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とある人物達が歩んできた道 ~ 予定は…狂っていく ① ~

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腹に一物を抱えてそうなお父様と対峙する覚悟を決める

いざ、食卓に座って挨拶をすると、私の過度な警戒はまったくの意味がなかった。なぜならお父様の目的は私だった…
まさかの、驚きの、内容!?私のような年齢の人に、お父様自ら、お見合いの話を…持ってくるなんて思ってもいなかったわ…

姫ちゃんの身内の恥を晒させないように警戒していた、しかし、その警戒も無駄になる、完全なる想定外、意識外からの攻撃、あり得ない状況に、一瞬だけ状況が呑み込めず、呆気に取られてしまった。

呆気にとらている間も話は勝手に進んでいく、乗り気な恋しらずの乙女がいるせいで…

突如、降ってわいた色恋の話題に、恋とかどうでもよさそうで、興味が無いと思っていた、あの姫ちゃんがこういった話題に興味を持つのも予想外。
初めての恋話が楽しくなってしまったのか、それはもう、大層テンション上がっていく…

まさか、年相応に恋バナに興味があるなんて想像もしていなかった、そうよね姫ちゃんも人…よね?あまり、好みとかそういう話をしたことが無かっただけで、実は色恋に瞳を輝かせるほどの乙女だったってこと?
今も、瞳を輝かせているし、お父様が持って来たお見合い話を自分事の様に真剣に聞き、お見合い相手の情報を念入りに探るように質問しているけれど、どうしてそこまで乗り気なの?そんなに他人に興味あるそぶり一度も見せなかったじゃない?念入りに、一人一人、値踏みをしているわね、家系図まで聞く必要性ってあるのかしら?

おかしいわね、私は過去に姫ちゃんに忘れることが出来ない人がいるって伝えなかったかしら?
…ねぇ?言ったわよね?貴女はどっちの味方?この人とかいいじゃん!とか、どうしてそこまで乗り気なの?

お母さんは嫌よ!結婚なんてしない!!!しないわよ!!

…嗚呼もう、ほんっと、王都は、だめ、息が苦しく感じる、色が見えない…そんな世界で一生を終えるなんて、無理よ。心が耐え切れない。

本当…どうして、唐突にお見合い話を持って来たのだろうか?お父様からすれば、いいえ、王都の貴族からすれば私の年齢なんて完全に婚期を逃しているもの。
意図がよみきれない…読み切れない時は訊ねるのが基本ですけれど、相手はお父様、質問をしづらいけれども、私も子供じゃない、すぅっと軽く一呼吸してからお父様に恐れながらも質問をすると、お父様は笑みを浮かべている…貴族や取引先と、相手をするときの表情…作り笑顔を崩さないで説明してくれる。

どうやら、あの一件以来、私個人への評価が高まっているみたい。それだけで、理由がわかる…政治的な部分で価値が高くなったってことか…
私の評価が高いなんてね、奇特というか、奇抜というか、物好きな、一部の貴族だけが、そんなことを言っているのだと思う。だけれど、評価が高くなったという事実がある以上、その影響は免れないわけで、どんな思惑があるのか知らないが相手からは、本当にお見合いの話なのよね。側室候補どころか、正妻候補として家に迎え入れたいってことなのよね…名乗り出ている相手も行き遅れたわけでもなく家柄が貧しいわけでもなく、お父様が政治的につながりが欲しい家柄ばかりじゃない…

お見合いを希望する、それを利用するのは耳が良いお父様にとっては好機なのかしら?…そうよね、婚期を逃した娘を案じてお父様、自らが、動くとは思えない。
政治的な繋がり以上の何かがありそうな気がする、お父様の一派に何かしらの動きがある?お父様の所属派閥って、今は何処なのかしら?過去では、中立的な立ち位置で周りを見て中間管理のような立ち位置だったっというのが家を出る前の情報なのよね…

普通に、有り触れた貴族としての考え…だったらどうなの?お見合いさせて、結婚させることによって、貴族同士のつながりを強くしたいとかそういうことでしょうね。
側室の間に産まれた利用価値のない娘に、想定外の利用価値が生まれたから利用する…それだけな気もするけれど、本当にそれだけかしら?

怪しいのよね、その程度でお父様、自ら橋渡しをする?貴族同士の繋がりを強固なものにしたいのだったら、お見合い話をするようにお母様に言伝をしてお終いよね?
それをしない…裏があるって言っている様なものね、うん、やっと頭が回ってきたわ、耳鳴りもしなくなってきたし。

うん、うん、そうじゃない、達観的に見て、貴族から見たら、私の評価って底辺もいい所よね?こんな私にお近づきになりたい人がいるなんてね、考えられないのよ。
王都にいる貴族だったら、死の街で働いているってだけで、ね?…
婚期を逃したせいで、王都での生き場所がなくなった、その結果、世間的には死の大地に志願する勇敢なる若人って形にして、勘当同然で家を放り出されてしまった、死の大地でしか生きる場所がない使えない存在…王都では活躍できる場所がない、人生の落伍者が集まる大地で働き続ける…愚か者。そう評価されていると思っていたわ。

