんじゃない?…健康的で、とても喜ばしいことだけど、日に日に抱きしめられる力が強く感じるのは、ちょっと、身の危険を感じるのよね~…
私としては何時までもこうやって、二人抱きしめあって、生活を共にしたいけれど、何時かは、この子もお嫁にいくのよね…
そんな幸せな姿を、見れたらいいわね…
抱きしめられているのを抱きしめ返す様にして眠りにつく
翌朝
机の上に大量に書かれている紙を発見する。
資料の様に山積みになっている紙と文字を見て、まだまだ私がすべきことが多いのだと知る。
未来姫ちゃんから、次の指令が書かれていた。
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