そりゃ、一部の医療に通じる人達からすれば、貴重な臨床データを出版する人ってくらいの認識はあると思うわよ?…そんな評価、貴族からしたらゴミみたいなものよね。

永遠と作り笑顔で、嫌だと言わせない雰囲気を作って話を勧めようとするのが、心苦しい…そりゃ、私だって育ててもらった恩は感じております。お父様の為に何かできるのでしたらしてあげたいですわ…でも、無理よ、王都で、貴族の傍らにいるなんて…もう、無理よ、私には出来ないです。

心苦しいけれど、未来を考えると幸せな未来を思い描けない…多少、声を荒げながらも全力で見合い話を断り続ける。

王都で根を張るようなことはしない!私はあの街と共に生きると言い続けていると

なら、あの街で共に過ごす人だったら問題ないのかという、逃げ道を塞がれかねない危険なワードが出てくる…これはもう、なりふり構ってられない、どんな方法でも良いので、逃げることを考えよう…傍にいる姫ちゃんを抱きしめ
「私は!この子のお母さんとして生涯を共に歩むと決めたんです」若干パニックにもなりながら、強引なようで、断る理由として説得力が無い、何とも言えない言い訳を言葉が出してしまった…

この発言に、お父様は唖然とした表情をしている、断るにしても理由として間違っているというか、何を言っているのか筋が通らない…そんな、言い訳に対して、どう対処したらいいのかわからず、言葉を選んでいる隙に
「この話は無かったことにしてください!」
姫ちゃんを抱えて逃げる様にその場を離れ、自分の部屋に向かって走っていくしか、私の逃亡経路は無かった…力業、強引、強行突破、考え無しの能無し馬鹿とでも笑えばいいと思うわ…碌に親と関わってこなかったツケね…お父様の事を知らなさ過ぎるが故ってことよ。

部屋に戻って、本当だったら湯あみでもしてから寝たいけれど、ほとぼりが冷めるまでこの部屋から一歩も出たくない!

問答無用で有無を言わさず、姫ちゃんを寝巻に着替えさせてから一緒にベッドで横になり眠ろうとするのだが、ずっと、目の前にいる姫ちゃんの表情が芳しくない…
文句を言いたそうに眉をひそめてこちらを見続けている。

言いたいことはわかるわよ!だけれど、嫌よ…結婚なんてしない…騎士様以外、私の柔肌に触れてはいけないの…触れて欲しくないし、触れられたくないし、熱のこもった視線すら嫌よ、遠目ならまだ許すわよ?絶世の美女だもの、男なら目が行ってしまうのは仕方が無いわ。

だからといって、近くに居ていいのは騎士様だけなの!絶対に嫌!騎士様以外!絶対に嫌!!誰が何と言おうが、この私に触れていいのは騎士様だけなの!!!

どうやら、私の感情が何も言わないでも伝わったのか
「もう…それじゃ。しょうがないか、お母さんには未来を見て欲しい、歩んで欲しいけれど、無理強いはだめだよね。お母さんが望む人じゃないとだめだよね、子供が欲しいけれど、誰でも良いってわけじゃないよね、そうだよね、お母さんが私の幸せを望んでいる様に、私も、お母さんの幸せを望んでいるからね?」
諦めたような表情をしながら手を伸ばして私の頬にふれてくる。
優しい子ね、本当に、研究している時や闘っている時の勇ましい姿だけを見ていると、この子は冷酷で人の血が通っていないんじゃないかって誤解する人もいるかもしれないけれど、根本的な部分でこの子は優しいのよね、それが、ともに現場で苦楽を共にした人は気が付いているからこそ、この子に付いて行くのでしょうね…

はぁ、そんな風にね、目の前で、諭される様に言われるとね、何も言えないじゃないの。悪意があってお見合いの話に乗っかったわけじゃないのね。
それが、知れただけでも、私としては嬉しい限りよ。

そっと、目の前にいる頬から暖かい感情が伝わってくる愛しい子を抱きよせる。
「そうよ、私の幸せを願うのなら、そうしてちょうだい、騎士様以上の人じゃないと私の心と体は預けれないの、例え王族であろうと…お断りよ」
「結婚できないね…」
私の嘆きのような呟きに、正論が帰ってくる、そう、ね。たぶん、いいえ、永遠に私は結婚できるとは思えないわね。
女としての幸せは…あの日に終わりを迎えたのよ…これでいいの、女としての未練があるが故に巻き込まれて付けこまれて…女として、許せない地獄を・・・

それを繰り返さないためにも、気を引き締めて、女としての感情ではなく、一人の人として、愛する我が子を守るために動かないといけない。
アレを殺してから、それからが、一番大変よね。王族殺しなんて、どう足掻いても、極刑…脳裏に過るお父様とお母様の顔、事を起こせば二人も死罪でしょうね。

そう考えると、事を起こしようがない、念入りに何か策を練るべきよね、殺さなくてもアイツに最大限の屈辱を、地獄を見せれればいいのよ。

私が今抱いている考えと、姫ちゃんが考えている考えはきっと、一致していないだろう…
なので、意識を切り替える、純粋に姫ちゃんの未来を案じ、幸せを願いながら…お互いの幸せを祈りながら眠りにつく。



唐突に意識が夢から連れ出される。

頬を叩いてとか、体を揺すってとかそんな優しい起こされ方じゃない、布団をはがされて上半身を突如、起き上がらせるようにし、強引に地面に立たせるように起こされる。
起こした人は誰?容赦なく叩き起こすような無礼者はだれよ?…
寝ぼけながら起こした張本人である侍女を見つめるが、何も言葉を発しない…答えを言わずに、強引に手を掴まれて引っ張られていく…

どこ行くのよ?

強引に腕を引っ張りながら部屋を出ていき、足早に何処かに向かっているみたいだけど、どこに連れて行こうとするのよ?なに?どういう状況?
寝ぼけながらも向かう先を見る、恐らく…たぶん、玄関ね…

誰よ、朝早くに挨拶に来るなんて…もう少し寝かせてよ…

って、思っていたけれど、壁にかかっている時計を見て、今が早朝ではない時間だと知る、あと2時間もすればお昼じゃない…

寝ぼけながら現在の時刻という新しい情報を得ながら、階段を下りていく…寝ぼけながらも玄関まで連れていかれると、玄関の先からお父様の話し声が聞こえてくる。
声の感じからしても、余所行きの声で頭を下げているような感じの声が聞こえてくるわね、ペコペコと頭を下げるような相手って、誰よ?…お父様が低姿勢になる相手?それって、結構限られてくるわよね?

徐々に思考がクリアになっていくと同時に、少しだけ空いていた玄関のドアが大きく開き、誰が訪ねてきたのか顔が見える、末席の人がいるじゃない…目と目があう…
末席の視線が交差したかと思ったらすぐに下を見たかと思ったら、直ぐに正面を見据える、だが、再度、視線が下を向く、上下に高速で視線を動かす仕草に何を見てるのだと、私も視線を下に向けた瞬間に、自分がしている恰好が自身の視界に映る…寝巻じゃないの私、それも、下着が、透けて、見えるタイプの…!!??

自分の恰好に気が付いたその瞬間に!!頬が熱を持ち赤くなるのを感じると同時に、侍女に捕まれている手を振り払う様に叩き落し、急いで着替えるために自室へと戻る!!

お父様に急いで連れてこいって言われたのでしょうけれど!!相手は王族よ!?こんな格好で出迎えていい人じゃないでしょうに!!

慌てて着替えるていると、煩かったのか、姫ちゃんが目を覚まし「どうしたの?…敵が攻めてきたとかってわけないか…王都だもんね」っと、寝ぼけながら声を掛けてくれるので軽く事情を説明する、そう、この家に王族の末席である人物が来訪してきたのだと伝えると

受け取った答えに対して、何も言わずに二度寝しようとする…やっぱり、何かしら因縁があるのでしょうね、この感じ…会いたくないのでしょうね。

慌てながらも皺にならないように着替えて、乱れた寝起き特有の跳ねた髪の毛も綺麗に整えて、後は、先ほどの失態なんて何もなかったかのように淑女らしく慌てずに部屋のドアを開ける。
色々と失態をやらかした侍女が申し訳なさそうな表情をしながら立って待っている…だけどね、私の目は節穴じゃないわよ?おかしいわね、侍女のポケットが幾ばくかの硬貨が入った袋でも貰ったかのように膨らんでいるのだけれど?…嗚呼、なるほどね、そういうことですか、とりあえず、見なかったことにしましょう、もう、やられたことに関しては咎めないわよ。まったく…断れない相手だものね。しょうがないわ、でも、次は無いわよ?

はぁっとつい、溜息が、淑女らしからぬ溜息が漏れてしまう。知略策略謀略を巡らせる相手と親を交えて会話しないといけないことだけじゃなく、先ほどの一連の流れ含めて、溜息が漏れてしまう、心からも体からも…

…頭回るわねー、だから王族の相手をするのは嫌なのよ、計画的犯行ってことね、っくそぅ、味方がいねぇ!せめて知将として姫ちゃんを取り込めばよかった!…この状況からどうやって逃げたらいいのかな?ここは2階…窓から飛び降りようかしら?っふ、無理ね。愚行を犯した瞬間に付近に控えている使用人全員が抑えに来るわね、気配を隠さずにこちらを伺っているってことは、警戒していますからね?っていう、声のない忠告ね。

今できることは、心を整える事ね、この先に待ち受ける予想していなかった戦いへ向かう為に冷静にならないといけない。
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